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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


憎しみの泉

------<オープニング>------------------------------------------------------------

 3年前。午前2時。東京都狛江市。山吹公園。
 俄かに怪しくなって来た空模様が夜の闇を更に強くする。
 閃光が夜空を切り裂き、雷鳴が辺りに轟いて、その青白い光が男女の影を木々の中に映し出
した。
「いやあ‥‥‥‥‥‥信じていたのに‥‥‥」
 無言のまま、男は女の首を締め続ける。やがて、力を失った女の体が地面に墜ちた。
「クソ女、手間掛けさせやがって」
 女の体に唾を吐き捨てると、バックの中から財布を取り出し中から金を抜き取った。
「ちっ、最初から出すもん出せば死ぬ事も無かったのにな」
 物言わぬ骸の苦しげに固まった表情の上を、降り頻る雨がまるで涙のように流れ続けていた。

 3年後。2001年10月10日。同公園。
 かつて殺人事件があったこの公園の森の中には、1ヶ月前に泉が作られていた。3m位の丸
い泉で、中央に女神像が配されている。
 真新しいコンクリートの泉の縁に少年が腰を掛ける。
 緑色の柔らかそうな巻髪、翡翠色の瞳。透き通る白の肌。人懐っこそうな笑みで月の浮かぶ
水面を見つめていた。
「くすくす。口惜しそうだね、お姉さん。そりゃ口惜しいよね。信じていたのにそんな形で裏
切られて、さ」
 語りかけるようにそう言うと、少年は首に掛けていたティアドロップのエメラルドのペンダ
ントを泉に投げ入れた。「ん‥‥‥願いは叶えてあげたから。晴らせばいいよ、憎しみを」

 2002年1月24日。白王社月刊アトラス編集部。
 編集長の碇麗香は山吹公園の写真を腕を組んで見つめていた。
 ここ4ヶ月で8人の死者がここ山吹公園で出ている。
 単純な殺人事件なら警察の領域であるが、死因に事件性が見られないと事故として処理され
ていたのだ。
「被害者は20代の髪を金色に染めた長髪の男性。身長180程度と共通してる、か」
 怪奇性たっぷりのこの事件は記事としていけるかもしれない。
「三下、取材チーム組んで! 山吹公園の事件、来月特集行くわよ」

------<里見史郎の場合>--------------------------------------------------------
2002年1月24日 A.M.8:02 東京都狛江市山吹公園。
 連続する事故死に不信感を抱いた里見史郎は、その現場に来ていた。人が8人も死んだとは
思えぬほど静かな場所。
 その前で一人、花を手向けて祈る少女。どうも高校生のように見える。
「すみませんが‥‥‥どなたかここでお亡くなりで?」
 いきなり後ろから話し掛けられ、少々戸惑いの表情を浮かべつつも、少女はぎこちない微笑
を史郎に返す。
「はい。ここで姉が‥‥‥」
「お姉さんですか?」
 はっとした表情で少女は史郎から顔をそらした。
「すみません、これから学校なんで」
 そう言ってそそくさと少女は走っていく。何か‥‥‥知っているのかな?

同日。P.M.2:21 私立南楠学園前。
 下校していく学生達を喫茶店『ぴろしき』から見つめる男が一人。そして、一人の少女の姿
を認めると、男は金を払って店を出て行く。
「すいません、ちょっとお話いいですか?」
「‥‥‥ストーカー?」
 少々苦笑して、少女は男を見つめる。少女は朝、公園にいた娘。そして男は史郎であった。
 ストーカー呼ばわりされて少々引くが、まあ待ち伏せしてたんだから言われても仕方ない部
分はある。少々引け目を感じつつもいきなり話題を切り出すことにした。
「お姉さんの事を聞きたいんだ。もしかすると‥‥‥」
「姉の事について、ですか。その為にわざわざ? 探偵さんかなんかですか?」
 そう言われて、退魔師と答える訳にも行かず‥‥‥。
「まあ、似たようなもんだよ。寒い中、突っ立って話聞くのもアレなんで、良かったらその辺
の喫茶店で‥‥‥」
「あたし、おなか空いたな。近くにラーメン屋あるんだけど‥‥‥」
 まあ、要するにおごれって事らしい。
「おごるから、話聞かせてくれるかい?」
「うん。分かった。おにーさん、名前は?」
 史郎が名前を名乗ると少女は先に歩き始めた。
「なーんかナンパでもされたみたいね、傍からも見たら。ま、いちおあたしも名乗っとく。
星川麻里。よろしく」
 朝の様子と全く違うような気がして少々戸惑うが、少女の歩く先には一軒の古びたラーメン
屋があった。そして、その暖簾を彼女の後について潜る。
「いらっしゃい」
 いかにも気難しげな親父が一人でやっているこじんまりした店で、学校帰りの高校生達がず
るずるとやっている。
「親父さーん、いつもの」
「あいよ‥‥‥‥‥‥あんたは何にするんだい?」
「同じヤツで」
 向かい合わせの二人掛けの席に座る。
「さて‥‥‥。聞いていいかい?」
「食べてからにしようよ。おなか空いたしさ」
 テーブルに両肘をのっけて頬杖をつくと、麻里はじいっとこちらの方を見つめている。取り
あえずどんな人物か観察されているのだろう。
「なんか顔についてるかい?」
「それなりに整ってるよね、おにーさんの顔。もしかして、姉の事って新手のナンパだったり
しないよね?」
 思わず苦笑してしまう史郎。待ち伏せして口説いてたんじゃホントにストーカーだよ。
「はい、ねずみら〜めん2つ」
 ラーメンが来たのであるが、ねずみ? ねずみって‥‥‥。
 と、言ったものの‥‥‥目の前のラーメンは別に普通のラーメンに見える。
 チャーシューがねずみ? いや、豚肉だな。これは‥‥‥。
 目の前の麻里はおいしそうにちゅるちゅると食べている。その時、ふと気が付いた。
 顔が痛い。
 目が痛い。
 なんだぁ!?
 おそるおそる、一口食べる。うんうまいな‥‥‥。
 ‥‥‥。
 辛いなんてもんじゃない。口の中が痛い!
「ね、ねね、ねずみって!?」
「プリッキィヌゥ。鼠の糞って名前汚いけど、タイの青唐辛子の名前。あたし辛いの平気なの
よねん。おにーさん、お話は全部食べた後ね」
 してやったり、の表情の麻里。話を聞くには全部食えって事らしい。はあ‥‥‥。

 ‥‥‥10分後。

 無理やり食べました。食べましたよ‥‥‥ううう。
「は‥‥‥話聞かせて貰える?」
「ふぅ。どうやら、変な目的じゃないみたいね。ホントに全部食べるとは思わなかったし」
 試されていたのか、恐れ入ったな。
 水を全部飲み干して、目の前の少女の顔を見つめる。先程までの悪戯っぽい笑顔から一転し
て真剣な表情。
「お姉ちゃんの事はホントはあんま、話したくないんだけど。おにーさん‥‥‥何が目的でお
姉ちゃんの事調べようとしてるの?」
 目的か。予測であって事実では無い物しか持っていない現在、どう説明していいものか。
「あそこでたくさん人が死んでいるんだけど‥‥‥お姉さんだけ、一連の死者の条件に合わな
い気がするんだ。だからどうしてなのかな、って」
「ふぅん‥‥‥そっか。で、それはどうして調べているの?」
 どうして、か。
「言って信じてもらえるか分からないけど‥‥‥僕は退魔師って言う仕事をしてる。それでそ
の中には浮かばれない霊を成仏させると言うのも仕事のうちなんだ」
 少しの間、目を瞑って考え込む麻里。そして、目を開いてこちらを見ると大きな溜息をつい
て首を振った。
「‥‥‥うさんくさーっ」
 信じてもらえなかったか。しかし、やはり世間の評価と言うのは冷たいようだ。
 少しそのがっかりしたのが表情に出たのか、じいっと表情を覗き込むように麻里が様子を窺っている。
「まあ。あたしも信じてあげるから。今度はあたしの話を信じて」
 急に小声になった麻里の声を聞き逃すまいと体を前に乗り出した。
「お姉ちゃん‥‥‥殺されたの。付き合ってた恋人に」
「殺された? 犯人は捕まったのかい?」
 麻里の両手がぎゅっと握られ、奥歯をぐぐっと噛み締める麻里。
 そして、搾り出すような声がその口から発せられる。
「捕まらなかった‥‥‥って言うか、警察に握り潰されたの。あの当時の和泉署署長の息子が
お姉ちゃんを殺したんだもん。だから、ろくに調べもしないで通り魔の仕業だって事になって」
 そこまで話した時、目の前から異様な重圧を感じて麻里は言葉を止める。
「‥‥‥おにーさん?」
 静かで優しげな風貌の史郎の瞳が、まるで終わりの無い深淵を見るかのような底知れぬ威圧
を放っていた。
 思わず、麻里は息を飲んでしまう。
「許せないな‥‥‥その男。麻里ちゃん、その男がどこにいるか知らないかい?」
「うちに帰ったら、お姉ちゃんの手帳があるから‥‥‥昔の住所なら分かると思います」
 思わず、敬語になってしまう麻里。
「良かったら、その手帳見せてもらえないかい?」
 史郎の言葉に何かを考え込んでいたが、突然麻里はぺこりと頭を下げた。
「見てあげてください‥‥‥お姉ちゃんのこと、宜しくお願いします」

同日。 P.M.3:17 和泉多摩川駅前
 一度麻里と共にうちに行って手帳を調べた結果、この辺りにその男の家がある事が分かった
のであるが、はてさてそれがどこなのかは具体的には書いていないようだ。
 住所が控えてあればすぐにでも分かるのであるが。
「もしかしたら、電話帳調べたら具体的に分かるんじゃない? 大体の住所と名前は判ってる
んだから」
 駅、と言う事で公衆電話はすぐに見つかった。そして同時に電話帳も。
 狛江市和泉本町のな‥‥‥内藤‥‥‥内藤敦。
「Bingo!」
 思わず電話帳を指差す麻里。そして電話帳を静かに見下ろす史郎。
 見つかったか‥‥‥。
「麻里ちゃん、ここからは俺一人で行く。相手は人を殺す事を何とも思わないヤツだと思う。
そんな危ないヤツのいる所にきみを連れて行けない」
 当然嫌だって言うだろう。一緒に行くと言う、そう思っていた史郎の目の前で麻里はぺこり
と頭を下げた。
「‥‥‥信じるって言ったから。おにーさんの事、信じるから。分かったから‥‥‥だから、
絶対に‥‥‥」
 真剣な瞳で見つめる麻里の頭をくしゃっと撫でると、視線を彼女の高さに合わせる。
「約束する。必ず法の裁きをあの男に受けさせるよ」
 そう言って微笑を投げかけて、シャールーム和泉本町302号室に向かう史郎。在宅してれ
ばいいけどな。
 入り口に集合ポストがあった。確かに302号室には内藤敦と書かれている。
 確かに、まだ住んではいるようだ。よし、行こう!
 階段を上がり、ドアの前に立つ。そして呼鈴を鳴らした。
 ‥‥‥居るのか、居ないのか。
 緊張感が史郎を包む。もし居なかったら、暫くどこかで待たねばならないな。そんな事を考
えていると、ギギと言う微かな音ともにドアが開いた。
「あんた、誰?」
 そこに立っていたのは180cm強はあろうと言う大柄で筋肉質で金髪ロン毛な青年であっ
た。この男が、内藤敦なのか。
「星川澪と言う女性を知っていますね。4年前の山吹公園であなたが絞め殺した」
 いきなり言い放たれたその言葉に、明らかに動揺する内藤敦。
 有無を言わせずドアを閉めようとする所に、史郎は一枚の呪符を投げ入れる。そして、それ
が部屋の中に吸い込まれるのと同時に、大きな音を立ててドアがその口を閉じた。
 溜息を一つ吐いてドアノブを引くが、鍵をかけたのかドアはピクリとも動かない。
「‥‥‥盟約に基づき、我の敵を討ち果たせっ。乾闥婆王雷霆符!!」
 遠くに聞こえる雷の音。そして、天上に輝く稲妻の光。同時に鈍い破裂音を微かに響かせて、内側よりドアがぶち開けられた。稲妻と音楽の守護神乾闥婆王の御力により、人の耳には聞こえぬ音の固まりが部屋の中を走って、内藤敦の鼓膜を強く打ったのだ。
 部屋の中に足を踏み入れると、玄関にに尻を向けてうつ伏せに倒れている内藤敦の姿があっ
た。情けないその姿に思わず史郎の口から苦笑が漏れる。
「さて、後は仕上げだな。自白するとも思えないから‥‥‥」
 尻に貼るのはあまりにも情けないので背中にぺたりと傀儡符を貼り付けると、何事か耳元に
囁いて、ぽんと背中を叩く
 すると、先程までピクリとも動かなかった内藤敦の体がビクンと跳ねる様に立ち上がる。
「よし、行こうか」
 内藤敦を伴って鍵の壊れたドアを潜る。取りあえず麻里の所に戻るか‥‥‥。
 そんな事を思いつつ階段を下りると、そこまで麻里が来ていた。伴ってきた内藤敦のことを
じいっと睨み付けている。
「そんなに睨み付けても、今こいつには意識が無いから」
「いいの、憎いから」
 意識がないと聞いて、ぐーでぼこぼこと殴り続ける麻里。姉が殺された恨みはそんな事では
晴れなかろうが、それでも何かせずにはいられないのだろう。
 何か切ない気分でそれを見つめる史郎。涙が浮かぶ瞳がたまらなく物悲しくて。
「もういい。警察行こっか、おにーさん。あ、そうだ。和泉警察署以外のところがいいよ。ま
た握り潰されちゃたまんないからさ」
 頷いてそれに答えると、二人を伴って歩き出す‥‥‥が。
 来た時あったはずの小道が無くなっているのに気付く。
 そんな馬鹿な話は無い。直前の事を忘れるほど呆けた頭になったつもりも無い。
 ‥‥‥空間の歪み、か。術者が中で戦っているな。
「ここに道、無かった? それに何か‥‥‥変な気持ち。凄くなんか、嫌だよ‥‥‥」
 麻里が受けているプレッシャーは恐らく、中の術者の殺気だろう。関わらずに行ったほうが
いいような気がするが、中に行かねばならぬ気もする。
 結局、麻里に呪符を1枚渡して中に行く事がした。
「駅で待ってて! 何かあったらその呪符に『律命召喚!』と唱えるんだ、いいね!」
 布袋の中から横笛を取り出すと、
 還城楽の音頭をとって4拍の拍節の音色を奏で始めた。その音色は天から力が降り注ぐよう
な音の質感を思わせる物で、結界の壁を越えようとする史郎の体を光が包んでいるようだった。
 そして、ようやくそこを乗り切ると、麻里がうちから持って出てきた写真の女性のような風
貌の水の固まりを守る男と、鋼糸を振るう術者の姿が目に飛び込んでくる。
 守っているその男は特に何らかの術を使う者では無いようだ。そして何より、麻里の姉に似
ている者を守っている。状況に迷っている暇は無い!
「盟約に依りて命ずっ。弾けよっっ!」
 呪符が空気を爆裂させて吹き飛ばし、迫り来る鋼糸から男を引き離す。
「その女性、星川麻里さんのお姉さんではないですか?」
『麻里‥‥‥麻里の知り合いなのっ!?』
 思わず振り向く女。
 鋼糸使いが殺気をぎらりとちらつかせるが、史郎の牽制により動く事は無い。
 吹っ飛ばされて苦しんでいた男がゆっくりと体を起こして、叫ぶ。
「お願いっ! もう‥‥‥やめてよ。見てくれれば‥‥‥見届けてくれればいいじゃないっ。
もし、あの人が‥‥‥殺そうとしたならっ、その時引導を渡せばいいじゃない。約束したのよ
‥‥‥絶対、殺さないって!」
 相も変わらず表情一つ変える事無く鋼糸使いは男を見つめていたが、男から視線を女に移し
た。
「女。その男に会って、何がしたいんだ? 恨みつらみで男を殺してきたあんただ。殺す以外
に、選択肢はあるのか?」
『一発ぶん殴ってから‥‥‥‥‥‥‥‥‥どうしよう』
 殴る以外は考えていなかったのか、真面目に悩んでいるようだ。
「考え中の所、誠に申し訳ないんだけど。その男って言うのは‥‥‥来い!」
 あの水の人物が麻里の姉である事が間違いは無いようであるから、その男って言うのは内藤
敦に間違いないだろう。
『敦‥‥‥』
「どうする? 俺がこのまま警察に突き出して自白させる事も出来るけど」
『私が手を下したいけど‥‥‥だって、それじゃそこの人が納得してくれないでしょう。あな
た達から見えないところに敦を連れて行くのは』
「だったら、交番に行かせようか?」
 さっき考えた事を言ってみるが、鋼糸使いが何かを思いついたらしい。
 
 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

『開放してくださるかしら』
 話し合いの後、敦と対峙する澪。取りあえずこの時初めて全員自己紹介してお互いの名前を
知ったのだった。
 史郎が敦の背中に張り付いていた呪符をなにやら呪文を唱えつつ、手を掛けた。
「じゃあ行くよ‥‥‥‥‥‥解っっ!」
 微かな音を立てて呪符は史郎の手によって剥ぎ取られ、同時に敦の黒目が降りてきた。
「い‥‥‥いててて。クソっ、いったいなんなんだあっ!?  あ‥‥‥あああ、ああ!??
澪っ!? な、なんでっ!?」
『クソ男っっ!!』
 渾身の力でぶん殴ったのか顎にヒットした拳を振りぬくと、敦の顔が不自然に左右に震えて
再び黒目がぐるっと上がって行った。

同日 P.M.4:38 東京都千代田区霞が関2丁目 警視庁本部ビル前
 一人の男がツカツカと警視庁本部ビルへ向かって歩いていた。そして、門の前で立ち止まる
と、大きく息を吸いこむ。
「私、内藤敦はっ‥‥‥4年前、山吹公園に於いてっ、星川澪と言う女性の首を締めて殺しま
したぁ!!」
 周りの警官もあっけに取られて聞いていたが、そういい終わった瞬間敦が倒れたのを見て、
慌てて警視庁内へと運んでいく。
 そして、遠くからその様子を見守っていた充、夾、そして史郎と星川澪の妹、麻里の4人の
前に澪が戻ってくる。
『これで思いは晴れました。私は人を殺したから天国にはいけないけれど、とりあえず現世に
固執する理由も無くなったから。ありがとう、みんな。そして頑張って生きてね、麻里。じゃ
あ‥‥‥‥‥‥さようなら』

------<エピローグ>-------------------------------------------------------------
 とめどなく流れる涙を拭おうともせず、麻里は姉の姿をじっと見つめていた。
 そして、全部が消え去った時‥‥‥‥‥‥。
 天を仰いで、大きく息を吐いた。
「あたし、絶対‥‥‥頑張って生きるから。後悔しない生き方するから。遠くから見ててね、
お姉ちゃん」
 言葉を掛けず。そしてただ隣にいて麻里の姿を見つめる史郎。
 女って強いな、なんか。
 その様子を見つめていた充がその場から去ろうとすると、麻里は彼に駆け寄っていく。
「あ、あの‥‥‥ありがとうございました!!」
「僕は僕でやりたくてやったんだから、別にお礼はいらないよ。まあ、でも良かったよね。じゃ
あ、バイ☆」
 歩き去って行く充の姿を暫く麻里は見つめていたが、くるりと史郎の方に歩き寄ってくる。
「さ、おにーさん! 何時までもこんなトコいてもしゃーないから、カラオケでもいこっか!」
 目が赤いけれど、満面の笑顔を浮かべる麻里。
 多分、間違ってなかったんだな。俺のしたことって。殺された人には申し訳無いけど、この
結果で多分‥‥‥。
「子供はおうち帰って勉強でもしなさい。‥‥‥どうでもいいんだけど、俺にお礼は無いのか
い?」
 史郎がそう言うと、なんと麻里がぐーで下腹部にぱんち!
「いって‥‥‥なんなんだよっ!」
「子供じゃないっつーの! もう!!」
 そう言って、腹を押さえる史郎の顔を捕まえて、頬に唇を寄せる麻里。
「あはっ。お礼はちゃんとしたからねっ。バイバーイ!」
 ‥‥‥最近の高校生って分からないな。
 駆けて行く麻里の後ろ姿を見送りながら、史郎はそんな事を考えていた。

                                   【終幕】


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        ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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          【 PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】
          里見 史郎    男   21   大学生(退魔師)
          紫月 夾     男   24   暗殺者(鋼糸使い)
          室田 充     男   21   サラリーマン
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        ■         ライター通信          ■
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    初めまして、シナリオお買い上げありがとうございます。篠田足往(しのだ あ
   ゆき)と申します。。
    さて、探しに行って犯人が見つかったので、このような形になりましたがいかが
   でしたでしょうか。相手が術者とかではないので、あっさりと勝負がついてしまい
  ましたけれど。
   もしよろしければ、クリエーターズルームからご意見ご感想などいただけましたら、
  今後の参考にさせていただきます。
   今回はシナリオお買い上げありがとうございました。またの御指名を心よりお待ち
  申し上げております。それでは。