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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ホワイトデーは三倍返し!?

<オープニング>

「今日何日か知ってる?」
「3月14日」
 当たり前の質問に当たり前の答えを返す草間武彦。
 なぜか興信所に来ていた碇麗香はその答えにため息をついた。
「あのねぇ、そういう意味じゃなくて・・・」
「どういう意味だよ?」
「今日はホワイトデーでしょうが!」
 そう、今日はホワイトデー。ヴァレンタインにチョコを送った女の子が最高に楽しみにしている日である。
「ああ、なるほど」
「とぼけてないで、ヴァレンタインのお礼を出しなさい」
「これは義理ですって力説してる5円チョコでか?」
 いささか呆れる草間。
「大切なのはお金じゃないわ。気持ちよ」
「流石に編集長、5円チョコ1枚でお返しを強要するのは・・・」
「ふん!」
 碇のお供で興信所を訪れていた三下は、華麗な曲線美を誇る碇の延髄蹴りを食らってあえなくノックダウンする。合掌。
「おいおい・・・。うちの備品を壊さないでくれ」
「とにかく、今日はホワイトデーなんだからせめてパーティでも開いてお返ししなさい」

(ライターより)

 難易度 易しい

 予定締切日 3/15 24:00

 というわけで、楽しい(?)ホワイトデーパーティの開催です。意中の方にお返しするもよし、お返しを強要するもよし。誰にもお返しをもらえず不貞腐れて飲み食いするもよし。なんでもありのお楽しみシナリオです。
 一応NPCとしては、草間、碇、三下、瀬名、不人、社長、魎華、教授、七条、綾をお出しすることができます。
 勿論、ベルゼブブの依頼に初参加の方も問題なく参加できますのでご安心ください。
ただし、単なるパーティではなく、怪談であることをお忘れなく。なんのハプニングも起きずにシナリオが完了すれば良いのですが・・・。
 それでは皆様のご参加をお待ちいたします。

<どうしてウチが・・・>

「武彦さん」
「うん?」
「ホワイトデーパーティー…。別にね、やるのは構わないんだけど…なんでうちの興信所でやるわけ?」
 草間興信所が誇る才媛シュライン・エマは、主たる興信所所長草間にこめかみをひくつかさえながら尋ねた。月刊アトラス編集長碇の野望により、うやむやのうちにここでホワイトデーパーティが開かれることとなってしまった。当然主は、事務処理は勿論家事に関しても完全に能力が欠如している。確実にパーティ準備のほとんどは彼女が担うこととなるだろう。
「いや、これくらいはしておかないと、アイツ煩いから・・・」
「はいはい、わかりましたよ。私が準備と後片付け全部やりますよぅ」
「不貞腐れるなよ・・・」
 深々とため息をつく草間。こっちこそため息をつきたいくらいだ。彼女は草間に今年も勿論ヴァレンタインのチョコを渡していた。だが、お返しは期待できまい。そういう気持ちの機微など草間にはありはしない。それに懐具合がいつも寂しい草間に義理でお返しをもらっても嬉しくは無い。別にお返し欲しくてあげてるわけではないのだ。
 それよりも彼女の頭を悩ませている問題がある。興信所の経営状態だ。この頃破格の依頼が来るようになったものの、あちこちに作った借金の返済と草間の金銭に関するルーズさのせいから相変わらずこの興信所の家計は火の車である。これでホワイトデーパーティなんぞを開いてしまったらさらに興信所の経営状態は悪化の一途をたどるだろう。それだけは事務員のバイトとして避けなくてはならない。
「んーっと、どうする、武彦さん。参加料取っちゃう?領収書切られても困るし、自分じゃ全部出せないでしょ?」
「そうだなぁ・・・。この頃貧乏だしなぁ・・・」
「はい!そういうことで」
 ホワイトデーパーティーに参加しに来た人間たちを指差し、
「参加者は飲食代の参加料払うように!」
 この一言に巻き起こるブーイングの嵐。だが彼女はそれをまったく介さない。
「シャラッープ!興信所はそれでなくても経営厳しいんだから。手伝わないならお金くらい払ってくださいね。それと碇さん」
 今回のパーティの元凶、碇麗香に矛先をむけるシュライン。
「何かしら?」
「ペットの三下くんをどこでも入らせないでください…何か壊すといけないから」
「ペットって・・・」
「わかったわ。ペットの躾は飼い主の責任。おとなしくしてなさい、三下君」
「編集長〜。僕は編集長のペットなんですかぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「と、いうわけで」
「さらりと流さないでくださいぃぃぃぃぃ!」
 碇のペット指定を受けた三下を無視してシュラインは説明を続ける。
「参加者各位へ。ご近所に迷惑をかけない。興信所の資料及び報告書に触らない。備品を破損しない。この注意事項と常識的節度を守り、今日のホワイトデーパーティーを楽しんでくださいませ。以上」
 ペコリとお辞儀をして準備にとりかかるシュライン。「僕はペットなんかじゃあぁぁぁぁぁ」というペットの鳴き声を背中に聞きながら。

<なんとなく・・・>

 ツナのカナッペを摘みながら、のんびりパーティを見つめている女性がいた。
 香港の留学生杜こだまである。
 彼女は浮かれ騒ぐパーティ参加者を眺めながら不思議な気持ちにとらわれていた。
(バレンタインデーのお返しをするとはいえ、パーティーをやるほどのことなのか、かなり疑問だな・・・)
 大体ヴァレンタインもホワイトデーもキリスト教のお祝いであって日本の祝賀行事ではない。その他にもクリスマスやハロウィンなど、宗教的にも風土的にも合わないはずの祝いを心から楽しむ日本人。本当に謎である。
 そんなことを思いながら適当に飲み食いに興じている彼女に近づいてきたのは、小柄な少年雪村心。彼は多少ドキドキしながら尋ねた。
「あ、あのさ、こだま、僕以外にもチョコ上げた?」
「ん?上げたけど?」
 ガーン。
 というような音が聞こえてきそうな衝撃を受けて雪村は立ち尽くす。彼はこだまにほのかな恋心をいただいていたのだ。淡い粉雪のような静かな、それでいて深々とした想い。だが、彼女には先に想い人がいたのだろうが。そんな彼の心を知ってか知らずか、杜は付け加えるように語った。
「確かに草間興信所の人達には上げたわ。手作りだけど?え、普通でしょ?お世話になった人にって?」
 ・・・・・・。
 雪村はほっと胸を撫で下ろした。どうやら義理チョコだったようである。彼は安心すると杜に小さな白い小箱を手渡した。不思議そうに見つめる杜。
「これ、ホワイトデーのプレゼント。開けてみてよ」
 これを受け取ってもらい、箱を開けてもらう瞬間を楽しみに今日のパーティを心待ちにしていたのだ。雪村はときめく胸を抑えて箱を開く杜を見つめる。
「これ、指輪?」
「うん。こだまに似合うと思って買ったんだ」
 それはシンプルなシルバーリングだった。金持ちの家の一人息子である彼なら、もっと高価なものを送れたはずだ。だが、日ごろの感謝の気持ちを込めて、頑張ってアルバイトして(実家には秘密)貯めたお金でこれを買ったのだ。杜は笑顔でお礼を言った。
「有難う。似合う?」
「うん。とっても」
 指輪をはめた杜を見て、雪村は心から喜ぶのだった。バイトのし甲斐があったと。

<5円と10円のお返し>

「なんやて〜。碇はんどころかウチにもプレゼントなしや言うの!?」
 パーティ会場に大きな関西弁の声が響き渡った。目にも鮮やかな赤い髪をもったボーイッシュな女性獅王一葉である。彼女の前には、文句を言われて怯える三下と呆れ顔の草間がいた。
「いや、だって・・・」
「あの10チロルチョコじゃなぁ・・・」
「武ちんも三下はんも何阿呆なことぬかしとんの。高かろうと安かろうと、贈り主は相手に『気持ち』っちゅうもんをあげとんねんで? したら同じように『気持ち』込めた物を返せばええねんのや。ただし男は三倍返し、これがヴァレンタインのルールやねん…って何で二人とも理不尽な顔しとんの?」
 怪訝そうな顔つきで尋ねる彼女。三下がおどおどと尋ねた。
「じゃあ、三十円のお返しでいいんですか〜?」
 スパーン!
 素敵な音を立てて三下の頭がはたかれた。獅王必殺のツッコミハリセンである。
「人の話はちゃんと聞きぃ。『気持ち』を言うたん。『気持ち』の三倍返しや金やないで。まぁ、まぁ武ちんは貧乏やから二倍返しでええねんけど・・・」
「二十え・・・。いや、何でもない」
 にこやかにハリセンを構える彼女を見て、引きつり笑いを浮かべて自分の言葉をキャンセルする草間。流石にツッコミを食らいたくはないらしい。
「問題は三下はんや。三下はんは三倍どころか十倍にして返してもらわなあかねんな。なんちゅうてもうち、三下はんの代わりに原稿何度もあげとるし」
「いや、それに関しては僕が書こうとした原稿を勝手に・・・。いえ、何でもありません」
「そうか?ま、そのお礼も兼ねてしーっかりうちと麗香はんに『気持ち』返してもらおか?」
「そうね。私も見せてもらいたいわ。三下君の気持ち」
「き、『気持ち』の三倍・・・」
 女帝2人に詰め寄られ、三下は大ピンチに陥った。生半可なお返しをしたら確実に殺される。とはいえ、サラリーマンの安月給で出せるプレゼント費用などたかが知れている。
 どうする。考えろ。考えるんだ三下。
 今や三下は、これからの人生を決める重要な決断を迫られていた。恐るべしホワイトデー。ヴァレンタイのチョコを安易にもらった男は皆、彼のような運命を迫られるのであろうか。

<良かった・・・ね?>

 しかし天はそんな三下を見放さなかった!思わぬ救いの手が差し伸べられたのである。
「二人とも!そんなに三下さんを追い詰めたら可哀想っすよ!」
 背の高い、がっちりとした体格の青年が三下庇って前に出た。高校生の湖影龍之助である。意中の人である三下にプレゼントを渡すためこのパーティに訪れていたのだ。
「三下さん。これ、俺の気持ちっス。もちろん、貰ってくれますよね?(はぁと)」
 彼が取り出したのは頑丈な作りの腕時計である。ちなみに彼の左腕にも同じ腕時計がつけられている。ペアウォッチといったところか。アトラスのバイトで貯めたお金で買ったものだ。
 実は彼は三下からヴァレンタインデーにチョコなど貰っていない(当然といえばそれまでだが)。勝手にお返しをしているのだ。三下は吃驚して目を白黒させている。
「え、あ、う、お?」
 既に日本語になっていない。
「なるほど。三下君、そういう趣味があったのね・・・」
 三下をケーベツの目で見つめる碇。湖影は碇に宣戦布告をした。
「碇さん。三下さんは俺が守るっす。貴女の好きにはさせないっすよ!」
「あら、面白い事言ってくれるじゃない。三下君が私のペットであることははるか前世から定められた運命よ」
 そうだったのか。
 あまりに自信に満ちた言い方につい頷いてしまった湖影は慌てて首を振って否定する。
「そ、そんなこと決まってないすよ!三下さんは俺のものっす!」
「ふっ。そんな事を言っても無駄な事よ。これは既に確定されているのだから」
「あ、あの〜。僕モノじゃないんですけど・・・」
「「黙ってなさい!!」」
 やっと立ち直った三下の言葉を完全に封じ込め、湖影と碇は三下争奪戦に火花を散らす。
「そんな事よりホワイトデーや。三下はん、プレゼントはちゃんと返してや!」
「何言ってるっすか!ホワイトデーは俺のお返しだけで十分っす!他の人になんか渡しちゃだめっすよ!」
「何いうとんねん!話を勝手にそらすんやないで!ウチは三下ハンとしゃべってるんや。外野は黙っときぃ!」
「そっちこそ外野っす!ひっこんでるっすよ!」
 さらにエスカレートするする会話。三下を囲んで三人の男女が見えない火花を散らし始めた。 救いの手が差し伸べられたことにより余計事態が混乱しているようにも見えるが・・・。まぁ、これで良かったのだろう。ホワイトデーの相手もできたことだし。

<有難や、ああ有難や有難や>

 カラン。
 空になった皿がテーブルに置かれた。これで10皿目。たった一人の男が全て平らげてしまっているのだ。
「こんな処でタダ飯にありつけるとは、これも陰陽の賜物か…有難や有難や」
 髪を脱色した、黒のジャケットに紅いシャツ、ついでに紫のネクタイと派手な服を着こなしたホスト風の男が合掌しながら、サンドイッチを口に運ぶ。
 真名神慶悟。精神集中と称して煙草を飲み、意気高揚が為と酒を飲む。これも「一般諸衆の救済を続ける為」と金銭潔斎を常とし、人の心の深淵を覘くと称し毎夜遊び歩く。人生を謳歌しまくる破戒陰陽師である。
 伊達酔狂が過ぎて金欠になり、食い扶持(依頼)探して事務所を訪れた所でパーティに出くわすという幸運に恵まれた。勿論、そんな状態でホワイトデーのお返しなど持ってきているはずもない。
「貰ってねえから返す必要はない。これは因果の法則に斉しい。されど英気を養わねば都会の闇は晴らせぬ…これは我が救世の道に関わる大問題。という訳で、有難く…」
 フライドチキンにかぶりつく。
「あんたなぁ・・・」
 いきなり転がり込んできて飲み食いしまくるこの男に、流石の草間も顔を顰めた。だが、この破戒陰陽師にそんなものは通用しない。
「有難う。厚意は決して無駄にはしない。闇が晴れる日は近いぞ」
 と合掌してお礼を言う始末。厚顔無恥もここまで行けば立派と言えるだろう。となりに置いてあったビールを掴みラッパ飲みまでする。
「酒は己の心を高揚させ士気を上げる神の水。甘い物…即ち甘露は長生を約束する」
 妖しい事を言っているが、要はうまい酒飲まさせてもらって有難うということだろう。
「ヴァレンタインにあげられなかったので、今日あげちゃいます〜♪」
 パーティの雰囲気を快く思いながら手作りのチョコを持参でやって来たのは、小柄で翠色の瞳が印象的な少女志神みかね。よほど気分がいいのか男女構わずチョコを渡そうとする。
「有難い。俺には闇を払うためひたすら英気を養わねばならぬ」
 だが真名神は次々と彼女からチョコを奪うと口に入れ始める。次々と無くなっていくチョコ。
「ひど〜い。みかねのチョコが〜!」
 皆に渡そうと思っていたのに、このままでは真名神に全て食べられてしまう。パニックを起こした志神は真名神に念動力をぶちかました。
「食らえ〜!!!」
「ぬお〜!!!」
 はるか後方に吹っ飛ばされる真名神。
「草間さんの所に来る位だから悪い人じゃないと思っていたのに・・・」
 恋人のいない志神は大人の人達の恋愛模様に過剰な憧れを抱きつつ、三下と三人のやり取りを見ていた。禁断の殿方の恋というものを満喫し、お礼にチョコをと思っていたときにこれである。気落ちしてしまった。チョコは今のさわぎで大半が無くなってしまった。
「折角持てきたのに・・・」
「まぁ、気にするな」
 ポンポンと彼女の型を叩いたのは、草間だった。
「気持ちが伝わればいいのさ。気持ちがな。お前さんの気持ちは皆に伝わったさ。チョコを配ろうとしてくれただけでな」
「ほんとですか!みかね嬉しいです!」
「その気持ちも用意していない武ちんの台詞やないな」
「ほっとけ」

<つまみ食いはだめです>

「桜井さん、料理上手いのね〜」
「いやいや、それほどでも」
 シュラインがそう賛辞を送ったのは、笑顔が素敵な医学生桜井翔。オーブンを開けてメインのローストビーフのやけ具合を確かめながら、洗い物を片付けていく。
「まぁ、僕はヴァレンタインの時はまだこちらに居ませんでしたからね。今日は御呼ばれされても差し上げるものと言えばクッキーしかありませんでしたし・・・。せめてお手伝いでもしておかないと・・・」
「いい旦那さんになりそうねぇ」
 シュラインは羨ましそうにそう笑った。確かに実家は大きな病院を経営していてお金持ち。ルックスも良くて医大生。おまけに家事までできる二十歳前だとしたら羨ましくない者のほうが少ないだろう。おまけにおぼっちゃんに在りがちな我儘タイプではなく、自分の欲しい物は自分でバイトして買うというしっかりもの。結婚相手として申し分ないだろう。もっとも隠された本性もあるのだが・・・。
「メインディシュはまだかしら?」
 そう言ってキッチンに入ってきたのは碇。三下争奪戦も一段楽してお腹がすいたらしい。かなりイライラしているようだ。
「待ってください。もう少しで出来上がりますから」
「もう焼けてるじゃないの」
「ここが重要なんです。今焼くのを止めてしまったら台無しになってしまうんです。他にも食べられるもの用意したはずですけど・・・」
「全部食べちゃったわよ」
 碇が指差す方向では、山のように積み重なった皿の数々と食べ残しの大量のゴミがある。
「ちょっと段取りを間違ったんじゃない?客を待たせすぎよ」
「食べるの専門の人が文句を言わないでください。僕だってほんとは客なんだから・・・。騒いでないで手伝ってください」
「客に手伝わせる気?」
「だから僕も客ですってば。はやく食べたいなら手伝ってください。雑誌みたいにすぐできないんですから」
 相変わらず笑顔を絶やさない桜井と腕を組んで不満を体全体で表す碇。見た目は穏やかだが、内心そうとうドロドロとしたものがあるのだろう。凄まじい威圧感が放たれる。
「ふっ、言うじゃない優男」
「いえいえ、そちらほどではありませんよ。鬼編集長」
「ち、ちょっと・・・・」
 シュラインは二人の放つなぞのオーラに圧倒された。恐るべきプレッシャーである。お互い引く気はないらしい。ふと視線を逸らした彼女の目に、鼠たちがローストビーフを持ち上げようとしている姿が映りこんできた。
「きゃあああぁぁぁぁ!!!鼠が!」
 シュラインの叫びに二人が慌てて視線をやると、十数匹の鼠がローストビーフを掴んでえっちらおっちらオーブンから運び出そうとしている姿が見えた。鼠がこんな器用な真似などできるはずがない。となれば・・・。
「美味い物はとにかく俺の士気を上げる魔法の食だ」
 極悪陰陽師がナイフとフォークを持って待ち構えていた。念動力で吹っ飛ばされたというのにタフな男である。式神を使ってメインディシュを確保しようとしているのだ。呆れた桜井は念力で生み出した重力波を食らわせた。
「つまみ食いはいけません」
「ぐはぁ!」
 押しつぶされる真名神。さらに碇にヒールの一撃が脳天に直撃する。
「何馬鹿やってんのよ」
「ぐみゅ〜」
「はぁぁ。どうしてこうなるのやら・・・」
 予想したどおりのパニックぶりにシュラインは頭を抱えた。

<宴も終わって>

 そんなこんなで楽しいホウイトデーパーティは終了した。皆は、思い思いにくつろぎ、あるものは帰り支度を。またあるものは飲み比べを開始する。
 三下争奪戦の結果だが結局白馬の王子様(?)の出現で、現在のところ三下は碇のペット兼湖影の恋人という地位で落ち着いた(当の本人は必死に否定したが無論無駄であった)。ホワイトデーのお返しについては、湖影が今度三下とともにプレゼント用のものを探しに行くらしい。
「これが禁断の殿方の恋なんですね!みかね感動しちゃいました!!!」
「いや〜それほどでも・・・」
「だから違うって・・・しくしく」
 なにやら勘違いしている志神に、照れる湖影、無視される三下と全ては概ね平和に纏まったようだ。碇も「良かったわね。彼氏ができて」と獅王ともども大笑いして酒を飲んでいた。
 杜と雪村は仲良く手を繋いで帰っていった。まだ仲のいい友人の範囲を出ない彼女らの関係が恋愛に発展するのはいつのことだろう。
 
 最後まで残って後片付けをしていたシュラインを送る為、草間は彼女を車に乗せた。
「エマ、今日はすまなかったな・・・」
「どうしたんですか武彦さん?あらたまっちゃって」
「いや、今日はホワイトデーだろ。だから・・・」
 後ろの後部座席を何やらごそごそ漁る彼。
「?」
「ほら、ヴァレンタインのお返し」
 後ろから取り出したのは黄色い薔薇の花束。シュラインは吃驚して受け止めた。
「どうしたの、これ?」
「だからヴァレンタインのお返しだって言ってるだろう」
 珍しく顔を紅くして前を向く草間。照れているのだろうか。彼が。
「それにいつも世話になってるし、な」
「有難う。嬉しいわ武彦さん」
 シュラインは薔薇の香りを嗅いだ。濃密で甘い香り。「でも・・・」と彼女は草間に語りかけた。
「何だ?」
「武彦さん、この花の花言葉知ってる?」
「いや、知らん。何なんだ?」
「嫉妬」
「・・・・・・」
 黄色い薔薇は、こういうシチュエーションには似合わない花だったらしい。
 らしくない事をするとすぐこれだ。
 シュラインは心の中で苦笑する。だが彼らしい。そう思って、彼女は今この一時を大切にしようと思うのだった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0030/杜・こだま/女/21/風水師(アルバイト)
0303/雪村・心/男/15/高校生
0086/シュライン・エマ/女/26/翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
0115/獅王・一葉/女/20/大学生
0416/桜井・翔/男/19/医大生&時々草間興信所へ手伝いにくる。
0249/志神・みかね/女/15/学生
0389/真名神・慶悟/男/20/陰陽師
0218/湖影・龍之助/男/17/高校生

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■         ライター通信          ■
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 お待たせしました。
 ホワイトデーは3倍返し!?をお届けします。
 今回は、な、なんと参加者数が18名に達してしまいました!皆様のご愛顧、誠に有難うございます。
 流石にこの人数を一つのリプレイに載せてしまうと混乱をきたすと考え、異例ではありますが分割という手段をとらせていただきました。ご了承くださいませ。
 今回はお楽しみシナリオということで、肩のこらない、お笑いとちょっぴりラブストーリー付きの仕上げとなりました。この作品に関するご意見、ご感想、ご要望、ご不満等ございましたらお気軽にテラコンより私信を頂戴できればと思います。お客様のお声はできるだけ作品に反映させていただきたいと思います。
 それではまた、別の依頼でお目にかかれることを祈って・・・。