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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


青き指輪
●オープニング【0】
「たく、誰だ? こんなもん、ポストに入れた奴は」
 ぶつくさ言いながら、草間が部屋へ戻ってきた。手には郵便物と革の袋を持っていた。
 何事だろうと思って草間を見てみると、草間は袋の中身を机の上にぶちまけた。中から出てきたのは、青い宝石のついた指輪が9個と指輪を置くための正方形の台だった。宝石の大きさは個数と同じく9段階であった。
「空気でも入れ替えるか」
 草間は窓を開けると――そのまま閉めた。表情が強張っている。
「今は2002年だったよな。でも、どうして外に大名行列が居るんだ?」
 草間が意味不明なことを言った。思わず笑ってしまったが、気になったので草間の代わりに窓を開けてみた。するとどうだろう、大名行列どころの話じゃない。牛車が外を通っていたではないか!
 何がどうなったのか、さっぱり分からない。まるで部屋ごとタイムスリップしてしまったようだった。
「まさかとは思うが、この指輪のせいじゃないだろうな……」
 指輪を見つめる草間。この指輪を並べてみたら、事態は解決するのだろうか? 少なくとも、このままでは現代に戻れそうもないようだし……。

●落ち着け【1】
「参勤交代……初めて見たわ」
 先程草間が窓を開けた時にちらりと見えたのであろう。紅い瞳を持つ少女、慧蓮・エーリエルがそうつぶやいた。
「400年程前のことよね……その頃はヨーロッパだったかしら……ねえ、斗南?」
 慧蓮の隣に居た上下黒い衣服に身を包んだ青年が、無言で頷いた。
「論点がずれてます!」
 バンッと強くテーブルを叩き、志神みかねが言った。
「どう考えてもおかしいじゃないですか! ああ、外に大名行列や牛車が闊歩してるなんて〜……」
 大きく頭を振り、ソファへ寄りかかるみかね。ソファに寄りかかってもなお、小さく頭を振り続けている。軽いパニック状態に陥ったのであろう。
「……うさぎ……?」
 思案顔の室田充がぼそっとつぶやいた。その言葉に慧蓮にみかね、シュライン・エマと寒河江深雪、卯月智哉が反応した。
「あの夢……ううん現実? どっちでもいいけど……状況は似てるわよね」
 先日の出来事を思い返すシュライン。その間に深雪はみかねに確認を取っていた。
「ひょっとして、こないだのお茶会で聞いた話……ですよね?」
「あ、あの時の話なんだ? ターニャって娘が出てくる話だよね」
 深雪と智哉の質問に対し、小さく頷くみかね。
「あの時は、そのターニャという娘から可愛いお土産をもらったのよ……今回はどこかに隠れてないのかしら?」
 慧蓮がくすりと微笑み、周囲を探る素振りを見せた。それは僅かに謎めいた微笑みであった。
「何のことだ?」
 怪訝な表情の草間。エルトゥール・茉莉菜、神無月征司郎、ラルラドール・レッドリバーの3人もいまいち話が分かっていないらしい。
「今と似たような状況が、前にもあったということよ」
 シュラインが草間にそう説明すると、とりあえず草間も納得したようではあった。
「あっ!」
 突然深雪が短く叫び、天井を見た。明かりはいつもと変わらずついている。
 続けて台所に駆け込み、ガスコンロや水道を調べてゆく。ガスは普通に使え、水道も普段通り流れている。冷蔵庫の中身も冷えたままだ。
 最後はトイレへ向かった。明かりも水も異常なく使用可能であった。
「おかしいですね」
 全てを調べ終えて戻ってきた深雪の第一声はそれであった。
「外があんな状況だというのに、どうして電気や水道は変わりなく使えているのか……」
 確かに奇妙ではある。が、使えなくなっているよりはましなのかもしれない。特に水が確保できるというのは、この状況では貴重だろう。
「ガスや水道は大丈夫でしたか。なら、珈琲や紅茶をお入れしますから、まずは一息つけましょう。それから相談しても大丈夫なようですから」
 静かに微笑む征司郎。
「……そうだな。とりあえず、1人危なそうだからな」
 草間がソファでぐったりしていたみかねを見て溜息を吐いた。充がみかねの手を握って、何とか落ち着かせようとしている。
「手伝うわ。ここの台所のことなら、私の方が詳しいし」
 征司郎に手伝いを申し出るシュライン。
「珈琲や紅茶でしたら、ケーキが合いますわね。本当はシュラインさんへのお礼で持ってきたんですけれど」
 茉莉菜が持参してきていたケーキの箱をテーブルの上に置いた。元々は先日シュラインに世話になった礼として持ってきた物だった。
「わーい、ケーキですー☆ 僕、いちごさんの載ってるのがいーですー☆」
 ラルラドールが満面の笑みを浮かべた。
「とにかく、皆落ち着けよ。いいな? 慌てていてもいいことはないんだからな」
 草間は全員にそう言い、煙草をくわえた。
「ああ草間……どうしても今言っておかなくちゃいけないことがあるんだけど」
 真剣な表情で、充が言った。
「……何だ?」
「煙草、逆さま」
 事務所内に小さな笑いが起こった。

●和やかな時間【2】
 征司郎が入れた珈琲や紅茶を銘々が楽しんでいた。ケーキがあることもあり、ちょっとしたお茶会気分だ。みかねも甘い物を口に入れ、少し落ち着いたようであった。
「ケーキ美味しいですー☆」
 口の回りが生クリームだらけのラルラドール。隣に居たシュラインが、ティッシュでそれを拭ってあげていた。
「インスタントしかなかったはずだが……味が違うな」
「インスタントでも、入れ方を工夫すれば一味違いますから」
 草間の言葉に征司郎が答える。ちなみにその入れ方は内緒であるとのことだった。
「一緒に軽食でも作った方がよかったかしら。お腹が空いている人が居たら、今からでも作ってくるけど?」
「あ、待ってください!」
 腰を浮かせかけたシュラインを、深雪が制した。そして風呂敷に包まれていた五段重箱をテーブルの上に差し出す。
「この間のお詫びです。室田さんによると……ご迷惑をお掛けしたらしいので」
 首を竦め、先日の鍋パーティの件を謝る深雪。後半部分は声が小さくなっていた。
 重箱を開けると、中には煮しめや俵結び等の伝統的な和食料理が詰まっていた。
「ほう……」
 感心する草間。
「母に特訓受けましたから味は大丈夫ではないかと……本当にすみませんでした!」
 深雪は深々と頭を下げた。
「まあいい、もう済んだことだからな。ともあれ当座の食料はこれを摘むとして……そろそろ本題に入るとするか」
 草間はカップに残っていた珈琲を飲み干した。

●窓から見える物は【3】
「瞬くように外の様子が変わり続けているね」
 度々窓の外を見ていた充がつぶやいた。窓の外では数秒置きに時代が変わり続けているようである。
「とりあえず1度台座に指輪を嵌めてみた方がよいと思うんですけどね」
「……並べてみるか」
 征司郎の言葉もあり、草間が指輪を手に取って台の上に適当に並べてゆく。すると窓の外の変化が止まった。窓の外は雪景色になっていた。
「え?」
 シュラインが窓に駆け寄り外の様子を窺った。そこでは雪の中、列を乱すことなく行進している国防色の軍服に身を包んだ青年将校たちの姿があった。
「まさか……これって『二・二六事件』?」
 シュラインの顔が強張る。
「ここ入れ替えるとどうなるんだろうね」
 智哉が食べかけのケーキが載った皿をテーブルに置き、指輪を2つ入れ替えた。たちまち雪景色は消え去り、海岸沿いの景色へと変わった。
「あのね……船の上にある扇に目掛けて、若い侍が弓矢を射ようとしているんだけど……何だったかしら、これ」
 説明しつつ首を傾げるシュライン。覚えはあるが、出てこないらしい。
「それ……那須与一じゃあ。『平家物語』の中の『扇の的』の」
 現役の高校生であるみかねが答える。恐らく古典の授業で習ったのだろう。
「『平家物語』だとすると平安時代ですわ」
 茉莉菜が窓の外に見えている時代を推測した。
「なるほど、並べ方によって時代が変わるんだね」
 感心したように言う充。とすると、正しい並べ方をすれば元の時代に戻れるのかも……。
「ちょっと失礼しますわね」
 慧蓮が台の上から指輪を2個取り上げた。途端にまた外の景色は数秒毎に切り替わってゆく。
「台の上に全部並んでいる限りは時代は動かない……のかな」
「そのようですね」
 充の言葉に征司郎が頷いた。そして征司郎は珈琲のお代わりを入れるために台所へ向かった。
「それにしても綺麗な石たち……これはサファイアかしら。石は色んな物を吸収するわ。人の歴史、想いとか魔力、呪い……ふふっ、本当に多種多彩だこと。耳を澄ませると、物語が聞こえてきそうな……」
 指輪についていた青い宝石を調べていた慧蓮が、妖し気な笑みを浮かべつぶやいた。
「斗南。何かに、指輪を置いた場所とそれで起こった変化を書いておいて」
 慧蓮の指示に、無言で頷く斗南。
「紙ならここにあるですー☆」
 先程から何やら熱心に紙に落書きしていたラルラドールが、余っていた紙を茉莉菜経由で斗南に手渡した。

●現状把握【4】
「それはそうと、現状を調べなくてよろしいんですの?」
 茉莉菜が皆の顔を見回した。
「外の様子だけでタイムスリップと決めつけるのもどうかと……」
「あの……でしたら外を確認して、安全そうなら1度出てみませんか?」
 茉莉菜の言葉を受け、深雪が提案した。
「もちろんその間に、指輪や台に触れるのは止めてほしいのですけど……全員が室内に居ることを確認してから動かしてください」
「調べてみる必要はあるか。ひょっとすると、単なる幻影かもしれないからな」
 草間は深雪の提案に前向きなようであった。
「調べるんでしたら、わたくしが様子を見てきても構いませんが。面白そうですし」
 調査のため外に出ることを申し出る茉莉菜。
「だったら、僕も行こうかな。茉莉菜さんに何かあると、シロちゃんに後で怒られそうだし」
 智哉も笑みを浮かべて同行を申し出た。ちなみにシロというのは、茉莉菜の飼い猫の名前だ。
「外に出るのなら、安全そうな場所を選んだ方がいいんじゃないですか?」
 みかねが心配そうに言う。確かにそうだろう。万一戦場なんかに出ていったら何が起こるか分かった物ではない。
「適当に並べてみたら、そのうち安全そうな時代が出てくると思うけどね。左上に3、隣に7……っと」
 充がひょいひょいっと指輪を並べた。また外の景色は変わり、今度は江戸の街らしい物に変わっていた。時代劇でよく見るような町人たちが街を行き交っている。
「ここでしたら安全そうですわね」
 茉莉菜と智哉が連れ立って立ち上がった。そのまま玄関に向かい、扉を開けた。こちらでも窓の外と同じく江戸の街が広がっていた。
 3人が外に出て角を曲がると、窓のある場所へ出てきた。中には草間たちの姿が見えている。ちなみに窓は、空間上を浮いているような感じであった。
「変ですわね。どうして行き交う方々は、この窓に気付かないんでしょう」
「……僕らにも気付いてないんじゃないかなあ?」
 首を傾げる茉莉菜に、智哉が言った。茉莉菜の服装は占いを行う時のローブ様の姿、智哉はシンプルなシャツにジーンズと江戸時代にはどう考えても有り得ない格好である。だのに、人々は2人に驚く素振りを見せない。まるで2人の姿が見えていないかのような。
「どいたどいたぁっ!!」
 茉莉菜目掛けて飛脚が勢いよく走ってきた。咄嗟に智哉は茉莉菜をかばう。するとどうだろう、飛脚は智哉にぶつかりはしたが、そのまま何も言わずに走り去ってしまったのだ。
「おい、幻影じゃないみたいだな」
 窓を開けて草間が覗き込んでいる。
「ヒトが当たった感触はあった。でも気付いていないんだよね」
 智哉が飛脚のぶつかった部分を摩りながら言った。
「どうやら向こうには見えていないようですけど、幻影なんかではないようですわね……」
 茉莉菜が大きく息を吐いた。

●陣太鼓が聞こえる【5】
 部屋へ戻ってきた2人を交え、本格的な謎解きに入る一同。
「まず台をこう割り振るぞ。左上をA、次がB……」
 草間が台を次のように割り振った。

A B C
D E F
G H I

「そして指輪についている宝石を小さい方から順番に1、2……と割り振る。一番大きいのが9だな」
「ならば、互いの中心Eに5の指輪を……」
 慧蓮は5の指輪をEに嵌めた。みかねの不安そうな視線に気付き、笑みを浮かべる。
「あら、別に確信持って置いてるわけじゃないわ。物は試し……」
「まずはオーソドックスにAに1、Bに2という順番で嵌めてみませんか?」
 征司郎の提案で、まずはそのように嵌めてみる草間。再び外の景色が変わった。
「……1人のおじさんを、他のおじさんたちが寄ってたかって押さえているですー」
 窓の外を覗き見たラルラドールが不思議そうに言った。シュラインも窓の外を見る。すると、どこかの城内なのだろう、裃姿の侍たちが短刀を手にした侍を押さえ付けている。
「まさかっ?」
 シュラインは窓を開けた。声が聞こえてくる。
「殿中でござる! 殿中でござる!」
「放してくだされ、梶川殿! せめて一太刀、せめて一太刀〜!」
「やあ、これはつまり『忠臣蔵』の松の廊下のようですねえ……」
 苦笑する征司郎。草間の指示もあり、窓はそのまま開けておかれることになった。
「あの……これって、さっき話していた話と同じ配置だと思うんです」
 台を指差し、みかねが言った。
「あの時はAが未来でIが過去で……」
 そういいつつ指輪を並び変えてゆくみかね。今度は先程征司郎が言った並びとは反対になっていた。つまりAが9になり逆順に並んでいるのだ。
「また雪景色に変わりましたよ?」
 深雪が窓の外を見て言った。外からは陣太鼓の音が聞こえてくる。眉をひそめる草間。
「各々方……」
「あー……今度は『忠臣蔵』の討ち入りの場面ですか。一応、関連性はあったんですね」
 感心する征司郎。
「どうしてこうなるの〜」
 みかねは思わず頭を抱えてしまった。
「『忠臣蔵』マニアだと泣いて喜ぶんだろうね、この場面」
 充がぼそっとつぶやいた。

●正解は【6】
 この後も試行錯誤して指輪を並べてゆく一同。
「焦らずにゆっくり解いてやろうじゃないの。恐らく……暇人な女神様のプレゼントをね」
 とは充の弁だ。確かにその通りだ。指輪の並べ方は有限であるのだから。
 しかしそれでも、並べ方によって様々な時代に変わってゆくというのは慣れない物であった。

「草間お兄ちゃん、きれーなお姉さんが窓の外にいるですよ〜。かぐや姫様みたいですー☆」
 そのラルラドールの嬉々とした声に、窓のそばへ行こうとした草間だったが、シュラインに服の裾を引っ張られ渋々断念した。

「敵は本能寺にあり!」
「これ、本能寺の変ですよね……きっと」
 窓の外から聞こえてきた声に、深雪が反応した。

「黒船が来たぞー!!」
「ふふっ……ペリー来航かしら。この頃は私たちはどこに居たかしら、ねえ斗南?」
 慧蓮が傍らの青年に語りかけた。

「あら、刑事が善人だなんて誰が決めたの? このまま天国へ行くか、それでも塀の中へ行くか……あなたが決めなさいよ」
「う、撃つな! 取り引き場所は話す! 話させてくださいっ!!」
「あ。これ、『あぶれる刑事』のロケ現場?」
「そうですねえ、確かに」
 智哉と征司郎が窓際に行き、しげしげとロケの様子を眺めていた。

 遥かに遠い過去から近い過去まで、指輪を並べ変える度に切り替わる。やがてしばし思案していた茉莉菜が口を開いた。
「この形……やはりあれのようですわね」
「あら、あなたも気が付いたの? 台座の正方形や真円はあれの定番ですものね」
 慧蓮が茉莉菜に微笑みかけた。
「あれって……ひょっとしてあれよね? どの列を足しても同じ数になる」
 シュラインが2人に確認する。2人は各々頷いた。
「魔方陣か!」
 はっとして草間が叫んだ。魔方陣――縦・横・斜めのどの列の数字も足し算すると同じ数『15』になる奴だ。
「できたですー!」
 今まで何やら落書きを続けていたラルラドールが両手を上に突き上げた。
「僕、前に同じみたいなパズル、やったことあるですよ? やっと思い出したですー☆」
 にこっと笑い、ラルラドールは皆に紙を見せた。そこには次のように書かれていた。

2 9 4
7 5 3
6 1 8

「2の7の……15。うん、魔方陣だわ。時間を均等にするって意味ではこうなのかも……」
 シュラインが各列の計算をしつつ言った。
「これで駄目でしたら、真ん中の5を中心に回転させるか、反転させてみましょう。3×3の魔方陣には、それ以外のバリエーションがないので、一つだけ覚えておけばいいそうですから」
 茉莉菜が皆にそう言った。
「でも、これでも駄目だったら……」
 不安げなみかね。
「その時は、全部試してみましょう。悠長かもしれませんけれど」
「時間はあるんだしね」
 みかねを励ますように征司郎と智哉が言った。
「草間、とりあえず並べてみたら?」
 充が促す。草間はラルラドールの書いた通りに指輪を並べていき、最後の1個を台に嵌めた。
 するとどうだろう、台の上に並んだ指輪が一瞬激しく光ったではないか。思わず目を閉じる一同。そして光が収まってから恐る恐る目を開いていった。

●何だこれは?【7】
 目の前の景色に変わりはない。草間はすぐさま窓に目をやった。そこには普段通りの、事務所から見える景色があった。
「戻った……のか」
 息を吐き出すようにつぶやく草間。
「よかったです、戻ってこれて〜」
 みかねがぐったりとした様子でソファにもたれかかった。
「恐竜さんに会いたかったです……」
 残念そうなラルラドール。いや、それは少し無茶かも……。
「今この指輪を外すとどうなるのかな?」
 智哉はふとした好奇心から指輪を外してみようとした。だが、指輪は何故か台にピタリとくっつき離れる様子を見せなかった。
「固定されてるみたいですわね……」
 茉莉菜が他の指輪を外してみようとしたが、そちらも同様であった。
「何にせよ、戻ってこれてよかったですね。ではもう1度、珈琲を入れてきましょうか」
「私も手伝うわ」
「あ、じゃあ、私も……」
 台所へ向かった征司郎に続き、シュラインと深雪も立ち上がった。
「草間?」
 疑問形で充が草間を呼んだ。窓際に居た充の視線は草間の机の上にあった。
「どうした?」
「こんなの、さっきあったかな?」
 そう言って充は机の上にあった物を持ち上げた。それは木製の大きな三角形をした台だった。そして台の上には、正方形、十字架、真円という各々の形をした溝が彫られていた。
「この正方形の溝の幅、その台と同じみたいな気がするんだけどね」
 指で幅を測りながら充が言った。草間は難しい顔をして黙り込んでしまった。
「うふふ……終わりは新たなる始まりなのかしら……」
 慧蓮がくすくすと笑っていた――。

【青き指輪 了】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【 整理番号 / PC名(読み) 
                   / 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
  / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト 】
【 0487 / 慧蓮・エーリエル(えれん・えーりえる)
      / 女 / 12、3? / 旅行者(兼宝飾デザイナー) 】
【 0249 / 志神・みかね(しがみ・みかね)
                    / 女 / 15 / 学生 】
【 0076 / 室田・充(むろた・みつる)
                / 男 / 29 / サラリーマン 】
【 0174 / 寒河江・深雪(さがえ・みゆき)
     / 女 / 22 / アナウンサー(お天気レポート担当) 】
【 0516 / 卯月・智哉(うづき・ともや)
                 / 男 / 16? / 古木の精 】
【 0489 / 神無月・征司郎(かんなづき・せいしろう)
                   / 男 / 26 / 自営業 】
【 0033 / エルトゥール・茉莉菜(えるとぅーる・まりな)
                   / 女 / 26 / 占い師 】
【 0152 / ラルラドール・レッドリバー(らるらどーる・れっどりばー)
                   / 男 / 12 / 暗殺者 】


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■         ライター通信          ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全7場面で構成されています。今回は展開上皆さん同一の文章になっています。
・様々な時代を巡り無事に戻ってこれました。何だか奇妙なタイムスリップではありましたが。
・以前も似たような依頼を出しているんですが、似て非なる解決方法になっています。ちなみに今回の答え、その以前の依頼でのもう1つの答えでもあります。
・最後に妙な台が見つかっていますが……何なんでしょうね、あれ。それについてはまた追々にでも。
・シュライン・エマさん、16度目のご参加ありがとうございます。答えについてはその通りです、大正解。意味合いもそれで構わないと思いますよ。ちなみに指輪の重さなんですが何故か均一でした。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。