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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


―悪魔遊戯―
<オープニング>

「…あのねえ、妙な手紙が届いているんだけれど」
麗香はひらひらと封書で来たと思われる物を示すとにこやか…とは
言い出せない笑みを浮かべた。
「何かねえ、以前来た開かずの占い師じゃない方の人かららしいんだけど…
どうやら、捕まえて欲しいようなのよねえ…って言うか
捕まえられるなら、と言う事らしいんだけど。
どうする?無視してもいいけれど、行きたいって言う人は居る?」

麗香は問う。
どちらにしても希望者が居なければ意味が無いのだから。

「まあ、良いわ。もし、希望する人が居たら私の方まで来て頂戴。
この手紙の文章を見せてあげるわ」


<顔合わせ>
「前回のことは知りませんが」とにこにこしながら、やってきたのは
神坐生・守矢。赤い髪と対照的な銀の瞳が、何とも印象的な青年である。
麗香は多少吃驚しながらも彼の瞳へと視線を合わせた。
「…大丈夫?こればっかりは本当に妙な件だし……」
「ええ、ボクのよく知っている人間が今回参加するといいますし……。
つまるところ、ただの好奇心なんですけどね」
「そうなの?で、その人の名前は…?…っと、あら、彼かしら?」
編集部へ入ってきた細身の影へと麗香は視線は移した。。
こちらもすんなりとした身体つきと振り向いた青い瞳が印象的な青年だ。
「そうです…遅いよ、譲」
「げ、守矢さん……」
面白い話があるから、と結構早めに編集部へと向かった筈なのに
そこに居たのは従兄弟の守矢で、御堂・譲は少々頭を抱えたくなった。
本来ならば表情を出すことをしない譲だがこの従兄弟ばかりは
それさえも通用しないので更に頭が痛くなる…というか何と言うか。
「後は…お見えのようね、神無月さん、七夜さん」
「はい、前回の件がありますからね」とは七夜・忍。
前回逃がしてしまった占い師の件もあり、どうしてもこの手で解決したい事柄だったからだ。
眼鏡をかけた瞳の奥からは怒りともつかないような不思議な色が浮かんでいる。
それに対して楽観的なのが神無月・征司郎。
少々麗香が言っていた手紙の内容が気になるから…と言うより、いつから悪魔と恋人同士に?と
いう爆笑的な感覚に敬意を表したからでもある。
「まあ僕は捕まえられるのなら、ということで参加なんですが(笑)」
黒目がちの瞳が相変わらずにこやかな色を讃えていて麗香も征司郎の表情を見ると
つい、顔がほころんでしまい淡い微笑を浮かべた。
「はは、参加の動機なんて本当に皆それぞれよねえ…じゃあ、これで全員かしら?」
ここで麗香が締め切るように言うと、遅れて高い靴音がしたかと思うと
それはぴたりと麗香のデスクの前で止まった。
一斉に皆振り返る。
「すまないが…悪魔からの手紙はここにあるのだろうか?」
女性だ、金の髪が華やかでさえある。
「貴方は?」
「レイベル・ラブ。ストリートドクターだ。今回の件に興味があってきた」
「そう?じゃあ、どうぞ。今から問題の手紙を見せるところだったの」

麗香はにっこり微笑み、問題とされる手紙を開いた。
捕まえることが出来るのなら捕まえてみろ、と書かれた手紙を。


<間>
話は少々、以前まで遡る。
とある依頼で突き止めた占い師が、逃げた。
これは背後にある人物の傀儡だったのだが…ともかくにも、
この時点で場所は消え、被害もなくなっていたのだがつい先日、
編集部に傀儡の占い師ではない本当の背後から手紙が届いたのだ。
この手紙の内容はいたってシンプルで妙な装飾など一切ない。
血の様な赤い文字で、書かれた事を除けば、だが。
場所の指定も特にない。
ある人物なら我が何処にいるか解る筈だと書いてあるばかり。
ただ、追いかけっこを楽しむかのような邪気のかけらもない、手紙。
そのような手紙を麗香が見せたときの皆の反応は様々な物ではあったが……
取りあえず、皆で待つ場所へと行くことになり道先案内を
『ある人物』と書かれた忍が務める事と、なった。

約束を違えることなく、ここに居るために。
それだけのために。
尖角のある黒衣の悪魔は、皆を黒い翼でもって、ある場所へと案内した


<招待状は闇の中>
「…所で何で守矢さん、ここに来たんですか?」
ぼそぼそっと守矢以外聞こえないように譲は言う…頼りにならないわけじゃない。
戦闘ならば凄い頼りにはなる、それだけに一緒に居るのがジレンマになる……そんな存在なのだ、守矢は。
が、守矢はにこやかに笑うばかり。
「だから、言っただろう?面白そうだし、譲が参加すると言うらしいから
力量を見ようと決めたワケ」
「…じゃあ質問を変えて、誰に聞いたんです?それ」
「譲は忘れてるかもしれないけどボクにだって譲のこと教えてくれる人くらい居ますよ?
ただ、誰なのかは悪いけど言えない。その子だって言って欲しくないだろうし、守秘義務くらいは
欲しいね」
「……はあ」
譲は、この言葉に黙った。
先ほどから竜胆がカチャカチャと音を立てている事が気になる所為もあるが
忍が作る空間内の闇が柔らかく優しい所為もある。
一体今何処に自分たちは居るのだろう?

「所で、僕、お茶持ってきたんですよ。悪魔とやらに会う前に一服、しませんか?
七夜さんも能力使っていてお疲れでしょうし♪」
征司郎は、見る人を和む気持ちにさせる笑顔のまま、持ってきていたの荷物の中から
聖水で淹れた、お茶を取り出した。
「ローズマリーのお茶は精神安定の効果があるんですよ。
それにローズマリーの香りは「悪魔から守ってくれる」と言われていますし」
あ、あちらでも淹れられるように勿論ティーセットも持ってきてますよ〜と
付け加えると空間移動中なので紙コップにお茶を注ぎ人数分手渡すともう一度、にっこりと笑った。
その笑顔につられる様にレイベルも笑い、一口お茶を口に含んだ。
気が少々急いていたのが嘘の様にひいていく。
「ふむ、お茶と言っても中々侮れんな」
「ええ…。だけど、こう言うところで、お茶が飲めるとは思わなかったなあ、ボク」
「僕もです、ありがとう征司郎さん。所で七夜さんは飲まないんですか?」
「僕ですか?この姿だと、今は飲めませんので後で頂きます♪
また、後ほど淹れて頂けると嬉しいなあ……」
忍は笑いながら征司郎へと「ね?」と頷いた。
征司郎も笑って「ええ、では依頼終了後に♪」と返すと、お茶をしまう。

お茶を飲んでから数分が、経っただろうか。
漸く、空間の中の闇が切れてきた。
少しだけ、薄暗いようで居て明るい、場所。
そここそが、今回の悪魔が指定した場所だった。

「では…行きましょうか?」


<汝ガ望ミヲ示スモノ>
「…妙な場所だね、暑くもなく寒くもない。
光はないようなのに、少し明るい…ふむ、悪魔の胎の中と言うには綺麗過ぎないか?」
ただ、忍の「行きましょうか」の言葉どおり真っ直ぐ進んでいた一行は
レイベルの言葉に深く頷いた。
妙な空間だと思う。
風も無いのに緩やかに吹く、何かがある。
「綺麗過ぎる、と言う事はないですよ。じきに遊びが来ます。
…何があっても、騒がず慌てず戦えれば……」
忍がレイベルを振り返り、続きを言おうとした瞬間を狙ったかのように―――首が、落ちてきた。
多分、雰囲気は変わっているが逃げた占い師の首だろう。
ギロリ、とまるで全員を睨むかのように目は空ろだ。
ゴトッ……。
更に追い討ちをかけるように、手、指、足首…ありとあらゆる身体のパーツが
細切れになって落ちてくる。…まるで雨を降らすかのように。幾つも、幾つも。

「…鬱陶しいな」
「守矢さん?何を……」
征司郎が問い掛けた時だった、目にも止まらぬ速さで日本刀が振り落とされ
何かが切り刻まれる。
キィ…キィ…。
まるで超音波の様なその声の動物は……。
「蝙蝠?」
通常より、かなりの大きさがあり鋭い牙をも持っているが紛れも無く
この姿は蝙蝠のそれだ。
守矢は日本刀を鞘へしまうとその言葉に深く頷く。
「…どうやら、ボクたちは歓迎されているようですよ。この蝙蝠も
忍さんがおっしゃる遊びでしょう…こうまで悪意丸出しだと逆に嬉しくなりますね」
「おや、守矢は随分と不思議なことを言うんですね?
悪魔のこの行動を嬉しい、ですか?」
「…守矢さんは少々変わってるんです」
「譲、それ以上言うと後であんな事やこんな事を君の追っかけの子にバラすよ?」
「………」
「まあ、兄弟漫才はその辺にして……今が入り口付近なのだろう?
それにしては、この歓迎は少々念入り過ぎないか?この蝙蝠が占い師のバラバラ死体の
幻覚を見せていたとすれば、当然次に来るのは……」
占い師だ。
悪魔の傀儡であり手先。
当然ながら、今回はセットで倒すか説得せねばならぬ者だ。
『その通り、不思議な力持つお嬢さん。私が件の占い師です、以後お見知りおきを……』
霞を纏う様に、長いローブの占い師は出てくると恭しく、占い師は地面へと膝をつき
レイベルの手の甲へ口付けた。
我知らず、レイベルの肌に鳥肌がそわっと立ったが、表情には敢えて出さないことにした。
…悪魔の手先に気持ち悪い、と言っても喜ばれるだけだと気付いたのだ。
「…僕らを呼んだ悪魔は何処に居る?」
『…気が急くのはわかりますが、あの方にも準備、というものがある……。
もう暫く遊んでて貰えませんか?』
「ふざけるな!」
忍の一喝に、周りの空気も水を打ったかの様に静まる。
「僕らは猶予をやった。逃げたのはお前らだし、追いかけろと言ったのもお前らだ。
これ以上、待つ理由も待たされる理由も無い」
「忍さんの言う通りだ…前回にどういう経緯があったのかは
今の会話からしか解らないが、僕らを邪魔する、と言うのならそれ相応の行動は覚悟の上だろう?」
忍の言葉を譲が継ぐ。
悪魔にこのような事を言っても聞く耳は持つまい。
そんな事は百も承知だが………。
『ふむ…お二人の言葉は理にはかなっていますが…悪魔にその様な言葉は通用しませんよ?』
「ならば、斬るまでだ」
忍は、服の中に忍ばせていた木刀を取り出すと占い師の周囲を一閃し、
彼と悪魔を繋ぐ『呪縛』を時空もろともに切断した。
時空切断能力のある忍だからこそ出来た行動だ。
「…成る程、呼び主はこの奥か……」
呪縛の流れを忍は見極め、招待された場所より更に、奥まった居場所を探り当てると
何を言うまでも無く、駆け出した。
遅れて、皆も駆け出す。
全ての空気が彼らを包むかのように纏わりついては離れていく不快感を肌で感じながら


<約束の守護>
「…貴様か?僕を呼んだのは」
『そう、裏切り者の顔を一度でもいいから見てみたくって…ふうん……。
悪魔らしからぬ、気を持ってるのね?』
見た目は、少女、というより幼女に近い幼い少女は忍の傍へと近づくと
ジロジロと見まわした。
「…そんなに見て何がわかる?」
『解るわよ?貴方の周りを何かが護ってるのが見えるわ……気持ちの悪い光ね。
それは一体なんなの?胸が悪くなりそう』
「……?」
忍は少々首をかしげた。
今の今まで、こんな風に言われた覚えなど無い。
それどころか、守護している者があるなど。
「…七夜さん!!」
最初に駆け込んできたのは征司郎。
それに次ぐように、譲、守矢、レイベルが入ってくる。
幼い悪魔は、彼らを見てもまるで不愉快な物を見るかのように顔を顰めた。
よほど、自分たちの気は彼女にとって不愉快な物であるようだ。
「ああ、征司郎。…この悪魔は妙なことを言うようで……良ければ
さっき、出してくれたお茶を彼女に出してくれませんか?」
「…ティーパーティでもするんですか?」
「まあ、そんなところかな……」
「では、どうぞ?悪魔のお嬢さん」
『…何?これ……』
「お茶ですよ、気分が落ち着きます」
『ふうん…私たちで言うと人間の血の様なもの?』
「ま、そんなところでしょうか」
一口、悪魔が口をつけると、形容しがたいような叫び声があがった。
それを見て、征司郎と忍が微笑う。
「ごめんなさい、そのお茶に使っている水は聖水なんです」
「…悪魔は悪魔の言うことを信じてはいけないんじゃなかったかな?
悪魔らしからぬ…と言うが僕は僕だ」
『……この……!!』
「…神にも魔にも無い、優しさの大事さを僕は知ったんだ。
あの子ともう一度逢うその日まで、この首、貴様等にくれてやるわけにはいかない!!」
苦しげにうめく悪魔に忍の慟哭にも似た声は届いただろうか。
…いいや、届かないだろう。
占い師に護られ、また繋がりを無くしていた悪魔は半分の力を失っていた。
だが、だからと言って見逃すわけにも行かないのも事実だ。
「守矢さん!」
「ああ…今だな、行くぞ譲!」
譲の竜胆と守矢の夜櫻が交錯する様に閃いた。
邪を祓う、とされる二つの刀の力が一瞬にして叩き込まれ、悪魔の身体は
見る影も無く、消失した。
さらさらと音をたて消え行く砂塵の様に。
まるで、舞を舞うかのような刀にレイベルと征司郎は息を止め、見入った。
「ほう…この刀は何で出来ているのだ?」
レイベルは、医者としての好奇心からか譲と守矢の刀を何で出来ているのかを
聞く事も忘れはしなかったが。
「さて?普通の刀ですよ。…神が宿っている以外はね」
「ふむ…」
「さて、じゃあ脱出しようか……またのんびりと闇の中を漂うことになるけど」
「ええ、そうですね。七夜さんには、この後一緒にお茶に付き合ってもらわないといけませんし♪」
「では、その時にもう一度二人の刀を良く見せてもらうことにしよう。
さっき触れさせてもらったが中々、興味深い刀だ」
「ボクは構いませんよ?」
「僕も見せる分には構わない…何だか気に入ってくださったようで嬉しいですよ」
「ふ…後でそんな風に言ったことを後悔するなよ、二人とも」

笑い声と共に、全員再び忍の作る闇の中へと空間を歩き出した。
追いかけてみろ、と言った悪魔も占い師も、もう居ない。
全てはあるがままに。
乾いた空気と、柔らかな色の闇に全ては埋もれて消えていった。



悪魔遊戯-End-




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0489 / 神無月・征司郎 / 男 / 26 / 自営業】
【0563 / 七夜・忍 / 男 / 650 / 悪魔より追われる罪人】
【0564 / 神坐生・守矢 / 男 / 23 / 花屋】
【0588 / 御堂・譲 / 男 / 17 / 高校生】
【0606 / レイベル・ラブ / 女 / 395 / ストリートドクター】
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■         ライター通信          ■
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こんにちは!新米ライター秋月 奏です。
今回は前回に引き続きこちらの依頼に参加して頂いて有難うございました。
また、神無月さんには参加して頂いて嬉しかったです♪
中々面白いプレイングで、雰囲気的に和んだ話になっていたとすれば
それは神無月さんのお力があってこそだと思っています、有難うございます♪
プレイングの方はこのような結果になりましたが、如何でしたでしょう?
少しでも楽しんでいただけたら幸いです(^^)
良ければテラコン等からのメール、お待ちしております。
それでは、また何時かの日にお会いできることを願って。