コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


いと小さき手の
<オープニング>
「俺としちゃあ呪い、なんてモンは信じてないんだがな?」
そう言いながら草間は一つの依頼書を取り出した。
「こいつが呪われてるお嬢さんってワケだ。
16の誕生日が来るまで、このお嬢さんを護ってやって欲しい…というのが依頼内容。
どうだ?受けてみる奴はいるか?」

何人かの手が挙がった。
草間はそれを見るとにやりと笑いながらタバコに火をつける。

「じゃあ、気をつけて行って来いよ?
諸経費の件とかでもあっちで持ってくれるから忘れずにきっちり取ってくるように。
…依頼が成功した後は皆で豪遊できる依頼費が来るはずだからな。」

<顔合わせ>
「…なんだなんだ、希望者良く見たら男ばっかだな、オイ
…まあ、護衛だって位だから女性は居ない方が確かにいいんだが」
草間はぼりぼりと髪をかくとくるりと全員を見渡した。
「まずは御堂・譲…と…おっと、高校生なのに大丈夫か?授業とか出んでも」
「はい、まあいつも何とかなってますし、成績優秀な方ですから、僕。」
「…そっか、そいつは羨ましいこったな…で、次が黒月・焔…と七森・慎…
葛城・九郎……おし、じゃあ相手の家にはお前らの名前告げとくから
多分大丈夫だとは思うが…まあ何にせよ気をつけてな。
呪いより何より怖いのは人間だと思しな、俺は」
そう、草間がぼそりとつぶやくと集まった面々は苦笑交じりの顔をしつつ
問題のいえへと個人個人ばらばらで向かって行った。
何はともあれ準備しなければならないものも個別で違うのだから、それはそれで
大丈夫だろうと思いながら。


<自宅へ>
七森・慎と御堂・譲はまず、問題の彼女の家に行き、依頼を受けた者であることを告げると、
まず慎は両親へと面通りを願い、譲は少女の護衛と言う事で家の中へと入って行った。
が、お互い行く方向は別方向らしく「じゃあな」とお互い言い合い、背中を向け歩いていく。
「人を呪わば穴二つ、と言うが…」
まだ16才にもならない少女が呪われているかもしれないとは、可哀想だ。
自分の末の妹・沙耶と重ねてしまう…。
長い、廊下をお手伝いだと思われる女性と共に歩きながら、慎はそんな事を考えていた。
もし、本当に呪われているのならば解呪すべきだと考えながら。
「…こちらに奥様と旦那様がいらっしゃいます、どうぞ…」
「ああ…失礼する。」
襖をあけるとそこには品の良さそうな二人の男女が揃って座っていた。
驚いたような慎をじっと見、それから奥方の方が三つ指をつくと
「ようこそいらっしゃいました…」とだけ言うとにこやかに微笑んだ。
「聞きたい事とは何で御座いましょうか?」
「娘さんの呪いのことだが……」
「ああ、それですか…この家では娘が育たないのです…いや、ある年齢までしか
育たない、そう言った方がいいでしょうかな?
…ですが、もう私共の子供は彼女一人しか居ないので殺される訳にもいかず、そちらに
頼んだ次第なのですが……」
「なるほど。では聞かせてもらおうか、そうなったと言われる訳を」
「…何からお話すべきか…」
そういいながら男性は漸く座った慎へ目線を合わせながら話し出す。
「今はもう昔…の話です……」

昔々の話。
とあるお城の姫君がいた。
彼女は近々婚儀を迎える予定だったが……それを遮るかのように懸想した
一人の若者が姫君を攫い、後にどのような意図があったか、どのような展開が
二人にあったかはしらぬが姫君は殺されたと言う。
その歳、16の誕生日を迎える直前。
そこから、この家では女子はその歳までしか生きられず……解呪の方法探すも
杳として、知れないと言う……。

「まさか、その呪いが彼女にかかってると?」
「はい、皆……そうして死んでいきました、健康で病気一つしなかった娘すら
例に洩れることなく死んでいったのです…眠るように」


<聞き込み>
黒月・焔は草間興信所を出ると、まずは彼女の近所から聞き込み調査をはじめた。
護衛自体、焔の趣味ではないが、早いとこ金つくらないと店の経営が危ないから、と
いう理由で受けたのだが呪いといっても色々な種類があるからまずはそれを見極めないと
ならないからだ。
所が聞き込めば聞き込むほど、奇妙な事柄が発覚した。
問題の家では、いつもいつも16の誕生日、間近になると娘の場合は必ず死んでいる事。
しかも、ちゃんと前日までは元気そうで持病の一つもない様な娘でさえ
そうであった、というのだ。
今の家では三人の娘がいたが、二人の娘は既にもうなく一人の末娘が残されただけに
なった事、これで死んでしまえばあの家は絶える事になるかねえ…と告げた
老母の言葉が酷く、耳に残った。
(こいつは……少々、やばいかもしんねえな……)
舌を打ち鳴らし、焔は依頼先の家へと向うと護衛専門で自分はやった方が
良さそうだ、と考えていた……確か陰陽師が一人居た筈。
そいつのサポートに回るのも悪くはないだろうと思いながら。


<道中にて>
「娘の護衛…といったか。年頃の娘だ、まさか四六時中側にいるわけにもいかぬだろう」
そう呟きながら、歩き出すのは葛城・九郎。
職業は賞金稼ぎ、だが頼まれお金さえ貰えれば何でもやるので何でも屋、と言うような
感じが最近強いのだが。
とはいえ、娘が本当に呪いにかかっているのかも疑わしい。
ここは一つ、一日の護衛の終了後、娘の身辺調査から始めてみるべきだろうか?
もし呪いがかかっているのであれば媒介となるものがどこかにあるはず。
より呪いの効力を上げたいのならば対象者より近くに置くはず。
娘の家の中、近所、全てをくまなく調べてみる事が重要なのではないだろうか?
だが……。
(依頼内容は呪いで死ぬかもしれん少女の護衛だ…もしかすると最初に
身辺調査をした方が効率がいいかもしれん……)
何か、引っかかる物を感じつつ九郎は依頼人の家へと急いだ。


<護衛>
譲は慎とはまるで違う方向―依頼人の娘である少女のいる部屋へと一人で向かった。
無論、竜胆と言う名の実体を切らずに悪しきものや霊体を切れる刀は隠して。
相手は女の子なんだし、ただでさえ怯えてるだろうにこれ以上怯えさせてはいけない、と
言う考えからなのだが……。
どういう訳なのか、慎が行った両親の部屋とは違い、少女はお手伝いの面々からも
忌み嫌われているらしいことがはじめて来た、譲にも感じ取れた。
(……死んでしまうかもしれない娘がなのに、何故こうも……)
冷たくなれる?
それとも、いつも死んでしまう筈の「娘」ならば情をうつさない方が良いと言うのだろうか?
突き当たりの扉にぶつかると、譲は漸く娘の姿を見るべく扉を叩いた。
『はい……?』
「草間興信所から来た御堂と言う…開けても構わないな?」
『……どうぞ』
入ると薄暗い室内の中、ひっそりと佇む様に少女はいた。
何かの呪いなのだろうか、部屋中に札といわれる札が張ってある。
だが、この札………。
(間違えてるな……)
何処の術師に頼んだ物なのか知らないがこれでは娘の守護にもならないだろう。
譲は少し考えた末、全ての札を外した。
『あの、何を……』
「札を外してる…これでは守護にならん。じきに陰陽師が来るはずだからな。
その時にまた札を作り変えてもらえばいいだろう。」
『………はい』
怯えたような空気に気付くと譲は笑いながら少女へと近寄った。
「びびらせたか?なら、済まん。が、もう暫くの辛抱だ。
今日さえ過ぎれば嫌でも普通の日常に戻れるさ」
『…ええ』
安心したように少女の顔が緩んだ、その時―――譲が待っていた陰陽師である慎と
護衛専門で聞き込み及び身辺調査をしていた焔と九郎が部屋へと漸くやってきた。
依頼、開始、である。


<符>
「…なあ、てめぇ何作ってんの?見たところ符の様だが」
「…悪いが話し掛けないでもらえるか?………気が散る」
護衛に専念する、と言いつつ慎の行動に興味を示す焔。
が、慎は少女から聞いた言葉から何かを作り出すかのように気を集中させている為
返事もかなり、そっけない。
それを見て笑いあう譲と少女を見守るように見つめる九郎…と妙な感じに
和やかな、かつ張り詰めた時間が流れていた。
『でも本当にこれで大丈夫なんですか?』
少女の周りには慎が使役させた白い鳥の形をした式神が二体配置されており、
更に結界を張って、身の安全は確保されていたが…慎は呪いを成就させるために
もう一つやらなければならぬ事がある、と言っていた。
「ああ、大丈夫だ。じきにこれが完成したら君の身にも君の子孫にももう何も起こらない」
『………………』
「だが何故、この方法を知ってる術師に頼まなかったかは不思議だな?
女児のみに起こる呪いとは言え解らない筈もないんだが」
『………男の子さえ居れば、この家は無事ですから……』
「それが気に食わん。人の命を何だと思ってる?まあ謝礼はたっぷり貰うが。
……良し、出来た。後は時間を待つだけだ……多分、少しの抵抗があるだろうが
御堂が持ってきている竜胆とやらが役に立つはずだ」
「じゃあ、俺たちはこいつが安心してぶった切れる様にサポートに回ればいいわけだな?」
漸く口を開いた九郎に驚くように目を見合わせる面々だが、いち早くこの驚きから
立ち直ったのは焔だった。
「ま、そういうこったな」
時刻にして9:59PM。
慎が両親から聞いた少女が生まれたとされる時刻まで後一時間。


<いと小さき手の>
コチッ……チッ……。
壊れたかのように時折引っかかりを覚える秒針が、時刻を告げる。
すると、どうした事か靄の様な物が部屋中にかかり始め
お互いの姿が見えなくなっていった。
「おいっ、本当に大丈夫なんだろうな!?」
九郎が叫ぶ。
この靄の中では視界が利かず、ある程度の勘だけが頼りになってしまうからだ。
「大丈夫だ!じきに、この靄は消える!…こっちだ、こっちに来い、お前の望む
最後の娘はここにいる……」
慎はそういいながら先ほど作っていた符を取り出した。
見ると少女の名前と年齢、性別、生年月日が書かれた、ただの木で作られた符。
だが、靄はそれを取り巻くようにその符一点に集中されていく。
漸く視界が自由になり、三人は譲をサポートするかのように動き……
譲は竜胆で、靄自体を一刀両断の如く斬りつけた。
「…大丈夫か……?」
「ああ、問題なく斬れた様だ………もう、靄も薄らいできてる」
白い靄と、木で作られた符は消え、後に嬉しそうに少女の微笑う顔だけが部屋には残された。

「……で?」
「何が」
「なにがじゃねえよ!結局あれは何だったんだよ!!」
草間興信所へと帰る道中。
先ほどから全く明かされていない符に対して焔はまだ朝とは言え人目が無いとはいえない
道で慎に向かって聞いた…と言うより叫んだ。
少々刺す様な視線が痛いが気にしないことにする。
「…呪いだな。うん、確かにあれは呪いだった」
「…だから、そうじゃなくってな…?」
「…そうじゃなく黒月はあの符の事が聞きたいんだろう」
「僕もそう思うんですが……」
「ああ、あれか?あれは彼女自身だよ。あれを最後の娘である彼女に見立て
術師が死んでもまだ作動している呪いシステムにとりつかせて、
御堂の竜胆で斬らせてしまえば呪いは無くなる…というより呪いは消え去るというわけだ。
いや、本当はな?無くすだけでもいいかと思ったんだがそういうものがあるんなら
消し去ってしまえと」
「…ふむ」
「…つまり、俺らは……一つ余計な仕事を増やされたと、そういうことか?」
「ま、いいじゃないか過ぎたことだし…じき草間興信所だ。
依頼が済んだ事と、支払いの事について聞いて帰るとしようじゃないか」
「そうだな、金さえ貰えれば俺には何の関係も無いことだ」
九郎が言うとそれについで譲も、
「ええ、呪いも消えたのなら後は忘れて構わない事柄です」
と、だけ言い、黙った。
焔もそれ以上は言わず、妙な依頼が終わったことに対して一つ溜息をついた。

そうして四人は無事に終わった事を草間に告げると、それぞれの場所へと
帰っていき……九郎だけが依頼の後に買ってきてくれと妻から頼まれた
大根と玉ねぎを八百屋で買うべく八百屋へ向かったが…こんなに遅くなって
どう言い訳したものかどうか、うーん、と一人、唸った。


いと小さき手の-了-


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【0618 / 葛城・九郎 / 男 / 31 / 賞金稼ぎ】
【0565 / 七森・慎 / 男 / 27 / 陰陽師】
【0588 / 御堂・譲 / 男 / 17 / 高校生】
【0599 / 黒月・焔 / 男 / 27 / バーのマスター】
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
こんにちは、初めまして。駆け出し新米ライター秋月奏です。
今回はこの依頼に参加してくださってありがとうございました!
初プレイングと言うことでしたので書いた私もどきどきしながら
書かせていただきましたが、ど、どんなもんでしょうか?
拙いながらも少しでも楽しんでもらえたなら幸いです。
また、何処かの依頼でお会いできることを願いつつ。