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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


狂桜咲

<序>
 煙草をふかす草間の手の中には、一枚の写真があった。そして逆の手には白い手紙がある。
 差出人は、顔も見せないで依頼だけを寄越してくる、鶴来那王(つるぎ・なお)という名の古くからの知人だった。またか、という念を抱きながら開いた封書の中に入っていたのが、今彼が持っている手紙と写真である。
 深く椅子に背を預ける。その際のわずかな振動で、煙草の先に伸びていた灰が机の上に落ちた。けれどもそれに目をやることもせず、草間はただじっと写真を眺めていた。
 そこには、赤い花をつけた一本の木が写されている。見事な幹と枝ぶりからするに、ゆうに樹齢二百年は越えているだろう。
 一瞬、梅の花かと思った。春の便りなんてなかなか風流じゃないかと心を和ませたのも一瞬、それに添えられていた手紙には、やはりというか何というか、奇妙なことが書きつけられていた。
「これが桜、ねえ」
 写真から視線を外し、手紙の方へと視線を動かして草間は小さくつぶやく。
 まだ桜の季節には早い。けれどもその写真の桜は深紅の花を今が盛りとばかりに咲き誇らせているという。
「本当にこれ、桜か? 紅梅じゃないのか?」
 写真をひらひらとひっくり返して裏を見てみたりするが、そんなことをしても何がわかるというわけでもない。
 大きくため息をつくと、草間はたまたまその場にいた者に手紙の内容を棒読みして聞かせてやった。
「この桜の木のある辺りに近々何かの建物が建つらしく、邪魔になる木を撤去しようとしたところ、次々と業者の者たちが腹痛を起こしたり事故を起こしたりして作業がままならなくなった。加えて、この木の周辺では最近、ぼや騒ぎが起きたり大量の水が撒かれていたりと、奇妙なことが起きている。どうだ草間、お前向きのケースだろう? …だとさ」
 ぽい、とおもちゃに飽きた子供のような仕草で机の上に知人からの手紙を放り出すと、草間はほぼ根元まで灰になった煙草を灰皿に押し込んだ。
「なあ、俺の代わりにちょっと調査に行ってきてくれないか。え? 俺か? …俺はいろいろと忙しくて手が回らないのさ」

<桜花封印>
 素直に、綺麗だなと思った。
 さらさらと春まだ遠い冷たい風に乗り、その小さな身を翻弄されるようにして地上へと降りていく幾つもの真紅の花弁を見、久我直親はしばし息を止めるようにしてその光景を眺めていた。
 むやみに人が介在して壊していいような雰囲気ではない。
 その桜の放つ圧倒的な「気」が読めるから、息を殺してしまうのだ。
「……ただならぬもの、だな」
 どこにでもあるのどかな田舎の風景。
 その中に、まるですっぱりと空間を切り分けたかのように存在する、異質な気を纏う真紅の桜。
 その桜の周りには他にもいくつか桜の木があるのだが、そのいずれも真紅の桜に比べれば脆弱で、歳若いものだった。しかも咲いているのは真紅の桜のみ。他の木々はすべて裸の枝を風に晒している。
 明らかに、その真紅の桜のみ異質だった。ある程度の「力」を備えたものがこの場にいれば、きっと自ずとその力を感じ取ることが出来るだろう。
 直親も、そうだった。ビリビリと静電気のような嫌な刺激を、感覚に食らわされている。
「こんな気を放っているんだ、何もないわけがないな」
 緩く頭を振ると、直親は目を閉ざして桜の前で呼吸を整えた。暗くなった視界で意識を集中させ、そしてゆっくりとその黒い双眸を開く。
 その眼差しは、この世ならざるものを見通す力――霊視の力を帯びている。
 幾つもの霊気が混ざったかのような、雑多な気が桜の周りにある。けれども、穢れたような感じはしない。むしろ、この桜を守っているかのような感じだ。
 意識を研ぎ澄まし、さらに深く霊視を行う。
 と、ふわりと長い髪の少女が桜の木の根元辺りから沸き立つように現れた。何か悲しげな眼差しで桜の花の辺りから直親を見下ろしている。纏っている白い着物がその少女を桜よりもさらに清廉に見せる。
 見るに、ごく最近霊になったものらしかった。
 彼女はしばらくじっと直親を見つめた後、小さく唇を動かして短く言葉を紡いだ。
『…ア、ヤ…』
「あや? お前の名前か?」
『――……』
「……何だ? お前はこの桜を守っている者なのか? お前が建設会社の妨害をしているのか?」
 問いかけながらさらに深く霊視に入り、その少女とコンタクトを取ろうとするが、その時ふと何かが意識の端に引っかかり、集中が途切れた。神経質につと眉を寄せてからもう一度霊視に戻ろうとするが、そのたびごとに何かが意識の集中を妨げる。
「……何だ?」
 桜の周りにいる霊たちによるものではない。もっと別の何かだ。
「やはり、この木には何かあるようだな」
 霊視を中断すると、直親は懐から五枚の呪符を取り出し、桜の木を中心にして五角形の形に置いた。そして再び木の正面に戻ってくると、右手を持ち上げた。
「五つの点を持って結界と成す。臨兵闘者皆陣列在前」
 人差し指と中指を揃え、刀に見立てた「刀印」を結び、宙に星型――五芒星を描いた。ぼう、とさっき配置した5枚の呪符が光の線で結ばれ、星型を浮かび上がらせる。
 桜の周りにいた霊たちからは、害意を感じることはできなかった。とすれば、霊視を阻もうとする別の何者かの意思が介在していることになる。
 ならば結界を張って、桜に手出しすることも、桜から霊たちを引き出すこともできないようにしてやればいい。その間に、自分にはまだやるべきことがある。
 形成された結界を見、ふっと吐息をついて手を下ろそうとした直親は、けれども次の瞬間ハッとその手を持ち上げた。
「っ!」
 ピシっ、と一つ、鋭いプラズマが直親の顔めがけて走った。
「…………」
 手で受け止めて、用心深く目を眇めながら顔を上げる。けれどもそれ以上は何も起こらなかった。ただふわりふわりと目の前を赤い花びらが舞い落ちていくだけ。
「俺の結界に反発しているのか?」
 かすかな痺れを帯びた掌を見下ろす。
 しばらく無言のまま桜を見上げ、その懐から一枚の白い紙を取り出す。それを鶴の形に折り、右掌に乗せて左手で刀印を結び、気を含める。すると折鶴のフォルムがふわりと崩れ、二つに割れて二羽の黒い鴉へと転じた。ばさりと漆黒の翼を広げ、差し伸べた直親の腕に舞い降りる。
 直親の「式神」だ。
 これを見張りとしてこの場に残しておけば、何かあった時にすぐに自分にも伝わるはずだ。
 式神を腕から飛ばすと、直親は踵を返して桜に背を向けた。

<実験>
 桜の元から立ち去ろうとした久我直親は、けれどもその時歩いてくる人物がいることに気がついた。すらりと背の高いその女性の方も直親に気づいたらしく、顔を上げてひらりと手を振って小走りに駆け寄ってきた。
「随分と到着が早かったのね」
 何度か他の依頼でも顔をあわせたことがあるその女性――シュライン・エマに、直親は小さく頷いた。
「思い立ったら即行動。これが俺の基本だからな」
「なるほど。それにしても」
 直親の背後にある桜を彼の肩越しに眺め上げ、シュラインは目を細めた。
「見事な桜ね」
「ああ。見事だろう」
 直親も半身桜を振り返る。
「こうも見事だと圧倒されちゃうわね。あまりにも綺麗すぎて怖い感じがするわ」
 いいながら、シュラインは持っていたバッグから水の入ったフィルムケースを取り出した。そして桜を見上げる。
「少し土を調べさせてもらいたいの。あなたに何かをするつもりはないわ。あなたがここにいたいっていうのなら、これから私にも何か協力できるかもしれない」
 よく通る声で桜に向けて語りかけているシュラインを、傍らから訝しげに直親が見やる。
「おい?」
 問いかける直親に視線を移し、シュラインは至極真面目な顔で言った。
「私には霊的なものはなにもわからない。でも、この木が何かを起こしてるっていうのなら黙って調べるのはどうかって思うのよ」
「だから桜に話しかけてるのか?」
「私は建設会社の人たちとは違うって判ってもらっておいたほうが安心でしょ。…で、どう? あんたには桜の声、聞こえるの?」
「この桜に宿っている霊がいるってことは間違いないけどな。声はともかくとして」
「じゃあその霊は私が土に触れても怒らないかしら?」
 ちらりと直親が目を上げて桜を見る。桜に変化はない。そのまま視線をさらに動かし、その隣の木の枝にいる自分の式神たちを見やり、目でシュラインに危害を加えないように命令をする。
「……あぁ、大丈夫だろう。それにここには俺の結界が張っておいたしな。何かあっても強引に押さえ込んでやる」
「ちゃんと桜には一言断っておいた?」
「断らなかったから反撃を受けたのかもしれん」
 大したことはないんだが、と薄く笑いながら赤くなった掌をひらりと振ってみせる。
「それよりも一体何をするつもりなんだ?」
 一瞬心配したようにその掌のほうへと目をやったシュラインは、すぐに手元のフィルムケースへと視線を戻した。
「この水の中に土を溶かして、ペーハー値を調べようかと思って」
「ペーハー値?」
「この桜の花の色の原因、もしかしたら土壌のペーハー値の偏りのせいかもしれないと思って」
 言いながら、桜の根元の辺りにしゃがみこんで土を少しだけ掘って手に取り、フィルムケースの中に入れる。そして蓋を閉めて片手で上下に振りながら空いた手でバッグの中から数枚の紙片を取り出した。
「リトマス紙か。小学校の時の理科の実験で使ったな」
 傍らからその手元を覗き込んだ直親に小さく頷く。
「うまく出るといいんだけど」
 フィルムケースを開けて、リトマス紙の先端をケースの中の水に浸ける。
 反応は――
「微妙に青。アルカリ性ね」
 てきぱきとバッグの中に実験道具をしまいこみながら、シュラインはため息をついた。嫌な予感が当たりそうな気配に、気が重くなる。
「人体って、弱アルカリ性なのよね」
 不意のシュラインのその言葉に、直親が片眉を下げた。
「桜の下には死体が埋まっている、というアレか?」
「の可能性もなきにしもあらず、ということね」
 ぱたりとカバンを閉めると、シュラインは顔を上げた。
「それで、これからどうするの?」
「俺はこの周辺の者へ聞き込みと、あとは建設会社のほうへ顔を出してみようかと思っているが」
「同行してもかまわないかしら?」
「無論だ」

<桜の伝承>
 なんとなくその場にある雰囲気に似つかわしくない二人組みに、けれどもその場ではだれも視線をくれようとはしなかった。
 否、視線を向けようとする人間自体がいなかった。
「まあここでは誰かに話を聞こうってわけじゃないけど」
 シュラインが胸元にぶら下げている淡く色づいたレンズの眼鏡を目許に装備しながらつぶやく。直親はそれとなく周囲を見渡して自分の右眉の辺りを人差し指で撫でた。
「こんなところに何の用なんだ?」
 低い天井に向けて幾つもの本棚が屹立しているそこは、桜の木から数分歩いたところにあった古本屋である。この村自体にそんなに人がいないからなのかなんなのかはわからないが、とにかく客がいない、閑古鳥すらも鳴きそうにない寂れ具合の店だった。
 ただ、商品の量だけは充実していた。開けばすぐに破れて装丁が解けてしまいそうな古いものなどがたっぷりと並んでいる。
 その本の背表紙のタイトルを目でなぞりながら、シュラインが答える。
「毎年あの桜が真紅に咲くのか気になるの。見たところ、寒緋桜でも横浜緋桜でもなさそうだし」
「ああ、古本屋なら郷土についての本もあるかもしれないということか」
「そういうことね。でも」
 一通り郷土史のあたりを眺め終えたシュラインがわずかに頭を振った。直親も手近なところの本を開いてそういう項目がないかどうかを探してみたりするが、見当たらない。
「本が駄目なら、人に聞くしかないな」
「場所変える?」
「いや、そこに打って付けのが一人いる。古い話は年寄りに聞くのが一番だ」
 顎で直親が指し示したのは、店の奥まったところにあるカウンターの中でこっくりこっくりと船を漕いでいる老人だった。静かに歩み寄ると、こんこんと中指の第二関節でカウンター上を叩く。ハッと店主が目を開いた。
「ああ、いらっしゃい。この辺では見かけない人たちだねえ」
 鼻先に乗せた丸眼鏡を指で押し上げながら、好々爺風の店主はにこにこと微笑んだ。直親がもう一度こんこんと軽くカウンターを小突いた。
「爺さん。そこの桜、いつもああなのか?」
「ん? ああなんだ、あの桜を見に来たのかい」
 カウンターの下から使い込まれたパイプを取り出しながら、店主は肩をすくめた。
「あの桜も今年で見納めかもしれんもんなあ。工事が始まるそうじゃから。……しかし、狂い咲きの上にあの花の色じゃ。何か不吉なことが起こらんとええんだが」
「いつもはああじゃないんですか?」
 シュラインの問いに、店主は小さく頷いた。
「いつもは普通に咲いとるよ」
「何かあの桜には言い伝えとか、そういうのはあるのかしら?」
「ああ、あの桜はこの村の守り神みたいなもんじゃからなあ」
「守り神?」
 直親とシュラインの声が重なる。
「そうじゃ。数百年前に、この村で疫病が流行ってな。その時たまたまここを訪れた僧が、あの桜の苗を持ってきて、これを植え奉れば神の怒りは鎮まるだろうと言ったんじゃ」
 パイプに火を入れ、店主は言葉を続ける。
「そこで、当時の村の社を守っていた七海(ななみ)の家の者が桜を指示通りに植え、禊払いの詞でもって桜へ祈りを捧げた。するとたちどころに病は去り、村は救われた」
 そしてその僧は、これより先もこの桜を守り続ければこの地は平安を約束されるだろう。だが蔑ろにすることがあれば、たちどころにこの桜はこの地に災いを呼ぶ。そう七海の者に僧は言い残し、去っていった。桜を守る役目を七海の者に命じて。
 以来、七海の当主は亡くなるとあの桜の根元に土葬されるようになった。土葬があった年には必ず、その肉体から血を吸ったかのように真紅の花を咲かせている。
 そこまで一息に語ると、ゆっくりとパイプをくわえた。そして深く息を吸い込んで煙を吐く。
「とまあ、そういう言い伝えがあるよ、あの桜には」
「……だから土のペーハー値が偏っていたのかしら」
 シュラインが頬に手を当てながらつぶやく。直親が店主を見やった。
「その『七海の者』っていうのは今はどうなってるんだ? 今あの桜が赤いということは、今年になってから誰かあそこに埋められたのか?」
「今年は誰も埋められとらんのじゃが、なぜか赤い花をつけとるの。今の七海の者は、現当主と先代当主の長子の綺(あや)ちゃんと、あとは末っ子の護(まもる)ちゃんの三人だけじゃな」
「先代当主の長子? …っていうのが今の当主ではないの?」
 シュラインの問いかけに、店主は鼻の上に皺を寄せた。
「綺ちゃんはまだ成人しておらんから、成人するまではという理由で綺ちゃんたちの祖父が当主になったんじゃ。だが、先々代の旦那だからとはいえ入り婿であるその男には七海の力なんぞあるわけがない。だから桜が狂い咲いて赤く染まって怒っておるんじゃないかとワシは思うておるがね」
「ちょっと待て。あやって……」
 こめかみに指先を当てて直親が眉を寄せる。
 確か、その名前はさっきシュラインに会う前に桜の霊視をしていた時に耳にした言葉と同じだ。
「なあ爺さん、そのあやってのは」
 その時、奥で「ちょっとあんた」と呼ぶ不機嫌そうな女の声がした。この店主の妻女だろうか。
「ああ、すまないねえ、席を外させてもらうよ」
 ぺこりと丁寧にお辞儀すると、店主はそのまま奥へと引っ込んでしまった。そのまましばらく待っても出てこない。……逃げたのだろうか。
 もしかすると仮にも「神」として奉っている桜の守をする人々のことをこれ以上余所者に口外するなと注意されたのかもしれない。
「仕方ない、建設会社へ行くか。誰かに聞けば場所くらいすぐわかるだろう」
「そうね」
 店を後にしながら、ふとシュラインは直親に訪ねた。
「桜に捧げられた『禊払いの詞』って、何かしら。わかる?」
「言葉からするに、神道系の祝詞か何かだと思うが」
「それが判れば、もしかしたら建設会社の人たちにかかる災いも払えるかもしれないわね。うまく桜の気を鎮められるかもしれない」
「さて、どうかな」
 まだかすかな痺れのような痛みの残る手を握り締め、かすかに唇を歪めた。
 桜の霊ではなく、もっと別の何かにより受けた『反発』を思い出して。

<建設会社>
 村の者に場所を聞いてシュラインと直親がその会社にたどり着いた時、あらかたの社員は出払っていて、ぽつりと事務所に一人残っていた初老の男が話に応じてくれた。
 この不景気の最中にでも全員総出でかかれる仕事があるというのなら、この社はきっとそこそこに安定した業績を上げているのだろう。
 今回の桜の一件は、彼らにとってみれば本当に、思わぬ誤算といったところなのではなかろうか。
 事務所の片隅にある接客用のソファを勧められて腰を下ろした二人に、男は不器用そうな手つきで茶を運んできてテーブルを挟んだ向かい側に腰を下ろした。
「あの桜の話を聞きたいと言ってたね」
「あなたはあの現場へは?」
「行ったよ。私の場合は重機が動かなくなったっていうだけだったがね」
「原因はなんだったんですか?」
 シュラインの言葉に、男がかりかりと頭をかく。
「重機を持ち帰って点検してみても、別に悪いところはなく普通に動いた。けど、あの桜のところへ持っていっていざ作業、となるとエンストするんだ」
「他の、腹痛やら事故やらは」
「あの桜の近くから離れたら腹痛は治った。事故は…すごい眠気に襲われてぼんやりしている間に…とかなんとか」
 直親が、口許に拳を当てながら思慮深く口を開く。
「一体あそこに何を建てようとしているんだ?」
「ショッピングセンターだよ。田舎にしては規模の大きなものを作る予定なんだ」
「場所の変更は利かないのか」
「すでにあの土地の管理者にはそれなりの金を払ってあるからなあ」
「その土地の管理者というのは?」
「確か、七海、とか言ったと思うが」
 かりかりと頭をかきながら、男はソファに深く背を預けた。
「まったく、金を払ったのに作業が進まないから雇い主からは文句を言われるわこっちはこっちで妙なことが立て続けに起こるから作業できないわで、うちの社長も困っていてね」
 確かに、それは困るだろう。
「あんたたち、なんとかしてくれるのかい?」
 期待に満ちた眼差しを向けられ、シュラインが苦笑をこぼしたところ、ふと直親が顔を上げた。眉宇を寄せ、厳しい顔つきで立ち上がる。
「どうしたの?」
「式が」
 問いかけたシュラインに短く答えると、すっと右腕を持ち上げる。と、事務所の壁を突き抜けて二羽の鴉が現われ、その腕と肩の上にとまった。
 桜の元に置いてきていた式神である。何事かを短く鳴いて直親に伝える。
「そうか、来たのか」
 乗っていた鴉ごと腕を振ると、ふわりと鴉の輪郭が崩れて白い折鶴へと変化した。ひらりと落ちてくるそれをキャッチすると、直親はシュラインを見やった。
「戻るぞ」
「桜に何か起きたのね」
 事態を察してシュラインも立ち上がる。手短に男に礼を述べ、二人は建設会社を後にした。

<七海の者>
 はらはらと、風に流れていく真紅の花弁。それはまるで空から血が滴ってきているかのようだった。
 赤い桜の前には、今、一人の学生服を纏った少年が立っていた。
 そして、それに向かい合うように、桜を背にして一人の老人が立っている。目を見開き、怯えるようにして少年を見ている。少年は無表情にそんな老人を、まるで見下すような冷めた目で見ていた。
「王手だ」
 歳に似つかわしくない、その場にある神秘的な静謐を壊さないような静かな声音で、少年は声を紡いだ。ひ、と老人が短く上ずった声をこぼす。それに構わず、少年は右手に持っていたものを桜の根元辺りに放り投げた。
 きらきらと光を放ちながら、それは老人の足元に落ちた。綺麗に描かれた放物線を追うように、老人が自分の足元を見下ろす。
 ばら撒かれたのは、幾つもの一八金製のピアスだった。さらに少年はポケットから二つの小瓶を取り出し、ピアスからわずかに横に逸れた辺りに別々に投げつける。内一つの中から液体がこぼれた。その片方の液体の上に、火をつけたマッチを放り投げる。と、ボッとかすかな音を立てて炎が踊りだした。
「な、何をする気だっ」
「妹を殺したな」
 ストレートなその言葉にあからさまにうろたえる老人に、少年はまるで人形のような冷めた目で淡々と告げた。
「大方、建設会社の者たちにでも言われたんだろう。桜の怒りを鎮めるために神子をここに埋めろと」
 老人がゆるく頭を振る。かまわず、少年は続けた。
「そいつらは体調を崩して家で眠っていた護(まもる)を連れ出し、殺して桜の下に埋めた。俺よりも護のほうが殺しやすいとでも思ったんだろう? 護は俺と双子。受け継いでいる血は同じだからどっちでもかまわないと、そう思ったんだろう?」
 少年は憎しみに満ちた目を老人に向けた。
「俺の妹の護を、お前は見殺しにした。今ではもう俺と血の繋がったたった一人の肉親だった護を、だ。…だから俺は桜に宿った護の力を使い、工事が進まないようにしてやったんだ。奴らに妙な事が起これば起こるほど、お前は怯えただろう? 次に狙われるのは自分かもしれない、と。だがもうそれも終わりだ」
 少年はすばやく中指と人差し指とで宙に逆さまに星型を描いた。とたん、桜の木の周囲に鈍く煌く星型が浮かび上がる。はっと老人――現・七海家の当主が桜の木を振り返る。何の力もない当主にも、その桜が発し始めた不気味な気配がわかるのだ。
「な、何だ…っ、何をする気だ!」
「報いを受けろ! 桜に宿りし我が七海の祖霊たちよ、今その力を解放せん!」
 澄んだ声が高らかに紡がれる。
 一瞬その場の鈍い光が強まったが、それも一瞬、すぐさま急速に描かれていた五芒星が弱まっていく。その様に、少年が眉宇を寄せた。
 何かに力が押さえ込まれている感じだ。
「く……っ!」
 短く呼気を吐き、眉間の辺りにさらに念を込める。
 と、その背に声が掛けられた。
「無駄だ」
 冷めた声音に、綺が弾かれたように振り返る。
「そこには結界が張ってある。そう容易く破れはしない」
 そこには、長身の男と女が立っていた。
 久我直親とシュライン・エマだった。
 シュラインがちらりと木の方を見た。きらきらと輝くものが見えたからだ。その場にばら撒かれている金色の物は――
「ピアス?」
 ちっ、と短く綺が舌打ちした。そこに、さらに介入者が現れる。
「キミは……」
 駆けて来たのは抜剣白鬼と秋津遼だった。白鬼が綺を見て目を見開く。
「キミが綺くんだったのか」
 そこにいたのは、数時間前に桜への道を教えてくれた少年だった。綺が頬を歪ませる。
「やっぱり、俺を邪魔する奴だったんだな」
 ちらりと直親が顔を上げる。
「あや? …こいつが『あや』なのか?」
「そう、この桜の守人の本当の当主だ」
 陰陽師嫌いの遼がじろりと直親を見て口を挟んだ。けれども直親はそんな遼の態度を意にも留めず、桜の方へと目を向けた。
「ならこの桜に宿っている髪の長い娘は誰だ? あや、がどうとか言っていたが」
 その言葉に、綺が当代をにらみつけた。
「やっぱり、やっぱりお前は護をここに埋めたんだな?! 金のために護を殺したのか!」
「や、やめてくれ、何も知らん、わしは何も知らん!」
「嘘をつくな!」
 直親の結界により力を発することができないと知ると、綺はポケットからジャックナイフを取り出した。それを手に当代に襲い掛かる!
「っ、いかんっ!」
 すぐさま白鬼がその背後に飛びつき、羽交い絞めにした。華奢な少年ひとりくらいなら容易くその力を押さえ込める。
「ダメだ、やめるんだ綺くん」
「うるさいっ! 護、いるんだろう護! 俺に力を貸せ、お前の無念を晴らすために!」
「あ…っ、桜が!」
 淡く鈍く桜が暗い点滅を繰り返す様に、シュラインが声を上げる。綺の呼び声と直親の結界との間で力がぶつかり合っているのだろう、幾つもの白いプラズマが走る。鋭く走ったプラズマの一つがシュラインに当たりそうになるの、横から遼が手で受け止めた。
「危ないよ、下がってな!」
「あ、ありがとう」
「礼なんかいらないよ、私は面白ければそれでいいんだから」
 言って、当代の方を見る。起きている奇怪な現象に腰が抜けているようだ。
 そのままちらりと直親の方を見やる。桜に直親の結界がある以上、こちらとしてもそこに宿る霊に対して手出しすることができない。
 直親は、結界を破ろうとする霊の力を自らの結界の強度を増すことで押さえ込んでいる。奥歯を強く噛み、桜を見据える。
 白い着物の少女がそこにはいる。黒い瞳でじっと直親を物言いたげに見つめている。その目が、綺のために役に立ちたいのだと語っている。
「お前を出すわけにはいかないんだ」
「キミ!」
 呼ばれて、直親は白鬼の方へと視線を向けた。白鬼は綺を取り押さえたままだ。
「綺くんの呪法を解くことはできないのかね。解けば霊たちも鎮まるだろう」
「だが」
 呪法の種類がわからない。何を用いているのかが判らなければ、解く鍵もつかめない。
 白鬼が綺に問うても、綺はむろん答えるはずがない。ただその腕から逃れようと暴れ続けている。
「ええいっ、一体どういう呪法なんだこれはっ?!」
 その叫びに答えるように、静かな声がどこからか聞こえた。
「五行の流れを崩せばいい」
「あれっ?!」
 驚いたように白鬼が首を捻じ曲げて声の方を見やった。そこには、いつの間に現れたのか、黒いスーツを纏った青年が立っていた。直親のほうへ顔を向ける。
「貴方にならわかるはずだ」
 聞いて、はっと直親は桜の方へと視線を戻した。
「五行…なるほど、陰陽五行か!」
 桜の木のある土の上に、水と火と、金のピアス。
 木、土、水、火、金。
 陰陽道の根拠となっている思想、それが陰陽五行だ。木は土に勝ち、土は水に勝ち、水は火に勝ち、火は金に勝ち、金は土に勝つ、という流れが作るものを「五行相剋」という。五行には他にも相生説などもあるが、呪殺目的で使われているのであれば、闘争の元に見立てられた相剋説の方だろう。
 前にここで「小火と大量の水撒き」があったのは、綺が桜の力を呼び出すために呪法を執り行った跡だったのだろう。「金」のワードを埋めたのは、きっと今ここにばら撒かれているピアスだ。綺は術後にピアスだけはちゃんと回収していたために、小火と水だけが残されていたに違いない。
 直親は、シュラインと遼を見た。
「ピアスと水の入ったビンの回収を!」
「わかったわ!」
「オッケーっ!」
 シュラインと遼が同時に駆け出す。シュラインがビンの回収をし、遼が散らばったピアスを手早くかき集めて両手で砂ごと回収する。
 二人が桜の木から離れたのを見ると、直親は呪符に念をこめて投げ打ち、桜――すなわち「木」に封じをかけた。
「急々如律令!」
 キィン、と硬質な耳鳴りのような音が響き、直親の結界の上に重なっていた綺の呪術を示す逆五芒星が消えた。
 それは綺の術が破れたことを示している。
 桜も異様な光を放つのをやめ、鎮まった。そこにいた護の霊も消えていた。
 どうやら、決着はついたようである。
 けれども、まだ綺は祖父を睨みつけていた。術が消えても、その怒りは消えない。
 その身体を背後から捕らえたまま、白鬼は静かな口調で言った。
「もし本当に彼がキミの妹さんを殺したのであれば、それは法によって裁かれる。キミがその手を汚すことはない」
「違う…こいつは、護だけじゃない。俺の両親までも事故に見せかけて殺したんだ。こいつは俺から家族を奪った。逮捕されるよりも、いっそのこと死んでこの世からいなくなってほしかったんだ」
 つらそうに言う綺の手からナイフを放させて、シュラインは桜の根元で腰を抜かして座り込んでいる当代の方を冷ややかに見やった。
「恨みたくなる気持ちもわかるというものね」
 綺に同情はしても、当代のほうにはそんな余地は一片たりともない。
「とりあえず、この桜はこいつの家のものなんだろう? だったら本来当主になるべきだったこいつの手にゆだねるべきだ。お前はさっさともらった金を施工主に返すんだな。またこんな目にあいたくないなら」
 脅すように宙に手で星型を描くと、直親もまた冷めた目つきで当代に言った。ひい、と短く情けない声を上げると、当代は身をすくめて両手で頭を抱えた。
「金はもうないんじゃ、全部使ってしまったから」
「……あ。なんか今すごいムカついた。蹴ってもいいかしらこいつ」
 遼がつかつかと歩み寄り、怯える当主を腕組みして見下ろしながら言う。
 どれほどの金が入ったのかは知らないが、きっとかなりの額に違いない。それをあっさり「全部使ってしまった」などとぬかしやがるとは。
 こちとら金にならないのを承知で来てるというのに、だ。
 しかし、蹴ってもいいかしら、という問いにあっさり「いい」と二文字で答えたシュラインと直親の冷酷な態度に笑いを誘われたので、気をよくしてやめておく。白鬼は苦笑いをこぼしていた。
「さて、それじゃ捕り物は警察に任せるとして……どうしたんだい?」
 ポケットから白い折鶴を取り出して念を込め、式神に転じさせて送り出している直親に白鬼が問う。直親は青い空に飛び立っていく二羽の鴉を見上げて薄く笑った。
「ちょっとばかり、関係者たちに怖い目にあってもらおうと思ってな。痛い目を見れば、ここに手をつける気もなくなるだろう。もし手をつけるにしても、この桜だけは残るようにすることも優秀な現代建築ならば可能なはずだしな」
 目を細めて桜を見やる。
「せっかくの綺麗な桜だ。切るのは惜しい」
 白鬼も、深く頷いた。
「そうだね、まったくもって同感だ」
「私もね」
 シュラインが小さく微笑みながら桜を見上げる。
「でも、残ったらまた今回みたいに霊を利用して暴れる当主が現れないとも限らないね」
 ちらりと遼が離れた場所に立っている黒いスーツの青年を見やった。それを受けて、青年――この件の依頼主・鶴来那王(つるぎ・なお)が懐から小さな瓢箪のキーホルダーを取り出した。そして静かに蓋を開ける。
 強い霊的な吸引力を持つ、その瓢箪。まるで掃除機か何かのように、桜に憑いていた綺の祖霊たちが瓢箪に吸い込まれていく。すべて吸い尽くすと、鶴来は何事もなかったかのように瓢箪の蓋を閉めた。
「これで七海の者は桜の呪縛から開放される。古き言い伝えに縛られる必要もない。……その子の身柄は俺が引き受けます」
 白鬼の腕から開放された綺を見、鶴来が静かに言った。
 確かにまだ一人で世の中に放り出すには、綺は若すぎる。その場にいる誰もがそう思った。心を癒すには時間も必要だ。誰かの元で保護されながら、ゆっくりと傷を癒していくほうがいいだろう。
 その時、ひらひらと空からなにか白いものが降ってきた。全員が空を見上げる。
「……雪?」
 シュラインが、白い花びらのような一片を手に取り、つぶやく。
 まるで花吹雪のように、雪が降りはじめた。大粒の牡丹雪だ。
 舞い落ちてくるその雪が赤い桜の花に触れると、触れたところから色が白く変わっていく。まるで染料が抜け落ちていくかのように、桜の天辺から徐々に淡い、普通の桜の色へと転じていく。
 晴れた空から降る雪――天泣。
 その天の涙が、血塗られた桜を清めているかのようだった。それはもしかしたら、今は亡き綺の妹・護が、たった一人この世に残された兄のために流した涙だったのかもしれない。
 幻想的なまでに美しい光景を、その場にいるだれもがしばし言葉を紡ぐのをやめて眺めていた。
 雪はしばらく、白く染まった桜の上にしんしんと降り続いていた。

<終>
 七海の当主を乗せたパトカーが走り去っていくのを見届ける頃にはもう、雪はすっかりやんでいた。
 それにしても、と直親は少年を振り返った。
 少年はさっきまでの燃え盛るような怒りに満ちていたのが嘘のように、静かに視線を地面に落としていた。どこか、放心しているかのようにも見える。
 心が壊れてしまったのかように。
 戦っていたときよりも格段に影が薄くなった感じがする。復讐の一点に情念を注いでいたため、それが終局を迎えてしまった今、もはや彼を動かす燃料はからっぽになってしまったのだろう。それが少年の存在感を希薄にしている理由だ。
 ついさっき保護者になった青年は、離れた場所で白鬼と何事かを話していた。遼とシュラインは挨拶を残してすでにこの場から姿を消している。
 ぽつりと一人立つ少年をなぜか放っておけず、とりあえず直親はそちらへ歩み寄った。
 少し、気になることがあったのだ。
「逆さ五芒星を使っていたが、お前、あれが邪法だと知っていてやったのか?」
 少年が静かに顔を上げる。やはり、どこか傷ついたような顔をしていた。それでも、しっかりと言葉を紡いだ。
「黒い着物を着た男に教えてもらった。七海には桜に奉じる禊払いの詞は伝えられているけど、あんな技は伝わっていない」
「黒い着物?」
「狩衣とかいう着物。その男が、もし殺したい者がいるのならこの術を使えって。お前の力なら必ずや事を成せるからって」
 何者だろう。邪法をこんな子供に教えるとは、一体何を考えているのか。
 だが、その呪法を教えてもらうだけですぐに実行できたというこの少年の力にも、直親は危惧を抱いていた。
「お前、もう二度とあんな術使うなよ」
「……使いたくても、もう桜がないから無理だ」
 綺は静かに桜を見た。真っ白に染まった桜は、不浄を洗い流したかのようだった。
「もう、護もいない」
 ふと、綺が直親へと視線を戻した。少し躊躇うように視線を伏せる。
「……あなたは護の声を聞いたんだろう?」
「ああ、少しだが」
「護は、なんて言っていた?」
 目を伏せたままの綺に、直親は口を閉ざす。
 髪の長い白い着物の少女。最初の霊視の時に現れた彼女はおそらく、この兄のことを気にかけて出てきたのだろう。話をすることができる直親の存在に頼るように現れたのだが、結局、その場に残されていた綺の呪法の残り香により邪魔されて完全なコンタクトは取れなかった。
 降りる沈黙に、どこか痛そうに綺が頬をゆがめた。
 ふ、と直親は唇に笑みを浮かべ、ぽんと少年の頭に手を置いた。
「綺に、自分の分まで幸せになってほしいと伝えてくれ、と」
 嘘だった。
 けれど、綺はその言葉を聞いてぱっと顔を上げた。その目には、さっきまでは消えていたかすかな光が宿っている。
 生気の灯火が。
 例え嘘でも人が前向きに生きていける要素になるのなら、それは無駄なことではない。役に立たない真実よりもよほど有益なものだ。
「妹の願い、叶えてやれ。お前にしかできないことだからな」
 もう一度軽くぽんと少年の頭に手を置くと、直親は踵を返した。
 黒いコートの裾が穢れなき白い花弁を伴った冷たい風に翻った。その肩に、任務を終えた二羽の式神が降りてくる。
「ご苦労だったな」
 労わるように声をかけると、直親は空を見上げた。
 東京とは明らかに色の違う水色のキャンパスに、たった一片だけ、真紅の花びらが待っていた。けれどもそれもすぐに風に流され、消えていった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 /       PC名        /性別/年齢/ 職業】
【 0065  /抜剣・白鬼(ぬぼこ・びゃっき)   /男 /30 /僧侶(退魔僧)】
【 0086  /シュライン・エマ(しゅらいん・えま)/女 /26 /翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【 0095  /久我・直親(くが・なおちか)    /男 /27 /陰陽師】
【 0258  /秋津・遼(あきつ・りょう)     /女 /567/何でも屋】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、はじめまして。ライターの逢咲 琳(おうさき・りん)です。
 この度は依頼をお請けいただいて、どうもありがとうございました。
 かなり文章長めになってしまいましたが、少しでも楽しんでいただけましたでしょうか?

 久我直親さん。初めての「陰陽師」の方からのご依頼で、とってもわくわくしてしまいました(笑)。術の描写などがイメージにそぐわなかったら申し訳ありません。式神はご希望通り鴉を使用させていただきました。
 桜に結界を張る、という案を出していただけていたので、首謀者が殺人を犯す手前で食い止めることが出来ました。そして、霊視で首謀者の妹に会えたため、最後に彼を励ますこともできました。
 九字切り、呪符への念を込めるための呪文等、陰陽師らしい演出のために使用したんですが、実は「急々如律令」の一つ目の「急」。横に部首の「口」がつくんですけど、その文字が出なくてこの表記になっています。すみません。
 かっこいい久我さんを描けるようにがんばってみたんですが、いかがでしたでしょうか。少しでもお気に召していただけたら嬉しいです。

 さて、今回登場しました「鶴来那王」「七海 綺」は言うまでもなくNPCです。これからも逢咲からの依頼ではちょこちょこと顔を出すと思いますので、またどこかでお会いすることがあるかもしれません。
 もしよろしければ、感想などをお気軽にクリエイターズルームからいただけると嬉しいです。今後の参考にさせていただきますので。
 それでは、今回はシナリオお買い上げありがとうございました。
 また再会できることを祈りつつ、失礼します。