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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


調査コードネーム:城田と安川〜カスタムPCの巻〜
------<オープニング>--------------------------------------
「安川君、あったかね?」
 城田は外から帰ってきた、編集担当の安川に尋ねた。
「先生、あの〜。もうあのワープロに合うインクリボンが製造終了になってまして、どこの店を歩いても見つかりませんでした〜」
「なんだと。むう、業者め、何十万もしたワープロを見捨てるつもりか!」
「先生〜、この際パソコンを導入しましょ? その方がコスト的にもかなり経済になりますし」
「初回投資はどうするというのかね? このワープロでさえ、私は大枚はたいてかったのだぞ?」
「た、確かにそうだとは思いますが、何を始めるにも初回投資はお金が必要になるものですから……」
 城田は冷静になったが、それでもパソコンが高いというのは目に見えている。あのような小さなノートパソコンでさえ、最低でも15万円はするのだ。
「つまり安川君は、私にパソコンを買わせようとしているつもりなのだね?」
「いえ、そうは言いませんが、それが今の常識となっていますので……。どうでしょうか、ここは検討してみてはくれませんか?」
「ふむ……。遂にパソコン導入の機会が巡ってきたワケか。で、詳しい情報はどうするつもりかね?」
「もちろん、ネットカフェですよ。安く抑える為に、私はカスタムPCをオススメしますよ、先生」
「かすたむぴーしー? 何かねそれは」
 こうして城田と安川は、毎度のことながらゴーストネットOFFへとむかうのだった。

◎組み立てはトントン拍子?!
 城田は安川から、カスタムPCがどういうものであるかということを、あらかじめ説明を受けていた。
 普通のパソコンではあるが、自分なりに改良や改造、そしてスペックを好きに変えられ、なによりも既存品のパソコンよりも遙かに安く手に入るということを教わった。
「ふむ、なるほど。そう言うワケなのか。であれば、予算は……」
「そうですね、執筆に使うものですから、そう高度な仕様でなくても構わないと思いますので……、これくらいで出来そうですよ」
と、安川は電卓を見せた。その数字は約¥75000。現在のカスタムPCの中では、妥当な数字だろう。
「それで? カスタムPCはネットカフェにあるのかね?」
「ええ。電話して、最小のキットを用意して貰うよう、頼んでおきました。恐らくもう用意は出来ていると思いますけど」
「ほう、手回しがいいな。それとそのカスタムPCだが、私に作らせてくれるんだろうね?」
「え?! 先生がですか? 大丈夫ですかぁ?」
「ウォホン。これでも昔は物作りの天才城田と呼ばれたのだぞ。安川君も分からないわけないだろう」
「あ、そうでしたね。お、ネットカフェが見えてきました」
 中にはいると、いつものゴーストネットOFFがあった。従業員も毎度ながら、せっせと働いている。
「ああ! 城田先生じゃない?」
 声を掛けてきたのは、水野想司(みずの・そうじ)だった。以前に悪戯をして、同級生にコテンパンにされた、あの問題児である。
「今日は何の用なの?」
「水野君か、しばらくだったね。いや、今回はネット検索ではないのだよ。そろそろ私もパソコンを持ちたいと思ってだね。こうして編集担当の安川君とやってきたわけだ」
「へえ! じゃ、カスタムPCってやつだね? あ、そうだ。それならこれを取り付けると良いよ。このCPUとバックアップのシステム! 絶対役立つと思うよ」
「ああ、ありがとう……。しかし、CPUとは、一体なんだね?」
 安川はいきなり躓いた。
「先生、説明したじゃないですか。セントラルプロセッサユニット、つまり中央演算装置のことですよ。
パソコンの心臓部にあたる部分です」
「ああ、そうだったな。英文字と横文字には、てんで弱いものでなぁ」
 そして奥のテーブルに行くと、インストラクターである泉マナが、パソコンパーツを一式揃えて待っていた。
「この度は、カスタムPCをお買いあげ下さるということで、組み立てのお手伝いを致します、泉マナと申します。宜しくおねがいします」
「うむ。よろしく」
「先生。やっぱり若い女性には弱いですねぇ。さ、それじゃあ、取りかかりましょうか?」
「安川君。若い女性に弱いは余計だぞ。まあ、否定はせんがな……」
 こうしてカスタムPCの組み立てが始まった。まずはマザーボードに想司からもらったCPUを取り付け、そしてバックアップシステムをフラットケーブルで繋ぐ。
 ところが、ここで異様な現象が起こった。なんと城田に安川のような声が『締め切りですよ、締め切りですよ』と繰り返したり、安川さんの心の叫びのようなものが電波のように空に消えていくのだ。
「こ、これは。これがカスタムPCなのかね?!」
「い、いえ、違いますよ! あ! そういえばこれ、水野君から貰ったものじゃないですか!」
 するとマナは厳しい顔をして、一人せせら笑っている想司の元へと向かった。
「想司君。悪戯は辞めるっていっていませんでしたか?」
「げ、ば、バレたのか……。す、すんません……。真面目にお手伝いさせて頂きます……」
 想司はCPUとバックアップシステムを自分から抜き取り、懐へとしまい込む。
 そして本格的に城田はマナの指導の通り、カスタムPCを組んでいく。CPU、CPUファン、ハードディスク、ビデオボード、そしてサウンドボードやコンボドライブといったものを、ケースに取り付けられたマザーボードとケースに組み込んでいく。
「それでは、ここまでできましたので、既存のディスプレイで画面が映るか試してみましょう」
 マナは並んでいるディスプレイの一台を持ってきて、それから出ているケーブルをビデオボードのコネクタに取り付けた。
「お。これが安川君の言っていた、BIOS(ばいおす)画面か。これで始動というワケだな?」
「先生、やりましたね。後はOSを入れるだけです!」
「OS? なんだね? それは」
 そこに想司が説明を入れた。
「オペレーションシステム! つまりコンピュータの操作を一手に引き受けて処理してくれる基本ソフトさ。それくらい覚えておいてほしいものだねぇ、城田先生」
「ふむ、なるほど。それで、OSの導入はどうなるのかね?」
 マナは様々な箇所をチェックしながら、
「はい、OSはこちらでインストールしておきます。またディスプレイもこちらから運送致しますので一日ほどお待ち頂ければ完全な形でお届けすることができますので」
と、にこやかに対応した。
「ほお、宅配か。それは便利なことだ。さて、あとはやることはないかな?」
「お客様のして頂くことは、これで全てでございます。怪我などはございませんでしょうか?」
「私の手の皮は厚いのでね、ちょっとやそっとじゃ、穴は空くまいて」
「それはようございました。では、またのお越しをお待ちしております」
 マナに促されて、想司が城田の背中を叩いた。
「む? どうしたね、水野君」
「……わるいことしてごめん。もう悪戯はしないから許して」
「ははは、そんなことを気にしているのか? これから気を付けてくれればいい。では、これで私たちは失礼するよ」
「さよなら、城田先生、安川さん」
 想司は素直に別れの挨拶をした。

◎組み立て済んで
「ふむ、充実した時間だったな。作り堪えのあるプラモデルという感じだったがな」
「皆さんそういうんですよ。ですからカスタムPCが、今ブームになっていますし。それに部品を取り替えるのも、自分で作っていますので分かりますしね」
 安川は得意そうに言った。
「しかし、水野くんでしたっけ? 面白い子でしたね」
「あれでも悪気はないらしい。まあ、今回は流石に驚いたがね」
「ははは、ああいう子がいても、面白いですよねぇ。でも懲りることはないかもしれませんね」

 こうして城田と安川は、散歩がてら家への道を一路進んでいくのだった。

                       FIN

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0424 水野・想司(みずの・そうじ) 男 14歳 吸血鬼ハンター
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■         ライター通信          ■
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○今回も堅調に終わった「城田と安川」です。
○インストラクターとしてNPCの「泉マナ」を登場
させました。これでバランスが取れたと思っております。
○水野想司さん、二回目の登場ありがとうございます。
○これからも、良き方に出会えることを祈りまして、
これにて失礼させて頂きます。それでは、また。

             夢 羅 武 市 より