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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


極問島【情報収集編】
●オープニング【0】
 LAST TIME 『極問島』――。
 ある日草間が某大手デパートのアンケートに答えて旅行チケットを当てた。
 都合が悪くて行けないという草間からチケットを譲り受けた一行は、瀬戸内海に浮かぶ島である極問島へ向かった。旅行を楽しむために。
 そして島を散策してみると、色々な場所があることが分かった。一行の泊まる民宿『海龍』を筆頭に、『安楽寺』『極問神社』『石舞台』『龍の頭』等々。うちいくつかは、某推理小説と似通ったような場所であった。
 楽しさの中に不安を抱きながらも、何事もなく初日の夜は無事に明けた。心配は杞憂かに思われた。
 だが翌朝、朝食の席に一行が降りてくると、民宿に電話がかかった。それは民宿へ遊びにきていた旧家・木藤家の娘を呼び戻すための電話だった。何と『今夜、木藤真早紀(きとう・まさき)の娘を殺す』という文面の脅迫状が届いたというのだ。
 いったいこの島で何が起ころうとしているのか――それを知るには情報が不足していた。
 別にこのまま旅行に徹してもいいのだが……さて、どうしたものか。

●お父さん【1C】
「お話があるんですが」
 桐伯は家に戻ろうとしていた冬美を捕まえ、優しく声をかけた。民宿の玄関先でのことである。
「よろしければ、木藤家のことを教えてもらえませんか。出来れば詳しく」
「どうしてそんなことを聞くの?」
 若干怯えと疑いの混ざった眼差しを向ける冬美。やはり脅迫状の件があるせいか、冬美なりに警戒しているのだろう。
「脅迫状の内容を実行させないために」
 桐伯は少し屈むと、冬美に目線を合わせた。冬美は少しうつむいて思案した後、こくんと頷いた。
「何から話せばいいの?」
「そうですね……家族構成からもう1度お聞きしましょうか」
 桐伯はとりあえず、冬美の話しやすそうなことから尋ねることにした。
「さっきも言ったけど、冬美にはお姉ちゃんが2人居るの。双子の春奈お姉ちゃんと夏子お姉ちゃん、冬美の3つ上だよ。お母さんは巴(ともえ)っていうの。お父さんは……去年病気で亡くなっちゃった」
 父親のことに触れた時、冬美は目を伏せた。
「病気で、ですか」
「うん。ガンで……本当は、明日が命日なんだよ」
「……明日が?」
 思わぬ冬美の言葉に、桐伯は目を見開いた。脅迫状で犯行が予告された翌日が父親の命日だとは、少し話が出来過ぎていないだろうか。
「どうして脅迫状なんて来たのかな。お父さん、優しい人だったのに。お母さんと違って」
「おや、お母さんは怖いんですか」
「ううん、怖いんじゃないの。優しいよ。でも……何か違うの。お姉ちゃんたちと、冬美とで。冬美がお父さん似だからかなあ?」
 冬美はそう言って首を傾げた。
「冬美さんはお父さん似なんですね」
「そうだよ。お父さんも冬美みたいなお肌だったもの。お母さんやお姉ちゃんたちは綺麗な色白のお肌だし。でも血液型はお父さんと冬美、違うんだよ。性格も違うし」
「ああ、血液型占いという物もありましたね。冬美さんは何型ですか」
「冬美はO型だよ。お父さんはA型なの。お母さんとお姉ちゃんたちが一緒でB型だよ。だから性格も何だか似てる気がしてるの」
 くすっと笑う冬美。何かそれを表すようなエピソードでも思い出したのだろう。
 桐伯はそこまで話を聞くと、冬美に礼を言って優しく送り出した。

●了庵和尚の言うことにゃ【3C】
 桐伯は1人、『安楽寺』へ足を運んでいた。長い石段を昇り寺へ着くと、真正面の立派な梅の木が目に入った。花も見事に咲いており、あの推理小説とは違い、今はまさに季語通りであった。これで空が曇っていなければ素晴らしいのだろうが。
「おや、あんたは昨日の」
 竹ボウキで庭掃除をしていた了庵が桐伯に気付き声をかけた。了庵に一礼する桐伯。
「昨日はどうも」
「いやいや。どうなされたかな、ここには特別見るべき物はありゃせんぞ。まあ、暇を持て余しておるのなら、碁や将棋のお相手くらいはできるがな」
 笑みを浮かべる了庵。
「いえ、今日は和尚にお話があってやって参りました」
「ほお? わしに話とな。何かは知らんが、お上がりなされ。茶でも飲みながら話を聞こう」
 桐伯は了庵に促され、家屋へと入っていった。そして脇に釣り鐘があるのを見逃さなかった。
「……さて。話を聞かせてもらおうかの」
 座敷に上がり、了庵が桐伯に尋ねた。卓袱台の上には緑茶の入った湯呑みが2つあった。
「『龍の頭』で2年前に何が起きたのかを」
 桐伯は単刀直入に尋ねた。
「どうしてそんなことをお聞きなさるのかな。失礼じゃが、島の者でないおぬしがの」
 了庵が静かに尋ね返した。
「木藤家に今朝届いたという脅迫状の話はご存知ですか」
「ほう、知っておるのか。わしも聞いたとも。今頃は島中で噂になっとるはずじゃの。けども、脅迫状も珍しくはない。旧家の宿命じゃ……それでも真早紀さんの代で随分改善されたんじゃがな」
 あごを撫でながら、了庵が言った。この話振りだと、それ以前はよっぽど酷かったようだ。
「真早紀さんの父親がな、ちと横暴な人だったんじゃよ。気に入った娘を無理矢理愛人にしたりな。父親のそんな姿を見てたせいか、真早紀さんは本当に真面目じゃったよ。奥さんの巴さんも、真早紀さんがそうじゃったから今何とか切り盛りできておるんじゃ。そうでなければ、島の者でない巴さんは反感を買っておった所じゃろう」
「島の者でないというのは……?」
「巴さんは元は東京の人じゃよ。嫁入りを機に、この島へやってきたんじゃ。ただ当時は島に不安があったのか、初産の際は1年程東京に戻っておったがの。だから、上の双子は冬美さんと違い東京で生まれたんじゃ」
「そうなんですか」
 何事も聞いてみないと分からない物である。
「……と、2年前のことじゃったな。そうじゃ、2年前も事故が起きておる。早苗さんの母親、香苗さんじゃよ。靴が片方、あそこに落ちておった」
(やっぱりそうでしたか)
 桐伯の読み通り、犠牲者は早苗の母親だったようだ。
「遺体は発見されたのでしょうか」
「2週間後に運良く流れ着いたとも。あれは無惨な姿じゃった……南無阿弥陀仏」
 両手を合わせ、了庵が念仏を唱えた。
「昔からあそこは多いんじゃよ。巴さんが初産で東京へ戻られる3日前にも、旅行者があそこから落ちておるでな。やはり靴が片方残っておった。もっとも今もその遺体は上がっておらんがの」
「話を戻しますが、香苗さんのそれは事故なんでしょうか。失礼ですが、心中や駆落ちということは……」
 桐伯が疑問をぶつけると、了庵が眉をひそめた。
「……何が言いたいんじゃな。香苗さんは立派な方じゃったぞ、女手一つで民宿の切り盛りと早苗さんを育てなさったでな。あんたはこんなことを知って、何をされたいんじゃ」
 ぎろっと了庵が睨んだ。桐伯は小さく息を吐き、きっぱりと了庵に言った。
「脅迫状の実行を阻止するためですよ。そのために、疑問を解消していきたいんです」
 しぱし睨み合う両者。沈黙がこの場を支配した。
「……そうか。ならばおぬしの言葉を信用しよう」
 了庵は冷めつつある茶を一口すすると、自らの知っていることを話し出した。
「知っとるのかもしれんが、早苗さんの父親は分からん。わしも再三尋ねたが、香苗さんは死ぬまでそれを口にせなんだのでな。ただ言えることは、巴さんと同じ頃に不意に島から居なくなり、巴さんが戻ってきた頃に早苗さんを連れて戻ってきたことだけじゃ。口の悪い島の者は、旅行者に弄ばれたなどと言うておるがの」

●決意【6】
 それぞれ情報収集を行い、7人が2階の部屋へ戻ってきた。そして情報交換を行う。
「念のため草間さんに電話してアンケートを行ったデパートを調べてもらったんですけどね。どうやら何も怪しい所はなかったようです」
 つまらなさそうに将人が言った。
「こっちは馬鹿の相手で疲れた……」
 ぐったりした様子で、目元を押さえながらつぶやく慶悟。それでもしっかりと煙草はくわえていたが。
「……外の雲行きが怪しくなってきやがったな」
 窓の外を見つめ十三が言った。黒い雲が空を覆い、風もどんどん強くなり窓を揺らしていた。
「あっ。さっき上がる前にテレビで見たんですけど、低気圧が急速に発達してきてるみたいです。確か今夜にでも、この付近を通過するって……」
 思い出したように沙耶が言った。
「なるほど、春の嵐ですか。まるで舞台を整えているようにも思えますね」
 そう言って、将人は沙耶に微笑みかけた。
「皆さんにお聞きしたいんですが、早苗さんのことはどう思われています? 少し思う節があるんですが……」
 翔が皆に問いかけた。
「あ? 同じようなこと考えてやがるもんだな。俺はよ、早苗ちゃんが死んだ木藤の旦那の娘じゃねえかと踏んでんだがよぉ……分からなくなってきちまった」
「僕の推理でもそうなんですが、お2人の仲が悪かったというのが気になるんですよね」
 頭を掻く翔。仲の悪さが気にかかっているようだ。
「表面だけじゃ分からないこともあるさ。不完全な状態で断定するのは危険だろう」
 口から煙を吐き出す慶悟。
「私、春奈さんたちと出来たらお友だちになりたいです……だから。だから、絶対に殺させたくありません」
 美桜が静かに言った。だが強い意思を含んだ言葉であった。
「何にせよ、今夜が山ですね。天気が崩れるのが厳しいですけれど……」
 恨めしそうに窓の外を見つめる桐伯。雨が降り出したのか、窓に細かい雨粒がつき始めていた――。

●島の外では【7】
 情報交換を終え、階下に降りてくると早苗が丸めた紙をゴミ箱へ放り込む所だった。テレビからニュースの音声が流れてくる。
「岡山市内で発生した銀行強盗ですが、犯人は人質を取り行内に立て籠ったまま、警察との睨み合いが続いております……」

【極問島【情報収集編】 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0060 / 渡橋・十三(とばし・じゅうぞう)
           / 男 / 59 / ホームレス(兼情報屋) 】
【 0092 / 高御堂・将人(たかみどう・まさと)
                 / 男 / 25 / 図書館司書 】
【 0230 / 七森・沙耶(ななもり・さや)
                   / 女 / 17 / 高校生 】
【 0332 / 九尾・桐伯(きゅうび・とうはく)
                / 男 / 27 / バーテンダー 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
                   / 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0413 / 神崎・美桜(かんざき・みお)
                   / 女 / 17 / 高校生 】
【 0416 / 桜井・翔(さくらい・しょう)
   / 男 / 19 / 医大生&時々草間興信所へ手伝いにくる。 】


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■         ライター通信          ■
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・極問島へようこそ。
・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全16場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は、整理番号順で固定しています。
・お待たせしました、『極問島』シリーズ第2回をお届けします。高原は今回、書いていて訳が分からなくなりました。そのくらい情報があちこちに散らばっていますので、上手く情報の取捨選択を行ってください。
・まず、情報の取り扱いについて少し。第1回での情報は共通使用が可能です。今回知り得た情報も基本的には共通使用が可能です。ただし場面単位で情報封鎖をかけても構いません。メリットは……他の人を出し抜く以外、特にありませんが。その場面に登場している全員が情報封鎖をかけると、その場面の情報は封鎖されます。万一情報封鎖をかける場合は、次回のプレイングでその場面番号を記してください。解除しない限り、最終回まで情報封鎖がかかります。ただし例外な方も居ますので。
・次に、天候と島の外の状況について少し。本文最後にありましたように、岡山市内で銀行強盗が発生しました。現在も立て籠りが続いており、長期戦になる模様です。それゆえ、県警がやってくることは難しいと思ってください。それに加えて、急速に発達した低気圧が接近しつつあります。海上も荒れますので……今夜は孤島状態になることを覚悟しておいてください。
・最後に、次回のプレイングについて。次回はとうとう夜を迎えます。何かを、もしくは誰かを守る場合はその範囲を明確に記してください。次回は少し厳しめに見ようと思います。
また、情報が足りないと思われるなら情報収集を続けることも可能です。
・蛇足。今回のプレイングですが、皆さん内容はよかったと思いますよ。推理ものですから、どれがよくてどれがよくないと触れるのはまだ避けておきますが。
・九尾桐伯さん、3度目のご参加ありがとうございます。了庵和尚について補足を。事故かどうかを突っ込んだ時に少し動揺があった以外は、特に妙な所は見当たりませんでした。その動揺に対する突っ込みの結果は、早苗の生い立ちの部分になります。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また極問島でお会いできることを願って。