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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


極問島【情報収集編】
●オープニング【0】
 LAST TIME 『極問島』――。
 ある日草間が某大手デパートのアンケートに答えて旅行チケットを当てた。
 都合が悪くて行けないという草間からチケットを譲り受けた一行は、瀬戸内海に浮かぶ島である極問島へ向かった。旅行を楽しむために。
 そして島を散策してみると、色々な場所があることが分かった。一行の泊まる民宿『海龍』を筆頭に、『安楽寺』『極問神社』『石舞台』『龍の頭』等々。うちいくつかは、某推理小説と似通ったような場所であった。
 楽しさの中に不安を抱きながらも、何事もなく初日の夜は無事に明けた。心配は杞憂かに思われた。
 だが翌朝、朝食の席に一行が降りてくると、民宿に電話がかかった。それは民宿へ遊びにきていた旧家・木藤家の娘を呼び戻すための電話だった。何と『今夜、木藤真早紀(きとう・まさき)の娘を殺す』という文面の脅迫状が届いたというのだ。
 いったいこの島で何が起ころうとしているのか――それを知るには情報が不足していた。
 別にこのまま旅行に徹してもいいのだが……さて、どうしたものか。

●草間への電話【1A】
「それは別に構わんが、どうしたっていうんだ? 何かあったのか?」
 電話の向こうから、訝しがる草間の声が聞こえていた。民宿の電話を借りて、将人は東京の草間に連絡している最中だった。
「いえ、何もありませんよ。今の所は……ですけれど」
 含みを持たせた言葉を返す将人。その顔には穏やかな笑顔を浮かべていた。
「まあいい。デパートのオーナー関係のことを調べればいいんだな? だがあまり期待するなよ」
「了解しました。ではまた後程」
 将人はそう言って電話を切った。
「次、構いませんか?」
 後ろから声をかけられ、将人は振り向いた。手帳を手に翔が立っていた。
「どうぞ。私の用事は終わりましたから」
 コードレスの子機を翔に手渡す将人。そして将人はその場を立ち去った。

●木藤家にて【2B】
「こんにちはー。失礼しますー」
 沙耶はそう言いながら木藤家の門をくぐった。1人ではない、沙耶の前には冬美が居る。そして沙耶の後ろには、将人、翔、美桜、十三の4人が居る。いずれもこの家を訪れた目的は似たような物であった。
 木藤家は島の中央に位置していた。年期の入った木造の門をくぐると庭があり、その先に平屋造りの建物がある。こちらも年代を感じさせる物であった。
 冬美に続き、門からまっすぐに建物へ向かう5人。玄関では1人の少女が一行を、いや冬美を出迎えていた。色白で気の強そうなショートカットの少女である。
「あっ」
 美桜が短く叫んだ。出迎えた少女は、『石舞台』で出会っていた春奈だった。向こうも美桜に気付きちらりと視線を向けたが、すぐに冬美に向き直った。
「冬美、あなたどうしたの。こんなに人を連れてきて」
 春奈のそれは、少し迷惑そうなニュアンスのある言葉だった。事実その後5人に向けた視線も、警戒してやや睨むような感じであった。
「突然の訪問と無礼は申し訳ありません」
 ずいと1歩進み出て将人が丁寧に言った。
「我々は東京の興信所の知り合いの者です」
「……興信所?」
 春奈の視線が厳しくなった。翔も1歩前へ進み出る。
「探偵助手を務めています、桜井と申します。旅行のためこの島を訪れていた所、何やら脅迫状が届いたとお聞きしましたので、お力になれないかと思いやって参りました」
 一気に言葉を畳み掛ける翔。ここで正式に木藤家から依頼を受けて、島全体を調べる権限を有しようという目論みであった。
「彼が今言った通りです。犯人探しに、我々も協力させていただけないかと思いまして」
 将人が翔の言葉にそう付け加えた。
「その必要はないわ。どうせ悪戯よ、あんな物」
 顔を背ける春奈。
「悪戯にしても『殺す』とは穏やかじゃありませんよ。その辺りはどのようにお考えなのですか?」
 将人は春奈に笑顔を向けて言った。笑顔とは裏腹に、鋭さのある言葉だった。
 春奈が何か言おうとしたその時、家の奥から女性の声がかかった。
「入っていただきなさい、春奈」
「お母さん……」
 驚いた表情で振り返る春奈。奥から黒髪を結い上げ、藍染めの着物をまとった女性が姿を現した。
「ほおっ……!」
 十三が思わず感嘆の声を漏らした。色白な肌のその女性には品の中にも艶っぽさがあり、見た感じ30代前半といった所か。
「ようこそいらっしゃいました。私、そこに居る冬美とこの春奈の母で、木藤巴(きとう・ともえ)と申します」
 巴は静かに頭を下げた。

●家庭の事情【3A】
 奥の座敷へと通される一行。だが十三だけはその前に『ちと用事がある』と言い残し、姿を消していた。
 4人が座敷に通されてすぐ、娘たちが飲み物等を盆に載せ運んできた。春奈や冬美の他にもう1人、軽くウェーブのかかったセミロングの髪で春奈と同じ顔の少女が居た。きっとこの少女が春奈の双子の妹、夏子なのだろう。
(この娘が『なっちゃん』ですね)
 翔が夏子に視線を向けた。3姉妹は4人の向かいへ座った。
「……あの、お母さまは?」
 きょろきょろと見回し美桜が尋ねた。この場には巴の姿がなかったのだ。
「母は気分が優れないと申しまして、奥の部屋で休んでいます。代わりに、あたしたちが話を伺うようにと言付かっています」
 夏子が答えた。春奈と顔こそ同じだが、春奈にあったような警戒感はそれほど感じない。
「脅迫状の犯人探しに協力していただけるそうですが……」
「ええ、その通りです。勝手に協力することも出来たのでしょうが、やはり筋を通すのが正しいと思い、ご挨拶に伺いました」
 にこやかに話す将人。21世紀になったが、こういう島では旧家の影響力はまだまだ強い。筋を通す通さないで、島の人の口は変わると思っての言葉だった。
「申し訳ありませんが、まずはその脅迫状を見せてはいただけませんか?」
 脅迫状から何か探れないかと、将人が言った。するとむすっとした表情の春奈が口を開いた。
「燃やしたわ、あんな物」
「証拠を燃やしてしまったんですか?」
 これは将人にとって驚きだった。燃やすというのは想定外の行動だったからだ。
「うちは昔から続く旧家ですもの。内心面白くないと思ってる人が居るのは当然だし、恨まれていることもあるかもしれない。あんな物にいちいち反応していたら、身体がいくつあっても足りないわ。気にするだけ無駄よ」
「しかし、それは矛盾してませんか?」
 翔が口を挟んだ。
「春奈さんはそう言われましたが、そうお考えならば何故今朝冬美さんへお電話をされたんです? 今の言葉と矛盾した行動ではありませんか」
「そ、それは……」
 口ごもる春奈。その様子を美桜がじっと注意深く見つめていた。
「時期が時期だからです」
 春奈の代わりに夏子が答えた。
「明日は父の命日ですから……それで姉さんも、少し神経質になっていたのかも」
「いつお亡くなりに?」
「昨年です。胃ガンで……」
 将人の問いに夏子が答えた。
「失礼ですけど、亡くなられたお父さまの交友関係は……?」
 沙耶が尋ねた。
「お寺の了庵さんや、神社の神薙さんとは仲がよかったと思います。他の方は普通じゃなかったかと」
「早苗とこのお母さんとは仲が悪かったけどね」
 夏子の言葉に被さるように、ぼそっと春奈がつぶやいた。
「姉さん!」
「本当のことでしょ。顔合わせる度に、喧嘩してたのはあなたも見てるじゃない」
「今の話は本当ですか?」
 将人が口を挟んだ。小さく頷く夏子。
「……姉の言った通りです。何でも昔っから仲が悪かったらしくて。早苗……いえ、大原さんのお家も昔から続く家なんです、実は。だからその昔のこととかで、色々とあったんだと思います」
「……亡くなられたということは、当然遺言状もあるんですよね?」
 聞いていいものか躊躇しつつ、沙耶が尋ねた。
「あります。ですが、ここにはありません」
「え?」
「弁護士さんの手元にあるんです。明日の命日に弁護士さんがやってきて、そこで初めて内容が明らかになるんです」
 そう言って夏子は口をぎゅっと結んだ。

●噂【4A】
「木藤家の噂かい? そうだなあ……巴さんは東京に居た頃、結構遊んでたって噂だ。あくまで噂だよ、噂」
 ニヤニヤと将人に話す中年男。噂なんて言っているが、この顔付きからするとそれはどうか。
 将人は木藤家を辞した後、島内を散策していた。そこで噂好きそうな島民に当たりをつけて、木藤家や島の噂に探りを入れていたのだ。そしてそれは間違っていなかったようだ。
「そんな噂があったもんだからさ、亡くなった大旦那が色々と考えてたらしいな。それでも子供が出来たら、そんな話もすっかりどっかへ消えたよ」
「はあ、そうなんですか」
「真早紀さんもあれだ、明日で亡くなって1年か。若く立派なのに惜しかった、ありゃ。早苗ちゃんの母親があっちの世界へ呼んだって噂もあるくらい、ほんと急だったよ。……あくまで噂だ、噂」
 中年男はそれから色々と話していたが、それ以上は有益な情報は得られなかった。礼を言い中年男から離れてゆく将人。民宿へ戻る途中で、慶悟と一緒になった。
「おや、どこへ行っていたんです?」
 将人が笑顔で話しかけた。慶悟は少々疲れたようにも見える。
「ちょっと馬鹿の相手をな」
 苦笑する慶悟。
 互いにそれ以上は何も語らず、一緒に民宿へ戻る2人。2人の間に妙な空気が漂っていた。空には黒い雲がさらに広がり、風も少し強くなってきていた。

●決意【6】
 それぞれ情報収集を行い、7人が2階の部屋へ戻ってきた。そして情報交換を行う。
「念のため草間さんに電話してアンケートを行ったデパートを調べてもらったんですけどね。どうやら何も怪しい所はなかったようです」
 つまらなさそうに将人が言った。
「こっちは馬鹿の相手で疲れた……」
 ぐったりした様子で、目元を押さえながらつぶやく慶悟。それでもしっかりと煙草はくわえていたが。
「……外の雲行きが怪しくなってきやがったな」
 窓の外を見つめ十三が言った。黒い雲が空を覆い、風もどんどん強くなり窓を揺らしていた。
「あっ。さっき上がる前にテレビで見たんですけど、低気圧が急速に発達してきてるみたいです。確か今夜にでも、この付近を通過するって……」
 思い出したように沙耶が言った。
「なるほど、春の嵐ですか。まるで舞台を整えているようにも思えますね」
 そう言って、将人は沙耶に微笑みかけた。
「皆さんにお聞きしたいんですが、早苗さんのことはどう思われています? 少し思う節があるんですが……」
 翔が皆に問いかけた。
「あ? 同じようなこと考えてやがるもんだな。俺はよ、早苗ちゃんが死んだ木藤の旦那の娘じゃねえかと踏んでんだがよぉ……分からなくなってきちまった」
「僕の推理でもそうなんですが、お2人の仲が悪かったというのが気になるんですよね」
 頭を掻く翔。仲の悪さが気にかかっているようだ。
「表面だけじゃ分からないこともあるさ。不完全な状態で断定するのは危険だろう」
 口から煙を吐き出す慶悟。
「私、春奈さんたちと出来たらお友だちになりたいです……だから。だから、絶対に殺させたくありません」
 美桜が静かに言った。だが強い意思を含んだ言葉であった。
「何にせよ、今夜が山ですね。天気が崩れるのが厳しいですけれど……」
 恨めしそうに窓の外を見つめる桐伯。雨が降り出したのか、窓に細かい雨粒がつき始めていた――。

●島の外では【7】
 情報交換を終え、階下に降りてくると早苗が丸めた紙をゴミ箱へ放り込む所だった。テレビからニュースの音声が流れてくる。
「岡山市内で発生した銀行強盗ですが、犯人は人質を取り行内に立て籠ったまま、警察との睨み合いが続いております……」

【極問島【情報収集編】 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0060 / 渡橋・十三(とばし・じゅうぞう)
           / 男 / 59 / ホームレス(兼情報屋) 】
【 0092 / 高御堂・将人(たかみどう・まさと)
                 / 男 / 25 / 図書館司書 】
【 0230 / 七森・沙耶(ななもり・さや)
                   / 女 / 17 / 高校生 】
【 0332 / 九尾・桐伯(きゅうび・とうはく)
                / 男 / 27 / バーテンダー 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
                   / 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0413 / 神崎・美桜(かんざき・みお)
                   / 女 / 17 / 高校生 】
【 0416 / 桜井・翔(さくらい・しょう)
   / 男 / 19 / 医大生&時々草間興信所へ手伝いにくる。 】


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■         ライター通信          ■
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・極問島へようこそ。
・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全16場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は、整理番号順で固定しています。
・お待たせしました、『極問島』シリーズ第2回をお届けします。高原は今回、書いていて訳が分からなくなりました。そのくらい情報があちこちに散らばっていますので、上手く情報の取捨選択を行ってください。
・まず、情報の取り扱いについて少し。第1回での情報は共通使用が可能です。今回知り得た情報も基本的には共通使用が可能です。ただし場面単位で情報封鎖をかけても構いません。メリットは……他の人を出し抜く以外、特にありませんが。その場面に登場している全員が情報封鎖をかけると、その場面の情報は封鎖されます。万一情報封鎖をかける場合は、次回のプレイングでその場面番号を記してください。解除しない限り、最終回まで情報封鎖がかかります。ただし例外な方も居ますので。
・次に、天候と島の外の状況について少し。本文最後にありましたように、岡山市内で銀行強盗が発生しました。現在も立て籠りが続いており、長期戦になる模様です。それゆえ、県警がやってくることは難しいと思ってください。それに加えて、急速に発達した低気圧が接近しつつあります。海上も荒れますので……今夜は孤島状態になることを覚悟しておいてください。
・最後に、次回のプレイングについて。次回はとうとう夜を迎えます。何かを、もしくは誰かを守る場合はその範囲を明確に記してください。次回は少し厳しめに見ようと思います。
また、情報が足りないと思われるなら情報収集を続けることも可能です。
・蛇足。今回のプレイングですが、皆さん内容はよかったと思いますよ。推理ものですから、どれがよくてどれがよくないと触れるのはまだ避けておきますが。
・高御堂将人さん、2度目のご参加ありがとうございます。筋を通したことにより全員が動きやすくなっています。本文では触れませんでしたが、精神感応について結果を。3姉妹に関しては春奈が警戒を抱いている以外、特に妙な所は見当たりませんでした。巴は奥に引っ込みましたので不明です。式神を飛ばしていますので、他の方がどこへ行ってたかについては情報封鎖の対象外になります。木藤家の家人は、あの後1歩も外へ出ていません。それと、慶悟さんは将人さんの式神に気付いています。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また極問島でお会いできることを願って。