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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


極問島【情報収集編】
●オープニング【0】
 LAST TIME 『極問島』――。
 ある日草間が某大手デパートのアンケートに答えて旅行チケットを当てた。
 都合が悪くて行けないという草間からチケットを譲り受けた一行は、瀬戸内海に浮かぶ島である極問島へ向かった。旅行を楽しむために。
 そして島を散策してみると、色々な場所があることが分かった。一行の泊まる民宿『海龍』を筆頭に、『安楽寺』『極問神社』『石舞台』『龍の頭』等々。うちいくつかは、某推理小説と似通ったような場所であった。
 楽しさの中に不安を抱きながらも、何事もなく初日の夜は無事に明けた。心配は杞憂かに思われた。
 だが翌朝、朝食の席に一行が降りてくると、民宿に電話がかかった。それは民宿へ遊びにきていた旧家・木藤家の娘を呼び戻すための電話だった。何と『今夜、木藤真早紀(きとう・まさき)の娘を殺す』という文面の脅迫状が届いたというのだ。
 いったいこの島で何が起ころうとしているのか――それを知るには情報が不足していた。
 別にこのまま旅行に徹してもいいのだが……さて、どうしたものか。

●見えない糸を【2A】
「レジャーが……」
 船着き場の近くを歩いていた慶悟は、そうつぶやくと激しく舌打ちをした。朝、民宿での時のような寝癖はなく、いつものようにきっちりと身だしなみを整えていた。
 陰陽師というのは当たり前の話だが収益不安定な職業である。それゆえにこうした純粋な旅行は滅多にできる物ではない。その滅多にない機会を、忌々しい脅迫状のせいでふいにされたのだ。愉快なはずがない。気分を天気で例えるならば、今の空のように曇っていた。
 けれども脅迫状が届いたとあっては、みすみす見過ごす訳にもいかない。そう思い、慶悟は本格的に行動を開始することにした。
(要所要所に式神は飛ばしておいたが……) 一見島内をぷらぷらとしているように見えるが実は違う。慶悟は自らの手足となる式神たちをすでに数体放っていた。昨夜桐伯が露天風呂で話していた某推理小説に似通った場所へ各々1体ずつ。それから冬美たち3姉妹に各々1体ずつ。そして――。
(あとは謎の式神だな。誰が使役しているのか、確認できればいいんだが)
 慶悟は懐から煙草を1本取り出し、火をつけた。外見を見ている限り、普段と変わりはない。あくまでクールだ。
(ともあれ、俺は島内を巡ることにしよう)
 慶悟は煙を大きく吐き出した。

●若さゆえの暴走、あるいは大馬鹿者【3D】
 慶悟は島内をぶらぶらと歩き続けていた。花のハウス栽培の様子を眺めていたり、擦れ違った若い娘を冷やかしてみたりと気の向くままに。
 端から見れば、暇を持て余した旅行者としか見えない。もっともそれが慶悟の計算なのだが。
 そして慶悟は島の外れの森にやってきていた。
(さて、引き返して今度は釣りでもするか)
 散々歩き回ったので、次は腰を落ち着けようと慶悟は考えていた。そしてくるりと半回転し、ぴたっと足を止めた。
(……ふん。何とも分かりやすいぜ)
 慶悟は煙草を口にくわえた。木がざわっと揺れる。その瞬間、慶悟目掛けて何かが襲いかかってきた!
 するとその途端、慶悟が潜めておいた式神が姿を現し、襲いかかってきた何かを迎撃する。小鬼のような姿のそれは、慶悟の操る式神によって一撃で粉砕された。
(こっちか!)
 殺気のする方を向き、素早く印を結ぶ慶悟。『禁呪』による行動封じだ。上手くいっていれば、相手は動けなくなっているはず。慶悟は煙草に火をつけると、ゆっくりとその方角へ歩いていった。
「やっぱりな……」
 ニヤッと笑う慶悟。向かった先、木の陰に必死に足を動かそうともがいている1人の青年の姿があったのだ。背丈は慶悟と同じくらいで、がっしりとした体格をしていた。
「俺に式神で対抗しようなんざ、100年早いよ」
 先程粉砕した小鬼は式神であった。恐らくこの青年が操っていたのだろう。
「名前は?」
 慶悟が尋ねると、青年はぷいと顔を背けた。
「……名前は?」
 青年の耳を慶悟は強く引っ張った。
「痛い痛いっ! 将司、神薙将司(かんなぎ・まさし)!」
「そうそう、最初っから素直に話せばいいんだ。で、どうして俺を襲った?」
 冷ややかな視線を将司に向けながら、慶悟が言った。
「…………」
 口をつぐんだまま答えない将司。
「人に式神向けときながら、その態度はないだろ。ん?」
 再び耳を引っ張る慶悟。口調こそ普段と変わらないが、内心少し腹を立てていた。
「痛い痛いっ! あんたが怪しく見えたんだよ!」
「はあ?」
 まあ……今日の慶悟の行動は、怪しいといえば怪しいのかもしれないが。それだけで襲われる筋合いもないはずだ。
「あんたがなっちゃんを狙ってるんじゃないかって……第一、その格好が怪しいんだよ!」
 叫ぶ将司。どうやら彼女か何かに手を出されるんじゃないかと思ったようだ。しかし『なっちゃん』といえば木藤家の娘、夏子のはず。ならば……色恋だけでもなさそうだ。
「脅迫状か?」
「ああそうだ! 脅迫状は出しても、島の者で『殺す』なんて言う奴は居ない! とすると他所者のあんたが怪しいんだ!」
 短絡的、あまりにも短絡的な発想。慶悟は呆れ返ってしまった。
「……やってられないな。神社の跡継ぎ息子が、思い込みで人に式神向けてんじゃないよ」
 前髪を掻き揚げる慶悟。
「いいか、式神向けるってことは、刃物を向けるに等しい……」
 慶悟は将司に説教を一頻り続けた。この調子で他の者も襲われては、たまった物じゃないからだ。
「……いいか、式神使うんならこのくらいは覚えておけ。ああ、もうついでだ。知ってることは、全部話してもらおうか」
 話し疲れたのか、慶悟は小さく溜息を吐いた。
「俺は何も知らないよ……。知ってるのは親父が昔、早苗ちゃんの母親が好きだったことくらいだ」

●噂【4A】
「木藤家の噂かい? そうだなあ……巴さんは東京に居た頃、結構遊んでたって噂だ。あくまで噂だよ、噂」
 ニヤニヤと将人に話す中年男。噂なんて言っているが、この顔付きからするとそれはどうか。
 将人は木藤家を辞した後、島内を散策していた。そこで噂好きそうな島民に当たりをつけて、木藤家や島の噂に探りを入れていたのだ。そしてそれは間違っていなかったようだ。
「そんな噂があったもんだからさ、亡くなった大旦那が色々と考えてたらしいな。それでも子供が出来たら、そんな話もすっかりどっかへ消えたよ」
「はあ、そうなんですか」
「真早紀さんもあれだ、明日で亡くなって1年か。若く立派なのに惜しかった、ありゃ。早苗ちゃんの母親があっちの世界へ呼んだって噂もあるくらい、ほんと急だったよ。……あくまで噂だ、噂」
 中年男はそれから色々と話していたが、それ以上は有益な情報は得られなかった。礼を言い中年男から離れてゆく将人。民宿へ戻る途中で、慶悟と一緒になった。
「おや、どこへ行っていたんです?」
 将人が笑顔で話しかけた。慶悟は少々疲れたようにも見える。
「ちょっと馬鹿の相手をな」
 苦笑する慶悟。
 互いにそれ以上は何も語らず、一緒に民宿へ戻る2人。2人の間に妙な空気が漂っていた。空には黒い雲がさらに広がり、風も少し強くなってきていた。

●決意【6】
 それぞれ情報収集を行い、7人が2階の部屋へ戻ってきた。そして情報交換を行う。
「念のため草間さんに電話してアンケートを行ったデパートを調べてもらったんですけどね。どうやら何も怪しい所はなかったようです」
 つまらなさそうに将人が言った。
「こっちは馬鹿の相手で疲れた……」
 ぐったりした様子で、目元を押さえながらつぶやく慶悟。それでもしっかりと煙草はくわえていたが。
「……外の雲行きが怪しくなってきやがったな」
 窓の外を見つめ十三が言った。黒い雲が空を覆い、風もどんどん強くなり窓を揺らしていた。
「あっ。さっき上がる前にテレビで見たんですけど、低気圧が急速に発達してきてるみたいです。確か今夜にでも、この付近を通過するって……」
 思い出したように沙耶が言った。
「なるほど、春の嵐ですか。まるで舞台を整えているようにも思えますね」
 そう言って、将人は沙耶に微笑みかけた。
「皆さんにお聞きしたいんですが、早苗さんのことはどう思われています? 少し思う節があるんですが……」
 翔が皆に問いかけた。
「あ? 同じようなこと考えてやがるもんだな。俺はよ、早苗ちゃんが死んだ木藤の旦那の娘じゃねえかと踏んでんだがよぉ……分からなくなってきちまった」
「僕の推理でもそうなんですが、お2人の仲が悪かったというのが気になるんですよね」
 頭を掻く翔。仲の悪さが気にかかっているようだ。
「表面だけじゃ分からないこともあるさ。不完全な状態で断定するのは危険だろう」
 口から煙を吐き出す慶悟。
「私、春奈さんたちと出来たらお友だちになりたいです……だから。だから、絶対に殺させたくありません」
 美桜が静かに言った。だが強い意思を含んだ言葉であった。
「何にせよ、今夜が山ですね。天気が崩れるのが厳しいですけれど……」
 恨めしそうに窓の外を見つめる桐伯。雨が降り出したのか、窓に細かい雨粒がつき始めていた――。

●島の外では【7】
 情報交換を終え、階下に降りてくると早苗が丸めた紙をゴミ箱へ放り込む所だった。テレビからニュースの音声が流れてくる。
「岡山市内で発生した銀行強盗ですが、犯人は人質を取り行内に立て籠ったまま、警察との睨み合いが続いております……」

【極問島【情報収集編】 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0060 / 渡橋・十三(とばし・じゅうぞう)
           / 男 / 59 / ホームレス(兼情報屋) 】
【 0092 / 高御堂・将人(たかみどう・まさと)
                 / 男 / 25 / 図書館司書 】
【 0230 / 七森・沙耶(ななもり・さや)
                   / 女 / 17 / 高校生 】
【 0332 / 九尾・桐伯(きゅうび・とうはく)
                / 男 / 27 / バーテンダー 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
                   / 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0413 / 神崎・美桜(かんざき・みお)
                   / 女 / 17 / 高校生 】
【 0416 / 桜井・翔(さくらい・しょう)
   / 男 / 19 / 医大生&時々草間興信所へ手伝いにくる。 】


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■         ライター通信          ■
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・極問島へようこそ。
・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全16場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は、整理番号順で固定しています。
・お待たせしました、『極問島』シリーズ第2回をお届けします。高原は今回、書いていて訳が分からなくなりました。そのくらい情報があちこちに散らばっていますので、上手く情報の取捨選択を行ってください。
・まず、情報の取り扱いについて少し。第1回での情報は共通使用が可能です。今回知り得た情報も基本的には共通使用が可能です。ただし場面単位で情報封鎖をかけても構いません。メリットは……他の人を出し抜く以外、特にありませんが。その場面に登場している全員が情報封鎖をかけると、その場面の情報は封鎖されます。万一情報封鎖をかける場合は、次回のプレイングでその場面番号を記してください。解除しない限り、最終回まで情報封鎖がかかります。ただし例外な方も居ますので。
・次に、天候と島の外の状況について少し。本文最後にありましたように、岡山市内で銀行強盗が発生しました。現在も立て籠りが続いており、長期戦になる模様です。それゆえ、県警がやってくることは難しいと思ってください。それに加えて、急速に発達した低気圧が接近しつつあります。海上も荒れますので……今夜は孤島状態になることを覚悟しておいてください。
・最後に、次回のプレイングについて。次回はとうとう夜を迎えます。何かを、もしくは誰かを守る場合はその範囲を明確に記してください。次回は少し厳しめに見ようと思います。
また、情報が足りないと思われるなら情報収集を続けることも可能です。
・蛇足。今回のプレイングですが、皆さん内容はよかったと思いますよ。推理ものですから、どれがよくてどれがよくないと触れるのはまだ避けておきますが。
・真名神慶悟さん、2度目のご参加ありがとうございます。式神を飛ばしていましたので、『龍の頭』『安楽寺』『木藤家玄関』『木藤家座敷』での情報は情報封鎖の対象外になります。3姉妹は、自宅に戻った後は1歩も外へ出ていません。PC以外で木藤家へやってきたのは了庵と竜司と大馬鹿者、もとい将司のみです。なお将司は慶悟さんに逆らえなくなっていますので。あと、謎の式神は将人さんの物でした。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また極問島でお会いできることを願って。