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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ゴーストネットOFF-夢紡ぎの糸-  Written-by:秋月 奏
<オープニング>
「…眠り病?」
「そう、それもとある場所へ行ってから眠り続ける人が多発してるんだって。
病院へ行っても原因不明」
「へえ…で、それは何処なの?」
「それが解らないの」
「は?」
「ネットで流れている噂話らしんだけどね…真偽を確かめて欲しいかなって。」
 あっけらかんとした少女の言葉に弓弦は少しだけ、眉をひそめた。
何処だか解らない場所を探せと言うのは無理が無いだろうか?
が、それを察したように少女はにこやかに微笑む。
「大丈夫、東京であることは確かなの…ただ場所がバラバラだって言うことで
場所が絞れないだけで時間だけは全てに統一性があるから、そこから
絞ればいいと思う」
「で、時間は?」
「───逢魔ヶ時」

<幽夢>
…目覚めたくないの?
いいえ、動けないだけ……変ね…いつもなら……オキテルコロナノニ。
あの日、一人で行った場所に見た景色。
とても美しく懐かしい場所。
随分前には何時でも見れたはずなのに……。
ああ、起きたいのに起きれない……。
ココハトッテモイゴコチガヨクテ。

(くすくす…くす…。)

少女の笑い声。
手毬をついているのだろうか、軽やかにポーンと言う音と童唄だけがその場に響き渡った。

(くすくす…くすくす…。)

まるで何かを嘲笑うかのように美しい声と音が。

<ゴーストネット>
「…へえ?眠り病?また変わったものが出てきたものだ」
モニターの前で面白そうに微笑む女性の名は新条・アスカ。
少々面白い情報が無いかとネットをさまよっていたところにそれは飛び込んで
来たのだが…闇医者ではあるが医師として、というよりも現代の病院で解らない、と言うのなれば
自分の出番、と彼女はその事件の家族へと連絡を取るべくゴーストネットへの
書き込んだ人物へとその旨を伝えにメールを打つ。
書き込んである女性の名は、弓弦・鈴夏。
ある筋からこの話を持ち込まれたが今現在は少々時間が無いらしく
先に調べてくれる誰かを探していたものの、運良くここの掲示板を見つけることが
出来、書き込んだものらしかった。
なるほど…と思いながらアスカは、その家族から幾らくらい報酬をふんだくってやろうか、等と
妙に現実的なことを頭の隅で考えていた。

<とりあえず病院へ>
「…で、いつから彼女は寝ているんだ?」
病室。
明るげな白い部屋にはそぐわない奇妙な空気に妙な物を
感じながらもアスカは、弓弦と少女の見舞いと言う名目で病院に来ていた。
弓弦は一瞬だけ弱々しく目を伏せると聞き取れないほど小さな声で
「二週間以上は確かなはずです……」と告げた。
その言葉にビックリしながらもアスカは持ってきた薬の効果を確かめるべく
アタッシュケースを開け、注射器を取り出す。
きょとん、とした弓弦へ薄く笑うとアスカはこの薬についての説明を始めた。
「この薬はちょっとした伝手で手に入れてね。
これを使って、妙な反応があるか、ないか確かめてみるってワケだ。
…ん?まさか、実験台なんてこれっぽっちも思っちゃいない。
病気の鉄則、原因は必ず存在するし、それが見えれば自ずと治療法も見えてくるもの。
…違うかい?」
「は、はい……。ですが、ご家族の了承も得ず、それは……」
「へ?アンタ、医者を連れてくるって事は家族に言ってないのか?」
「…いえ、それについては言いました。で、でも薬を投与するかどうかは……っ」
思わず、アスカが何かいいそうになった瞬間、ドアが開いた。
どうやら、この患者の母親らしく少々いぶかしむ様に二人の人物を見比べている。
「──どなた?…もしかして、連絡をくれた方かしら?」
「は、はい。こちら、新条アスカさん。私が弓弦です。」
「そう、で、どう?娘は目を覚ませそう?」
「それについては金額次第だな」
「は?」
「私は正規の医者って言うわけじゃないんでね、報酬さえいただければ
どんな病気でも治してみせますが…ここで慈善事業ではないと言うことをハッキリさせておきたい。
とりあえず先ほど娘さんに反応を見るための特殊な薬を打ってみた、が、何の
反応もない。…何らかの原因が何処かに潜んでいると思われる…それさえ見つければ」
必ず彼女は目を覚ますだろう、と言葉の続きを続けることなくアスカは母親を見た。
悩みの無い、まっすぐな瞳がアスカをじっと見据え……
「…治せるのでしたら幾らでもお支払い致しましょう」
はっきりとした強い言葉で彼女は肯定をしめした。
満足げにアスカは微笑うとアタッシュケースを閉じ、立ち上がった。
「では商談成立と言うことで今日は一旦これで失礼するが…娘さんは
必ず目を覚ますだろう…それも近い内に」

<誰ソ彼ハ>
「……で、アンタはどうする?」
「どうする、とは?」
「決まってる。一緒に場所を探しに行くのかって言うことだ。」
「…ちょっと無理ですね……今日はどうにか時間が空きましたけれど
場所を探しに行く事は掲示板にも書いたように時間がないので。」
「そうか…じゃあ、ここでお別れだな。…っと、協力者は後二人、だったな?」
「はい、男性二人です…多分私たち能力者は夕暮れ時の時間の世界に
いけると思います…眠ることなく無事に。…ですが、くれぐれも用心してください。
特に子供、と女性には。」
「…は?」
「いえ…独り言です。」
それじゃ、と告げると弓弦は長い銀の髪を翻して逆の方向へと急ぐように走っていった。

<それは薄靄の風景の中に>
 微妙な空加減だった。
頼まれた依頼の通りに、風景の中へと歩き出す影が一人。
夕暮れとも夜ともつかぬ風景が突如としてゆがむ。
くすくす…くすくす…。
何処からか、笑い声。
『歌を忘れたカナリアは……』
それを追うかのように綺麗な声で童謡が響き……どうした事なのか先ほどとは
違う景色へとアスカは完全に迷い込んでいた。
「…お姉さん、誰?」
「私は新条アスカ、闇医者だ。お前は?」
「僕?僕は誰でもない…此処には居ない…夢」
「夢?」
「目覚めたくない、と思ったことって無い?」
「無いな」
「ふうん…でもね、ここには目覚めたくない人しか入っちゃいけないんだ…。
僕が贈るのは紡ぎ糸。糸を紡いであの人たちは眠る……幸福な夢、と言う世界で」
「じゃあ、どうしても目を覚ましてくれないと困る、と言う人が居たらどうする?」
「さぁ?僕は、皆の希望を叶えてあげるだけ……」
「……残念だ」
「?」
「どうやら、貴様とは話が合わないようだ」
手を振りかざし、アスカは目の前の少年を斬りつけた。
悲鳴とはいえない咆哮に近い声がこの場所を満たしてゆく。
ポニーテールを揺らせアスカは辺りを鋭い瞳でただ見渡していた。

<合流>
譲は狼煙を目指して走り続けた。
かなり急いでいるはずなのだが距離は中々に縮まらない。
…目指している物が近くにあるはずなのに届かないもどかしさに一瞬だけ、立ち止まる。
「…確か昔読んだ話の中にそういうのがあったような」
…あの話はなんだったろうか?
確か「今と言う状況を保つためには走り続けなければならない」と言っていた。
急ぐのなら待つことだとも。
(かといってこの状況が変わるわけでもないが…待ってみるか?)
この童話の通りにして正解なのかどうかはわからないが、走り抜けても
目的地にたどり着けないのなら試してみる価値は、あるだろう。
が、そうこうしている内に狼煙が上がったであろう風景に近づき
譲は漸く、今回の協力者と会うことが出来た。
ワイヤーの糸を手に持つ物静かな感じの人物だ。
「君は…弓弦さんから言われていた協力者、ですか?」
「ああ」
「なるほど…確かもう一人いる筈ですが…その方は…」
問う間もなく、何処からか幼い子供の叫び声が響き、急激に景色が変わり始めていく。
怒りを象徴するかのような黒い、黒い景色へと。
「なんだ!?」
「向こうの方です、早く……!」
「……待て、ここでは急がない方がいい…じき、その人物が近づいてくる筈だ」
「…まさか、ここまでもその方法で来たんですか?…えっと……。」
お互い名前を教えあうことも忘れていた、と言うことを漸く思い出し彼らはお互いの名前を告げた。
「御堂君…ですね…で、御堂君はここまで焦らずに来た、と。」
「そう。…九尾さんはまだこの風景の中に何も見出せませんか?」
「…ええ、草も緑も無い世界にしか見えませんね。」
「なるほど…僕にはここが凄く懐かしい風景に見える…人によってこうも違うとは」
「どうやら…景色が動き出したようですね」
「………」
九尾は糸をつかむ手を強め、御堂は竜胆の鞘をいつでも抜けるように気を張り詰める。
一瞬の気の緩みすら許さない状況。
アスカは、いつの間に現れたか解らない男性二人を見つめ、あの人物たちこそが
協力者に他ならないと瞬時に悟ると「こっちだ!」と叫ぶ。
譲と九尾の二人はその声に従うように変わる景色の中、漸く見えない敵と対峙した。
「…凄まじい殺気ですね…僕があった女の子は心優しい子だったようですが」
「僕の方もそうだな…声しか聞かなかったけれど優しげな女の人だったよ」
「…初めて逢う人間に対して失礼な奴らだな、アンタらは。
私はただ単にあの童子が気に食わなかっただけなんだが?」
「…それでは、こうなってしまうことも当然ですね…」
「全くだ」
「黙れ!……来るぞ、意識を集中させろ」
一人の童子をアスカが殺したことでの凄まじい殺気の中―――最初に動いたのは九尾だった。
空間把握能力を働かせ、敵を絡め取るべく可燃性のワイヤー糸を空高く投げ縛り
譲はそれを見たと同時に竜胆の鞘を抜き糸が巻き付いているであろう物体を斬りつけ
アスカもそれに続き、譲が逃した敵を手で深く斬りつけていく。
最後に九尾がそれらの残骸を発火能力にて燃やし全ては終了した。
アスカ達は揺らぐ風景の中、無事に東京へと戻り、その際に簡単な自己紹介をして別れた。
結局、何故あのような世界があったのか、という疑問を残したままだったが
全ての眠りについたままだった人々は起きだし、今は元気に日常生活を送っている、との事だった。
後日、アスカの元には指定した金額よりも高額な治療費及び感謝の気持ちだという金額が
収められ、にんまりしながらアスカはバーテンダーをやっている九尾の店へ
近々この感謝代で飲みに行ってみるか、などと考えていた。


-夢紡ぎの糸・了-

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0499 / 新条・アスカ / 女 / 24 / 闇医者】
【0332 / 九尾・桐伯 / 男 / 27 / バーテンダー】
【0588 / 御堂・譲 / 男 / 17 / 高校生】
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■         ライター通信          ■
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初めまして、今回は発注してくださって有難うございました!
新米かけだしライター秋月 奏です。
今回のシナリオが初めての仕事なのですけれど
PCさん達全員が個性溢れる方々で書いていてとても楽しかったです♪
また、何処かのシナリオでお会いできれば幸いです。(^^)