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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


呪い人よ、こんにちは【激動編】
●オープニング【0】
 LAST TIME 『呪い人よ、こんにちは』――。
 金沢の神崎神社で発見された中年男の変死体。死体には外傷はなく、死因は心臓麻痺であった。だがその時、アトラス編集部には『怨呪神社(おんじゅじんじゃ)』と揶揄される神社、温州神社(うんしゅうじんじゃ)があるとの情報が送られてきていた。その昔、呪いたい者の名前を書いた紙を中に入れたわら人形をそこへ納めたというのだ。
 編集長の命により、変死体と温州神社の関連性を金沢に赴いて調べることになった一行。ある者は懐かしい顔と再会し、またある者は温州神社へわら人形を納めていた者の姿を目撃する。そしてまた別の者は変死体となった中年男、吉岡正樹(よしおか・まさき)の通夜へ向かう。
 各々情報収集を終え、ホテルで情報交換を行っていたその時、1本の電話がかかってきた。夜中の張り込みに出かける途中だった七森沙耶が、浅野川に架かる梅ノ橋のたもとで中年男の死体を発見したというのだ。
 これは最初の事件と関連性はあるのだろうか――?

●梅ノ橋にて【2A】
 沙耶から詳しく状況を聞いた後、さくらと十三はタクシーに乗り、浅野川大橋手前で降りた。梅ノ橋付近には数台のパトカーが止まっていたのが見えたからだ。
 浅野川大橋から梅ノ橋まで徒歩で移動する2人。梅ノ橋のたもとでは集まっていた野次馬をよそに、警察の人間が慌ただしく動いていた。
「嬢ちゃんの姿はねぇようだが……懐かしい顔がありやがる」
「あれは……葛葉様たちでは……」
 現場には、警官に事情聴取をされている葛葉とめぐみの姿があった。尾崎神社の事件に続いて、またしても第1発見者になったというのか?
(やはり偶然ではないのかも……葛葉様にお話を伺わないといけませんね)
 こんな短期間で2件の事件の第1発見者になるとは普通は考えられない。そこに何らかの要因があると考えた方が自然だ。
「お……あそこに2人居やがった」
 十三が顎で方向を示した。梅ノ橋の正面、路地に入る所に沙耶とソネ子の姿があった。こちらを見つけ、沙耶が手招きをしていた。
 すぐに合流し、一時現場を離れる4人。
「おい、死体見つけたんじゃねぇのか?」
「それがその、彼女たちが『ここは任せてください』って言ってくれたんで……」
 どうやらめぐみたちが気を遣ってくれたようだ。
「それよりもあの人、吉岡さんの知り合いみたいで……携帯電話に履歴が残ってました」
「死体はどんな感じだ?」
 電話で状況は聞いていたが再度確認する十三。沙耶は死体の外見特徴を説明した。
「そりゃ福島だな、間違いねぇ」
 断言する十三。さくらが溜息混じりに言った。
「やはり今回の事件絡みなんですね」
「だろうぜ。どら……ちょっくら様子伺ってくっか。嬢ちゃんたち連れて、先帰ってくれていいぜ」
 十三が再び現場の方へ向かった。
「あ! あの、真名神さんは今どちらに?」
 沙耶がさくらに尋ねた。
「こちらには向かっていないようですが……シュライン様がホテルに残っていますから、お尋ねになられては?」
「分かりました、すみません!」
 沙耶はぺこりと頭を下げると、その場から慌ただしく立ち去った。狐に摘まれたような表情のさくら。
「どうされたんでしょうか……。ともあれ、後は渡橋様にお任せし、私たちはこの場を離れましょうか……あら」
 いつの間にか、ソネ子も姿を消していた。

●告別式【5A】
 翌日昼――十三は吉岡の告別式会場である寺へ姿を見せていた。もちろん喪服姿である。
「あー、お疲れさん」
 十三はごく自然に受付の男に声をかけた。
「あ、どうも……」
 男は一瞬戸惑っていたが、十三の挨拶に押されるように頭を下げた。
「受付も大変だよなぁ。どうだ、俺がちょっと間代わってやっからよ、向こうで少し休んでくるといいぜ」
「あ……でも」
「いいからいいから、俺のこたぁ気にすんなって。休んでこいよ」
「じゃあ……少しだけお願いします」
 男は再び頭を下げると、本堂の方へ姿を消した。
(へっ、ちょろいもんよ)
 様々な場面で役立つ自らのこの能力を、十三は重宝していた。
(さてと……)
 十三はさっそく記帳内容を確認していった。川田の姿があることは確認済みだ。したがってすでに記帳を済ませているはずである。
(おっと、あったぜ、あったぜ)
 簡単に川田の記帳は見つかった。住所を確認すると金沢市野町となっている。後で地図と照らし合わせてみれば分かるだろう。
(しかし、福島の通夜が今夜じゃねぇとは誤算だったな)
 十三は昨夜現場に居た刑事とつなぎをつけた後、今朝も連絡を取っていた。刑事とは初対面だったが、その刑事が古くに使っていた情報屋の振りをしたのだ。
 それで聞いた情報が、福島の検死作業が手間取っているということだった。検死が遅れるということは、遺族の元へ死体が返されるのも遅れるということである。ゆえに通夜は遅れるという訳だ。
(仕方ねぇ。予定が狂ったが、この後で川田を捕まえるとするか……)
 十三は懐にしまってあった物を確認し、ニヤッと笑みを浮かべた。

●次に逝くのは【5B】
 出棺も滞りなく済み、吉岡の告別式は無事に終わった。十三は帰ろうとしていた川田を捕まえ、言葉巧みに喫茶店へ連れ出した。
 入った喫茶店では奥の席を選んだ。ここなら少々の話は聞こえないだろうと思ったからだ。
「へへっ……仕事仲間が次々亡くなって、あんたも大変だなあ」
「そうだな。吉岡に続いて福島も亡くなるとは……」
「これで仕事がやりにくくなるんだろ?」
「ああ、多少は繋がりが弱くなるか……いい土地の情報が手に入れにくくなるな」
「へっ、そんな表の仕事じゃねぇよ。裏で3人で組んでた仕事のこった。聞いてるぜ、色々と悪名はよぉ」
 ニヤニヤと笑いながら十三が言った。
「何っ……!」
 むっとする川田。だが十三は喪服を開け、懐にしまっていた呪符を川田に見せつけた。川田の顔色がさっと変わった。
「次に逝くのはお前さんか?」
 もちろん十三が呪符を使えるはずもない。この呪符も慶悟から借り受けてきた物であった。しかし、川田への脅しとしては十分であったようだ。
「ある人間から『仕事』を依頼されたが気が乗らなくてよ……」
 そうとだけ話し、十三は川田の出方を待った。
「すまん! 金ならいくらでも払うから、止めてくれ!!」
 がばっとテーブルの上に手を突き、川田は深々と頭を下げた。あまりにも分かりやすい反応で十三は面食らった。
(先の2人の死が堪えてたようだな……)
 そうでなければ、怒るか一笑に付していた所だろう。
「告別式へ来る前に電話があった……『次はあなただ』と女性の声で。あんたか……あんたがあの2人を……!」
 そう言う川田の身体は微かに震えていた。
「ほぉ。どうやら向こうさんは無事に『仕事』をこなしたようだなぁ……」
 上手い答え方である。自分と先の2つの事件には関係ない、そして『仕事』が殺人だとは一言も触れていない。後々訴えられたとしても、確実な証拠とはまずならないだろう。
「俺たちは契約書通りに仕事をやってきただけだ……誰からも恨まれる筋合いなどありはしない!」
(けっ、ぬかしやがる! この分じゃ、契約書を散々悪用してきたようだな……)
 今の川田の言葉で、どのような仕事をしてきていたか十三には分かったような気がした。そのようなことを長年していたら、恨まれるのも当然であろう。
 しかしこの言葉は反面困った言葉である。『誰からも恨まれる筋合いはない』と川田が思っているということは、裏を返せば『心当たりがありすぎる』ということだろう。
「さっきも言ったろ。気が乗らねぇってな……恨まれるはずがないってことでも、恨まれるってこともあるだろうぜ」
 十三はそう言って、とにかく心当たりの名前を引き出そうとした。
 川田は片っ端から思い当たり名前を挙げていった。その中には、慶悟と沙耶が横森なる老人から聞き込んできた名前『坂中(さかなか)』も含まれていた。
「……ま、ぎりぎりまで考えといてやるぜ」
 聞くことを聞いて、十三は先に喫茶店を出ていった。

●情報交換、そして【6】
 福島の死体が見つかった翌日の夕方――8人はさくらの部屋に集まって情報交換を行っていた。
「情報を総合しておくけど……」
 シュラインがカレーパンを片手に言った。武蔵ヶ辻にあるデパートの地下食品売り場で揚げられていた物を買ってきたのだ。ちなみに、冷めても油臭くなく美味しいので、皆から好評であった。
「吉岡たち3人は、契約書を悪用していた。それで10年前に坂中(さかなか)って人の土地を騙し取ったのよね」
 シュラインが慶悟と沙耶に確認した。頷く2人。
「それで抗議に行った帰りに、息子夫婦共々交通事故で亡くなったんだ」
 慶悟がシュラインの言葉に補足する。
「で……その坂中って人には多恵(たえ)って孫娘が居て、その娘があの温州神社の巫女さんなのよ」
 溜息混じりにシュラインが言った。
「復讐ってこったな……」
 十三はそうつぶやくと、カレーパンを口の中へ押し込んだ。
「呪いを施していたのは、彼女で間違いありませんよ。昨夜呪いの波動を辿った所、そこへ行き着いたんですから」
 原因が根深い物だと分かり、亮一は険しい表情をしていた。
「それでね……」
 シュラインが話を続けようとしたその時、部屋の電話が鳴った。
「はい、もしもし」
 さくらが電話に出る。が、たちまち表情が固くなった。
「葛葉様が飛び出していったんですか? どちらへ……野町の方……ですか?」
 地名を出されてもいまいちピンと来ないさくら。
「野町てぇと、川田の住所が確かそっちだったな……」
「広小路交差点の辺りですね」
 十三と亮一が口々に言った。そして気付く。今から何か――最後の事件が起ころうとしているのではないかと。
 外を闇が覆おうとしていた――。

【呪い人よ、こんにちは【激動編】 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0060 / 渡橋・十三(とばし・じゅうぞう)
           / 男 / 59 / ホームレス(兼情報屋) 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
  / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト 】
【 0134 / 草壁・さくら(くさかべ・さくら)
         / 女 / 20前後? / 骨董屋『櫻月堂』店員 】
【 0230 / 七森・沙耶(ななもり・さや)
                   / 女 / 17 / 高校生 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
                   / 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0476 / ライティア・エンレイ(らいてぃあ・えんれい)
                 / 男 / 25 / 悪魔召喚士 】
【 0622 / 都築・亮一(つづき・りょういち)
                   / 男 / 24 / 退魔師 】
【 0645 / 戸隠・ソネ子(とがくし・そねこ)
           / 女 / 15 / 見た目は都内の女子高生 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。今回はマイナスの場面番号も存在しますので。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全17場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・お待たせしました。金沢を舞台にした調査の第2回目をお送りします。情報が散らばっていますので、他の参加者の方の文章にも目を通されることをお勧めします。
・本文中では触れていないんですが、夜と朝の間で1度情報交換は行われています。
・状況としては厳しいです。バッドエンドの可能性、それなりにあります。全ては次回のプレイング次第ですが……どうぞ頑張ってください。
・渡橋十三さん、19度目のご参加ありがとうございました。福島の通夜が延びたので、行動前倒しになっています。脅しはすでに2人亡くなってることもあったため効果大でした。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。