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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


SpringFields
<オープニング>
「…また、何でこんな事件がおきるわけ?」
弓弦・鈴夏は長い髪をかきあげながらぶつぶつ、呟いた。
先日、とある風景を見て眠りから醒めない事件があったばかりだというのに!
今度は雨、だという。
雨とはいっても雨に濡れて目が覚めない、というわけではない。
神隠しだ。
年齢は高校生から大学一年くらいの歳まで、と妙なばらつきで
ただ不思議なのは神隠しに遭った後、言う言葉が天使を見た、と言う事。
「天使…ねぇ」
弓弦は室内の天井を見た後に大きく息を吐き出した。
そこから生み出される小さな式神が命令を待つかのように羽ばたき……
「神隠しになんてあう気は無いけれど天使、とやらの正体は気になるわね。
GW開けで身体もなまってるし天使探索、と行きますか」
命令を了承したかのように式神は弓弦にしか聞こえない羽音を羽ばたかせ出て行った。


<ゴーストネット>
「さて…式神も出ていったし、私は私の準備をするとしようかな…」
そう、言いながら弓弦はパソコンを起動させるとネットへ接続した。
目的はただ一つ、ゴーストネットへの書き込みである。
今日、というわけには行かないのでこの書き込みから三日後、興味がある方は
一緒に行動しましょうと言う書き込みをして、違う情報が何処かにないか
掲示板のログを見、情報を検索しつつネットを切った。

──今のところ、手がかりナシ。被害者増えるとも減ることも無く疑問、深まるばかり。


<天使>
「天使…ねぇ」

斎・悠也は、ゴーストネットで妙なことを見てしまったと言う様に微笑んだ。
図らずもそれは弓弦が呟いた言葉と同じ物だったが……。
雨はエンジェルティアーとでも言うのだろうか?
…本物の天使なんて滅多にお目にかかるものでもなかろうに。
高校生から大学一年生くらいの歳…受験セミナーで妙な暗示にでもかかってるわけか…?
(…ちょっと面白そうだな……)
この書き込んでいる人物と協力して動くのも悪くないかもしれない。
まずは、この件についてネットや大学で情報収集をするとしよう。
大学関係だけでも結構な情報網があるものだし…情報は一つでも多い方が良いだろう。
「…さて、やるとしますか……」
弓弦が指定した日時まで───後2日。

「………何だ、これ……!?」
情報を収集結果に悠也は声を荒げた。
神隠しの期間や場所はまるっきり確定できず何があったのかは関係した人物達に
話を聞こうにも天使を見たことを覚えているだけで、どうにも埒があかない、と
言うのが結果だった。
逢って協力しようにも、このままでは何の情報も無いのと同じなのだ。
(こいつは…やられたな……)
どうにも、天使、と言う生易しいものでは無い様な気がする。
じゃあ、なんだと言うのか?と問われたら解らない、と言うしかないほどの。
だが……?
(もしかしたら、この被害者達……!)
ありえない事では無い。
早速、明後日弓弦に逢ったときにそれを聞くべきだ、と思いながら悠也は
ネットを切断し、ファイルを纏めるべくプリントアウトした。


<探索当日>
新宿。
悠也は待ち合わせ時間に間に合うように花園神社へとゆっくり歩いた。
この様な大きい街にぽつり、と建つ花園神社は一見してあまり人は入らない、と
思われるような神社だが、時にここには大きい街故に憩いを求めてやって来る者が
多く、朝とは言え人がぽつりぽつりと居る。
神社へ参拝に行くもの、そこで近所話をするもの、様々だ。
(…さて……と)
弓弦本人を探そうとする前に、銀髪の少女から話し掛けられ、その少女こそが
弓弦・鈴夏本人である事と、悠也の少し、前にいた青年―――名を七森・恭一と言う
男性も一緒に探索する事を悠也は知った。
が、まだ一緒に行動する人物が居るらしく、それぞれ、「ロゼ・クロイツ」、
「九尾・桐伯」と名乗った。
「成る程、結構一緒に行動するのが居るんだな」
「はい、夕方にはもう一人いらっしゃいますよ」
「へえ……まあ俺は些細な遊びに付き合うつもりは無いけれど戦う人数が
それだけ多いのならやりやすいだろうね」
「……戦う?」
弓弦の眉間が少々寄せられ、赤い瞳の色が険しくなった。
何か違うことを言ってしまったらしい。
「違うのかな?」
「さて…それについては解りません、とお答えしておきましょうか」
「なあ、あんたら話をしてるのも良いけど、待ってる奴も居るんだし
それは歩きながら出来る会話なんじゃねえの?」
恭一が漸く、背後から口を出す。
確かに、歩きながらでも話せることかもしれないし、まだ他の面々も
聞きたい事があるかもしれないのだ。
「確かにそうですね、では参りましょうか」
弓弦と悠也は頷くと、歩き出した。
どうやら探索開始、の様である。

<Spring Fields>
「…歩きながら話を聞いてたから解っちゃ居たことだったが…」
恭一は、ぼそり、と呟くと憎々しげに舌を打ち鳴らしマルボロに火をつけた。
ロゼはそれを見ると、無表情だが興味深げに恭一の顔を見た。
「…まあ、俺が学校で検索したデータとそうは変わらなかったですしね」
「ですが…このまま人に聞いて同じ事の繰り返しでは埒があかない事も確かです。
…弓弦さん、次はどの方に聞きに行くのですか?」
「次は……病院ですけど…その前に少しだけ、休憩しましょうか?
雨も降ってきそうですし」
弓弦は何かを考え込んでいるかのようだが、一体何を考えているのかは
良くは解らなかった。
何度か鷲の様な姿をした式神が弓弦の元へやってきていたが
その度に表情は曇るかのようだったけれど。
「いや、休憩なんかしなくていいだろ。
今までの話を、ここで少しだけ纏めるとすれば…天使は怪我をしていた、
何故戻ってこれたのかは神隠しに遭った本人にさえ、解らない、と
言う事だけだ……しかもあった人物にはこれと言って共通点も無い、と来ている」
恭一は紫煙を燻らせながら、はあ、と溜息をついた。
それを引き継ぐように悠也が口を開く。
「いや、共通点ならありますよ」
「?それはなんだ?」
「空気ですよ、空気」
「はあ?」
少々不可解な表情をしている恭一を代弁するかのように九尾が悠也に聞き返す。
「つまり、彼らは天使、が好むような空気の持ち主、という事ですか?」
「多分な……しかし、だからと言って戻れた理由にはならないけれど」
「…………」
そこで、皆、沈黙してしまう。
一体何があったのか?
それさえ、解ればすぐにでも解決できそうなのに。
「…では、病院へ行きましょうか。ロゼさんには言ってあるんですけれど多分、
そこに答えとおぼつく、らしき物が提示されている筈です」
弓弦の言葉に緊張が走る。
今まで聞いて回ったことは、確証を深める為だったらしい。
「そうだな、じゃあ行くとしようか…答えはともかく、天使と言われるそいつが
悪い奴じゃなければ俺はそれでいい」
「そうですね、行きましょうか」
「ああ」
「俺としちゃ可能なら捕らえてみたかったけど…まあいい、行こう」

病院。
バスを使って、少々歩いた場所に弓弦が言っていた病院はあった。
最近塗り替えたばかりなのか、白いペンキが妙に眩しい。
ここの、個室の中に答えらしき物が提示してあるらしいのだが……
開けた途端、全員は声を出すことも出来ずに驚いた。
沢山の機械に繋がれた少年の身体。
だが、そこにあるのは本当の意味での―――身体のみだったのだ。
「これは……?」
九尾が不思議そうに問う。
起きれない、という人たちを起こした事件では裏で誰かが眠るようにしていた。
だが、これではまるで……どこかに意識を置いてきたようではないか。
遅れて、一人の少年が入ってくる。
軽く、少年は会釈すると名を名乗り、やはり、この身体だけの存在に目を見張った。
「…この方は術師だそうです。神隠しが起こる前の雨の日に怪我をし、ここの病院に
連れて来られてからずっと意識がありません…多分…それは……」
弓弦が何かを言おうとした時、雨が降り出した。
外から降り注ぐ雨を見たくないように弓弦はカーテンを閉め、明りをつけた。
「この人の意識は雨に囚われている…そういうことか?」
悠也は面白そうに瞳を細めた、そうすると金の瞳が猫の様に鋭く光る。
「…はい」
「ならば、話は簡単だ。その場と、この場を俺が繋げてやる。
そこで、話をすればいい」
「そんなの、アンタに出来んのかよ?」
「…悪いが見くびって貰っちゃ困る……」
キィィィン……。
まるで金属を引っ掻くような鋭い音がしたかと思うと、そこには先ほどまで
眠っていただろう人物が座っていた。
『誰……?』
「私たちは…神隠しについて追っている者です」
『神隠し…?ああ…僕の使い魔が、どうあっても帰しちゃう、あれか…』
ぶつぶつと、その人物は呟くと、また遠くを見た。
消えそうなほどに透けている身体が何とも言えず憐れで。
「…ねえ、待って。ならキミが神隠しの原因なの?」
想司が聞くと、その少年は小さく頷いた。
「やはり、そうなんですね?神隠しに遭う人が空気の綺麗な人ばかりだったのも、意識を保つために
この方が力を補うため……そしてそれを憐れんだ"天使"が……」
「神隠しに遭った者を、元の場所へと雨の日に返したって?
それじゃあ、悪いのはこいつじゃねえか!」
「待ってください、七森さん。ですが、まだ疑問は残ります。
帰れなかった人はどうしたか、という疑問です」
「そうだよね、僕もそれが気になるなっ。この人少し…おかしいし」
九尾と想司が、恭一を宥める様にしながら少年へと聞く。
『…食べちゃったよ…だって、もう少しで意識がなくなりそうだったからね。
だから使い魔はそれに耐えかねて傷を負った……癒えない傷を』
「ほう、即ち…あなたが天使を使役する力が細くなった…と?」
ますます、面白そうに悠也は聞く。
少年は答えず、ただ頷くばかり。
『もう、間に合わないと使い魔は言った…多分、本当にそうなのだろう。
彼女は消える……僕も、帰り方がもう、解らない』
「なら、俺が君の今居る場所へと意識を戻してあげようか?
その代わり、使役していた天使を俺に預けるってのでどう?」
悠也の言葉にロゼが苦虫を噛み潰したような顔へ変わる。
「…貴様、それは彼にとって、というより貴様にしか良いことがなかろう。
取引と言う物は、公平に行われるべきだ」
「ロゼさんの言うとおりです…しかし、戻れない、というのはどういう事です?」
「そうだな、どうしてなんだ?幾ら囚われてると言っても戻り方くらいは解るだろう?」
「うんうん☆」
皆の言葉を聞くことも無く空ろな瞳を誰に向ける、と言うこともなく、
少年は立ち上がり手を天へと差し伸べた。
『ごめん……』
それは、誰へと指し示した言葉だったろうか。
降り注ぐような優しい光が場に満ちていく。
幻ではない、温かな光。
場は、いつしか解除され病室へと姿を変える。
眠る少年の姿は無く、ただ「ごめん」と小さく呟く彼の姿があるばかり。

彼を護っていた者は消え……。
外には雨だけが、降り注いでいた。



Spring Fields-End-

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0164 / 斎・悠也 / 男 / 21 /大学生・バイトでホスト】
【0332 / 九尾・桐伯 / 男 / 27 /バーテンダー】
【0423 / ロゼ・クロイツ / 女 / 2 / 元・悪魔払い師の助手】
【0424 / 水野・想司 / 男 / 14 / 吸血鬼ハンター】
【0427 / 和泉・怜 / 女 / 95 / 陰陽師】
【0463 / 七森・恭一 / 男 / 23 / 会社員】
【0498 / 小泉・優 / 女 / 22 / 陰陽師】
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■         ライター通信          ■
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初めまして!新米かけ出しライターの秋月 奏と申します。
今回はこちらの作品に発注して下さり誠にありがとうございました!
斎・悠也さん凄くカッコいいプレイングで、その
10分の一でも書ききれていたら…と思うのですが少しでも
楽しんでいただけたなら幸いです。
今回は個別ファイルですが大まかに分けて二つに分かれています。
和泉さん&小泉さんの探索編、七森さん、斎さん、九尾さん、
ロゼさんの弓弦と共に行動、探索編と言う感じに。
もし興味がありましたら他の方のファイルも読んでみてください。
もし、またどこかで会うことがありましたならその時はどうか宜しくお願い致します。
では、またいつかの日に♪