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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


開かずの占い館
<オープニング>

「…開かずの占い館?何よ、それ。どうせまたガセなんでしょう?
ほらほら、さっさと仕事につく!」
麗香は「またか…」と言う顔をしながら読者の投稿によるその記事を
読むことなくデスクについた。
が、目の前の編集者は麗香の鋭い目つきにも戸惑うことなく
書類その他をデスクに叩きつけ話を続けた…妙なところで熱血な編集者の様である。
「いえいえ、編集長それがここの館はですね…関係した人全てが
口をつぐんで、ただ一言こう言うんだそうです…"あそこは尋常じゃない。
何故ああも怖い思いをして得た占いの結果に囚われ続けるのか…"!」
「怖い、思い?」
ぴくり、と麗香の柳眉が上がる。
これは…もしかするともしかするかもしれない。
「ええ、ここからはちょっと調べたんですが例えば入った人数と
出た人数が違うだなんてのは、良くある話で
更にはその出た人達は大概皆やつれた鋭い顔をして出てきたり
出てこなかった方が後日自宅で不可解なほど痩せて病院に入院もしくは
死亡されてたりする事もあるそうで…どうします、編集長。
これでもガセというのなら、この投稿記事やその他諸々捨てますが」
「…待ちなさい、何も取材しないとは言ってないでしょう?」
「…じゃあ」
「ええ、もし大丈夫だって言う人が居たら取材に行って来て?
その恐怖の館の内部やらなにやら写真に撮る事も忘れずにねっ」


<顔合わせ>
どうにか希望する面々が出、麗香はにこにこしながら名を確認すべくファイルを読み上げた。
「…まずは神無月・征司郎さん、それから七夜・忍さん、奉丈・遮那さんは…あら?
占い師の方なのね…占ってもらって平気なのかしら?」
「はい、興味ありますし…占いは受け取り方次第ですから♪」
元気良く、遮那がそう言うと麗香も更に微笑を深め、
「そうね、そういうものかもしれないわ」と、だけ言うと漸くもう一人の人物を読み上げた。
「で、紅一点の高遠・紗弓さん。彼女は時折家でバイトしてくれてるカメラマンさんだから
撮って欲しい人が居たらどうぞ…ただ何が写るかは保証しないけどね」
「……編集長、あまりそういう事は…」
紗弓はぼそっと小さな声で言うと麗香を睨む、が、麗香はあまり気にしないようで
まあまあいいじゃないの、と言うばかり。
頭を抱えた紗弓を励ますようにぽん、と遮那が紗弓の肩を軽く叩いた。
「じゃ、とりあえず行ってらっしゃい。大丈夫だとは思うけれどまあくれぐれも
行方不明になったり病院に担ぎ込まれたりしないでね♪」
と、縁起でもない麗香の言葉を最後に4人はアトラス編集部を後にした。


<取材前>
少々時間は取材前に遡る。
遮那は、取材に備えて占い師仲間に「開かずの占い館」について何か知っている事は
無いかと占い師仲間に聞いて回っていた。
「何でも良いんだ、知らないかな?」
「…あそこは良くないって言う噂だけどね」
答えたのはタロットを得意とする占い師だった。
彼女はタロットをシャッフルさせながら話を続ける。
「良くない?」
「ああ、良くない。あそこにもう一つ妙な噂があるのを聞いたことが無いかい?」
「無い……」
「あそこには表と裏、陰と陽があると言う…開かずの占い館にいけるのは
いや、入れるのは"何か"がある人だけだと」
「それが…今、被害にあってる人たち?」
「多分な…」
遮那は、拳を握り締めた。
見えないように、きつく、きつく。


場所は変わり、こちらはとある病院の一室。
窓からそよぐカーテンだけがばさばさと乾いた音を立てる。
忍は、ここで眠る患者と話をしていた。
いや、この場合話、というより読心と言ったほうが正しいかもしれないが…。
読み取る情報は占い館のことだけ、それ以外は決して読まない。
が、それだけ読むにしてもかなりの情報が忍の中に入っていった。
まず、入ろうとしてあそこに入ったのでは無いらしいと言う事。
出れずに出るには占い師の占いを持たなくてはならなかった事。
扉は正解が一つしかなく探し出すには大変な苦労を強いられる事。
そして、その占いを一緒に入り怖い思いをした友人は、あまりの結果に
一笑にふしたが、その後、眠るように亡くなってしまった事。
自分自身も今、こうして病院に入ってしまっている事などが映像とともに流れ込んで行き
忍は、奇妙な面持ちになった。
(…これは…もしかすると占い師の背後に居るのは同業者かもしれない……)
この様な遊びを強制するのは悪魔には良くある事だからだ。
恐怖心、というものは悪魔にとって絶好の食べ物であり得がたいものだ…だが……。
「こう言うのは許せませんね……」
むやみやたらと人の命を奪うのは。


<占い館へ>
PM4時13分。
色々と情報を話しながら歩いていた4人は漸くその場所へと辿り着いた。
周りから隔絶されたような場所にあるからなのか、まだ明るい時間である筈なのに
夜になったような暗い、世界がそこにはあった。
「…ここが、噂の場所ですか……」
征司郎が、その場所を見上げると建物はより一層大きくなったように見えた。
が、勿論建物が大きくなるなんてありえないので目の錯覚だろうが…。
征司郎はあまり、こう言う何かを信じない性格ゆえに気付かなかった。
実際に建物が大きく、内部の姿さえも変えていたことに。
洋風の建物に四人は近づくと扉を開けた。
うっそうとした薄暗がりのみが4人を手招いているかのようだ。
「…真っ暗ね、これじゃあ今のカメラで上手い具合に撮れるどうか…」
紗弓はぶつぶつと、カメラバックから暗闇でも撮れると言うカメラへと切り替えた。
新しくフィルムを入れると器用に素早くフィルムを巻いていく。
「せっかくですから、いろいろ回ってみましょうか? そのほうが取材にもなるでしょう。
それとも、さっさと終わらせて帰りたくなりましたか?」
遮那は小柄で可愛らしい外見ながら、そう呟くと楽しげに歩き出した。
慌てた三人は遮那を追いかけるようにして歩き出す。
色々な部屋を開けてみるが全ての部屋は空室であり、不思議なまでに、何も無かった。
「…しかし、何故こうも暗いんでしょう?これじゃあ、怖がるなと言っても
少々の恐怖心は沸いてしまうと思いませんか?」と征司郎は、この暗さに疑問を
感じるかのように呟く。それには忍も同感のようで、
「全くです。これじゃあ妙な噂が無くても作られてしまう噂と言うのもあったでしょうね」
そう、言ってにこやかに微笑んだ。
「…ちょっと待って三人とも」
紗弓が妙に引きつった声を出した。
何かが掌に落ちてきたらしい。
「え?」
「この紙よ…今私の手に落ちてきたわ…どうやら偏屈な占い師は占ってくれるようよ?」
『貴方方がここから出られましたらば占いましょう…さて、出れる扉は見つかりますか?』
「…何、これ?だって扉なら……」
遮那は不思議な気持ちで今さっきまであった筈の全ての部屋の扉を見つめた。
が…無いのだ。
全て。
今まであった筈の扉は全て消え、変わりに色々な扉が出現した。
「…やはり、この背景には……!!」
突如として忍が叫ぶ。
いつものにこやかな表情は消え険しさだけがそこには出ていた。
「ど、どうしたんですか、七夜さん」
「何か、ここにはいるの?」
「叫ぶような何かが居るって事ですか?」
三者三様の問いかけに忍はゆっくりと表情を戻した。
「…この背景には悪魔が居るようです、多分占い師もその傀儡でしょう。
いい結果、なんてありえるわけが無い……!!」
「じゃあ…」
遮那たちは息を呑んだ。
ここは、悪魔のテリトリーと言う事になるのではないか?
そして、出れなければ遮那たちの安全は保証されないのだ。
「…とりあえず出ましょう、出て話を聞かなければ」
「え…?」
問い掛ける間もなく、忍は『黒衣の尖角持ちし悪魔』に姿を変え、能力を行使する。
時空切断の能力応用にて皆を外に瞬間移動させようとしたのだ。
だが忍にとって自分の能力行使はある意味死に近づく危険もある諸刃の剣でもある。
耳鳴りの様な険しい音が遮那たちの周りに満ち……、

パンッ。

空気が裂ける様な音と共に、四人は占い館の外に出た。


<傀儡>
『…ほう、出れるとは思わなかったが…惜しいな、これだけの人数なれば
主へ最高の馳走になったろうに』
「馳走?」
征司郎と、忍は眉を顰めた。
まだ忍は、悪魔の姿から仮の姿へと戻っていないのだが気にしてないように
占い師は言葉を続けた。
『そう、馳走。能力のある人間ほど最上の贄にもなると言うもの。
特にそこの御仁は、それについてはご存知なのではあるまいかな?』
「………!」
忍の顔色が変わる。
昔の消せない思いで全てが肩にのしかかるようで。
「はいはい、ちょっと待って。つまりは贄を探すために占い館はあったって事?
今まで死んだり入院した子は少なからず能力があったと見ていいのね?」
紗弓は占い師に詰め寄った。
一応、これは取材をかねているのだ。
写真はもう占い館を撮るだけで終りだろうが記事となるとそうはいかない。
少々の恐怖記事だろうが結末が読者は知りたい物なのだから。
『…そういう事になるかの』
「ふうん、解ったわ。じゃあ後は、これからどうするのか聞いていい?」
「あ、あの、高遠さん……?」
遮那は紗弓の妙な質問に戸惑った。
征司郎と忍も同じく、かなり呆れているようではある。
これからどうするのか、などと悪魔の傀儡に聞いてどうしようと言うのだろう?
が、傀儡も紗弓も薄く笑んだまま、
『それは勿論、正体もばれた事だしここからいなくなるしか無いだろうて』
「なるほどね」
と、妙な問答をするばかり。
「さて…私は聞きたいことが終わったけれどどうする?」
くるり、と三人の方へ紗弓は向き直り、問う。
「どうするって…えーと……えーと……」遮那は答えに困り、二人へと視線をさまよわせ…、
「居なくなる、ということだしこう言う件がもう起こらないなら僕は
どうでもいいんだけれど」と征司郎が答え、忍は「傀儡の占い師を殺しても背後が
呼べないなら…今、ここで戦うのは無理でしょう……」それだけ、呟くと
占い師を睨みつけた。
…その視線は、背後に潜む悪魔すら睨んでいるかのような強い光を持って。
『では、消えるとしよう…もし、また機会があれば逢いたい物だが……』
言い終わることも無いまま、占い師は空気へ溶ける様に消え…後は何も残らない、屋敷だけが
この場所に、残った。


<帰参>
「あら、お帰りなさい。随分早かったのね?」
麗香は微笑みながら四人を迎えた。
妙に疲れきっているようだが、そこは気にせずに紗弓へ記事は?と聞くのは
流石であるとしか言い様がないが…。
「一応、この事件の結末だけのレポート形式にしてライターさんに後日お渡しします。
写真もその時に」
「そ?でも、皆本当にどうしたの、まるで見たこともないようなものを見たって顔をして…」
この麗香の問いに答えたのは征司郎。
「いえ、現実も虚構も、どちらも怖い物があるんだなってそう思っただけですよ」
「確かに…」
「うん…」
征司郎の言葉に忍も遮那も強く頷くと、
「?」と、紗弓と麗香はきょとんとした顔した。




開かずの占い館-了-

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0489 / 神無月・征司郎 / 男 / 26 / 自営業】
【0187 / 高遠・紗弓 / 女 / 19 / カメラマン】
【0506 / 奉丈・遮那 / 男 / 17 / 占い師】
【0563 / 七夜・忍 / 男 / 650 / 悪魔より追われる罪人】
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■         ライター通信          ■
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初めまして、新米ライター秋月 奏です。
今回は「開かずの占い館」に参加して頂いて有難うございました。
神無月さんは現実的な人のようでしたので
このようなプレイングになりましたが、如何でしたでしょうか?
影に潜む陰、と言う事でもしかしたら、再編としてこれの
続きがあるかもですが……(><)
良ければテラコン等からのメール、お待ちしております。
それでは、また何時かの日にお会いできることを願って。