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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


極問島【攻防編】
●オープニング【0】
 LAST TIME 『極問島』――。
 旧家である木藤家に『今夜、木藤真早紀(きとう・まさき)の娘を殺す』という文面の脅迫状が届いたことを知り、各々情報収集に向かった一行。ある者は木藤家へ、またある者はその他の場所へと。
 木藤家では未亡人、木藤巴(きとう・ともえ)が一行を出迎えた。座敷に上がり、3姉妹から事情を聞くが、肝心の脅迫状は長女の春奈(はるな)が燃やしてしまっていた。
 一方木藤家以外へ向かった者も、各々情報を得ていた。有益無益は分からないが。
 民宿『海龍』へ戻った一行は、得た情報を交換し合う。その時、空には黒い雲が広がり、急速に発達した低気圧が接近しつつあった。春の嵐だ。
 それでも時間は容赦なく過ぎてゆく。そう、犯行予告の時までさほど時間はなかった――。

●昔の記録【1D】
「昔の宿泊名簿ですか? それは構いませんけど……2階にあったと思います」
 翔の要請に少し訝りながらも、2階へ向かう早苗。翔と美桜はその後をついていった。
 早苗は2階の納戸を開けて中へ入っていった。2人が納戸の前で待つこと数分、1冊のノートを手に早苗が出てきた。その表紙には18年前の日付が記されている。
「これみたいです」
 翔はノートを受け取ると、さっそくぱらぱらと捲り始めた。そしてとあるページでその手がピタッと止まった。
「棒線で消されてますね……」
 横からノートを覗き込んでいた美桜がつぶやいた。1人だけ、何故か名前と住所の上に棒線が引かれている。そしてその下に赤い文字で小さく『事故で死亡』と書かれていた。
「遠山圭二25歳、東京の出身ですか」
 恐らくはこの遠山圭二(とおやま・けいじ)が、18年前に『龍の頭』から落ちた者なのだろう。

●護るために【2】
「帰りなさいよ」
 夜7時半過ぎ、木藤家の玄関先。来訪者たちを応対する春奈は、腕を組んで来訪者2人を睨んでいた。
「何、図々しいことを……。護ってもらう必要なんてないわよ、あんな悪戯ごときに!」
 きっぱりと言い放つ春奈。その気迫に押され、美桜がうつむいた。その手には森で出会ったうさぎが抱えられていた。
「せめて、美桜さんだけでも泊めてはもらえませんか?」
 笑顔で語る翔。2人は木藤家の3姉妹を護るべくこの家を訪れていた。
「くどいわね! そんな必要ないって言ってるじゃない!」
「姉さん!」
 玄関先の騒ぎを聞きつけ、夏子が奥から飛び出してきた。
「姉さん、お2人も好意で言ってくれているんだし……」
 やんわりと春奈を窘める夏子。春奈はぷいと顔を背けると、不機嫌そうに奥へ姿を消した。
「すみませんでした。姉も色々ナーバスになってるんだと思うんです。今日はこのお天気ですし、どうぞ泊まっていってください」
 夏子が申し訳なさそうに2人に言い、上がるよう促した。
「あ、僕は少し行く所があるので、また後程に」
 翔が少し肩を竦めて言った。そして夏子が先に奥へ消えたのを見計らって、美桜に囁いた。
「冬美さんのこと、注意して見ていてください。あと、巴夫人には気を付けて」
 翔はそう言い残すと、雨風の強まっている外へと飛び出していった。
「うさぎさん……私に協力してくださいね」
 美桜は腕の中のうさぎに、優しく語りかけた。

●穴【3B】
 翔は石造りの穴の前に居た。昼間に美桜が森の動物から情報を仕入れた場所である。風雨はかなり強まっていたが、翔の衣服は全く濡れてはいなかった。それもそのはず、翔はバリアでその身を護っていたのだから。
 石には苔が付着していて、それはすなわちしばらく穴に入った者が居ないことを表していた。
 穴の深さはおおよそ1メートル半といった所か。幅は四方が大人2、3人入れるくらいだろうか。
 慎重に穴の中へ入る翔。入ってすぐ、妙なことに気が付いた。雨が降り出してそれなりに時間が経っているにも関わらず、穴の底には雨水がさほど溜まっていないのだ。
(妙ですね)
 翔は穴の中でしゃがみ込み、目を皿のようにして床を調べ始めた。そして見つけた。穴の底、四方にきちんと溝が掘られ、そこから地下へ雨水が流れるようになっていた。
 こんな仕掛けを施すくらいだ。人の手が加わっていないはずがない。翔は続けて四方の石壁を注意深く叩き始めた。
 鈍い音が響く中に、1つ他と違う音が混ざっていた。そう、まるで中が空洞であるかのような。
(なるほど)
 笑みを浮かべる翔。これはひょっとすると、ひょっとするかもしれない。
 翔は素早く穴から飛び出ると、次の場所を目指した。『極問神社』へ――。

●極問神社【4】
「夜分申し訳ありません」
 翔は深々と頭を下げた。ここは『極問神社』、訪れた翔を神主の竜司が応対していた。
「いや構わんとも。真夜中という訳でもないしな」
 にこやかに応対する竜司。だが、翔の姿を見てふと怪訝そうな表情を見せた。
「雨……ではなかったですかな?」
「ええ、かなり強まっていますが、それが何か」
「ふうむ。強い雨にしては、見た所濡れておらんようですがな……まあいいですかな、そんなこと」
 竜司はそうつぶやき、翔を奥の部屋へ通した。
「さて、何の御用ですかな」
 翔は竜司にいくつか疑問をぶつけた。昔崖から落ちた男、遠山のこと。それと香苗と真早紀の仲のことだ。
「ああ、あったあった。あの事故が起きたのは香苗さんが島に居ない時だったかな。真早紀の細君が、出産のために東京へ戻る数日前だったはずだ。まさかあの時は、香苗さんが早苗ちゃんを抱いて戻ってくるとは思わなかった」
 笑って答える竜司。翔は少し突っ込んでみることにした。
「遠山さんと、お2人は何か接点はなかったんですか?」
「……ないと思うがなあ。東京からの旅行者だったはずですからな、香苗さん所の民宿へ泊まったことくらいだろう。それと、香苗さんと真早紀は仲が悪かったとも」
「どうしてそう言い切れるんです?」
「同級でして、あの2人とは。喧嘩は昔から見ていたもんですからな」
 ……同級生からの情報であれば、かなり信憑性が高いかもしれない。
「今だから話せるが、香苗さんには昔惚れていましてな、告白したことがあった。しかし、香苗さんの心にはすでに他の誰かが居たらしい……」
 遠い目をする竜司。失恋も今となっては、昔懐かしい想い出なのだろう、きっと。
「もう1つお聞きしたいんですが。森の中にある石造りの穴、それはご存知ですか?」
「ああ、あれか。真早紀が昔、話してくれたかな。万が一の時に使う物だと言っていたよ」
 竜司のこの言葉を聞き、翔の推測は確信に変わりつつあった。

●待ち人来る【5C】
 嵐のような風雨もだいぶ治まった明け方早朝――『石舞台』と呼ばれし神聖なる場所。そこに人影が1つ現れた。
 人影は周囲をきょろきょろと見回し、舌打ちをした。何か上手くいかないことでもあったのだろうか。
「おはようございます」
 森に響く声。人影は突然声をかけられ狼狽した。
「かなり待ちましたよ。おかげで夜明かしです」
 そう言って笑顔で現れたのは翔だった。
「こんなに朝早く、お散歩ですか?」
 人影ににこやかに話しかける翔。人影は少し思案した様子を見せてから、小さく頷いた。
「でもお散歩にしては妙な格好ですね。黒い衣服に身を包んで、おまけに黒い手袋まで。それから……抜け穴を通ってくるのは散歩とは言いませんよ、巴さん」
 人影――巴は、思わず地面にしゃがみ込んでしまった。翔の表情こそ笑顔のままだったが、その言葉はきつい物であった。
「後で皆の前で、色々と聞かせてもらうことにしましょうか……色々と」
 こんな翔と巴の前に、慶悟が姿を見せたのは数分後のことであった――。

●全てを終わらせるために【7】
 嵐も過ぎた朝9時。早苗を含む民宿に居た5人は、木藤家へ向かった。今日その場で、全ての真相を明らかにするために。
 昼には遺言状を持った弁護士も島へやってくる。それまでには全て片付けておきたかった――そう、全ての謎を。

【極問島【攻防編】 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0060 / 渡橋・十三(とばし・じゅうぞう)
           / 男 / 59 / ホームレス(兼情報屋) 】
【 0092 / 高御堂・将人(たかみどう・まさと)
                 / 男 / 25 / 図書館司書 】
【 0230 / 七森・沙耶(ななもり・さや)
                   / 女 / 17 / 高校生 】
【 0332 / 九尾・桐伯(きゅうび・とうはく)
                / 男 / 27 / バーテンダー 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
                   / 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0413 / 神崎・美桜(かんざき・みお)
                   / 女 / 17 / 高校生 】
【 0416 / 桜井・翔(さくらい・しょう)
   / 男 / 19 / 医大生&時々草間興信所へ手伝いにくる。 】


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■         ライター通信          ■
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・極問島へようこそ。
・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全14場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は、整理番号順で固定しています。
・お待たせしました、『極問島』シリーズ第3回をお届けします。今はまだ多くを語りませんが、皆さんの行動のおかげでこの夜は被害者は出ませんでした。
・今回も情報は散らばっています。自分の行動の結果が、他の人の方へ流れていることもありますのでご注意を。あと、情報封鎖は全くありませんでしたのでご安心を。
・次回はいよいよラスト、完結編です。あなたの推理をプレイングに込めてください。推理に必要な情報は全て出してありますので、ご健闘をお祈りします。完結編で言えなかったことも含め、色々と触れたいと思います。それでですね、今回は個別のコメントが素っ気無く感じるかもしれませんが、今回は意識して抑えています。
・桜井翔さん、3度目のご参加ありがとうございます。何気に今回は美味しい場面を持っていっている気が。プレイングはよかったと思います。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また極問島でお会いできることを願って。