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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


 天使システム〜天使降臨〜前編

<オープニング>

「ねぇ、南青山に天使が現われたって知っている!?」
 ゴーストネットの書き込みはこのような形で始まっていた。
「昨日南青山の駅前に天使が現われて皆に『間もなく神の世が訪れます。人の子よ。神の教えを守りなさい』って言ったんだって。ほんとかどうか分からないけどなんだか気になるよね。誰か確かめてきてくれないかな?」
 そして、依頼を受けて南青山に訪れた者たちの目に入ってきたのは、白い翼をはやした天使たちが光の矢をもって人間を射抜いているところだった。これは一体どういうことなのだろうか?

<天使>
 
 南青山駅前。流行の先端を行く都市であり、若者の姿などで賑わっている都市。この都市に突如天使が出現したのは三日前。駅前を歩く人たちの頭上に突如眩いばかりの光が差し込み、天から白い翼を持った女性が舞い降りてきたのだ。彼女たちは穏やかな笑みを浮かべて人々にこう告げた。
「間もなく神の世が訪れます。人の子よ。主の教えを守り、主の導くままにその御手に全てを委ねなさい」
 それは声というより頭に直接響く、テレパシーのようなものだったという。彼女たちはそれだけを伝えると天に昇り消えていった。当初は何かのアトラクションかと思われていたのだが、そのような企画を考えていた会社はどこにも無かった。一時はマスコミなどが押し寄せ大変な騒ぎとなったが、それも落ち着き人々の記憶からも薄れ始めた頃・・・。
 天使はまた現われた。しかし今度の天使たちはメッセージを告げにきたのではなかった。いきなり光の弓を取り出し、街中の人々を射抜き始めたのだ。光の矢に貫かれた人は血を噴出すことも無く、静かに絶命した。パニックを起こし逃げ惑う人々と、穏やかな笑顔を浮かべて人々を射抜く天使たち。南青山の駅前は一瞬にして阿鼻叫喚の地獄と化した。

<さくら犬猫病院> 

 さくら犬猫病院はその日も多くの病気の犬や猫を抱えた人達でごったがえしていた。この不況の閉塞感に包まれた世の中、ペットに癒しを求める者は多いのだろう。
「は〜い、ケンタ君ちょっと我慢してねぇ」
 診察室では、獣医が雑種の犬の尻に体温計を刺して体温を測っていた。その間犬が怯えないようになでさすってやる。そして体温を測り終えた獣医は、心配そうな飼い主を元気づけるように明るく言った。
「特に体温に問題はないね。少し体温が低いのが気になるけど、動悸は落ち着いているし、それほど心配はないでしょ。一応お薬出しておきますから一日二錠、食事の後に与えてやってください。それでしばらく様子を見ましょう」
「有難うございます、ライティア先生」
 飼い主はほっとした様子で犬を抱き上げ診察室を出て行く。ライティアと呼ばれた獣医はしばらくカルテの作成に取り掛かり、看護婦を呼ぶ。
「このお薬だしてあげて。」
「はい。あ、先生。院長先生が少し休憩に入るようにって行ってましたよ」
「そうだねぇ。そう言われれば確かに朝ずっと働きっぱなしだよ。じゃあちょっと休憩に入らせてもらうね。お疲れ様」
「お疲れ様です」
 彼は診察室を出て、休憩室に向かう。ふと時計を見ると既に時刻は一時を回っている。そういえばお腹も空いてきた。朝から何も飲まず喰わずで診察を行っていたためだ。
「いやぁ、流石に4時間以上患者の相手をしていると疲れるもんだね。さてと」
 白衣を脱いでハンガーにかけ、出前のチラシを目を通す。すると、ハンガーにかけた白衣のポケットからメロディが流れてきた。
「あ、いけね。ポケットに携帯入れっぱなしだ」
 ポケットから取り出した携帯に表示されている電話番号は知り合いのものだった。
「もしもしヴェラクかい?何か用かい?」
「ライティア、南青山までこれませんか?」
「突然何を言ってるんだい。今日は仕事だよ」
「南青山に天使が現われました」
「はぁ?天使?」
 ライティアは呆けた声を出した。確かにいきなり天使が現われたと言われては吃驚するだろう。冗談を言っているのではないかと一瞬思ったが、生憎彼は冗談などを言う人間ではない。
「しかも人を襲っています。もしかすると悪魔の仕業かもしれません」
「悪魔の仕業だって!?」
 ライティアは自分の右肩を見た。そこには小さな蛇みたいなものが巻き付いている。しかしそれはただの蛇ではなく、上半身は人間の女性の形をしており、目の部分は覆いが施されている。いくら犬猫病院にいるからといってこんなものを肩にからませておいて騒ぎならないのだろうか。そう疑問に思うところだが、彼女は普通の人間には見ることのできない存在悪魔なのである。正確に言えば悪魔に近いモノというべきであろうか。陰陽師の用いる式神の悪魔版といえば分かりやすいかもしれない。
「悪いこと全てを悪魔のせいにされてはたまらないわ」
「だそうだ」
「なら、こっちに来て確かめてみませんか?とにかくたくさんの天使がいて一人でも多くの人に助けて欲しいんですよ」
 しばらく考えこんだライティアは「分かった」と答えた。
「父さんに断ってから行くよ。場所は南青山のどこだい?」
「駅前です。ではまっていますからなるべく早く来てください」
 通話が切れた。どうやらとんでもないことが起きているようである。彼は足早に休憩室を出ると診察室に向かった。そこでは初老の獣医が診察に当たっていた。ライティアの父親でもある、この病院の院長である。
「おや、ライティアじゃないか。どうしたんだそんなに慌てて・・・」
「父さん。ちょっとボク出かけてくるよ」
「突然どうしたんだ。何処に行くのかね?」
「南青山」
 あっさりそう答えると、「南青山!?この忙しいの何を・・・!」という父親の言葉を無視して彼は裏口に向かった。急がなければなるまい。友人の口調は落ち着いていたが、大変な事がおきていることは確かなようなのだから。
「真実はこの目で確かめないとね。いくよネイテ」
 肩に乗る悪魔にそう告げながら、獣医ライティア=エンレイは南青山へ向かうのだった。

<聖職者たち>

 南青山では現在も天使たちによる凶行が行われていた。光の弓に矢をつがえ放つ。次々とその矢に射抜かれて倒れていく人間たち。その光景を見ながら一人の牧師がつぶやいた。
「神様の御使いにしちゃ随分な御挨拶じゃないですか。私はそんな挨拶の仕方を教えて貰った覚えは無いですねぇ」
 翠の、木の葉というよりはエメラルドのような冷たい光を放つその双眸が、天使たちを冷ややか見つめていた。天使が現われたと聞きつけてきてみればこの有様。何が天使なのか。外見は確かによく教会などでイメージされる天使ではあるがやっていることは単なる人殺しではないか。これが天の意思とでもいうのだろうか。
 そうこうしているうちに、彼の頭上の上にも一人の天使が現われた。
「人の子よ。悔い改めなさい。神の世は近づいている。神の元に向かうのです」
 矢をつがえる天使を見ながら、神父、ショシュア=マクブライトは哄笑を上げた。
「笑わせてくれますね。何が悔い改めなさいですか。神がとかれるは万人への愛のはずですよ」
 彼の言葉に何の返答もせず、穏やかな笑みを浮かべたまま天使は矢を放った。それは一条の閃光のようには疾しり、ジョシュアの胸を貫いたかに見えた。だが・・・。
 ギィィィン!
 甲高い音を立てて光の矢が砕け散った。彼の横合いから現われた修道女らしき女性が、腕に仕込まれた銀の刃で光の矢を切りつけたためである。彼女はジョシュアと同じ翠色の瞳で天使を睨みつける。
「穢れし罪人の遣いども。人に弓引くなど神の業にあらず。ましてや我が神の名、楽園を騙るは大罪なり!邪業の輩は悉く、滅ぶべし!」
 言うが早いか、左腕に天使に向ける。するとその腕から銀のワイヤーが放たれ天使を絡めとった。そして彼女は力ずくでそれを地上に引き摺り下ろす。
「貴様らなどに白き羽根など無用!」
 さらに問答無用で腕に取り付けられている連射式ボウガンを起動させ、身動きの取れない天使に向けて銀の矢を連発した。白い羽が舞散り蜂の巣にされる天使。すると天使は真っ白の塩の塊になり、崩れ去った。
「所詮は邪悪の輩か・・・」
 ワイヤーを回収させながら呟く女性。
 パンパン。
 戦いの一部始終を見守っていたジョシュアは彼女に拍手をして近づいた。
「いやぁ〜。お見事お見事。大した腕前ですね」
「お前、神父か?だが、お前からは魔の匂いがする。先ほども何か邪なものを使おうとしていたな。貴様も神の敵か!」
 鋭い口調でそういい放つと、彼女は銀の刃をジョシュアの首筋に突きつけた。
「過激ですねぇ。なんのことだかさっぱり・・・」
「とぼけるな!貴様からは悪魔たちに近い気配がする。何者だ。返答の如何によってはその首貰い受ける!」
「ただの神父ですよぉ。そんなに激昂しないで・・・。それよりも私なんかに構っていていいんですか?天使たちが人を襲っていますよ」
 ジョシュアが笑顔が指指す先には確かに光の矢に襲われている人々がいる。「むっ」と唸った修道女は渋々刃を収めた。
「止むを得ん。今のところは退いてやる。だが、この戦いが終ったら私の問いに答えてもらうぞ」
「いいでしょう。ああ、お互い名前が分からないと不便ですね。私はジョシュア=マクブライト。お察しのとおり神に遣える神父などをしております。貴女は?」
「ロゼだ。ロゼ=クロイツ。ジョシュア=マクブライトだな。その名前を覚えておくぞ」
 そう言って踵を返し、銀の髪を激しく波打たせながら天使の群に突っ込んでいくロゼ。その姿を見ながらジョシュアはやれやれと首をふった。
「いやはや物騒な人でしたね。いや、彼女は人ではありませんね」
 ロゼが放ったワイヤーや銀の矢は全て彼女の腕から放たれていた。そして戻す時も腕の中に収納していた。そうあれらの武器は彼女の身体の一部だったのだ。
「サイボーグ・・・。いえ、傀儡人形と言ったほうが正しいでしょうか。ねぇ、メフィスト」
 彼は妖しい笑みを浮かべると自分の影に向かってそう笑いかけた。すると彼の影がむくりと起き上がり別のものへと姿を変える。紫のスーツを着た初老の紳士。だがその眼光の鋭さはただものではない威圧感を与える。彼は狡猾な笑みを浮かべて召喚者に答えた。
「そうじゃのう。あれは人形じゃな。それにしてもわしが隠れていることを見破るとは中々やりおるわ、あの人形めが」
「遊んでも良かったのですが、今はあの天使どもを消すことに集中しましょう。はっきり言ってあの存在は気に入りません」
別に人を護りたいとか世界を救いたいとか、そういった俗に言う正義感みたいなものは持ち合わせていないが、正義は我にあり的な輩は彼の最も嫌いなものの一つだった。
「このメフィストフェレスにあんな下級の天使風情の相手をせよと申すのか?」
「まぁ、そういわずに。あんなのでも天使は天使でしょう。貴方の宿敵みたいなものなのだから相手をしてやってください」
「堕落させる価値すらない奴らなのだがな・・・」
 渋々メフィストはジョシュアの言葉に従った。一応、召喚主に逆らうことはできない。あくまで一応だが・・・。

「光の壁よ!」
 天使から放たれた光の矢は、同じ光を放つ壁に弾かれ四散した。黒衣の僧服を着た端正な顔立ちの神父は、腰を抜かして倒れている女性に告げた。
「さぁ、今のうちに逃げなさい。早く!」
「は、はい・・・」
 慌てふためきながら逃げてゆくその女性を追おうとする天使。神父はそれを呼び止めた。
「お待ちなさい。何ゆえ人を殺すのです。主はそのような事を望まれていないはず」
「神の世が来るのです。この地上に神が降臨されます。しかし地上に住む人は罪を犯しすぎました。故に神は人間の魂をお救いになろうとしているのです」
「馬鹿な。それで殺すというのですか?それでは救いでも何でも無い、単なる粛正ではありませんか」
「神はそれをお望みです」
 そして再び矢をつがえる天使。怒りに燃える紅蓮の瞳でその天使を睨みつける神父ヴァラク=ファルカータ。こんな事があっていいはずがないのだ。万人愛を説く主が、罪を犯したからといって無差別に人間を殺すことなどありえない。ありえてはならないのだ。
「人の子よ。神の御元に参りなさい。そこで罪は償われ神の元へ回帰するのです」
 光の矢が放たれようとしたその時、一般的に悪魔といわれる姿、蝙蝠の翼に尖った尻尾を持つ姿の石の塊が天使に突っ込んでいった。突然のことに対応できない天使は、その岩の悪魔に肩を掴まれて地上に落とされた。岩の悪魔は教会の魔除けなどに使われている石像とそっくりのものだった。
「よくやった、ガーゴイル」
 後ろから聞こえてきた声。それはヴァラクが聞きなれたものだった。
「遅かったですねライティア」
「いきなりの呼び出しだからね。なるべく急いだんだけど・・・」
 さくら犬猫病院から呼び出されたライティアが今到着したのだ。少々離れた駅前に来るのに時間がかかってしまったのは仕方の無いことだろう。
「それでこれは一体何なんだい。まさか本物天使?」
 石悪魔ガーゴイルに肩を掴まれて、何とか逃げ出そうとしてもがいている天使を見ながら問うライティア。彼の問いに、ヴァラクは首を振って答えた。
「いえ、神の使い、真の意味での天使ではないでしょう。天使に近いもの。君の使う悪魔に近いかもしれません」
「ボクの悪魔に?」
 ヴァラクはコクリと頷く。天使とは本来、神の教えを人に伝える役目を担っている。また守護天使といって人を守る天使も存在する。第一真に天使が敵となったのであれば、神の力を借りて行使する自分の力は全て発揮されなくなるはず。しかし現在のところ神は自分たちを見捨てたわけではない。そう、彼はライティアに伝えた。
「それでどうするんだ?こいつらを調べるのかい?」
「そうしようと思います。彼らが何者なのか掴んでおく必要があるでしょうね」
「しかし・・・」
 ライティアは苦笑しながら周りを見渡す。そこには相変らず光の矢を放ちつづける天使たちと戦う者たちがいた。地を蹴り、人間では不可能なはずの跳躍力で空中にいる天使に剣で切りかかる銀髪の修道女に、妖しげな光を放ち天使の魂を奪い、次々と塩の柱に変えていく謎の老人。それに自分が使役する石悪魔。
「これじゃあ、こっちがまるで悪魔の軍団みたいじゃないか。特にあれ」
 そう言って彼が指差したのは、捕まえた天使を一飲みに飲み込む蛇の頭をした人間らしきモノだった。はっきりいってかなりおぞましい。
「・・・・・・」
 ヴァラクはその光景を見てしばし言葉を失うのだった。

<天使喰らい>

「天使ねえ・・・面白い♪最近お腹減ってしょうがないんだよね・・・フフッ♪」
 少年は光の矢を射る天使を見ながら、舌なめずりをした。まだ小学生くらいの栗毛色の髪をした、赤瞳の少年だ。彼をその双眸をらんらんと輝かせながら天使を見入る。
「本当に天使なのかなー?すっごい雑魚の気配しか感じないや♪」
 少年らしい無邪気さと残酷さを伴った台詞。彼、紫堂奏太はふわりと舞い上がると、天使の元に近づいていった。天使は彼の接近に感づき、矢をつがえる。
「人の子よ。罪を償いなさい。神の世が来るのです」
「あはははは。何を言っているのかなぁ。罪だなんてそんなものあるわけないじゃない。大体僕、人間なんかじゃないし」
 天使は彼の言葉に対し、無言で光の矢を撃った。彼はそれをあっさりと回避すると、手を前に突き出し天使に向ける。
「あっはっはっは!死んじゃえ〜♪」
 さも楽しくてたまらないという表情で彼が打ち出したのは、不可視の衝撃波だった。ドンという音とともにはるか後方に吹き飛ばされていく天使。いわゆる念動力というもので、己が気を操ることで肉体を強化したり、このように空を飛べるようになったり、ぶつけることで強い衝撃を生み出すことができる。
「よっわーい♪ボスとかってもちろんいるよね?後々の為に、少しくらい食べといたほうがいいかなー♪」
 大きく見開かれた真紅の双眸に嗜虐の色が宿り、髪の色が栗毛色からさらに薄く、白髪に変化する。
ニタリと笑う口元からは強大な牙を覗かせ、長く伸びた爪を天使たちに向けて哄笑を上げる。
「ぎゃはははは!!!歯ごたえのねぇ奴らだぜ。俺様はこの頃ダイエット期間中だったんだが、いい加減腹も減ったことだしおめぇらでも喰って我慢するとしようか!」
 口調も荒々しい別人に変化している。彼の本性である鬼「九霊」の姿になったのだ。普段は以前魂を喰らった少年の身体に潜んでいるが、本性を明かすことによりその戦闘能力は格段に上昇する。目にも止まらぬ速度で一気に天使との間合いを詰めると、爪で薙ぎ払う。深々と身体をえぐられた天使は血しぶきを上げながら地上に落ちていく。数人の天使が放つ光の矢を余裕で回避すると、念動力で弾きとばし、爪で切り裂く。彼は手ごろな天使を一体見つけると頭を鷲づかみにすると、口を大きく開けた。
「さて飯の時間だぜぇ! まずは一匹召し上がれ♪」
 普段、関係の無い人間を喰わないことという形で契約している彼にとっては久方ぶりの馳走である。顔を大蛇の形に変貌すると頭からかぶりつく。そこにはおぞましい光景が広がっていた。蛇の頭をした少年が天使を丸呑みにしているのだ。その小さな身体のどこに天使が入るのかと思われるのだが、彼は肉体とともに魂を喰らっているのでそれに関しては問題ない。しかし、やはり元がそこそこ大きいため、何度かむりやり押し込んで何とか飲み込んだ。
「これで天使になれるー♪ま、偽者だろうが知ったこっちゃねえが、情報はもらったぜ♪…ん?なんだ。う、しょっぺぇ!」
 慌てて天使の残骸である白い塊を吐き出す彼。そう、その白い塊とは塩である。魂を失った天使の身体は塩と化したのだ。口の中が塩味だらけになった紫堂をぺっぺっと唾液を何度も吐き出した。
「なんだよ、これ・・・。塩の塊じゃねぇか!ふざけんな。やっと久々に飯が食えると思ったのに・・・。おめぇら、全部殺す!!!」
 期待していた食事があまりにもまずく、喰えた代物ではなかったため紫堂、いや九霊は大いに憤慨した。そして怒りの矛先を天使に向けて攻撃を再開する。完全な八つ当たりであるが・・・。
 しかしこの事に対して疑問をもっている天使もいたのである。

<天使対天使>

 金髪のオペラ歌手、ラフィエル=クローソーは目の前で繰り広げられている光景を目にして首を傾げていた。
「ちゃんと〜連絡〜してるんですけど〜、どうして〜私には〜連絡が〜ないんでしょうね〜?」
おっとりとした口調でそうつぶやく。その表情は飄々としていて、この事態でも動揺はしていないようだ。ただ釈然としないだけである。地上の連絡役である自分になぜこの件に関して連絡が無かったのかということに関して。彼女は実は天使であり、地上の様子を神に伝える役を担い、地上に降りていた。表向きの顔は ソプラノ歌手として世界各地でオペラやオラトリオ、コンサートなどに出演し、地上の状態を調べていた。
「仕方がないですね〜。直接聞くことにしましょうか〜」
 そう言うと、彼女は背中に折りたたまれている白い翼をはためかせ天へと昇っていく。手首に付けられたブレスレットが外れ、くるくると頭上を回り始めた。 彼女の接近をしるや、天使たちは光の矢を収める。
「ど〜してこんなことを始めたのですか〜」
「神のお決めになったことです」
「私は何も聞いてませんよ〜」
「連絡が遅れたのであろう」
 突然上から浴びせられた威厳のある声。天使たちがそろって頭を下げる先にいるのは、他の天使より一際明るく輝き鎧と剣を持った天使であった。大天使と呼ばれる天使である。
「ラフィエルよ。ご苦労だった。もはや神の決断は下された。人は罪を犯しすぎた。この地上の人間はすべからく滅ぼされるべきなのだ」
「ちょっと待ってください〜。全ての〜人間が〜悪いわけではありませ〜ん。善良な人間もいるんですよ〜」
「神は全てをご存知だ。その上でのご決断である。お前はそれに異論があるというのか?」
 天使にとって神は絶対である。その神に対し異論を持つというのはすなわち堕落に繋がる。かつて神と意見を異としたルシフェルのように悪魔になる以外道は残されていない。
「それは〜・・・」
 言葉につまるラフィエル。天使である以上神に逆らうわけにはいかない。かといって人間たちを滅ぼすに関しても納得がいかない。どちらを選択すべきなのか分からなくなったラフィエルは呆然と立ち尽くした。
「お前も神の尖兵となり戦うのだ。この地上から汚れを無くすために。さぁ、お前達は人間たちを滅ぼしてこい」
 大天使の指示に従い天使たちは次々と散っていく。ラフィエルはその光景を見つめながら自分はどうすれば良いのか迷っていた。神に従うべきなのか、それとも・・・。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0477/ラフィエル・クローソー/女/723/歌手
    (らふぃえる・くろーそー)
0476/ライティア・エンレイ/男/25/悪魔召喚師
    (らいてぃあ・えんれい)
0016/ヴァラク・ファルカータ/男/25/神父
    ( う゛ぁらく・ふぁるかーた
0449/紫堂・奏太/男/12/鬼
    (しどう・そうた)
0423/ロゼ・クロイツ/女/2/元・悪魔払い師の助手
    (ろぜ・くろいつ)
0363/ジョシュア・マクブライト/男/25/いちおう神父
    (じょしゅあ・まくぶらいと)

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■         ライター通信          ■
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 大変お待たせいたしました。
 天使システム〜天使降臨〜前編をお届けします。
 今回は14人もの方にご参加いただき有難うございました。便宜上前半後半に分けさせていただきましたが、こちらは聖職者の方が中心となっています。後日後半部も上がると思いますので、そちらもご覧いただければと思います。この作品に対するご意見、ご感想、ご要望、ご不満などがございましたらテラコンより連絡を頂戴できればと思います。
 それではまた別の依頼でお目にかかれることを祈って・・・。