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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


 人との間で(後編)

 青梅街道を進み、五日市線終点の「武蔵五日市駅」のロータリー前を曲がる。
 真新しい駅は閑散としている。停まっているタクシーばかりで、乗る人間はいない。
 八咫烏が先を飛んでいる。臨海副都心から飛び詰めだが、そんなことは全く気にならないらしい。
 更に細い道へと入る。橋を渡った。
 ラジオに雑音が混じる。天禪はラジオのつまみをひねった。
「嫌な場所だな」
──今の橋、下は怨念の渦ですな。数年前に日本中の親を恐怖させた狂い男めの地です。
「ほう」
――民草の怒りに耐えかねた血縁者が投身自殺をした場所です。この先にも、ヤツめの怨念と狂気が渦巻いておりますぞ。
 畑を通り過ぎ、細い坂を上る。
 小峰工業団地――
――峠を登り切るとトンネルがございます。ヤツめが幼女を埋めた真下になりますな。
 天禪は少し離れた場所に車を止めた。
 八咫烏がくるくると上空を旋回している。
 禍々しい気に満ちた場所だった。
 工場らしい建物が三つ。広々とした駐車場は、道を挟んで二つ。かなりの人数が勤務していると見ていいだろう。
 すでに日は暮れている。駐車場の中に停まっている車は三割と言うところだ。
 その中に、エリザベスが虎の子たちを連れ去ったトラックもある。
 淀んだ空気が、辺り一面を覆っている。峠の上の邪気も大したものだが、この研究所一体を埋めるおぞましさには比べるべくもない。
 こんなところで働いていたら、身体に異常をきたすだろう。精神的に弱いものならば徐々に狂っていく。負の感情が強い者になると、異形化してもおかしくない。
 八咫烏が肩に下りてくる。
「散策させて貰うか。ヤツらの研究内容、大いに興味がある」

×

 右端の建物の中に、天禪は忍び込んだ。
 あたりは薄暗い。非常灯以外に照明がないのだ。もうこの建物は閉店時刻と言うことかと、天禪は思う。
 目の前の階段を下りた。
――小鬼に調べさせましたが、地獄では何も起きていないようです
 肩に停まったままの八咫烏が告げる。天禪は首をひねった。
――ただ
「なんだ」
――最近、はぐれとなる地獄鬼が多いのだそうですよ。近々、何らかの対策を取る可能性が高いそうです。地獄も脱サラブームですかな
「ふむ」
 天禪は顎をひねった。
 階段を下りきると、重たい鉄の扉が立ち塞がっている。だが、鬼に堅固な扉など何の意味もない。鬼対策の呪詛でも施していなければ、銀行の金庫だろうが民家のふすまだろうが、同じなのだ。
 扉の中にとけ込む。
 向こう側に抜け、天禪は目を見開いた。

 異形の展示会でも始める気なのだろうか。
 液体を満たしたカプセルがずらりと並び、その中に異形化した人間たちが納められている。額に角を生やした者、棘の生えた尾が生えている者、口が耳まで避けている者、手が肥大化して爪が刃物のように尖っている者。
 しかしそのどれもが、明らかに元人間だったという特徴を備えている。悪趣味だった。
 異形化人間の陳列は延々と続く。一体どれほどの人間が収容されているのか見当もつかない。そしてどうやら、全員死んでいるようだった。
――おぞましいことこの上ないですな。
 八咫烏がクエッと鳴いた。天禪は苦笑する。
「しかも、どれもアジア系だ」

 異形の詰まったカプセルの間を歩きながら、天禪は空間があまりに広大なことに気づく。 どうやら、地下室全体が一つのフロアとして存在するらしい。駐車場や建物の下までと考えると、常軌を逸した広さだった。
 時折エレベータやスロープがあるのは、三つのうちどの棟からでも下りてこれると言うことだろう。
 新しい場所に踏みいり、天禪は更に眉を顰めた。
 ガラス張りのブースの中で、妖魔が拘束されている。
 恐らくは実験材料なのだろう。牛頭の化け物が、両耳と片足を削がれて転がされている。ぐったりと床に横たわり、口から泡を吹いていた。
 八咫烏が身震いする。
 腹の底から、黒く重たい怒りが這い上がってくる。
 どのブースも、実験動物の扱いを受けている妖魔で満たされていた。ガラスには、部屋番号が透かし彫りされている。
 時折人間の姿をしているものもいたが、それは虎の子同様何かに化けられる者たちなのだろう。
 どの妖魔も、窓の外を天禪が通っても反応すら出来ぬほどに疲弊しきっていた。
 あるブースの前で、天禪は足を止めた。
「よう、お仲間」
 低い声が響く。
 ガラスの向こうで、両手両足を戒められて仁王立ちしている鬼の姿があった。
 ガラスの脇に貼り付けてある紙には、「ONI-No.031-」と書かれている。
「あんたは、俺とは少し違うみたいだな」
 鬼は戒められたまま話しかけてくる。あちこちに傷があるが、それでも生命力はさほど衰えているようには見えない。
 はぐれ地獄鬼だ。
 地獄から抜け出し、現世へ出てきた鬼である。天禪とは全く別種の鬼であった。
「お前は刀葉林を使えるか」
「はっはぁ。あんた、あの銃に撃たれでもしたな。生憎だが、あれは俺じゃねえ。相棒の延鬼(えんき)から奪われたものさ」
「まだ地獄鬼が居るのか」
「さあな。俺たちは一緒にとっつかまったんだ。だから知ってるだけでな」
 俺は黒縄地獄を使う――と鬼は言った。
「すまねえが、その紙切れをはがしてくれないか。そいつが俺たちの力を根こそぎ奪う憎い札でな」
「これか」
 天禪はガラスの脇に張られている紙を掴む。
 急激に力を奪われる。危うく膝をつきそうになった。
 引きちぎった。
「ありがとうよっ」
 鬼が歓声を上げる。
 手足を戒めている鎖を易々と引きちぎる。
 ガラスをぶち破り、通路へ飛び出してくる。
「恩に着るぜ。相棒を助けにいかなきゃならねえ、恩返しはまた今度にするぜ」
 にやりと笑うと、通路を駆けだした。
 警報が鳴り響く。天禪は苦笑した。
「散策はここまでだ。行くぞ、八咫烏」
――御意。
 八咫烏がふわりと飛び立つ。
 大烏の目は、暗闇ではものは見えぬが千里眼となる。気を察知し、一直線に飛んでゆくことが出来るのだ。
 八咫烏がスロープの上を飛ぶ。天禪はスロープを駆け上がった。

×

「警報!?」
 照明が赤い切り替わる。エリザベスは書類から顔を上げた。
 目の前に、青い肌をした鬼が居る。身の丈およそ2メートル。彫刻のように美しい筋肉に、眉間には短い角。獰猛な瞳は、何度実験で死にかけても変わらない。
 刀葉林という地獄を武器にする鬼だ。数ヶ月前、ターナーの部隊が捕獲したものだ。この鬼が出現させる地獄の刃を調べ、武器として使用できるようになったのは最近のことだ。
「このオニを見ていなさい。誰か侵入したわね」
 エリザベスは舌打ちし、隣の研究所員に書類を押しつける。
「もうこいつに用はないわ。解析もすんでいるし、細胞のサンプルだけ採取したら殺しなさい」
 所員にそう命じ、スロープを駆け上がる。
 駆け下りてくる秘書と危うくぶつかりそうになった。
「エリザベス様、鬼が逃げました」
「鬼? 沢山居るのよ、このグズが!」
 エリザベスは秘書の頬を張り飛ばす。秘書は身じろぎもせず、申し訳ありませんと言った。
「黒縄地獄の鬼です」
 秘書の言葉が終わるか終わらないかの内に、スロープの下から悲鳴が聞こえてくる。
 エリザベスは手すりから身を乗り出し、階下を見下ろして悲鳴を上げた。
 先ほどの所員が首を切られている。赤い肌をした鬼が、青鬼を閉じこめているガラスケースに体当たりを繰り返している。
 エリザベスは秘書を引きずり、スロープを駆け上がった。
 一回の受付にある極秘コンソールを引きずり出す。指示を打ち込んだ。
「地下シャッターを全て閉めます。サンプルは諦めるわ。Statesに送った資料だけで我慢して貰うしかない」
「エリザベス様、まだ下には百人近い所員が!」
「お黙り」
 エリザベスは秘書の襟元を掴んだ。
「自縛指令も出したわ。  Do you also want to die together?」
「い、いいえ」
 秘書は慌てて首を振る。
「私の部屋にある重要資料だけもってヘリポートへ。ここは捨てるしかないわ」

×

 檻に入れられた華はぐったりとしていた。
 一臣も頭がくらくらするのを感じる。華が入れられている檻は木製で、その木からもの凄く気持ちの悪い臭いがするのだ。車酔いに似た気分の悪さだった。
 一臣は椅子に縛り付けられていた。それも、かなり太く強い縄でだ。
 目の前に、大柄な男性が立っている。公園で、突然現れた男性だった。
 一臣は、この男を以前に一度見た記憶がある。
 黒い車が家の前に停まっていた。一臣が学校から帰ってくると、それに乗り込んで立ち去った男だ。
 一瞬のことだったが、一臣は覚えている。
 一臣の周りで、白衣を着た男たちがせわしなく動いている。大部分は日本人のようだった。髪が黒い。
 一人が一臣の腕を取り、注射針を突き刺す。一臣はじっと耐えた。反対側の腕にも注射針を刺される。何かを注射された。
 男は、一臣を無遠慮に見つめている。一臣はまっすぐに男の瞳を見返した。
 男の唇が皮肉っぽく歪む。
「採取、終わりました」
「雌の方、採取終わりました」
「よし」
 同時に左右から伝えられた言葉に、男は満足そうに頷く。
「これで、どちらかが死んでもいいということだな」
 ぽきぽきと手の骨を鳴らす。白衣を着た男たちが眉を顰めた。
「ターナー様。出来れば瀕死でおさえていただきたい。またクローンから育てるのは時間がかかります」
 また……?
 一臣は嫌な予感に胸を焼かれる。また、クローンから育てる? では誰が今……クローンだと言うのだ。
「ふん、つまらんな」
 ターナーが一臣に近づく。
 大きな掌が、びしゃりと一臣の頬を殴った。
 血の味が口に広がる。
「The good thing was thought of.
おいBoy、お前、自分が痛い思いをするよりも、他のヤツが酷い目に遭わされるのが苦手なんだってな。正義の味方みたいでカッコイイぜ」
 ターナーは野卑な笑みを浮かべる。ぱちんと指を鳴らした。
「Tigerになってもらうぜ」
 一臣が華の方を向く。
 華の手足に電極が取り付けられている。一臣は目を見開いた。
 グォォォンッ!
 虎が絶叫する。びりびりと手足を震えさせ、よだれを垂らしながら吼え狂う。
 どんっ。虎の頭が檻に叩きつけられる。力が入っていないのか、木製の檻はびくともしない。
「もう一度だ。痛めつけてやれ。死なぬ程度にな」
「やめろっ!」
 一臣が叫ぶ。ターナーの平手が再び頬に炸裂する。
 今度は唇が切れた。
「やめさせてみるんだな」
 ギャアアッ グゴオォッ グルルッ
 虎が檻の中で暴れる。一臣は椅子の上でもがいた。
──怒るな、一臣。華は平気だ、まだ死なない
「華ッ」
 虎の口から泡が溢れている。それでも、金色の瞳は力をなくさない。
──お前は強い。だから華には止められない。元の姿に戻ってはいけない。
 虎が絶叫する。ターナーが哄笑した。
──ダメだ。ダメ、一臣……
 一臣はターナーを睨みつけた。全身の血が沸騰する。
 熱い。
 目の前が真っ白になった。
 
×

 二階に駆け上がり、天禪は熱い気に打たれて立ち止まった。
 目の前の部屋から駆けだしてきた男が天禪の姿を見つけて目を丸くする。
 天禪は男の頭を掴み、窓の外へと放り捨てた。
 男が逃げ出してきた部屋へ入ると、そこには金色に輝く虎がいた。

 怒りに燃える瞳をこちらに向けている。檻の中の白虎よりも一回り近く大きい。
 金地にくっきりと模様を浮かび上がらせ、真っ赤な口を開けて唸っている。
 想像していたのよりも、遙かに猛々しく雄々しい虎だった。
 天禪はにやりと笑う。
 八咫烏が慌てて肩から離れる。
 虎が天禪に向かって跳躍した。
 虎の前足が天禪の胴を薙ぐ。肘でそれを止め、弾き飛ばす。
「力は強いが、まだまだだな」
 本能の域を出ていない。狩りの訓練など積んでいない、日本育ちの虎なのだ。
 育てばどれほどになるのか。
 虎は壁を蹴り、再び天禪に迫る。
 天禪は虎の頭を掴み、床へ押しつけた。
 虎が立ち上がろうと吼え猛る。迫力のある吼え声だった。
 天禪が足を上げる。
 虎の横面を蹴り飛ばした。
 虎の身体が吹っ飛び、白虎が納められている檻に激突する。木製の檻が砕け散った。
 白虎が飛びかかってくる。だが、力がない。
 天禪は白虎を簡単に弾き飛ばす。
 肩に、激痛が走った。
 白虎のすぐ後ろまで来ていた虎の牙だ。
 食らいついている。
「猛々しい者には、力で応じようではないか」
 天禪は口の間に手を差し込み、開いた。
 掌に牙が食い込み、血が滴り落ちる。
「元に戻れ、一臣」
 床に叩きつける。
 虎が唸った。
 飛び起きる。
 窓を蹴破り、外へと走り出た。
 白虎がそれを追う。
 追いすがろうとした天禪の前に、大烏が舞い降りてくる。
――あれを
 割れた窓の向こう、侵入した最初の建物を示す。
 ヘリポートから、ヘリが飛び立とうとしていた。
「あちらが先か。エリザベス、ただではすまさんぞ」
 駐車場に降り立った二匹の虎も、あちらの建物に向かっている。
 天禪も駐車場へ飛び降りた。
 
「エリザベーーーーーース!」
 金髪の男が、建物の入り口あたりで絶叫している。取り残されたのか。
 ヘリが下りてくる。はしごが投げられた。
 天禪は男に向かって走る。
 男がはしごを掴み、大きく揺れるそれを上っていく。
 金色の光が、男に迫った。
「うわあーっ」
 男の絶叫が響く。
 血しぶきが夜空に散った。
 着地した虎の口の中に、男の首がある。
 天禪はくくっと喉を鳴らした。
 白虎が虎に追いすがる。
 体当たりした。
 虎の後ろ足に牙を立てた。
 血が飛んだ。
 ヘリはゆっくりと上昇を始める。逃げる気だ。
 ヘリに黒い線が走ったのはその時だった。
 墨で塗られたかのように黒い線が、ヘリを縦横に走る。
 砕けた。
「黒縄地獄かっ」
 三人の人間がヘリから落下する。
 ヘリが爆発した。
 爆風に飛ばされ、人間の身体が地べたに叩きつけられる。
 ぐしゃりと嫌な音がした。

×

 裸になった少年に、天禪は己の上着を掛けてやった。
 一臣は右の太腿から血を流している。殴られでもしたのか、顔も腫れ、唇が切れている。
 天禪は少年の頬に手を当てた。
 さっとその間に女が割ってはいる。赤いチャイナブラウスを来た女だ。
「一臣。俺のところに来ないか。待遇は良くするぞ。もう帰る場所もあるまい」
 少年が驚いたように目を見開く。
 そして、女をどかした。
 ゆっくりと首を振る。
 気高い瞳をしていた。
「ボクは、中国に行かないといけないんです。そこが、ボクの行くべき場所だって」
 隣で女がうんうんと大きく頷く。
 ぎらりと天禪を睨んだ。
「だから、ダメなんです」
「お前は死んだことになっている。どうやって中国へ行く気だ。俺のところへ来る以外に道はないぞ」
 一臣は目を見開き――そして、うつむいた。
 顔を上げる。
 三つの工場から火柱が上がった。
「ちっ、エリザベスめ。全て燃やしてしまうつもりか」
 地響きが起こる。天禪は二人の手を掴み、走った。
 だが遅かった。
 工場が爆発し、焼けた瓦礫が降り注ぐ。一臣が爆風によろけて倒れた。
 あたりは一瞬にして火の海になる。
 自分一人ならどうということもない。だが、この二人には――
 一臣の目の前に、青い腕が伸びてきた。
 
「割と早く来たな、恩返しの機会が」
 一臣の身体を抱き上げたのは、青い肌をした鬼だった。
 その横に、天禪が逃げさせた鬼がいる。
 こちらは女を抱き上げ、肩に乗せていた。
「駆け抜けるぜ。地獄生まれの俺たちにゃ、こんな火なんて蝋燭レベルだ」
 赤鬼が言う。青鬼も頷いた。
「すまん、助かる」
 天禪は唇をゆがめた。
 赤鬼が親指を立てた。
 
 ×
 
 天禪の車のトコロまで火は回っていた。車は独りでに動き、エンジン音もさせずに坂を下り始める。
 カーラジオから、上機嫌の小鬼の声が聞こえた。
 
 目の前に停まった車に、天禪は娘と一臣を押し込んだ。
 振り返ると、鬼二人はすでに人間の姿に変化している。
「お前たち、地獄へ戻らないのか」
「戻らないさ」
 赤鬼が答える。見事な赤毛を長く伸ばした青年に化けていた。青鬼は黒髪の大人しそうな好青年に化けている。
「追っ手が掛かる可能性は高いぞ」
「地獄でずっと亡者いじめてんのには飽きちまったんだよ」
 けらけらと赤鬼が笑う。
「教えてくれてありがとうよ。オレは深鬼(シンキ)。何とか逃げて見せるぜ」
「相棒を助けてくれて礼を言う。私は延鬼(エンキ)」
「荒祇天禪だ」
 天禪は手を差し出す。延鬼と深鬼と交互に手を握り合った。
 鬼二人は空気に溶けるように姿を消す。
 天禪は車に乗り込んだ。
――行きますぜ。場所は
「草間興信所だ」
 上機嫌の小鬼に、天禪は命じた。
 
「あの」
 一臣が声をかける。
「天禪だ」
「天禪さん」
 一臣は律儀に言い直した。
「ボクが欲しいんですか」
「ああ、欲しいな」
 女が唸る。
 天禪は一臣を振り返った。
 傷が痛々しいが、そんな素振りは見せない。想像以上に強い子供のようだった。
「ボクは、中国に行って、虎の力を使いこなせるようになりたい。中国へ連れて行ってくれませんか。その代わり、一人前になったら、天禪さんのトコロへ来ます」
「ふふん、お前を買い取れというんだな」
 女が唸る。
 嫌がっているようだった。
「では一年でいい。一人前になったら俺のところへ来い」
 天禪は手を伸ばし、助手席の八咫烏から羽を一枚むしった。
 八咫烏が悲鳴を上げる。
 天禪はその羽を女の方へ渡した。
「これで俺と連絡がつく。嫌ならば捨てろ。だが、一臣が一人前になるまでは捨てるな」
 女は素直にそれを受け取った。
「小鬼。中国へ行くための用意をしろ。パスポートと旅券だ」



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0074 / 風見・璃音 / 女性 / 150 / フリーター(継続)
 0165 / 月見里・千里 / 女性 / 16 / 女子高校生(継続)
 0281 / 深山・智 / 男性 / 42 / 喫茶店「深山」のマスター(継続)
 0599 / 黒月・焔 / 男性 / 27 / バーのマスター(継続)
 0284 / 荒祇・天禪 / 男性 / 980 / 会社会長(継続)
 0606 / レイベル・ラブ / 女性 / 395 / ストリートドクター(継続)

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■         ライター通信          ■
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 お待たせしました。後編です。
 原稿自体は出来上がっていたのですが、いろいろ問題が起きまして(笑)
 登場人物横の継続は、前後編ご参加されたかた、新規は後編のみの方です。
 ほとんどの方が継続してくださったので、ほっと一息。
 継続参加者様にはオプションを設定したのがよかったのでしょうか?
 続編ものをやるときは、この形で行こうと思います。

 最後に、次回から依頼は周防きさこ改め和泉基浦で出させていただきます。
 よろしくお願いします。
 早ければ本日中に新しい依頼を公開しておりますので、そちらもご覧ください。
 前後編ともにありがとうございました。
 またの機会がありましたら、よろしくお願いします。  きさこ。