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<<小雨日和>>
------<オープニング>--------------------------------------
「はぁ?ちょっと待て、聞いてないぞ」
午後の昼下がり、静かな興信所内に草間の不機嫌そうな声が響いた。
原因は連日続きの鬱陶しい雨でも、慌てて受話器を取ろうとした際うっかり床にぶちまけてしまった煎れ立てのコーヒーでもない。
どういう意図かはわからないが、電話の相手は草間の穏やかなコーヒーブレイクを壊すのに成功したようだ。しばしの押し問答の末、やがて電話を置くと彼は諦めたように机の上の灰皿をゴミ箱に空けに行った。帰りに、床拭き用の雑巾を手に戻ってくる。あいにく所員は昼休み中で出払っているため、無残なコーヒーの後始末は自分でやらなくては。なかなか所帯じみた図に、やれやれと小さくため息をついた。
客が来るのである。それも、今もうすぐに。
あまりに唐突とは言え、決まってしまった事だ。そこは草間もプロである。事情を知らない相手を不快にさせるほど、この主人は大人げなくはなかった。
やがてその客は大して間をおかずに、インターホンの間抜けな音と共に現われる。
ドアを開けると、年の頃は二十代半ば。落ち着いた栗色のセミロングに清楚な服装がよく似合う、小柄で大人しそうな女性が佇んでいた。ここへやって来る客の通例にもれず、影を落とした表情がその魅力を半減してしまっている。
「小谷美里(こたに・みさと)さん――ですね?」
先程電話の相手から告げられた名前を確かめる。
依頼人は「…はい」と小さく頷くと、中に入り草間の薦めたソファーに腰掛けた。簡単な挨拶後、草間が自分で煎れたお茶に手をつける間もなく、開口一番、彼女は用件を切り出した。
「私の…考え過ぎかもしれないんです。でも……あまりに続くので、気味が悪くなってしまって……。あの、私、私立高校の教師をしているんです。ここ一ヶ月で、その高校で次々に不幸な事件が重なって――」
「不幸と言うと?」
「同僚の先生が大怪我をなさったり、生徒が事故死したり――つい先日は、生徒の一人が自殺未遂を……。それも、一人ずつ、一週間置きに三人もなんです。偶然にしては…おかしくありませんか?」
「……奇妙ではありますね。自殺未遂の生徒さんは?」
「一命は取りとめたそうですが、まだ意識は戻らないそうで……。遺書はなかったそうなので、警察の方は事故の可能性も捨てていないとか。生徒達が、呪いじゃないか、ってもう怖がってしまって……」
「呪い?」
訝しそうな草間の言葉に、小谷は更に顔を曇らせた。膝の上の拳を握り、しばらく言い難そうに黙り込むが、やがて重い口を開く。
「………最初の事件が起きる、一ヶ月くらい前――…一人の生徒が、飛び降り自殺したんです………」
「――というわけだ。俺が見るに、その女教師、他にも何か知ってそうに思えるんだが…無理に聞くわけにもいかないしな。ちょっくら調べてきてくれないか?報酬はあまり期待できないが…なんなら仲介者からふんだくってもらっても構わないぜ」
ささやかな復讐。先程の電話主を思い出し苦々しげに呟くと、草間は短くなった煙草を無造作に揉み消した。
<雨想時間>
雨の音は、いつも優しくてちょっと悲しい。
それに混ざって、チャイムの無機質な音とが校舎内に響き渡った。全ての授業が終わった後の教室が、一斉に解放感による喧騒に包まれる。帰りにどこへ寄ってくだの、さっきの教師は今日はああだったの、雨なんて冗談じゃないだの、生徒達はいつだって話題に事欠かない。
都内の公立高校、その二年生の教室の一角で、七森沙耶(ななもり・さや)は机の上の教科書を片付けながら、手元を止めてふと窓の外を見遣った。黒く大きな瞳に、窓に映った空が映る。
灰色の空には、立ち込めた重い雨雲か広がっている。今にも泣き出しそうな空模様だったが、ついに小雨がパラパラと降り出したようだ。窓に幾つかの滴が落とされ始めていた。
朝、ニュースの降水率は低いのに、出掛けに傘を持って行け、と言われて折りたたみ式傘を持たされたが、今となってはそれが正解だったと言える。お兄ちゃん達ありがとう、と沙耶は小さく微笑んだ。
雨の音。しとしとと心に響くそれは、子守唄のように優しい。全てが穏やかで、普段は忙しない都会の時間が、ゆっくりと動く気がする。だから雨は嫌いじゃなかった。
でも同時に、それは言い様のない寂寥感も含む。雨が降ると、一人ではいたくない。静か過ぎて、なんだか怖くもなる。雷なんか落ちた時には、もう大変だ。今だって苦手だけど、そういえば昔――
少し恥ずかしくもある子供の日の色あせたページをめくりながら、沙耶の脳裏をふと、草間興信所で受けた依頼の事がかすめた。
(自殺した子は、どうだったんだろう――)
こんな風に、静かに雨を想う時間があったんだろうか。
正直、今回の依頼はとても怖い。自殺した人の呪いかもしれない――そう考えただけで、身震いがする。それに、元々霊は得意じゃない。いや、得意な人というのもよくわからないけど。
でも、と思う。自殺した子は、いじめに遭っていたんじゃないか――。幸いにして自殺したいと思った事は今までないけれど、学生の自殺の理由にくるトップはおそらくそれだろうから。
そう考えると、心が鉛のようにズンと重くなる。その子がまだこの世に未練を残しているとすれば――いじめた生徒や、見て見ぬ振りをした先生への復讐なのかもしれない。依頼を受けてから、沙耶はずっとそう考えていた。誰にでも優しい心を持つ彼女にとって、そう考える事はとても辛く、悲しい事ではあるのだけれど。
救われなかった子。誰もが助けなかったんだろうか。手を差し伸べる事を、しなかったんだろうか。その事実を知っていながら?そうだとしたら――それはなんて悲しい事なんだろう。悲しい、なんて言葉で済ませられないから、許せないから、貴方は復讐をするの――?
まだ見ぬ霊に思いを馳せ、無意識のうちに、沙耶は右手で十字架のペンダントを強く握り締めていた。銀色に輝くそれは、長兄から買ってもらったお守り代わりのもの。不安や心配事があると、つい触れてしまう。そうすると、なんだか心が落ち着いてくるような気がして。
(私、助けられるのかな……)
ゆっくりと目を閉じて、自問する。その子の悲しみや怒りを、癒してあげる事が果たして自分に出来るのだろうか――
『大丈夫だ』
飲み込まれそうな不安の中、ポン、と胸の中に、暖かい灯りがともる。灯台の如く辺りを照らし、指し示してくれるそれ。
今回の依頼を自分が一人で受けると知り、心配しながらも応援してくれている、大切な家族。いつだって自分を見守り、支えてくれる――側にいなくても、きっと。『ここ』に。
(………うん。ありがとう)
閉じていた目を、ゆっくりと開ける。その顔は先程に比べ、どこか吹っ切れたような強さを秘めていた。そっと十字架から手を離す。
「沙耶―、帰りにあそこのケーキ食べて行かない?雨も降ってるしさ」
ふいに聞き慣れた明るい声が自分の名前を呼び、少し驚きながら顔を上げる。
「なに、またボーッとしてたんでしょ」
振り返ると、明るい笑い声と笑顔が自分を迎えてくれた。沙耶は友達を大切にする性格なので、自然と良い友達に恵まれている。その中の一人、ややお姉さんぽいところが沙耶の性格と相性の良い、クラスメイトの友達だった。
「うん…ごめん、ちよっとね」
「いーよ、いつもの事だし。それより沙耶、傘持って来た?」
「うん、折りたたみだけど」
「おっ、さすが!私忘れちゃったよ〜、入れてね。行こ!今日はケーキセット、百円引きだよ」
他愛もない、友達同士の楽しい会話。当たり前の日常。
それは――ひょっとすると、とても幸せな事なのかもしれない。
一緒に連れ立って教室を出ながら、沙耶はそう思わずにはいられなかった。
<女子高生、潜入捜査>
そして翌日。
今日は昨日までの雨の気配はない。風も穏やかで、木々の間を通り抜けてくる初夏の爽やかな空気は胸に心地よい。『私立聖南高等学校』――都心から若干離れてるだけあり、緑豊かな自然が学校周辺の至る所に見受けられた。校舎横、赤塗り屋根の体育館から響いてくる部活動の声は、女子高生である二人には聞き慣れたものだ。しかし漂う雰囲気が似通うとは言え、他の高校というのは少なからず緊張してしまうもの。ましてや遊びや見学に来ているのではないのだから。自分の高校とあちこちを比較しつつ、期待と不安を胸に千里と沙耶は高校へと辿りついていた。
校門前で仁王立ちになり、黒い瞳を爛々と輝かせ、まだ真新しい校舎をビシッと見据えながら、正に潜入捜査日和ね!と心の中で美里はガッツポーズを取った。その後ろでは、沙耶が何やら恥ずかしそうにモジモジしている。
「ね…ちょっと、やっぱりこれ、短すぎない…?」
紺のリボンタイに白のニットベスト、そしてブルーのタータンチェックスカート。新設校だけあって流行りを取り入れた制服は可愛らしい。そのスカートの裾をつまみながら、沙耶は少々顔を赤らめつつ小首を傾げた。
その二人の横を、校舎から出てきた下校途中の生徒達が通り過ぎていく。やはり制服効果は大したもので、誰も二人を不審そうに見る者はいない。自分達の話やこれからの行き先についてあれこれ話すのに、彼らは忙しいらしい。二人とも自分の高校では見慣れた風景だ。いつもは自分達があの立場にいるのだから。
「えー、平気平気、良く似合ってるじゃん」
「そ、そうかな……」
「うん、バッチリ。これであたし達、怪しまれる事ないよね♪」
すっかりその気になっている千里とは対照的に、沙耶は若干不安そうな表情で校舎を見上げた。歳は沙耶の方が一歳上だが、二人並ぶと千里の方が若干高い。緊張気味の沙耶の肩をポン、と軽く叩き、千里はにっこりと笑う。
「行こう。こうしていても始まらないし」
「……うん。ちゃんと、成仏させてあげなくちゃね」
人一倍霊に対しての思い遣りが強い沙耶が、決意を新たにしてコクンと頷く。並んで昇降口へと歩き出しながら、二人は今まで話し合った調査方針をもう一度確認し合った。
今回二人が共に行動しようという事になったのは、顔なじみで二人とも女子高生、潜入捜査にはもってこい(by千里)という事も勿論あるのだが、考えていた方針の全体像が共通していたからである。
すなわち、事件その他関係者について生徒達への聞き込み。その結果として、隠されている因果関係の確認。
大まかにそんな流れを打ち出しながら、二人はまず、一連の事件の発端――自殺した生徒についての聞き込みを開始する事にした。事前の調べによれば、確か三年二組、名前は中村翔太(なかむら・しょうた)。最初のうちは迷ってあちこち行ったり来たりしてしまったが、校舎の構造は大抵どの学校もそう大差ない。廊下を曲がり階段を上り、やがて無事生徒のクラスへと辿り着いた。
「誰かいるといいんだけど……」
呟きながら、千里が後ろの戸からひょこ、っと中を覗く。その後ろから沙耶も同じように教室の中を見渡した。
昼間ではさすがに身の置き所に困るため、こうして目立たない放課後に来たわけだが――人がいなくてはお話にならない。その場合は依頼人の美里から極秘入手した名簿を使って、部活動等に行ってしまったクラスメイトに聞いて回るつもりではいたのだが。
幸いダベっている生徒が数人まだ居残っていた。その中の一人、女子生徒が二人に気付き、友達との話を中断させるとこちらへと歩み寄ってくる。
「誰か探してるの?」
親切心から尋ねてきてくれた生徒に、千里が全く自然体のまま答える。
「あの、あたし新聞部の一年なんですけど〜。実は今度、特集組みたいなって思ってまして……」
「あ、もしかして中村の呪いとかで?」
「ちょっと、不謹慎!」
皆まで言わないうちに、教室の中にいた男子生徒が興味津々といった様子で一早く反応する。それを別の女子生徒が厳しい声音でたしなめた。――脈アリね、と千里の目がかすかに光る。神妙な表情でそのまま演技を続けた。
「確かに…興味本位と取られても仕方ないかもしれません。でも、先輩達もおかしいと思いませんか?あたしは新聞部員として、真実を明らかにしたいんです」
(千里、すごい………)
真剣そのものの千里の様子に心底感心しながら、沙耶は後ろから事の成り行きを見守っている。嘘の下手な自分が口出ししてもロクな事にならないだろうから。
二人に声をかけてくれた女子生徒は千里をしばらく見つめていたが、ふう、と小さくため息をつくと長い髪をかき上げた。
「と言ってもねぇ…私達、特に中村と仲良かったわけじゃないし……。とにかく地味っつーか、大人しい奴だったから」
「クラスで、仲良かった人はいないんですか?」
「いたけど……一人は死んじゃったし、もう一人は病院。残りの一人は――さっきまでいたけど、もう帰っちゃったんじゃないかな」
「……それって……」
もしかして、いじめてた人達なんじゃ――口まで出かかった言葉を、千里と沙耶はなんとか止める。だが二人の言わんとした事を悟ってか、女子生徒は複雑な表情で声のトーンを落とした。
「いじめがあったかどうかは…正直わからない。学校で現場を見たわけじゃないからね。でも今思えば――三年になってすぐかな、四人の中で少し空気が変わってた気がする。喧嘩でもしたのかな、ぐらいにしか思ってなかったけど」
「その事、警察には?」
「言ったけど……遺書もあったらしいし、自殺場所に靴も揃えられてたし、いじめの証拠はないし――それで結局、自殺って事になったみたい」
「事故死した先生っていうのは?」
メモを取りながらの千里の質問に、女子生徒は苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。
「ああ、うちらの担任。事故は気の毒だけど、正直嫌な奴だよ。いじめの事実なんてない、って断固言い張ってたしね。生徒の事なんて気にかけてもいないくせにさ」
千里と沙耶は顔を見合わせる。やっぱり、自殺した生徒の復讐――?いじめた生徒と、それをわかってくれなかった担任への。
結論を出すには性急過ぎるかもしれないが、現段階ではどうしてもそう思えてならない。お互いの顔を見遣ると、やはり相手も同じ事を考えているようだ。
「そういえば……」
女子生徒が何か思い出したように、顎に手を当てた。二人はその様子を黙って見守る。生徒は後ろを振り返ると、教室内に残っていた何人かに向かって話しかけた。
「あの音楽室の噂、確か中村が自殺してからだったよね?」
「そうだよ。それで余計に、呪いって噂が立ったんじゃないか」
「音楽室の噂――?」
まるで学校の七不思議みたいだ。千里はやや緊張しながらペンを握る指に力を込めた。
「もう使われてないピアノが置いてあるんだけど。それが放課後、誰もいないのに音が響いてくるんだって。でも扉を開けた途端、音はピタリと止むらしいけど」
「……………」
やや青くなる二人。ベタではあるが、怖いと言えば怖い。ましてや二人は現役高校生なのである。思わず自分の学校の音楽室を思い浮かべてしまったではないか。慌てて千里は気を取り直す。
「えっと…中村君はピアノ好きだったりしたんでしょうか?」
「さぁ、そこまでは……。でも吹奏楽顧問の美里ちゃんと仲良かったみたいだから、そうなんじゃない?」
――『美里ちゃん』?それは確か…依頼人の名前ではなかったか?
「あの…美里ちゃん、って……小谷先生の事ですか?」
やや遠慮がちながら、千里の後ろから顔を出して沙耶が確認する。
「うん、そう。ああごめん、いつもの癖で。小谷先生って可愛い感じでしょ?優しいし物分りもいいから、生徒に人気あるんだよね。だからつい、そう呼んじゃうんだ」
美里と自殺した生徒は親しかった――それは初耳である。少なくとも、千里が会った昨日の段階では美里はそんな事は言わなかった。自分が聞かなかったせいかもしれないが。
草間の言うように、やはり美里は何かを隠しているのだろうか?昨日の美里の様子を思い出しながら、千里の脳裏を疑問符がかすめる。
その後二、三質問し、これ以上は無駄だと判断すると千里と沙耶は女子生徒にお礼を言い、その場を離れる事にした。
「――さて、と。それじゃ、行こうか」
「……行くって……やっぱり……?」
「勿論――音楽室♪」
サーーと一気に青ざめる沙耶とは反対に、千里は行く気満々のようである。先程話を聞いた時には若干ビビってしまったが、元来の好奇心がそれに打ち勝ったらしい。恐怖に渋る沙耶を引っ張りながら、千里は音楽室へと意気揚々と歩き出した。
「ここ、だよね………」
先程の教室とは別校舎、渡り廊下を渡って階段を降り、しばらく右往左往した後その教室は見つかった。『音楽準備室』の札がかけられた教室の前で立ち止まると、千里はゴクリと生唾を飲み込んだ。
少し離れた所からは吹奏楽の練習が響いてくる。目の前の部屋からピアノ音は聞こえてはこないが、既に沙耶はもう幽霊を見たかのような顔をして千里の制服の裾を掴んでいた。
「…開けるよ?」
「えっ!?で、でも人がいない時に鳴るってさっきの子が――」
「それじゃ意味ないし。何かが『いる』んなら、姿現してもらわないと」
「……中村君、なのかな……」
そうだとしたら、怖がってばかりいるわけにもいかない。沙耶は無意識に、胸元のペンダントをギュッと握り締めた。覚悟を決めなければ。
「入ってみないとわからない、ね。――OK?」
沙耶を気遣って千里はノブに手を置いたまま肩越しに振り返る。大きく深呼吸すると、沙耶はこっくりと頷いた。
やや軋んだ音を立てて扉が開く。ひょっとして元々は教室にするつもりだったんじゃないだろうか、中は思っていたより随分広かった。ガラス窓から差し込む鈍い光が、明かりをつけてもやや薄暗い室内を照らし出す。おあつらえ向きじゃない、と千里が気を紛らわせるように冗談口調で呟いた。
両脇に楽譜などが置かれた本棚があり、数々の楽器が周囲に置かれている。その間を縫うようにして歩いて行くと、やがて奥に鎮座した黒いグランドピアノが姿を現した。楽器の王様のように、妙に迫力がある。あるいは、聞いていた噂のせいでそう見えるのかもしれないが。
思わずピタリと立ち止まり、しばし黙り込む二人。アイコンタクトで、「とりあえず…調べてみる?」といったやり取りを交わした――その時。
――――ポーーーン………
「!!」
二人の視線が、ピアノへと釘付けになる。今――今、確かに音がした。『ソ』の音が――
――――ポーーーン………
「――中村君!?出てきなさいよっ!!」
動揺のためやや喧嘩腰になりながらも、千里が叫ぶ。沙耶は声が出ないものの、必死に辺りに目を凝らした。――お願い、話がしたい。貴方と――
その時だった。スウッ、と妙な寒気を感じて二人は入ってきた入り口へと同時に視線を移す。
『…っと………来て……た、…ね………』
全体的に青白くぼやけた、一人の男子生徒。大人しそうな雰囲気、聞き取りにくいかすかな声。――二人は確信する。間違いない。彼が、中村君だ。
その『彼』はどこか悲しそうな顔で、すーーーっと入り口の奥へと消えていく。
「待って!まだ何も――」
慌てて追いかける二人。彼がドアへと消えるとほぼ同時に、扉を開いて廊下へと飛び出した。彼は――!?急いで辺りを見回すと、先程渡ってきた渡り廊下の辺りに彼の姿が見えた。こっちを見て、再びゆらりと動き出す。――誘導してる?自分達を――どこに?
「沙耶ちゃん、追うよ!」
「うん!」
迷う事なく二人は走り出した。彼を見失うわけにはいかない。
勢いよく走り続けたせいで、曲がり角で一人の生徒にぶつかってしまう。「ごめんなさい!」と沙耶は律儀に軽く頭を下げ、急いで千里の後を追った。
振り返る事なかったので二人にはわからなかった。ぶつかられた男子生徒は彼女達の姿を目で追い――震えながら、酷く青ざめていた。
<亡き語り部>
「ん……?」
一足早く教室に着いていた慶悟は、外から近づいてくる霊気にいち早く反応した。外と言っても、校舎内――廊下からだ。近い。考える暇もなく、迎えるべく扉を開け飛び出す――と。
「あっ…」
「お?」
「あれ!?」
三者三様の声が重なった。全力疾走してきた千里と沙耶が急ブレーキをかけ、荒く息をつきながら慶悟を見上げる。慶悟もやや驚いた面持ちで、聖南制服姿の二人を見下ろした。
「真名神さんがここにいるって事は、ひょっとして……」
「お前達もか?」
「『も』って事は…やっぱり」
三人とも、以前別の依頼で顔見知りの仲である。本来ならここで軽い挨拶でも交わすところなのだが、千里と沙耶は慌てた様子で辺りをキョロキョロ見回しながら教室を覗いた。
「あのっ…ここに、彼、来ませんでした?」
「来たって…ひょっとして、さっき感じた霊気の主か?」
「そう!見なかった!?」
「いや…俺が廊下に出た時にはもういなかったな」
慶悟の言葉に、「え〜!?」と声を上げる千里とがっくり肩を落とす沙耶。
「誰なんだ?あれは」
「最初に自殺した子。音楽室で会って、追いかけて来たんだけど……」
「――その子って、中村翔太君?」
ふいに反対方向から女性の声が響いて、三人は一斉に視線を向ける。
「シュラインさん!」
「こんにちは。あら、三人だったのね、依頼受けたの」
顔見知りな三人に声をかけながら歩み寄るシュラインと共に、今度はシュライン以外の三人には見知らぬ男が現れる。いや、正確には三人ではないのだが――
「こんちは。俺が、依頼仲介人の三条巴(さんじょう・ともえ)。今回は依頼受けてくれてあんがとさん」
濃紺のシャツに外したグラサンをかけ、輝く金色と闇色の瞳を持つ青年は気さくに三人に声をかけた。外見と中身のギャップはなかなか激しい。若干戸惑いながら三人が挨拶を返そうとしたその時。
「!?!?」
一瞬の間を置いて。目をむいたのは慶悟である。唐突な既視感。頭の中で長髪と化粧を取ってみる――巴を指差し凝視する事しばし。
「あ、あんた………」
「よう。昨日はまいど〜」
にっこりと営業スマイルで手を振る巴。その姿と、昨日の女性の姿が慶悟の中でどうにも重なら…むしろ重なって欲しくない――考えてみれば、女性にしては背が高いし声が低めではあった、だが、足だってツルツ――(以下略)
「?真名神君、知り合い?」
シュラインの言葉に、千里と沙耶も不思議そうに彼を見上げる。その慶悟と言えば、珍しくも冷汗を流しつつぶるぶるとかぶりを振り、脳内混乱のため巴に食って掛かった。
「待て!どういう事だ、認めないぞ俺は!」
「まあまあ、現実を見ようぜ、青年」
「あんた、カマだったのか!?騙されたじゃねーか!」
「カマ!?」
事の成り行きがわからずに静観していた女性三人の声が見事にハモる。一様に珍奇好奇の視線を巴へと向けた。しかし当の本人は悪びれた様子もなく、飄々とした調子で答える。
「そりゃオカマさんに失礼だ。俺は実益のため。いやー、あの格好お客サンが喜んでくれるのなんの。…って…見ろ、シュラインとお嬢ちゃん達が引いちまったじゃねーか」
巴が女性三人を手招きする。ハッ、といち早くいつもの冷静さを取り戻したシュラインが、コホン、と軽く咳払いすると教室を指差した。
「とりあえず立ち話もなんだから、中で話しましょう」
無論他の四人に異論があるはずもない。夕陽もやや頼りなくなってきた教室の電気をつけ、それぞれ思い思いに椅子に腰掛けたり壁に背を預けた。走り続けてきた千里と沙耶は、ややぐったりと机にその身を投げ出す。
「それぞれ報告の必要があるな。じゃあまずは俺から。調査の角度は違うが、多分行き着く所は同じだと思う」
前置きしてから、最初に慶悟が調査の結果を話し始める。続いて千里と沙耶、最後にシュライン。全てを話し終える時には、陽は完全に傾き夕闇が辺りを支配始めていた。
「――で、これがその遺書」
そう締めくくってシュラインが茶色のノートを机の上に置く。やや薄汚れたそれに、皆の視線が集中した。規則正しい時計の音と、誰かが生唾を飲む音が静かな教室内に響く。
「正確に言うと、遺書とは違うかもしれねーなぁ」
その緊張を緩和したのは、ベランダで一人煙草を燻らせていた巴。慶悟が、俺だって我慢してるのにあの野郎、と恨みがましそうな視線を向けた。
「どういう事?」
千里のもっともな疑問に、冷たくなってきた風に白煙を吐き出しながら巴がノートを指差す。
「悩んではいるが、自殺の意図が見えないからさ。さしずめ生前の日記、ってとこか」
「!!」
驚いたのは千里と沙耶。かすかに反応を示したのは慶悟とシュライン。後者の二人は調査過程で、少なからずその可能性に突き当たっていたからだ。慶悟は依頼人の美里の言葉で、シュラインは事前の勘と、客観的な事件の記事で。
「で、でも自殺じゃないとしたらどうして――」
「…そこまではわからない。読み取れるのは――いじめがあった事実と…それに立ち向かおうとしてた本人、それを支えた依頼人、ってとこか…」
困惑する沙耶に、ノートをめくりながらざっと目を通した慶悟が答える。
「でも最初の自殺、現場には靴が揃えられていて、遺書もあったって…」
調査メモを取り出しながら、千里が確認する。それについて、シュラインが顎に手を当てて何か思案するように天井を見つめた。
「…それが工作だとしたら…?」
「…え…?」
「本当は最初の事件は自殺なんかじゃなくて――事故。それを引き起こしてしまったのがいじめてた生徒達だとしたら?事故を誤魔化すために、遺書と靴を揃えたとしたら――」
でもそうすると、自分を自殺に追い込んだ人々への復讐――という構図が霞んでしまう。ましてや、日記の中で彼はそれに屈しようとはしていなかった。死してなお、強烈な怨念を抱くとは考えにくい。
腕を組み再び考え込むシュラインから視線を戻すと、慶悟は日記をめくる手を止めた。日付は最初の事件の前日。そこから後ろは当然の事ながら余白だ。空しく広がるその白が、空虚さを醸し出してやや心を重くする。
『明日、きっぱりとアイツらに言おう。言って、元通りの関係に戻れないか、説得してみよう。もし上手くいったら、小谷先生に真っ先に報告をする。難波先生は耳も貸してくれなかったけど、自分の事のように相談に乗ってくれた小谷先生なら、きっと喜んでくれるに違いない――』
『小谷先生』の文字が、無性に慶悟の目を引いた。黙ったまましばし最後の文を見つめ、パタンとノートを閉じる。
「…依頼人と中村翔太、親しかったってのは本当みたいだな」
「そう、そこなのよね!あたし達も聞いて驚いたけど、それなら事前に小谷センセも言ってくれればいいのにさ〜」
「………………」
「あの…真名神さん、どうかしたんですか?…小谷先生が、どうか…?」
やや遠慮がちに沙耶が尋ねる。同じように首を傾げる千里、そして何かを嗅ぎ取って慶悟を見つめるシュライン――
「それは――お前の口から直接聞きたいんだがな」
言い放った慶悟が、静かに後ろを振り向く。ベランダに出ていた巴は既に教室の中に入っていた。その彼が元いた位置に、ひんやりとした冷気と共にゆっくりと『何か』の気配が現れ始める。直接には霊感のない千里とシュラインの目にも、それが何であるか――誰であるのかがわかった。
学ラン姿の、男子生徒。青白い顔に悲しそうな表情を浮かべて、ただそこに佇んでいる。
「中村翔太君…ね?」
幽霊の存在は怖いとは思わないが、実際目の当たりにする事は稀である。そういえば――中村君が飛び降りたのは四階だったはず…そしてここも四階――現場なのかもしれない。だから彼の姿が私にも見えるのかも…やや緊張した声音でシュラインが尋ねた。
『………おね…………い………』
『彼』は小さく口を動かした。だがその声は、先程音楽室で千里と沙耶が聞いたように、途切れ途切れになって皆の耳に響く。人一倍の聴覚を持ったシュラインにも同様だった。
「ね、何か言いたい事があるのなら私の体を使って!」
怖がりの沙耶がペンダントを握り締め、勇気を込めて呼びかける。霊は苦手な存在だが、今目の前にいる『彼』はちっとも怖くない。『彼』に害意がないせいかもしれないけれど。そんな貴方を助けたい――その沙耶の心が届いたのか、少年は優しく微笑んで沙耶を見た。
『……先生……を………助け…て………』
「!!」
なんとか言葉を形にした『彼』が、すっと腕を上げて何かを指差した。自然と、その先を追って窓の外を見遣る――
「――ねぇ!!あれ、小谷先生じゃない!?」
真っ先に叫んだのは千里だった。間違いない。さっきまで自分達がいた校舎の屋上に、昨日会ったばかりの美里の後ろ姿が見える。更にもう一人、あれは――生徒?
見極めるにはやや遠く、千里と沙耶は気付かなかったがそれは先程、二人がここに来る途中廊下でぶつかった男子生徒だった。そして彼女達の聞き込みで出て来た、中村翔太の友人で唯一生き残っている一人でもある。
「――行くぞ!」
慶悟が教室の扉を乱暴に開け、勢い良く走り出す。すぐさま後を追うシュライン。やや混乱気味ながらも感覚的に緊迫状況を悟って、続く千里、沙耶。女子高生の二人は走りながら、交互に慶悟に説明を求める。
「ねぇっ、どういう事!?」
「……………」
「真名神さん…!」
「今回の事件――犯人は、彼女なのかもしれないわ…」
黙り込んだまま前方で走り続ける慶悟に代わり、シュラインが代わりに答えた。その表情は沈痛で、ある事実に彼女の背を戦慄が走り抜けていた。――一週間、金曜日、夜――今日。
「ええっ!?」
「…そんな……」
驚いたのは尋ねた二人だ。特に千里に至っては、前日の対面で美里の人柄に直接触れている。信じられない気持ちは人一倍強い。だがそれは今日美里と話をした慶悟も同様である。もっとも彼はあの時感じた違和感を、現実として今目の前に突きつけられようとしているのだが。
いずれにしても四人の願いはただ一つ。その想いを胸に、彼らは一気に廊下を走り抜けた。
「いい奴らが集まったな」
一足遅れて教室から出た巴は四人の後姿を見送りながら、口端に微笑を乗せて短くなった煙草を携帯灰皿に揉み消した。
「お前は――黙って見物か?」
静寂が返った教室。そこに『彼』の姿はもうないのだけれど。
<彼女の真実>
私はどこにいるのかしら。
私は何をしているのかしら。
私は何を望んでいるのかしら。
私は……
私…………
………中村君………
「待て!!」
誰?
誰なの?
邪魔をするのは…
「先生!」
センセイ…
私?
センセイ、センセイ、センセイ
呼ばないで…
呼ばないで…!
私は先生なんかじゃない
ふさわしくないの
だって
あの子を…救えなかった
たった一人も
だから……
四人が屋上のドアを開け放った時。真っ先に目に飛び込んできたのは、手すりを背に座り込み、こちらを向いて真っ青な顔で震えている男子生徒の姿だった。そして彼と自分達の間に、こちらに背を向けて静かに佇んでいる女性の姿がある。
「あ……あ……た、助けて……!」
少年は脅えた表情でそう口にするとよろめいて立ち上がり、四人の後ろへと隠れるように回り込む。その動きを追って、彼女はゆっくりと振り返った。
「………先生」
先頭の慶悟が眉を寄せる。ついで千里は、美里の表情を見て小さく息をのんだ。そこに、昨日の優しい女性の面影は全くない。
彼女の目は虚ろで、自分達を通り越して別の何か――ターゲットの生徒――を見ているようだった。まるで何かにとりつかれたかのように、禍々しい、それでいて静謐なオーラが夜気に紛れて辺りを支配している。
「シュラインさん…」
「…ええ。おそらく、彼女は――」
小声で沙耶とシュラインがやり取りを交わす。今の彼女に正気は見られない。そもそも、人柄からして一連の事件を彼女が意識的に起こせるとは思い難い。もしそうだとしたら、自分から依頼を持ち込む事なんてあり得るだろうか。シュラインと沙耶、ましてや慶悟と千里には彼女がそれほど厚顔無恥な人物だとはどうしても思えなかった。
とすれば――導き出せる答えは一つ。彼女は無意識のうちに罪を犯している。もっとも、それは意識の根底にある想いがそうさせているのだろう。だから余計にタチが悪くもある。元々特殊な力を秘めていたのか、中村翔太の死によって開花されたのか、そこら辺はわからないが。
罰せられない者に断罪を――中村翔太の死の真相を知らない彼女の願いは、心情的にわからなくはない。だがそれを認めるわけにはいかない。止めるために、自分達はここに来たのだから。
「シュライン、三人を頼む」
慶悟が、四人を守るように一歩前へと踏み出す。シュラインは小さく頷き、年少三人を後ろに下がるよう誘導した。
まずは『彼女』を正気に戻さなくては文字通り話にならない。そしてその役目と言えば、陰陽師たる自分の役目だろう。
懐から取り出した札を手に、慶悟は『彼女』と対峙する。夜風が緊迫した空気を煽るかのようにはためき、漆黒の空へと一直線に駆け上がっていく。
「……先生、もう止めろ」
油断なく構えつつ、声をかける。もし彼女が攻撃してきたら、それを防がなければならない。だがこちらから直接攻撃する事はなかなか難しい。『彼女』は紛れもなく『小谷美里』で、ただ倒せばいいだけの敵とは訳が違う。
「アイツ――中村翔太は、自殺じゃないんだ」
反応が無かった『彼女』が、ピク、と腕を動かした。――イケる?説得の可能性を信じて、慶悟は言葉を続ける。
「だから、もう復讐の意味は――」
ないんだよ、と続けようとして、慶悟の目が大きく見開かれる。瞬間、地を蹴って大きく後ろへと跳び下がる。直後、慶悟のいた位置を雷のようなものが鋭い破裂音を立てて突き刺した。コンクリートの地面がややえぐれ、闇の中に白い煙が上がる。
「真名神さん!」
「大丈夫だ!」
沙耶の悲鳴に慶悟が短く答える。『彼女』は上げた腕を下ろし、再び視線を男子生徒へと向けた。
その間に割り込みつつ、内心歯噛みしながら考える。――彼女には自分の言葉は届いていた。だが、撃って来た。何故だ。何故外した?わざと。十分に避けられるタイミングで。
警告。本気。意志。
「……あんた――もうわかってるんだろう?」
『……………』
「生徒を死に追いやる事が、どんなに無意味で罪な事か――」
『……………』
「なのに――なんで止まらないんだ!」
わかってる
わかってるの
止まらない
止められない
決めたのは私
彼の死
直接的にではなくても
追いやった全員
許せない
認めないの
罪を
だから
もう
一人
ゴメンね
一人
ゴメン
一人
ゴメン…
私も
その一人
『彼女』の揺れていた瞳に、光が宿った。虚ろだった目はそこにはなく、彼方に封じ込めた意志が戻ったかのようだった。だが悲しいかな、それは説得に応じた人間のものではなく、最後の力で使命を達成しようとする決意の表れだった。
「……ごめんね」
何への、誰への謝罪なのか。ポツリ、と。泣き出しそうな微笑を浮かべて、男子生徒を見つめながら美里は呟いた。冴え渡る月の光が、彼女を優しく照らし出す。
「これで――最後。貴方を殺して、私も死ぬわ」
「ヒッ………!」
「先生!!」
呼んだのは、誰の声だったのか。はたまた、全員だったのか。
動けないでいる四人の調査員を見つめて、彼女は寂しげに微笑んだ。その背後に、ぼんやりと白い影が見える。おそらくそれが、彼女の創り出した偽りの中村翔太――教師の事故車にとりついた、二人の生徒を追い詰めた、その存在の『元』なのだろう。
「貴方達まで巻き込んでしまって――ごめんなさい。興信所に行った時はわからなかったけれど――今ならわかります。私、です。私が一連の事件を起こしました」
「……先生……」
「…どうして、気付かなかったのかな……。ふらっとね、意識がなくなる時間があったんです。それが毎週金曜日の夜だった……。私、とても恐ろしい事をしてたんですね」
それは私の望みだったんですね――落ち着いた声音で、淡々と語る美里。それが逆に、静かな、強い、揺らぐことの無い何かを感じさせる。肌に、突き刺さる――
(間違っているとわかってるのに、何故止められないんだ――)
苦々しい表情で小さく舌打ちすると、慶悟は後ろを振り返り声を小さくして千里に呼びかけた。
「もう一度探してきてくれ、沙耶と一緒に。お前の能力なら、きっと見つけられる」
「え!?探すって……何を」
「……中村君、ですか?」
沙耶の言葉に、慶悟が頷く。おそらく防ぐ事なら自分達だけでできるだろう、力ずくで。ねじ伏せて。だがそれでは何も解決しない。本当の意味で彼女を止めるには――助けるには、やはり彼の力を借りるしかない。
顔を見合わせてお互い頷き合うと、千里と沙耶は階段へと駆け出した。シュラインは脅えきってロクに動けない男子生徒を促しつつ、後ろに下がる。聡明な彼女は、戦闘にて自分が足手まといにならないように振る舞う術を心得ていた。また、この生徒を今逃がしても余計に危険だという事も。
その様子を横目で見ながら、慶悟は再び美里と向き合う。
「真名神君、…気をつけて」
「ああ。アイツらが戻ってくるまでは――仕方ない、先生。怪我したら悪い」
先に謝っておくぜ、と付け加えて。それだけ気の抜けない事を肌で悟りつつ、慶悟は札を一旦仕舞うと指で印を結び始めた。
<願い>
「どうするの…!?」
振り向く事なく階段を一気に駆け下りながら、沙耶が切迫した表情で隣を走る千里に呼びかける。
全てが終了を告げた校内は暗く、肝試しにでも出てきそうな雰囲気である。たどり着いた廊下にポツリ、ポツリと一定間隔を置いて浮き出る消防の赤い電球の光が、その不気味さを助長する。本来の沙耶なら怖がってためらってしまうだろうが、今はそんな事を気にしている場合ではなかった。
「これを使うの――よ!」
ようやく足を止め、答えた千里は右掌を広げた。その手に、徐々に辺りの闇を払うかのように白く眩い光が集束する。光はやがて輪郭を取り始め、質量を具現化し、掌サイズの針のついたメーターへと姿を変えた。
「それは……」
「名づけて霊体レーダー。これで彼の居場所がわかるハズ!」
千里の能力の長所はその応用性にある。空中の分子を変質固定し、自ら望むものを瞬時に作り出す事が出来る能力。持続時間は一時間だが、今は十分過ぎるほどだ。
「すごい!で…どう?中村君――いる?」
「ちょっと待って…」
普通のレーダーとは違い、使用には千里自身の集中力は必要とする。目を瞑り、呼吸を整えて精神集中に入る事しばし。――目標物からの反射波を受信する――小さく、だが確かに針が触れた。
「いる!まだこの校舎内にいるよ!」
沙耶が歓喜の声を上げる。千里は目を開いて、微かに揺れているメーターを見遣った。悔しそうに下唇を噛む。
「駄目、遠すぎて場所まではわからない…」
「…そう……。でもこうしていても始まらないし、動いてみよう?そうすれば、近づいてくるかも――」
「けど校舎中走り回ってたら、時間がかかり過ぎるし……」
考え込む二人。と、大して間をおかずに、沙耶が「あ!」と何か思いついたように声を上げた。
「何?」
「音楽室!」
何故彼があそこにいたのか――怪談の元を作ったのは彼に違いない。おそらく、いつか自分達のような能力者が現れるのを待って、わざとああいう噂が広まるように仕向けたんだろう。だが何故あの場所なのか。それは調査中に女子生徒から聞いた事実に基づいているのではないだろうか。
『吹奏楽顧問の美里ちゃんと仲良かったから――』
あの場所は――二人にとって、思い出の場所なのでは………?だとすれば、彼の霊が未だあそこに留まっている可能性は高い。
「行こう!」
「うん!」
先程あちこち走り回ったせいで、校舎の構造はあらかた掴んでいた。暗闇に目も段々慣れてくる。廊下を一気に走り抜け、鍵のかけられた渡り廊下は千里が能力で鍵を作って開け、走り、階段を下り、またひたすら走る。今日は本当によく走る日だ――二人はそう思わずにはいられなかった。
その甲斐あってか、程なくして『音楽準備室』まで二人は舞い戻ってきた。窓から差し込む月光が、寂しげな扉に明かりを投げかける。事の真相を知った今では、不気味という感覚はない。それでももう一度幽霊に会おうというのだから、少なからず二人は緊張していた。
扉の前で千里は手元のレーダーを見た。――揺れている。それも、大きく。やはり、ここに彼がいるのだ。確信しながら千里は沙耶の顔を見遣った。沙耶が無言のまま、ゆっくりと頷く。二人は同時にノブに手をかけ、ゆっくりと扉を開けた。
扉近くのスイッチをまさぐると、カチッとやけに大きな音が響いた。辺りが蛍光灯に照らされると、幾分ホッとしたような気分になる。やはり暗闇というのは不安心理をかき立てる。ましてや舞台が夜の学校だ。二人は今度は迷う事なく、一直線に奥のピアノを目指した。
「…あ!」
沙耶が小さく声を上げる。その視線の先には、黒い椅子に腰掛け、蓋が下ろされた鍵盤を黙然と見つめる男子生徒の姿があった。だがその体は生身の人間のものではなく、透き通りながら冷えた青白いオーラをまとっている。――中村翔太。彼は二人の気配を感じると、ゆっくりとこちらに視線を向けた。
「何やってるのよ、こんなトコで!」
いきなり怒鳴ったのは千里だった。その大声に、びっくりしたように沙耶が千里の横顔を見つめる。千里は目にうっすらと涙を浮かべながら、何かに耐えるようにギュッと拳を握り締めた。
「小谷先生が――死んじゃうかもしれないのに!」
なんだか無性に腹立たしかった。大好きな先生だったんでしょ――なら、こんな所で思い出なんかに浸ってないで、助けなさいよ――幽霊では物理的干渉は出来ないんじゃないかとか、そんな可能性は千里の頭の中にはなかった。ただ、とにかく悲しかった。誰かを怒らずにいられなかった。
その言葉に、翔太がピクン、と反応を示した。二人を見つめながら、何か言いたそうに口を動かす。だが彼が現世に留まっている事にもう無理があるのか、先程と同じようにそれはなかなか声とはならない。
「私の体――使って?」
見かねた沙耶が、一歩前に出るとはっきりとした口調で再度提案した。そこに、怖がり体質の彼女の姿はもうない。優しさを強さに変える事が出来る、沙耶の思い遣りの表れだった。
翔太はしばらくの間、千里と沙耶を交互に見つめていた。やがて決心したかのように椅子から立ち上がると、スーーと音もなく移動して沙耶の前に佇む。
微笑を浮かべる青白い顔。その体に触れようとして、手は通り抜けてしまう。やっぱり彼はもう死んでいるんだ――わかっていた事なのに。千里につられて、沙耶も涙が溢れそうになった。こんな形でしか、自分は貴方を助けられないけれど――
『…ありが……とう……』
彼の優しい声を聞いた――そう思った瞬間。沙耶は深く意識を手放していた。
<罪と救い>
「先生!!」
沈黙と均衡が破られた。
開け放たれた扉から響いてきた声に、全員の動きが止まった。皆の視線が一点に集中する。現れた沙耶と千里。だが沙耶の様子が明らかに普段の彼女ではない事を、それぞれ瞬時に感じ取っていた。そしてまた、『彼女』も。自分が目にしているものが――あるいははっきりと見えていたのかもしれない――信じられないといった表情で、呆然としながら沙耶を凝視している。やがて白い影だった『彼女』は空中へ溶け込むように姿を消し、代わりに腹部に浅い傷を負った本体の美里が、小さく口を震わせながら沙耶――いや、沙耶の体を借りた中村翔太に半信半疑で呼びかけた。
「中村……君……?」
「先生――もう、止めてよ」
静かに歩み寄ると開口一番、翔太は本題を切り出した。今にも泣き出そうな、切ない表情で。それは翔太のものであり、沙耶のものでもあった。
だが美里の方は、宥めるように翔太である沙耶の黒い髪をそっと撫で、ゆるゆるとかぶりを振る。
「どうして――!」
「……ごめんね……。…駄目なの。もう……遅いの」
「そんな事ないだろ」
割って入った慶悟の声に、美里がゆっくりと振り返る。スーツの汚れを軽くはたいて落としながら、慶悟は真剣そのものな瞳で美里を見返した。同時にパチン、と指を鳴らして美里の呪縛を解く。ある意味それは賭けでもあった。そして彼はそれに賭けた。
「間違ってる事を止めるのに、遅くなんてあるものか」
今でもなお、慶悟信じて疑わない。――美里はわかっているのだ、自分の過ちを。わかっていながら自分で自分を縛っている。そんな馬鹿な事があってたまるか。
かすかに、美里の瞳孔が揺れた。翔太の登場により、突破口が開けた。大丈夫、今度こそ、止められる――止めてみせる。
「…小谷さん」
沈黙を守っていたシュラインが、やや乱れた前髪をかき上げて美里に声をかける。
「貴女を先生と呼ぶ生徒がいる限り――貴女は、先生なんじゃないかしら。先生なら、生徒を悲しませるのは、不本意でしょう?」
言って、沙耶の姿を借りた翔太を視線で示した。シュラインらしい言葉を選んだ冷静な説得ではあるが、彼女もまた、今回の事件によって翔太が傷付いている事を感じていた。自分の死による呪いとの噂、その中傷だけならまだしも、その名を借りた恩師の凶行。ただ見る事しか出来なかった彼は、誰よりも歯がゆかったに違いない。
「……………」
「逃げないでよ先生!」
視線を落とし黙り込む美里に、三番目に発破をかけたのは千里。脳裏に、優しく迎えてくれた美里の姿が浮かぶ。つい昨日の事なのに、なんだか随分遠い――
難しく考える事は彼女の性に合わなかった。だけど、美里がしている事は間違っている。それはわかる。誰も救われない、皆が傷付くだけだ。そんな悲しい事は一刻も早く終わらせるべきなのに。
「もう後戻りできない、なんて言い方で逃げないで!」
ビクン、と美里の細い肩が震えた。逃げる――自分は逃げている……。…ああそうだ、きっと最初から――
「先生……」
『小谷先生……』
翔太と沙耶の重なった声が、美里の胸の奥にゆっくりと浸透していく。双眸に映った目の前の翔太と沙耶の顔が波紋に揺らぎ、溢れた涙が一筋頬を伝った。
――貴方の自殺が受け入れられなくて。追い込んだ人達が許せなくて。それを止められなかった自分が、何より許せなくて――無力な自分から、変わらない現実から逃げるために、復讐を、貴方のためと言いながら実際は貴方のせいにして、断罪という大義名分で尊い命を奪った――
「………ごめん…なさい………」
ペタン、と気が抜けたように、美里がコンクリートの上に座り込んだ。涙は留まる事を知らず、ただ「ごめんなさい」と謝罪の言葉を呪文のように繰り返す。途切れ途切れの嗚咽が、静か過ぎる夜にどこまでも響いた。
誰かが、つめていた息を吐き出す。と同時に、翔太が屈んで、泣いている美里の頬を優しく拭った。美里はせきを切ったように泣きながら、翔太である沙耶の顔を見上げる。その沙耶の体の周りが、白く輝く浄化の光に徐々に包まれつつあった。
『先生、僕は…許すよ。だから、きっと罪を償って。先生ならできるって、信じてるから』
「……中村……君………」
『先生と先生のピアノ…好きだったな。たまには――聴かせてね………』
翔太の声と姿が遠くなる。集まった光は膨張し、目が眩むほどの燦然たる輝きに、皆が思わず手をかざした。やがて光が収まった後、そこにはただ夜空を眺める美里の姿があった。そこに、昇って行った翔太の軌道を見ているかのように。その隣には、気を失った沙耶が倒れていた。慌てて千里が駆け寄り、頬をペチペチと叩いて起こす。
「沙耶ちゃん!大丈夫?」
「…ん………。……千里……?」
「――終わったな。皆ご苦労さん」
チャイムの代わりを告げるように、煙草の箱を取り出しながら巴が口にした。
「……巴……さん……」
依頼人と仲介者――美里は今初めて、巴がその場にいた事に気付いたようだった。事実、男子生徒を助けた後ずっと同じ場所にいたのか、それとも今までどこかに潜んでいたのか、その気配を不思議な事に誰も覚えてはいなかった。またそれどころじゃなかったというのもある。
顔見知りに会って余計に気が緩んだ美里に、歩み寄りながら安心させるように巴が笑いかけた。ポンポン、と子供にするように美里の頭に手を乗せる。
「死にゆく人間が願う事なんざ、いつだって生きてる人間の幸せだけだ」
なぁ?と煙草をくわえ、同意を求めるように夜空を仰いだ。ついで四人の探偵も同じように、いつの間にか半月を彩っていた満天の星を見上げる。
救われた彼の魂が、いつまでも穏やかならん事を。
願わくば彼女の道程を、ずっと照らしてくれるように。
<スクランブル>
どこからか、人の気配を警戒した飼い犬の遠吠えが響いた。夜風を求めて開け放たれた窓から、家族の団欒の一時がかすかに耳に届く。学校から少し離れ、駅前まで伸びる長閑な住宅地は夜のベールをまとい、一日中で一番心休まる時間を守っていた。時折、思い出したようにテレビの音と話し声が外部へと洩れては消えていく。
家々の合間、月と寂しげな街灯だけが頼りな細い路地。その上のアスファルトに、長い影が一つ、短い影が二つ、時刻に合わせた控えめな足音と共に移動していた。
「沙耶ちゃん、本当にもう大丈夫?」
沙耶の体調を気遣ってか、ゆっくりとした歩調で歩きながら、千里は心配げに隣を歩く沙耶の顔を覗き込む。
「ありがと、もう平気。普段は霊にとりつかれても気絶する事は滅多にないんだけど……」
「それだけ大変だったって事だ。よく頑張ったな」
手放しの言葉と巴に頭を優しく撫でられて、沙耶が少し照れたように微笑んだ。――お兄ちゃんの手と同じみたい、と心地よい感触に目を瞑って。
「ねーねー、あたしは?」
「もちろん千里も」
「ほんと?じゃあ今度ケーキセット奢ってね♪」
「何っ!?」
慶悟とシュライン念のため、比較的近所ではあるが美里を家まで送って行くという事で、年少二人組は一足早く駅へと向かう事になった。夜道は危ないという事で、巴が二人のガード役を任されたのである。とは言え、若い二人に(特に千里に)振り回されてる気がしなくもない。
「それにしてもさ〜」
ひとしきりケーキで押し問答をした後。疲れた体を癒すように伸びをして、千里が学校の方向を振り返る。校舎はもう見えないが、ついさっきあんな事件があった事なんて嘘のように、相変わらずひっそりと闇の中に静まり返っていた。
「あの子…中村君、小谷先生の事好きだったのかなぁ」
唐突と言えば唐突な話題転換に、千里と巴に挟まれて真ん中を歩いていた沙耶が目を瞬かせる。
「え……好き、って……?」
「だから、先生としてじゃなく――女の人として」
「………………。ええっ!?」
意味を理解するためにワンテンポ置いてから、沙耶が裏返った声を出して目を丸くする。夜の静けさに意外と大きく声が響き、慌てて口元を押さえた。
「んもー、沙耶ちゃん驚きすぎ。あり得ない話じゃないでしょ?」
「だ、だって………。…千里は何でそう思うの?」
すると千里は「んー」と考えるように人差し指を口元に当て、夜空を見上げた。
「勘」
「………勘?」
「うん」
…勘?何故?ドウシテ?うーーーん、と真剣に首を傾げる沙耶を見ながら千里は笑い出し、沙耶の背中を軽くポンポンと叩いた。
「そんなに深く考え込まなくても」
「だって、私にはわからなかったから……」
本当はね。あの時、ピアノの前に座ってた中村君の目見て、ちょっとわかった気がしたの――きっと自分も同じ目をしてあの人を想っているんだろうな、って――だから歯がゆかったのかな。千里は心の中にそう仕舞い込んだ。
そんないつもとちょっと違う様子の千里に、沙耶は声をかけようとしてかけられなかった。が、それも束の間。
「ちょっとーー!!何してんの、何!」
「おう!?お前、声でか……何って、煙草」
「信じられない、あたし達の方に煙来たらどうするの?副流煙って知ってる?煙草の匂いって髪や服に染み付いちゃうし!」
「そっちは風上だから平気だって」
「あの……私は構いませんけど……」
「沙耶ちゃん甘い!あたし満員電車でいつも思うけど、喫煙オヤジの口臭って言ったら…」
「………………」
無言で箱をポケットに仕舞う巴。日本て実際喫煙者の肩身が狭いのかもな――てゆーか俺オヤジ?オシボリで顔を拭くアレ?朝、痰を吐かなくちゃならないアレ?マジで?そっか一回りは違うわけで、女子高生から見たらそんなモンか、ああ若いってこう…俺もうついてけねーやハハハ――そんな空しいやり取りが彼の中であったかどうかは謎。
そうこうしているうちに細い路地が途切れ、駅前の大通りへと出た。一気に辺りが明るくなり、人々や店のざわめきが飛び込んでくる。車が激しく行き交うスクランブル交差点で、三人は信号が変わるのを待った。
「あ、お兄ちゃんだ」
駅前広場に肉親の姿をいち早く発見し、沙耶が嬉しそうに小さく手を振る。仕事が終わったと連絡をしたら、心配だからとわざわざここまで迎えに来てくれたのだ。「愛されてるねぇ」と巴にひやかされて、沙耶は少し顔を赤らめた。
「……ねぇ。あたし達のした事――遅くなんてなかったよね」
交差点をぼんやり見つめながら、センチメンタルに千里がポツリと口にする。手を下ろした沙耶と巴が千里の顔を見つめた。近かった車の騒音が、やけに遠く通り過ぎる。
彼と美里は、悲しくもすれ違ったのだろうか。それとも――
「――当然」
きっぱりとした力強い語調に、千里が伏せていた視線を上げる。グラサンをかけながら口元で笑って見せた巴、自分の手を取って微笑んだ沙耶の優しさに、自然と自分にも笑顔が戻る。
人と人が行き交う。すれ違う。出会い、別れ、また出会う。
信号が青に変わった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0086/シュライン・エマ(しゅらいん・えま)/ 女 / 26 /翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0165/月見里・千里(やまなし・ちさと)/ 女 / 16 /女子高校生】
【0230/七森・沙耶(ななもり・さや)/ 女 / 17 /高校生】
【0389/真名神・慶悟(まながみ・けいご)/ 男 / 20 /陰陽師】
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■ ライター通信 ■
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初めまして、新人ライターの池田明良です。
この度は依頼を受けて頂き、誠にありがとうございます。初のお仕事という事で少なからず緊張気味だったのですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。書き終えてから、題名を間違えた気がしなくもないですが(笑)
今回参加して頂いた皆様、ほとんどが良心的な方で(笑)結果、とても良い形で依頼を終える事が出来たと思います。お疲れ様でした。それぞれ調査の方法は異なっていますので、お暇な時にでも他の方々の行動に目を通して頂ければと思います。
皆様の描写等、かなり想像力を膨らませた部分もありますので、ご意見・ご感想等あればお気軽にテラコンよりご連絡下さい。
七森沙耶さん。
とても優しいキャラとプレイングに、私の中で元祖(?)癒し系にばっちり位置づけさせて頂きました(笑)
沙耶さんが体を貸して下さったお陰で、翔太も美里も心底救われる事が出来ました。ありがとうございます。
お兄さんがいらっしゃるとの事で、妹さんである沙耶さんを大切にしてらっしゃるんだろうなと想像力を働かせてみましたが…いかがでしたでしょうか?もしイメージと違っていたら申し訳ありません。可愛い沙耶さんの事、お兄さん達はシスコンなのかな?と邪推してしまいました(笑)
『幽霊に怖がり』というのは、よく考えれば自然な事なのに妙に真新しい気がして新鮮でした。そうですよね、普通は絶対怖いよね、と同意しながら書かせて頂きました。
OMC絵の方も拝見しました。普段はセーラー服を着てらっしゃるのですね〜。とても可愛らしく、やっぱり癒されました(老)
それでは、今回は本当にありがとうございました。またいつかお会いできる事を祈りつつ、失礼致します。
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