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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


河童クエスト

  都内各地で、河童が発見されるようになった。それで、月刊アトラスでは、このような企画をすることにした。
  『河童写真コンテスト!優秀作品には賞金20万!』
  これで、参加者が集まらない訳がない。この不景気の世の中、みんなお金が欲しくて仕方ない。
  河童を探し、見つけ出して写真をとることが出来るのは、果たして誰だろうか。

 この企画に闘志を燃やす少年が一人。神坐生楓という。
「河童の写真で賞金…しかもいい感じの賞金だな」
 彼の家の小遣いは出来高制なので、まとまった金額の金が必要なときはこつこつ稼ぐしか方法はない。
 しかし、一日何時間もアルバイトをするよりは、明らかにこちらのほうが効率はいい!
「河童の好物はキュウリだよな」
 都内各地で見られるなら、その辺の川でもいいだろう。
 それに、今年は何か異常に暑いので、もし行水する羽目になっても問題はない。
 スーパーで安売りしていたキュウリをリュックサックに詰めて、彼はバイクで、近くの川に向かった。

 で、川。既に何人かそれらしい人たちが、カメラ片手に歩いていたが、河童は見当たらない。
「ふん。そんな方法じゃ見つかるのも見つからないっての」
 そう言って彼は服を脱ぎ、海パンで川に入った。
 人の視線が気になるが、河童の写真を撮るためだ、気にしない。
「ママー、あのお兄ちゃん…」
「しっ。見ちゃ駄目よ」
 …気にしない。気にしたら、そこで負けだ。そこで試合終了だ。
 たとえ人様に指さされようが、これは勝負だ。恥を捨てなければならない。
「来いや河童ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
 その時、どういう訳か、川が増水した!?
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
 そして、流される楓。
「大変だ!高校生が流されたぞー!!」
 薄れゆく意識の中、楓の耳には、そのような叫びが聞こえた…ような気がした。

 目を覚ますと、それは何処かの山の中だった。
「…ここは…」
 まず、彼は“しかし、流されてよく無事だったな自分”と、自分自身を誉めてやった。
 リュックサックは、背負っていたからなくなりはしなかった。
「…」
 ふと、右側を見た。
 緑色の人がいる。
 いや、緑色の人間はいないだろう、どうかんがえても。
 もしかして、流されたお陰で色の見分けがつかなくなったのか、俺。
 そしてそいつは、キュウリを食べている。
 ほとんど無表情で。
 さらにさらに、頭には皿…。
「ええええええええええええええええええええええええっ!」
(どう考えたって、河童じゃん!)
 半ば反射的にカメラを探す楓。
 河童は、それに気付くと、楓のリュックから、カメラを取り出した。
「あ、ありがと」
 河童は頷いた。その表情は、微笑んでいるようにも見えた。
(河童って、いい奴なんだな)
 ちょっとだけ感動する楓。
「写真、撮っていいか?」
 河童はお辞儀をした。
(あれ?河童ってお辞儀をすると、皿の上の水が零れて…)

 ばたーん!

 河童、倒れる。
「うわあっ、大丈夫か!?」
 楓、皿に水を注ぐ。河童はすぐに、目を開けた。
「またお辞儀するなよ」
 その楓の言葉を理解したのか、河童は頷いた。
「…撮るぞー」

 ぱしゃ。ぱしゃ。

(しかし、こんなの送っても、果たして編集部に信じてもらえんのか…?)
 急に、自分のやってることがアホらしく思えてきた。
 この写真を送っても、偽者ってことで没にされたり…とか。
 そんなことになったら、海パン姿で川に入って流された苦労が水の泡だ。
 河童だけの写真を撮っても、本当に見たという証拠にはなりそうもない。
「…一緒に、写るか?」
 河童は、また、頷いた。

 結局、楓は、その河童と共に写った写真を2枚撮った。
 片方は、編集部に送ったけれど、もう片方は、自分で持つために。
「あの河童、今どうしているかな」
 写真を見ながら歩いていた楓だったが、ふと、この間流された川を見た。
 …緑色の物体が流されていたが、別に凝視するようなことはなかった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0561/神坐生楓/男/17/高校生
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■         ライター通信          ■
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えー、ちょっとジブリ風味と見せかけて、ラストは『河童の川流れ』という格言オチでしたね(苦笑)。判りづらかったかも知れませぬが。
初めまして、蒼華珠璃と申します。最近ライター始めました。
もし機会がありましたら今後とも宜しくお願いします(ぺこり)。
では、短いですが、今回はこの辺で。