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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


幽霊屋敷を探検だ☆
------<オープニング>--------------------------------------

『幽霊屋敷を探索に行きませんか? 場所は群馬県の赤城山山中で
す。
 興味をもたれた方、●月×日の夜11時、大沼湖畔で待ってます。
 赤いセロハンをつけた懐中電灯が目印です。
 除霊や浄霊が目的ではありません。本当にいるかわからないです
し。それでもいい、という方、覗きに来てみて下さい。
 沢山の人の参加、お待ちしています。


              桐波亜希子(きりなみ・あきこ)』

「この時期に幽霊屋敷か……。最近は季節を問わなくなったもんね」
 書き込みを見ながら瀬名雫はデスクに頬杖をついた。
 昔は怪談話は夏、と決まっていたものだが、最近は一年中そうい
う話で溢れていた。
「面白そうだけど、群馬県……遠いなぁ。赤城山まで足がないし。
誰か行って来て、教えてくれないかな」
 電車で片道1時間以上。新幹線を使えば早いが、夜の11時に赤
城山まで行くとなると宿の確保が必要。しかも門限がないところが。
 雫はその書き込みの下にレスをつける。

『幽霊屋敷探検に行かれる方、終わったら教えて下さい。
 楽しみに待ってます。

                          瀬名雫』
「これでよし。……何人くらい行くのかなぁ」

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●エルトゥール・茉莉菜(−・まりな)
「面白そうですわね……」
 茉莉菜は掲示板を見ながら呟いた。
 格好いつもの占い師ではなく、長い髪を後ろに束ね、比較的ラフ
な格好をしていた。その為、一見では占い師の茉莉菜だとわかる者
はいないだろう。
「夏生……って確か、前の事件で一緒だった夏生ちゃんかしら?
同乗者募集……。一緒に誘ってあげましょうかしら」
 茉莉菜の頭の中にはある考えが浮かんでいた。
 それは自分を風俗嬢と勘違いして「落とそう」としているオヤジ
……もとい、おじさま。
 確か釣りが趣味だと言っていた。赤城山の大沼湖と言えばワカサ
ギ釣り。
「大沼湖でワカサギ釣りをしてみたいわ☆」と誘えば、喜んで連れ
ていってくれるはず。それでそのまま幽霊屋敷に放り込んで、お灸
を据えてあげようか、と。
 名刺を貰ってあるため、いざとなったら「会社にばらす」と言え
ば滅多なことは出来ないはず。
「そうと決まればお休みを頂いて、シロちゃん(飼い猫)をペット
ホテルに預けて。宿は大沼湖畔の国民宿舎がいいですわね。ムード
もなにもあったもんじゃありませんし」
 茉莉菜の濡れたような漆黒の瞳が、悪戯っ子のように輝く。
 そして形のいい紅い唇からは笑みがこぼれた。
「シロちゃんへのお土産も忘れないようにしないと、ですわね♪」

●大沼
「茉莉菜さん、ありがとうでした☆」
「いいえ、気にしなくていいのよ」
 大沼湖畔について降り立ち、夏生は固くなった腰を伸ばしながら
茉莉菜に礼を言う。
 しかしここまで連れてきてくれたのは茉莉菜ではなく、パトロン
のスケベおやじ……おじさまだったのだが。
 茉莉菜はしれっと返事をしてにっこり笑う。
「お疲れさまですわ。わたくし、お土産買いたいんですの。よろし
いですかしら?」
「……ああ、どうぞ」
 うーん、と伸びをしていた中年男性が振り返る。名前は形中(か
たなか)と言った。
 好色そうな顔に笑みを浮かべ、茉莉菜と夏生を交互に見る。
 おじさんの頭の中では「あんなことや・こんなこと」が展開され
ているのだろうが、現実はそこまで甘くない。
 狙っていた女性に、可愛い女子高生のおまけつき。こんな夢のよ
うな状況があってもいいのだろうか。しかも1泊の旅行と来ている。
 淡い夢を抱くな、と言う方が無理だろうが。
「私の日頃の行いがいいからな……」
 という呟きはさておき。
 茉莉菜と夏生は「わー、きゃー」言いながら土産屋を回る。
 土産屋の人達もここぞとばかりに呼び込みはいり、お茶をすすめ、
焼きたてのお饅頭をすすめてきた。
「これビードロって言うんでしょ?」
 ガラス細工を扱っているお店で夏生はビードロを見つけ、持ち上
げる。透き通っているガラスは、少し力を入れただけで割れてしま
いそうだった。
「欲しかったら買ってあげるよ?」
「え? 本当ですかー? やったぁ☆」
 うまい話には裏がある。が、夏生はその点自分は巻き込まれるは
ずがないと自認していた。
「楽しんで下さいね」
 にっこり笑った茉莉菜の笑顔の方に、裏があったのかもしれない。

●PM11時
「結構来てくれたんですね。嬉しいです」
 赤いセロハンを懐中電灯に貼り付け、その色で辺りを照らしてい
た亜希子の元に、全員が集まっていた。
「うわっ。女の子ばっかりやな……。まさに天国っちゅー感じで。
……おっさんは余分やけど、まぁOUT OF 眼中ってやつやな」
 北斗は嬉しそうに呟いて笑う。
 遼も別の意味ではあるが、笑みを浮かべていた。
「なんか美味しそうな子達ばかりね……くすっ」
 唇よりももっと紅い舌が下唇をペロッとなめる。
 不満そうなのは茉莉菜にパトロンかわりに連れてこられた形中だ
け。折角両手に花で宿屋に行ったのに、こんな時間に外へと連れ出
され、しかも幽霊屋敷の探検だと言う。
 しかし茉莉菜に「保護者役をお願い」と頼まれて断れなかったの
も事実。困ったおやじである。
 亜希子は黒髪を背中中程まで伸ばした、美少女の部類に入る顔立
ちをしていた。
「俺は鈴宮北斗。高校三年生や。今日の合コン・・・もとい、幽霊
屋敷の探検ちゅうことで、よろしゅう頼むわ」
 北斗を筆頭に自己紹介を始める。
 今回参加したのは榊杜夏生、エルトゥール・茉莉菜、秋津遼、鈴
宮北斗におまけの形中。
「それにしても桐波さんってすごいですね」
「?」
 夏生に言われて亜希子はきょとんとした顔になる。
「だって女の人なのに、幽霊屋敷を探検しに行こう、なんて」
「でも、ここに集まってくれたの、形中さんっておじさんと北斗く
ん抜かして女の人だよ?」
 同じ歳くらいな為か、亜希子の口調が崩れる。
「そっかぁ。そう言われればそうだよね。怪談話とか好きなのって
女の子に多いし。あたしも実際ミステリ研だしねー」
 亜希子の口調に、夏生の言葉も崩れた。くすくすと笑い合うと、
ずっと前から知っていた人みたいな気になる。
「それでどこにあるん、その幽霊屋敷?」
「あ、ごめんなさいね。少し歩くんだけど、大丈夫かしら?」
 さしたのは小沼の方へと向かう道の途中の森林の中だった。
「構わないわよ。さっさと行きましょう」
 北斗の言葉に答えた亜希子に、遼は先をうながす。
「それにしてもあなた……楽しそうね」
 意味ありげな笑みを浮かべる遼に、亜希子は困ったような顔にな
る。
「あれ? ばれてます?」
「ま、同じ様なものだからね」
「そうですね。……命の危険はありませんから」
 黙ってて貰えます? という亜希子の潜めた声に、遼は楽しそう
に頷いた。
「何話ししているんですの?」
「なんでもないです。それじゃ行きましょうか」
 ふるふる、と茉莉菜の問いかけに頭を振って、亜希子は先頭を歩
き始めた。
 歩く列の先を、赤い光がちらちらと照らす。
 どこをどう歩いたのか、土地に明るくない面々はわからなかった。
 青木ヶ原の樹海に迷い込んでしまったかのような感覚に襲われる。
 ……実際に行ったことはないが。
 どのくらい歩いたろうか。かなり歩いた気もするし、ほとんど歩
いていないような気もした。
「あそこです」
 亜希子が指さした先には、いかにも、という洋館がたたずんでい
た。
「うわ☆ いかにも出そう、って感じね」
 嬉しそうに夏生が言う。ミステリ研の血が騒ぐのか。
「足元気を付けて下さいね」
 亜希子に言われて、足元に気を付けながら先をすすめると、玄関
が見えてきた。
「これってあいとるんか?」
 北斗がぐいっと押すと、扉は難なく開かれた。
「おおっと」
 力を入れすぎていた北斗は内側に転がりそうになったが、持ち前
の運動神経で避けることが出来た。
「結構明るいですわね……」
 茉莉菜が中を覗くと、いくつかある窓から光がさしているかのよ
うに、仄かな灯りが建物内部を照らしていた。
「雰囲気は悪くないわね」
 亜希子がスタスタと入って行ったのを見て、遼も入りながら呟く。
 この場で腰が引けているのはオヤジひとり。
「ほ、本当にこの中に入るのかね?」
「あら、もしでしたら外でお待ちいただいても結構ですわよ?」
 天使の微笑みととるのか、悪魔の微笑みととるか、それはその人
次第だが。
「いや、私も一緒に行くよ。ほ、保護者としてな」
 精一杯の強がりの言葉に、夏生と茉莉菜は顔を見合わせて笑った。
「なんや面白そうやな、お二人さん?」
「あら、お仲間に入ります?」
「入れてくるんやったら、嬉しいな」
「あのね……」
 3人はこそこそナイショ話をするように身を寄せ合って話をする。
 そこで北斗はあのスケベじじいをこの幽霊屋敷ではめてやる、と
いう計画を知る。
「おっしゃ、一枚のったるわ」
「やった☆」
 ガッツポーズを決め、バンダナを巻いた北斗に、夏生が笑う。
「さて、どこから見ていくのかしら?」
「そうですね、セオリーは手前のドアからですか?」
 ぐるりと遼は中を見回して亜希子に尋ねる。
 それに亜希子は手前のドアを指さした。
「あ、だったらあたしが開ける♪」
「大丈夫かいな?」
「うん。全然大丈夫☆ 多分他の人が開けるよりあたしの方が安全
だよ」
 自信タップリに夏生は言い、扉を開けた。
「結構広い……」
 中に入ってみると、10畳くらいの部屋が広がっていた。応接間
のような作りになっている。
 夏生の後に続いて全員が中に入る。
「うわっ!!」
 形中の頬を何かがかすめて飛んでいく。それに驚いて後ろに飛び
す去り、足元に転がっていた何かに躓いて転んだ。
「ぎゃあぁ!?」
 何に躓いたんだろう? と見た形中の瞳に、転がった生首が飛び
込んできた。
「あらあら、形中さん。どうなさったんですの?」
「あ、こ、ここに今……あれ?」
 形中が指さした場所には、何も転がってはいなかった。
「皆さんよりはしゃいでますわね」
「きぃつけなあかんで、おっさん」
 ぐいっと北斗が手を引っ張って起こす。
 遼は怪しげな人を装って、斜め後ろから楽しむように眺めている。
「他の部屋も見て回るか?」
 くるっと北斗が振り返ると、廊下を洋式甲冑が走り抜けて行った。
「……けったいな事もあるもんやな……」
 内心びびりつつ、しかし表面はかわった様子もなく北斗は呟いた。
「うふふふ……」
「誰?」
 廊下に出た夏生は、その声を聞いて見回した。が、笑い声の主は
見あたらなかった。
「歓迎してくれているのかしら。普通人が入ってくるとナリを潜め
るものなんですけどね」
 全然怖がる風もなく、茉莉菜はにこにこと呟く。形中に一泡吹か
せる事が出来て嬉しいのかも知れない。
「か、歓迎……」
 反対に形中は冷や汗を浮かべている。
「うふふふ……」
 もう一度笑い声が聞こえ、白い着物姿の女性が闇に浮かんで消え
た。
「他の部屋にも行ってみる?」
「そうですわね……。確かこういう所ですとミイラが出てきたり、
半魚人が出てきたりするんでしたわね?」
「茉莉菜さん、それちゃうと思いますが……」
 北斗が呆れたようにポン、と茉莉菜の肩を叩いた。
「あら、そうですの……残念ですわね」
 口元に手をあてて、さみしそうに呟いた。
 そして次々に夏生が部屋を開けていく。
 そこにはミイラが転がっていたり、生首の標本があったり、とお
化け屋敷さながらの光景が広がっていた。
「さてここは何があるかな♪」
 夏生すっかりお楽しみモード。怖がる様子など一切無い。
 形中以外は同上である。
「わっ!」
 ドアを開けた瞬間、まぶしい光が目に飛び込んでくる。目をつむっ
て恐る恐るあける……。
「フランケン……シュタイン……」
「がー!!」
 腕を振り上げてフランケンシュタインもどきが襲ってくる。
「どいて……」
 ろ、と言いかけた北斗の眼前を、すごいスピードで何かが通り抜
けた。
「がー、じゃないわよ!!」
 夏生必殺の回し蹴りが炸裂。フランケンにクリーンヒットして、
フランケンは昏倒した。
「実体があったのね。おまぬけ」
 肩をすくめて遼は苦笑する。
「あ、えーっと……」
 格好良く女の子を守って……と思っていた北斗は度肝を抜かれて
しまい、唖然と夏生を見た。
「まーったく、人を驚かせるなんて、悪趣味よね」
 体勢を整えて言う夏生。お化けや幽霊というのは本来人が驚くも
のだと思う、という常識的な考えはこの際黙って置いた方が無難だ。
 回し蹴りの餌食になりたくなければ。
 一行は揃ってまた廊下へ。
 そこへ人魂が通り抜けていく。
「ここまで来ると……驚き通り越して、お化け屋敷にいる気分です
わね」
 はぁ、と茉莉菜は深々とため息をついた。
 その後ろで亜希子は苦笑い。
「そろそろ帰る?」
 飽きてきたように夏生が言うと、形中は大きく何度も頷いた。
 心霊現象系に一番なじみのない形中だけが、一番派手に動揺して
いた。
「もう帰るの?」
 亜希子は残念そうに呟く。
「せやな。これだけ一気に幽霊堪能できる、ちゅーのはそうそうな
いわけやけど……、もうご馳走様、ゆう感じやな」
 結局ええとこ見せらへんかったな……とぼやきながら北斗は入り
口の方へと向かう。
「きゃあ!?」
 瞬間、前方を歩いていた夏生と茉莉菜の足元がゆがみ、たわんだ。
「おい!」
 北斗は一気に加速して二人を抱え、跳躍する。
 ジャンプの勢いはそのまま二人を玄関真横まで運んだ。
「……大丈夫か?」
「う、うん……」
「はい……おかげさまで」
「そら良かったわ。女の子守るのは男のつとめやからな」
 最後に決められたぜ、と内心ほくそ笑みながら北斗は微笑んだ。
「なかなか悪趣味ね」
「すみません、全然驚いて貰えなかったもので」
 ため息混じりの遼の言葉に、亜希子はすまなそうな顔になった。
「わ、私はもう帰るよ!!」
 それで立派にびびった形中は、転がるように屋敷を飛び出していっ
た。
「帰り道わかるのかしら……?」
 帰ってこなくても別にいいですけど、と呟きながら、茉莉菜も屋
敷を後にした。
 帰り道はまた亜希子の案内で大沼湖畔まで帰ってきた。
「どうでした?」
「うーん……いまいちだったな。やっぱりもっと奥ゆかしく出てき
てくれないと恐がれないわね」
「そうですわね、寒さもせいもありますしね」
「俺はそれなりだったかな」
「まぁまぁ。なんとか及第点」
 夏生、茉莉菜、北斗、遼の順で感想を述べる。
「そうですか……。今度はもっと勉強してきますね。それじゃ、ま
た遊びに来て下さい☆」
「え?」
 遼以外の3人は目を点にする。
 目の前に立っている亜希子の姿が透け、消えてしまったのだ。
「彼女が幽霊、だった、って落ちかい。ベタやなぁ……」
 口々に文句を言いながら宿へと向かう。
「気に入らなかったらぶち壊してやろうかと思ったけど……、まぁ
いいか。せいぜい頑張ってね」
 謎の笑みを残して遼も消えた。
 他の3人はかなり進んでいたので、その事には気付かなかったが。

●後日−茉莉菜−
 形中を置いて帰ってきた茉莉菜。
 いつものように占いをしていると、目の前を形中が通り過ぎた。
「あら……?」
 疑問符をあげた茉莉菜に気がついた形中は、ぎょっと目を見張り、
脱兎の如く逃げ出した。
「お仕置きが過ぎたかしら……? まぁ、自業自得ですわね」
 くすりと笑い、またタロットめくった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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  【 PC名 / 性別 / 年齢 / 職業 】

  【榊杜・夏生/女/16/高校生】
  【エルトゥール・茉莉菜/女/26/占い師】
  【秋津・遼/女/567/何でも屋】
  【鈴宮・北斗/男/18/高校生】

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■         ライター通信          ■
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 この度は私のシナリオを選んで頂きまして、ありがとうございまし
た。
 再びお逢いできて嬉しいです☆
 今回はギャグって事なので、こんな感じになりました。
 楽しんで頂ければいいのですが……。
 また機会がありましたら、お逢いできる事を楽しみにしています。