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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


青い部屋のゴースト達
●事件のはじまり
 古い柱時計が深夜の12時を告げている。
 ここはかつての富豪が建てたと言われる古い邸宅。暗闇の中で懐中電灯の光に照らされて露わになるのは、埃にまみれの壊れた家具や部屋ばかり。そんな荒廃した屋敷の一室に何故か四人の若者が入っていく。
「うっわー、本当に真っ青だよ」
「ベッドもテーブルもみんな青‥‥ここだな」
「じゃあ、携帯から‥‥964って打つんだよね?」
「そうそう。ノイズが入ったら幽霊出てくるから、ちゃんと教えてね」
「OK!」
 だが、その前に。遠くから複数の人の足音が、この部屋へと近づいてきた。
「あ、あれ? まだノイズ出ていないのに?」
 そして、勢い良く扉が開かれ‥‥。
「きゃあああああああああああああああああああ!!!!!」

 そして一週間後。ネットカフェに深緑のブレザーを着た少女が入ってきた。そしていつもの席に座り、ネットサーフィンを始める。と、とある掲示板で少女の手が止まった。
『投稿者:MIKI
 助けて! 例の青い部屋で仲間が捕まって‥‥ひとりじゃ皆を助けられない。出来れば強いヤツの方がいいけど、この際、誰でもいい。誰か、誰か助けて!!』
 それが少女の手を止めたメッセージ。
「いいわ。私が行ってあげる。この深月明(ふかづき・あきら)が‥‥」
 と、明の肩に手を置く者がいる。
「あら、あなたも? それなら、一緒に行きましょうか?」
 どうやら、彼女の友人のようだ。明は笑みを浮かべ、友人と共にカフェを後にした。

●ご近所調査
 ごくありふれた住宅街。青空の下、まばらにいる主婦達が楽しそうに話をしていた。藤村圭一郎(ふじむら・けいいちろう)はそっと、主婦達に近づいていく。
「あのう、すんません。聞きたいことがあるんやけど、ええですか? 答えてくれるんならタダで占いしますわ。ホントは一回3000円もしはるんです。どうやろ?」
 その言葉に主婦達はやっと笑顔を見せた。どうやら、うまくいったようだ。
「それで、何を知りたいのかしら?」
「この近くにある廃屋のこと、知ってることがあれば教えてくれませんやろか?」
 その言葉に主婦達はざわめいた。
「それって、『八城さん』のうちのことよね? 青い変な部屋があるっていう‥‥」
「10年前に体の弱い息子さんが死んだのよね。その後家族の人たち出ていったのよ」
「だから誰もいないはずなのに、変な物音がしたり、変な人影とか見えたりするのよね」
「あら私、バイクを乗り回している男が屋敷に入るのを見たわ」
 どうやら、屋敷は八城さんのもので、そこにある青い部屋は亡くなった息子のものらしい。しかも出入りする人影もあるようだ。
「その話、俺にも詳しく聞かせてくれませんか?」
 そこへ現れたのは圭一郎よりの長身ですらりとした青年だった。その冷ややかな双眸に主婦達は色めき立っている。
「なんやねん、兄ちゃん‥‥何者や?」
「久我直親(くが・なおちか)。陰陽師をしています。度重なる噂を聞き、一度お払いをと思いまして」
 その言葉は圭一郎へというよりはむしろ主婦へと向けられたものだった。
「なんや、兄ちゃんも青い部屋を調べてるんか? よかったら、一緒にやらへん?」
 一人よりも二人でやった方が効率がいい。あまり気に入らない相手でも、だ。
「‥‥そうだな。よろしく」
 短くそう直親は言うと、二人はもう一度、主婦達から話を聞いたのであった。

●出会いのカフェ
「何や、兄ちゃんと嬢ちゃんら、知り合いだったんか?」
 ここはネットカフェ。目の前にいるブレザーの少女、明とセーラー服の少女、滝沢百合子(たきざわ・ゆりこ)に出会った。どうやら一緒にいる直親の知り合いらしい。
「まあな。まさか‥‥おまえ達、『青い部屋』のことを調べているんじゃないだろうな?」
「よく分かったわね。今、この掲示板を見て情報収集していたのよ」
 明達が見ていた画面を覗き込みながら直親はおもむろに口を開いた。
「以前も廃墟となった病院で失踪事件があったばかりだ」
「言われてみれば‥‥私たちが初めて会ったときもそうだったわね。もしかして今回も妖術師がらみ?」
「お? そんなこと、あったんか? 知らんかったわ、俺」
 圭一郎は二人の話に興味を持ち始めた。
「ああ。その病院には妖術師の仕掛けた罠にかかり、もう少しで命を落とすところだった。百合子は言わなくても分かると思うが。‥‥だが、どうやらこういった『危険な』廃屋が妙に増えているらしい。先ほども圭一郎と調べていたのだが、どうもきな臭い噂ばかりが目に付く‥‥」
「そうそう。なんや青い部屋の屋敷に出入りする、変な奴らがいるらしいんや。な、何か変やろ?」
 そんな圭一郎の言葉に百合子は目を丸くした。
「ええっ!? 幽霊じゃないの!?」
 どうやら幽霊じゃないことを知り、百合子は不満なようだ。
「まだそうと決まったわけではないですよ、百合子さん。とにかく今夜、屋敷に行ってみませんか?」
 その明の言葉に皆は頷いたのだった。

●青い部屋にいるものは
 ここは青い部屋のある廃屋。途中、榊杜夏生(さかきもり・さつき)という小麦色の肌をした少女と、鈴を付けた虎猫、桐谷虎助(きりたに・こすけ)と出会い、圭一郎達は共に青い部屋に入っていた。持ってきた懐中電灯の明かりで部屋を照らしていく。部屋にあるあらゆるもの‥‥家具だけでなく、壁までも青く塗られていた。どうやらこれが部屋の名前になったようだ。
「さて、とうとう部屋に来た訳だが‥‥どうする?」
「どうするって、携帯電話をかけるんでしょう?」
「あ、俺、持ってくるの忘れたわ」
 そんなやりとりの中。
「うんもう、皆、肝心なのを忘れて来るんだから。私に感謝してよね」
 そう言って夏生はさっさと電話をかけ始める。静かな部屋に電話の音が響き渡った。
 と、そのとき!
 ばったーん!!
 突然クローゼットが開き、そこから出てきた男は側にいた百合子を捕まえたのだ!
「動くな! 動くとこいつの命はないと思え!!」
 男は手に持っていたナイフで百合子の首を斬りつけようとした。が。
「ぐあああ!??」
 突如、ナイフを持っていた手がいきなり血を吹いた。その隙に百合子は男の手を押し退け抜け出した。
「ここは俺に任せて、さっさと地下へ行け」
 そこに現れたのは黒い服を身にまとった青年、紫月夾(しづき・きょう)だった。
「地下だと?」
 直親が夾に訊ねる。
「一階の‥‥キッチンの床から地下へ行ける。分かったならさっさと行け」
 その夾の言葉に皆は頷き、部屋を後にした。

●地下にいる幽霊
 夾の言われたとおり、キッチンには地下への入口があった。そこには事件で行方不明になっていた若者達がロープで縛られ、転がされていた。
「皆を早く安全な場所へ!!」
 直親の指示で女性三人は若者を連れて、屋敷の外へ出ていった。
 ‥‥なにかいる。
 直感的に圭一郎は感じていた。どうやら直親も感じているらしい。
 そこに現れたのは、一人の少年。まだあどけなさの残る愛らしい少年の幽霊だった。
『僕の日記‥‥日記を取り返して、取り返して、取り返して取り返し‥‥』
 何度も何度も同じ事を繰り返す。
「わかったわかったわ。取り返すさかい、安心せいや」
 しかしそんな優しい圭一郎の言葉は届いていないようだ。
「仕方ない‥‥強引だがこの呪符で」
「ちょっと待って!!」
 そこに現れたのは明。どうやら、なかなか来ない二人を心配して戻ってきたようだ。
「私に、任せてくれませんか?」
 そう言って明は前に出る。そして‥‥。
『あなたの大切な日記は私たちが必ず取り返すわ。だから、安心して』
 明の唇は動いていない。その場にいる者たち、全ての頭の中に明の声が響いた。
 少年の幽霊はその言葉にやっと笑みを浮かべ、すうっと消えていった。
「明‥‥君は一体‥‥?」
「さ、上で皆が待っているわ」
 いつもと変わらぬ笑みで、明は二人を促すのであった。

●そして解決へ
 その後、地下にいる捕らわれた者達全てを救い出した明達は、すぐさま屋敷の外へと脱出した。暗くてよく分からなかったが、どうやら、男は青い部屋だけでなく、地下や他の部屋の床など、見えないところに数人倒れていたらしい。その後の警察の調べで分かったことだった。
「結局、暴走族のたまり場になっていたみたいね」
 青い部屋の報道がされた新聞を見ながら、夏生はそう告げた。
「いや、それだけとは言い切れないが?」
「俺ら、幽霊見てしまったんや、マジに」
「そ、そんな‥‥何で言ってくれなかったの? 私も見たかったのに!!」
 直親と圭一郎の声に百合子は声を張り上げた。
「どちらにしても、一件落着。それでいいじゃないですか?」
 そんな明の声に。
「よくない、よくないわよ! こうなったらもう一度行くわ! それから、抜け駆けした二人。もちろん、一緒に来てくれるわよね?」
 百合子は直親と圭一郎の腕をしっかりと掴み、にっこりと笑みを浮かべたのであった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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  【 PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

   紫月・夾 / 男 / 24  / これでも大学生
滝沢・百合子/ 女 / 17  / 高校生
  藤村・圭一郎/ 男 / 27  / 占い師
  久我・直親 / 男 / 27  / 陰陽師
  榊杜・夏生 / 女 / 16  / 高校生
  桐谷・虎助 / 男 / 152 / 桐谷さん家のペット

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■         ライター通信          ■
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 初めまして。ライターの相原きさ(あいばら・−)です。今回は依頼を受けて下さりありがとうございました☆ 今回の物語はいかがだったでしょうか? 楽しんでいただけたでしょうか? 皆さん、しっかりと対策等して下さったお陰で大成功を納めることが出来ました☆ 他にもなにやら、いわくつきな部分もありますが‥‥それはまた別の機会に。
 もし、この物語を気に入って下さったのなら、ぜひ、ファンレターにて感想を送って下さると嬉しいです。
 圭一郎さんは今回で明の意外な能力を知ってしまいました。だからといってどうなるということはないのですが‥‥次回参加の際には明のことをどう思っているのかプレイング等で教えて下さると嬉しいです。
 それでは、今日はこの辺で。またお会いできるのを楽しみに待っていますね☆