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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


調査コードネーム:キングステーラーの怪〜取り憑いた者達〜
------<オープニング>--------------------------------------
 東京の港に停泊中の、キングステーラーは、月刊アトラスでも話題の種となっていた。
 こちらの編集部にもキングステーラーの船長からは取材の許可が出ており、今回は取材チームを組んで、豪華客船に踏み込もうという算段だ。
「そんでもって? 三下、あんたも行きたいっていうの?」
 麗香が冷淡に言う。
「ぜ、是非とも! そんな豪華客船、一生に一度乗れるか乗れないかですし!」
「言っておくけど、仕事なんだからね。食うことに没頭してたら、海に突き落とすわよ! みんなも分かったわね?」
 それから、と麗香が付け足す。
「今回は高峰心霊学研究所の高峰沙耶さんも来ることになっているから、粗相のないように。いいわね」
「え? 高峰さんも来るんですか? これは是非とも行かなくちゃ!」
 三下はすこぶる嬉しそうだ。
「あんた、本当にうれしそうね。キングステーラーより高峰さんなの?! どっちなの!」
「ああ、いえそれはぁ。男心というやつでしてぇ」
「見え見えじゃないの。呆れたヤツだわ。じゃあ、みんな、早速準備していくわよ」
 こうして麗香をリーダーとする三下とその一行は、キングステーラーへと向かうのだった。

◎天敵(ライバル)との再会
 取材チーム御一行は、乗り慣れたバンに乗って一路キングステーラーへの道を行く。
 高峰とはキングステーラーで落ち合う事になっているが、また派手な格好をしてきているのではないかと麗香としては少し心配だ。なぜなら高峰はこういったお祭り行事は好きな方なので、それで派手な格好にはなっていはしないかと不安だったのだ。
 やがて取材チーム一行は、キングステーラー近くの駐車場へと辿り着いた。次々に下りるスタッフを尻目に、三下は早速船の中へと入っていく。
「まったく、三下のやつ、こういうのには弱いんだから。まったく……」
 麗香が呆れた声を出す。すると近づいてきたのは高峰だった。
「あら、こんばんは、高峰さん。一足先のご到着とは思っていなかったわ」
「こんばんは。フフ、皆さん元気そうね。三下くんも」
「まあ、あいつはここのところいつものことですから……」
 その時、麗香は高峰の背後に一抹の殺気を感じた。幽霊などではなく、嫌悪に値するものだった。
「もしかしてそこにいるのは、宮小路皇騎(みやこうじこうき)!」
 スッと高峰の側から出てきたのは、麗香の天敵とも言える人物にして陰陽師の、宮小路だった。一丁前に正装して、船側から出されたのだろう、シャンパンのグラスを手にしていた。
 昔、ある事件でお株をとられてからは、宮小路と麗香との中は天敵のような関係になってしまったのだ。相手が陰陽師だと言うことを考えれば、無理もない話なのだが。
「どうしてあんたが居るのよ! しかも高峰さんと!」
「驚いたかな? ネットで調べたんだよ、ここに白王社が取材に来るってね。それに高峰さんは、こういう催しは大好きだ。特にゴージャスな催しはね。それにいざというときも考えて、私は高峰さんのエスコート役を買って出たというワケさ」
「くっ、ネットじゃ敵わないわね。それにしてもよりにもよってあんただなんて! 高峰さん、この男で本当にいいんですか? 三下をエスコートに付けた方がよっぽどマシだわ!」
「三下くん? ああ、あのダメ人間君かい? あんなのと一緒にして欲しくないね。私はこれでも選ばれた存在だよ? 財閥御曹司で陰陽師。しかも未だに大学生。こんな恵まれた人材は他には居ないと思うんだ。それに、高峰さんをエスコートするには私で十分さ。麗香さん、君は三下君にでもエスコートしてもらうんだねぇ。あはははは!」
 何てムカつくヤツなんだと思いつつ、麗香は握った手に力を加えた。この場に三下がいれば、当然のごとく八つ当たりの対象になっていたことだろう。
「あ、あいつ、どこへ消えたのよ。言いたいことまだ沢山あるのに!」
「私に告げて行きましたよ。このキングステーラーに幽霊や低級妖怪の気配を感じると言って、甲板に向かいました。心強い方じゃないですか」
「さあ。あの男、本当三下とくらべれば、いくらか三下の方がまだいいですよ。あの男は最悪ですから、気を抜かないでくださいね、高峰さん」
「フフフ、わかりました。でも、気になりますね。私たちも行ってみましょうか?」
 確かにこの船に幽霊や低級妖怪が引っ付いているとなると、その出所は東京のあらゆる場所からしかない。それだけこの東京には、そういった幽霊や妖怪の類が平気で跋扈しているという証だ。

◎化け物との闘い
 甲板に着くと、羂索(けんさく)を呼んで、幽霊や妖怪達を封じ込めていた。その数たるや、10や20といった数字ではない。100いや、300は封じられているだろうか。
「なるほど、羂索ね。上手いわよ、宮小路君」
 高峰が褒めると、宮小路は余計有頂天になった。
「いえ、それほどでもないですよ。こんなのはまだ小手調べですから」
 一緒に来た麗香の頭の中は、失敗しろ〜、失敗しろという考えで一杯だった。
「もっとも、麗香さんの考えはどうか知りませんけどね」
 ところがここで、変化が現れた。封じられたはずの幽霊と妖怪達がどんどん結合していき、そして最後には、巨大化して醜い化け物と化したのだ!
「まずい、しくじったか! 羂索!」
 もう一度羂索を投げ入れるが、その化け物は図体の割にすばしっこく、容易に交わされてしまう。
「まったく、麗香さん、あなたでしょう! 私の行動を悪く考えましたね?」
「な、なによ、も、もう! 失敗しちゃえって思っただけよ」
「それが悪いんですよ! 手に負えなくなる手前まできてるんですよ?! こうなったら……」
 静かに高峰が言う。
「髭切を呼ぶのね。それが一番良い方法だわ」
「ええ、分かってます。それ!」
 左手に光る刀剣が現れた。名刀「髭切」だ。これに触れて無事な幽霊や妖怪は居ない。一気に真っ二つにすれば、いかに巨大化した幽霊と妖怪の塊でも、容易に成仏させることが出来る。
 つまり消滅させられるのだ。
 その時だった。宮小路が放った髭切同時に、何故か三下が上からロープにぶら下がってダイビングしてくるではないか!
「やっほー! こりゃ楽しい! あれ、なんだこれ! 風船かなぁ?」
 宮小路も高峰も麗香も、呆気にとられたまま、ただ見ているしかなかった。
 三下は髭切が突き刺さったままの巨大化した幽霊と妖怪の塊を足でボンボン踏んづけながら、プールへと向かう。
 そして思いっきり三下はこの塊の上に、ダイビングしたのだ。
「そうれ!」
 ドッカーン!!
 もの凄い白煙。しかし羂索も反応しなくなり、髭切も消え失せた。
 以外にも以外な結末! なんとこの怪事件を解決したのは、三下だったのだ!
「うわ、変なものがベトついてますよぉ。なんですかこれは。風船にしては出来が悪いんじゃ?」
 麗香は呆れて、
「三下。それはね、霊魂の塊よ」
と三下に教える。
「れ、霊魂?! 幽霊とか妖怪ですかぁ?! ひいいい!」
「そう、エクトプラズムですね。でも気にすることはありませんよ。すぐに消え失せます」
 高峰は落ち着いた口調で、アドバイスを施した。
「く、くそう……。あんなダメ人間に、先を越されるとは〜!」
 宮小路はとことん悔しそうだ。無理もない、人間とは見ていない相手に先に手柄を立てられたのだから、悔しいのは尤もなことだろう。
 しかし、これはあくまで偶然の産物でしかない。本来なら宮小路は喜んでも良いはずなのだが。まったく運命のいたずらというか、こればかりは誰にも、どうにも出来なかっただろう。
「ふふふ〜。宮小路、少しは懲りたかしら。ああいう結末もあるって事、学習したでしょ」
「なんてことだ、私としたことが……。くそう!」
 宮小路は悔しがってばかりだった。それでも少しは一人威張るのも懲りたことだろう。

◎闘い済んで
「あの〜、ところで取材の方はどうなってるんでしょうかねぇ」
 三下が自分の立場を忘れて、ボケた事を言う。
「あんた、遊んでたじゃないの! あれで取材っていうなら、みんな遊んでるわよ! このボケェ!」
 まあ、そのお陰で、巨大化した化け物にとどめを刺せたのはいうまでもないことなのだが。
 麗香は三下をヘッドロックして振り回す。高峰もそれを見て微笑ましく笑っていたが、宮小路だけは不満だらけの顔を呈していた。
 いずれにせよ、キングステーラーの怪奇事件は、以外な幕切れとなって終わったのだった。

                                FIN

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0461 宮小路皇騎 男 20歳 大学生(財閥御曹司・陰陽師)
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■         ライター通信          ■
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 以外にも、三下が最後に活躍した事件でした。
 しかし、その前に髭切が化け物に突き刺さっているので、
実質的には宮小路くんが仕掛けたと考えていいのですが、
とどめを刺したのが三下ということで。
 いずれにしても、三下は今回おいしいところ持っていきましたねぇ。

 さて、これが私の文体(文章)であります。
 面白いものを書くよう、常に心得ておりますが、まだまだ
不得手なところもございます。
 しかしながら、以降もご愛顧賜りますようお願い申し上げます。
 では、これにて。失礼致します。
               夢 羅 武 市 より