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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


 激写!心霊スポット!

「第1回 心霊写真大賞作品大募集! あなたが偶然とらえた怖い写真を応募してみませんか? 優秀作品1名に旅行券10万円分をプレゼント!」
 ゴーストネットの掲示板に大きく書き込まれたその文字に、多くの人が目を止めた。
 普通なら宣伝目的だけの書込みはネチケット違反と無視されるものだが、
 ただでさえ不思議なことが大好きな連中が集まるサイトに心霊写真など、猫にまたたびをあげるようなものだ。
 早速、問い合わせのメールをするものや掲示板にレスを打ち込むものが何人もいた。
「ふーん……作品テーマは『都会に潜む恐怖』……か。面白そうだね。応募してみようか?」
「えー……だけど、心霊写真なんて、そう簡単に撮れるものじゃないよ?」
「大丈夫だよ。ほら、ここに書いてあるじゃ無い『実際、幽霊が映っていなくても、それらしい雰囲気のあるものであれば大丈夫です』って」
「なんかそれってサギじゃない?」
「募集要項にそう書いてあるんだもん。ね、折角だから応募しようよ! あたし良い心霊スポット知ってるんだ?」
「え? 何処?」
「池袋よ。あの辺、けっこうそういう場所多いんだって!」

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●優勝をめざして
 今日のゴーストネットカフェは休日の夕方であるにも関わらず、不思議と人が少なく静かだった。
 七森沙耶(ななもり・さや)は紅茶を飲みながらネットで占いを楽しんでいた。
「……『今日のあなたのラッキーカラーは黄色、ラッキースポットは喫茶店』ですか……。ここも一応喫茶店ですわよね。何か良いことがあるかもしれませんわね」
 ふと、ポンと肩を叩かれ、沙耶が振り向くと金髪でクールな印象の青年ー真名神慶悟(まながみ・けいご)の姿があった。
「お待たせ。沙耶さん……少し待たせたかい?」
「いいえ、全然! あ……真名神さん、一応、私デジカメを兄から借りてきたのですが、カメラは何を持って参りました?」
 そう言って、沙耶は傍らに置いていた小さなカメラをみせる。
「はは……写真は機材じゃない、撮影者の腕と心意気だ。なんてな」
 慶悟は苦笑しながら、胸のポケットから使い捨てカメラを取り出した。沙耶は慶悟からカメラを受け取ると、おもむろに慶悟をパチリと撮る。
「おいおい、フィルム数そんなにないやつなんだから、大切にしろよ」
「あ、ごめんなさい」
 すまなさそうにカメラを返す沙耶に、慶悟は困ったような微笑みを浮かべながら、そっとポケットにカメラをしまった。
「それじゃあ、心霊写真撮影めぐりに行くとしよう」
「はい!」

●探険、探険、サンシャイン
 展望台へと続く、池袋サンシャインシティの地下街を榊杜夏生(さかきもり・なつき)と志神みかね(しがみ・ー)はのんびりと歩いていた。
「夏生さん、この服けっこう可愛いくない?」
「うん、良い感じだね。買ってく?」
「どうしようかなー……でも、今月ピンチだし……」
 みかねは先程、夏生に奢(おご)ってもらったフローズンヨーグルトアイスをかじりながら呟いた。
「あ、そういえば……そろそろ時間かな?」
 夏生は腕時計で時間を確認する。
「え? 本当にやるの? 大丈夫?」
「大丈夫だって。別に墓荒らしにいくわけじゃないんだし。いざとなれば私が助けてあげるって」
 わずかに残っていたカップコーンを口の中に放り込み、夏生はにこやかにそう告げた。

 日頃、人通りの多いせいか、深夜のサンシャインシティ内はひどく寂しく感じる。
 無機質なシャッターの壁がぼぅ……と灯る非常灯のともしびがぼんやりと照らされて一層不可思議な気持ちにさせた。
「ねー……やっぱ帰ろうよー……」
「ここまで来ていて何言ってんの! だいじょーぶ、怖くないって!」
 嫌がるみかねを夏生は半ば強引に引っ張っていく。
 ふと、二人の前方を白い光がよぎっていった。
「……い、いまの……」
「えっ? えっ? ……で、出た……の?」
 みかねの言葉に夏生はカメラを準備しながら小さく頷いた。
「い……いやぁーーーっ!!」
 恐怖に耐えかねてみかねが叫ぶと同時に、辺りに置いてあった花壇や植木鉢、ゴミ箱やらがふわりと宙に浮き上がり、縦横無尽に飛び回り始める。
「よし! シャッターチャンス!」
 夏生はここぞとばかりにシャッターを切る。
 その時、彼女の右肩に誰かの手が置かれた。
 おそるおそる振り返ると、そこには懐中電灯を片手に持ったあきれ顔のガードマンの姿があった。
「君たち……こんな所で、一体何をしているんだい?」

●夜の展望台で
「今、何か聞こえなかった?」
 階段を登る歩みをとめ、闇淤加美姫(くらおか・みひめ)はぽつりと呟いた。
「え? 何も……聞こえないよ?」
 あからさまに怯えた様子で、十河羽月(そごう・はづき)はキョロキョロと辺りを見回した。
「でも……女性の叫び声が……」
「いーやーだー…… やめてよー……」
「みんなー! どうしたの? もうすぐ屋上だから頑張って!」
 二人の頭上より桜華ライゼフェラー(おうか・ー)の声が響いた。
「まぁ。声はおいとくとして、とりあえず急がないと後が大変ね」
 すっかり腰が抜けた羽月に美姫はにこりと微笑んでそう告げた。

 閉館時間もとっくに過ぎ、誰一人居ない展望台に三人は辿り着いた。
「わー……綺麗ねー……」
 眼下に広がる夜景を眺め、桜華は感嘆の声をもらした。
「さすがは展望台、といった所かしら……」
 巫女衣装に着替えた美姫はそう言いながら、いそいそと儀式の準備を始めている。
「……美姫、何してるの?」
「あら、折角だからこの辺に居る霊魂を呼んで記念撮影を、と思ってね」
 怯えながら問いかける羽月に、美姫はにっこりと笑いかける。
「そ、そんな事をしなくてもいいよ! とにかくー……さっさと写真を撮って帰ろうよー」
「何言ってんの! 温泉旅行があたし達を待ってるのよ! 召霊術でも人間アンテナでも使えるものは使わなくちゃ!」
「……何か違う気がする」
「もー。深いことは気にしないのっ。ささっ羽月くーん、スマイル、スマイル!」
「……桜華……もしかして、楽しんでない?」
 お気に入りのカメラを向ける桜華に羽月はぽつりと呟いた。

●静かなほとりに潜む影
 霊の道筋を式神に導かれるままに辿り、そろそろカメラのフィルムが尽きかけてきた頃。
 慶悟と沙耶は井の頭公園にて一息ついていた。。
 辨財天(べんざいてん)と玉光神社にお参りをし、街灯がぼんやりと灯る公園のベンチに腰かけながら慶悟はおもむろにファインダーを覗き込んだ。
「はい、真名神さん」
「お、有難う」
 沙耶から渡された缶コーヒーを開け、慶悟はゆっくりと飲み始めた。
 ふと、公園の時計に視線を向けて呟くように告げる。
「そろそろ……終電の時間だな。今日はこのくらいにしておくか」
「あ……真名神さん。あそこに、誰かいます……」
 沙耶が指差す先は井の頭公園の中央にある池だ。この時間に船の貸し出しなどしているはずもない。
 と、なると答えは一つ。
「よし、残りはここで全部撮るとするか!」
 慶悟は沙耶の告げた方角を次々撮っていく。だが、フィルムはすぐにつき、あっという間に二人は帰路につくこととなった。
「10万円、取れるといいですね」
「そうだな……」
 駅のホームで終電の電車を待ちながら、二人はにっこりと微笑んだ。

●審査会場に潜むもの
 数日後、応募をかけた神楽出版社には多くの心霊写真の投稿作品が送られてきた。
 やはりインターネットをつかったメールでの投稿が圧倒的多数を占めていたが、インパクトの強い作品は郵送での投稿が多い。
 編集スタッフは嬉しい悲鳴を上げながら、厳選に作品を吟味していく。
 ふと……スタッフの一人がいぶかしげに辺りを見回して、眉をひそめた。
「……今、誰かいませんでした?」
「ん? 気のせいだろ?」
「……でも、後ろの方から誰かが覗き込んでいたような気が……」
 不安になり、その場にいた全員が後ろを振り返るが、小さな会議室の白い壁以外、視界にはいるものは無い。
「き、気のせいにしておこうぜ……」
「そ、そうだな……」
 スタッフ達は互いに顔を見合わせ、さっさと仕事を終わらせるために急ピッチで作業を再開させた。

●そして……
 それから一週間後。
 いよいよ心霊写真大賞の結果がネット上にて発表された。
 最優秀作品を含め、受賞した作品はどれも迫力のある逸品ばかりだ。
「それにしても……この最優秀作って……」
 瀬名雫(せな・しずく)は写真の中におさめられた風景とゴーストネットカフェ店内を見比べながら呟いた。
「ここ……だよ、ね……」
 シンプルなデザインのパソコンが設置されたオシャレなカフェ。
 切れ長のクールな印象を思わせる男性の背後、ちょうどドリンクバーが置かれている辺りに、日本人形のような白装束の少女の姿が写っていた。
「まさか、ね……」
 そう言いつつ、回線を切ろうとした時。
 写真の中の少女がにこりと微笑んだような気がした。

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「結局、俺のは当選しなかったか……良い線言っていると思ったんだがな」
 小さくため息をついて、慶悟はモニタの前から席を外した。
 その入れ違いに沙耶が席につく。
「あっ。心霊写真大賞の結果、もう発表されていたんですね。どうでした?」
「残念ながら俺のは全部没だよ」
「あれ? でもこの……最優秀作品って、私が撮ったのですよ!」
 沙耶が指差す作品は、出発する直前に撮った慶悟の横顔が写るスナップ写真だ。
「……それにしても、この後ろにいる少女、気になるな」
「ただの浮遊霊ですよ、きっと」
「そうだといいけどな……悪気は無さそうだから、放っておいても問題はあるまい」
「でも、この子……どこかで見たことあるような……」
 丁度コーヒーのお代りを取りに向かった慶悟の耳に、ぽつりとそう呟く沙耶の言葉が聞こえるはずも無かった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名      / 性別 / 年齢 / 職業】
 0017 /榊杜夏生      / 女  / 16 /高校生
 0230 /七森沙耶      / 女  / 17 /高校生
 0249 /志神みかね     / 女  / 15 / 学生
 0382 /小嶋夕子      / 女  /683 /無職……??
 0389 /真名神慶悟     / 男  / 20 /陰陽師
 0452 /桜華ライゼフェラー / 女  / 16 / 学生
 0492 /闇淤加美姫     / 女  / 16 / 巫女
 0562 /十河羽月      / 男  / 17 /退魔師
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■         ライター通信          ■
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 お待たせ致しました。
 「激写!心霊スポット!」をお届け致します。
 皆様の投稿作品はどのような結果でしたでしょうか。
 皆様、なかなか個性を発揮されており、こちらとしては全員に「最優秀賞」を差し上げたい気分でしたが、話の展開上そうもいかず、それぞれ優秀賞やアイディア賞など副賞を受賞したもようです。
 それと沙耶ちゃんと慶悟さんの関係……こちらの独断で沙耶ちゃんの一方的なプチ片思いと判断しましたが、大丈夫でしたでしょうか?(笑)

 それでは皆様とまた不思議の世界でお会いできることをお祈り致します。
 ご依頼、有難うございました。