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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


調査コードネーム:城田の悩み
------<オープニング>--------------------------------------
「まったく、安川くんときたら……」
 小説家・城田政彦は、編集担当の安川雄一から一通の手紙を見て呆れかえっていた。
『城田先生へ。今回は私、突然の出張が入りまして、今回はご自分で題材を見つけて下さい。つまり、自由に何でも書いて良いということですよ。先生、ご自分からお一人で好きな題材で書いてみたいって、いつも言ってましたよね。そのチャンスですよ! あと、ネットカフェにも足を伸ばしてみて下さい。若い方の意見を聞くのも、良い題材になりますよ』
というのが、安川からの手紙の内容だった。
「まったく持って、急な男だな、安川くんは。ふむ、それにしても自由題材か。これは文字通りチャンスかも知れん」
 いままで城田は、純文学と少女小説しか書いたことがなかった。まあ、それでも文句はないのだが、やはり自分なりの小説というものを書いてみたかったのは、以前から変わっていない。
「しばらく行っていなかったが、あのネットカフェはゴーストネットOFFというらしいな。なるほど、何か聞けるやも知れん」
 城田は書斎を抜け出して、お気に入りの作務衣(さむえ)姿で、ゴーストネットOFFへと向かうのだった。
「えーと……、ネットカフェに行くのはどちらの方向だったかな……?」
 先行き不安な城田であった。

◎再会
 城田はゴーストネットOFFの場所をうっかりわすれてしまい、その近くであることにも関わらずにウロウロするばかりだった。
「うむむ、ネットカフェはどこへいったのやら。もう営業していないとか?」
 その時、城田にとっては可憐な娘の姿が目に入った。
「あ、城田先生!」
「うむ? おお、君は先日の、えーと……」
「滝沢です。滝沢百合子(たきざわ・ゆりこ)です。あの、執筆進んでますか?」
「一昨日で一段落したのだが、安川くんが出張でな。今回は自分で題材を見つけなければならんのだよ」
「え? それって、自由課題ですよね? うわ、素敵です! 私、お手伝いさせて貰っていいですか?」
「良いも何も、こちらは大歓迎だよ。ところで、ネットカフェは潰れたのかかね?」
「城田先生、やだぁ。すぐこちらにありますよ。裏手に回ってどうするんですか?」
「あ、なんだ、ここは裏手だったのか、ははは、私としたことが、面目ない」
「うふふ。それじゃあ、入りましょうか。先生には、コーヒー、おごっちゃいますね」
 二人はゴーストネットOFFへと入った。人は昼間だけにまばら。だが、怪しい影が一人いたことに、城田も百合子も気づいていなかった。
「あ、滝沢さん! 申し訳ないんだけど、インストラクターして貰いたい人がいるの。申し訳ないんだけど、お願い出来るかしら?」
 カウンターの従業員から言われ、滝沢は返事をするものの、表情は残念そうだった。
「あ、はい、分かりました……。城田先生、わたし、仕事入っちゃいました。お手伝いしたかったんですけど。私の仕事が終わるまで、ゆっくりしていって貰えますか?」
「ああ、そのつもりだ。大丈夫、これでもネットは慣れた方だからね。ゆっくり教えてくると良い」
「ありがとうございます! それじゃ、行ってきますね」

◎悪戯
 城田はパソコンの前に座り、ネットの検索を始めた。
 その時、城田の背後に迫る人物が一人……。
「あの、おじさま? ネット検索ですかぁ?」
「む? 私はおじさんではないぞ。これでもまだ37歳だ。それに城田という名前もある」
「ああ、ごめんなさい。じゃあ、城田さんって呼ばせて貰って宜しい?」
「うむ。それならもんだいはないな。で、きみは何物なのだね?」
 女はやけに骨張っていて、一瞬男かと思える仕草をみせるが、古風なセーラー服を着ていることから女学生であることには間違いないらしい。
「僕、あ、いえ、わたし、水野想子といいま〜す。これでも女子高生なんですよ〜」
「ほう、そうなのか。それで、私に何か用かね?」
「何の調べ者をしているのかな、と思いまして〜」
 うむ、今日びの女学生は優しい娘が多いな、と思いながら、城田は素直に答えた。
「私は小説家でね。次回作の題材を探しているのだよ。しかし、滝沢くんも行ってしまったし、今日は一人でということになりそうだ」
「次回作の題材ですかぁ? それなら〜、いいものがあるんですよ。DVDなんですけど、みてみますかぁ?」
「DVD? ああ、近頃普及してきたメディアだな? 映画とかは、私もよく見るが、DVDのものは一度も見たことがないのだよ」
 しめた! とばかり、想子は懐からCDケースに入ったDVDメディアを出してくる。
「それじゃあ、見てくださいね。私も一緒に見てますから、安心してていいですよー」
「うむ、そうしてもらおうか」
 想子はDVDドライブにメディアをセットした。あとは自動で再生を待つばかり。
 するとどうだ。重低音と共に、題名は「実録☆吸血鬼ハンター24時」というテロップが出る。
 それからの内容は、夜の墓場での食人鬼との死闘や、ビル街に巣くう吸血鬼との死闘、グロテスクな生命物体の気色の悪い退治話などといった、この世のものとも思えない作品の数々が、目まぐるしく展開していく。
「城田さん、どうです? 何か良いアイデアは浮かびました?」
「ふうむ、これは市販しているDVDなのかね?」
「いーえ、私が自分で撮ったものなんです。上手く撮れているでしょう。全部本物なんですよ、うふ」
「しかし、良くできているな。CGというのか? それを駆使しても、なかなかこういうレベルにはまだ到達は出来ないだろうて」
「いえ、あの、ですから、私が実際に現状を撮ったものなんです。お分かりですか?」
 その時、ほうきが想子を襲った。
「城田先生に、何てもの見せてんのよ! この吸血鬼ハンター!」
 ドバキ。頭に乗っけていた想子のカツラが取れ、一気に男であるとバレてしまった。
「おお、男だったのかね、君は」
「ほら、謝りなさいよ、水野想司(みずの・そうじ)!」
「滝沢さん……。城田先生、すみませんでした。ただ、脅かしたくて……」
 百合子も想司も、城田はカンカンに怒っていると思っていたのだが、意外な返答をしてきた。
「いや、若い者には負けるな、私も。もっと見解を大きくして、自分の好きな作品を、つくってみたいものだ。それにしては、先ほどのDVD、なかなかの出来具合だった。刺激を受けたよ」
「ええ? 城田先生、あれはこの子のイタズラなんですよ。お怒りにならないんですか?」
 そうだ。いくらなんでも、あの映像を見せられれば、誰だって怒るか、呆れるかのどちらかしかない。
「滝沢くん。わたしは今決めたよ。君たちが教えてくれた。作品は直感、インスピレーションで出来上がっていくということをね」
「城田先生……」
「今日は滝沢くんのアドバイスを受けられなかったが、何もこれでここには来ないというワケではないぞ。その子のイタズラのお陰もあって、私にも自信がついたというものだ」
 想司は肩身が狭かった。
 百合子も、改めて城田が心の広い人物であることに気付かされた。これは彼女にとっては大発見に等しかった。
「さて、コーヒーを一杯もらおうか。今日の調べものは、もう済んだことだしな」
「はい、わかりました。あ、吸血鬼ハンターにはあげないからね。少しは懲りなさい」
「え〜、いいじゃないですか、滝沢さ〜ん」
「ははは、やはり若い者には、まだまだ適わないな。安川くんも頑張っていると良いが……」
 こうして一騒動を終えた三人は、仲良く談話に入る。
 ここでのひとときが、一番に思えてきた城田だった。

                            FIN
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0057 滝沢百合子(たきざわ・ゆりこ) 女 17歳 女子高校生
0424 水野想司(みずの・そうじ) 男 14歳 吸血鬼ハンター
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■         ライター通信          ■
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○今回は面白い展開になりました。私も楽しませて書かせてもらいました。
○女子高校生と吸血鬼ハンター、しかも後者は前者に弱い。これだけでも
十分面白い設定だと思います。もっと、いろいろなシチュエーションで
書いてみたいですね。
○城田と安川ですが、これはシリーズ化していきます。滝沢さん、城田先生は
あなたのことを大変気にいっておりますので、ごひいきにお願いします。
○水野さんも、次回は変わった設定で入ってきて頂きますよう、お願い申し上げます。
大変笑わせて頂きました。
○次回も色々な方との出会いがありますよう、お祈りしながら。
では、またあいましょうね。
                      夢 羅 武 市 より