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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


河童クエスト

  都内各地で、河童が発見されるようになった。それで、月刊アトラスでは、このような企画をすることにした。
  『河童写真コンテスト!優秀作品には賞金20万!』
  これで、参加者が集まらない訳がない。この不景気の世の中、みんなお金が欲しくて仕方ない。
  河童を探し、見つけ出して写真をとることが出来るのは、果たして誰だろうか。

「河童、ね。あ、そうだ」
 自宅にて、何かを漁る室田充。どうやら心当たりがあるらしいが。
「うーん、これも違うなあ。どこ行ったかなあ」
 彼が漁っているのは、どうやらミニアルバムのようだ。
「あー、あったあった☆部長の写真御一行用ミニアルバム☆」
 …どうやら彼が思いついたのは、部長(48歳妻子もち)だったらしい。
 部長は、立派なハゲ頭の持ち主だった。そりゃあもう、バラエティ番組のコントに出てくるお父さんや部長さんや、果てにはハゲ日本代表とも言える日本が世界に誇るハゲたる●平さんにも勝るとも劣らないハゲである。
 確かにある意味河童だが…充は企画の趣旨を、明らかに間違っている。
 アトラス編集部サイドが欲しいのは、ハゲ頭のサラリーマンの写真では、決してなく、本物の河童の写真なのだ。
「ほらー、これなんかとても河童ー」
 しかし、その時気がついた。
 企画の趣旨に、ではない。
 部長がいつも持ち歩いている、魔法瓶。
 そういえば、部長がコーヒーやお茶を汲んで飲んでいるというところは見たことがない。いつも魔法瓶から謎の液体を飲んでいる。
 あの液体は何なのか。謎である。
 いつの間にか、河童の写真のことを忘れそうになるが、危ういところで思い出す。
「うーん、ネットで投稿できるから、すぐに投稿してもいいんだけど、どうせならもっといい写真送って高得点稼ぎたいよねー。何せ賞金20万だし」
 20万あれば、最新型のパソコンとデジカメがセットで買える。そうすれば夏のボーナスがかなり浮く。今の時代はサラリーマンも金銭的に苦しい世の中なので、こういうチャンスは逃したくない。
「締切まで余裕あるし、撮っておきましょうか」
 次の日、彼はカメラ片手に会社に向かうことになる。

 しかし、彼の予想しえなかった事態が会社であった。
 部長が、ヅラを被ってきたのである!
 字面はかなり阿呆だが、結構みんなショックだったらしい。
 だれも、カツラについて突っ込まない。ただ、茫然として部長を見ている。
 ただ、誰もが思っている。「部長は、ウチの部長だけは、ヅラをかぶるようなコトはしないと信じていたのに!」と。
 ヅラや増毛・育毛技術が進化し、ハゲが減った今、部長のような人間は少なくなっている。
 某映画風に言うと「日本のハゲは、すっかり駄目になってしまいましたー」である。
 部長は、部長は、天然記念物、否、国宝にしてもよいような立派なハゲの持ち主なのに!それなのに、ヅラを被ってくるなんて!充と同僚たちのショックは大きかった。
 しかし、これを放っておく訳にはいかない。昨今の時代、部長らしい部長が失われている。この天然記念物並の部長を、消させる訳にはいかないのだ。
 しかれども、いきなり言って上司の機嫌を損ねたら事であるため、誰も何も言えない。充もしかりである。
 が。
「あー、ズレちゃったー」
 今年入ったばかりの新入社員が、書類片手に言う。
 それに部長、過剰反応。
「ズレてる!?松島くん、今、何と言ったかね!」
「えー、だから、書類のコピーの印刷がズレていて、途中で切れちゃったんですよー。ホラ」
 そう言って松島嬢は、その書類を部長に見せた。
「な、なんだ。そういうことかね」
 安心する部長。
 ところが。
「やべーよ、絶対バレてるって」
 30代前半の社員二人が、何やら話している。ここでも部長、過剰反応。
「バレ!?」
「あ、いやですね。実はパチンコで大負けしたんで、家内にバレたかなーなんてグチっていたところっす」
「そ、そうか。でもそういう話は昼休みにしなさい」
 部長、一安心。
 しかししかし、まだ安心できないのであります。
「あらあら、あんなところに浮いてるわね」
「ウ・イ・テ・ル!?」
 またまたまた過剰反応の部長。
「風船ですよ。多分子供が紐を離しちゃって、それで飛んだんでしょうね」
 部長、胸を撫で下ろすが。
「決して、部長のカツラのことじゃないですよ」
 止めを刺された部長。思わず黄昏る。その姿には、「蛍の光」が、とても似合っていた。
「…部長」
 そんな部長に声をかける充。
「いいじゃないですか、頭ハゲていても。無理してカツラ被ったりしているほうが、かえって見苦しいですよ」
 いいことを言っているのだが、部長はもはや立ち直れないダメージを受けていた。まあ、無理もないが。
 さて、どうしたものか。
「部長…自分で、虚しくなってませんか?カツラ被ったはいいけど、あんなにナーバスになって…だったら、カツラなんて被らないほうがいいですよ。見苦しいし、虚しくなるだけです」
 正論を吐いているのだが、今の部長にとっては全部イヤミに聞こえるらしい。
「君らに私の気持ちが判るか!」
 そう叫んでどういう訳か走り去ろうとする部長。
 しかし、これまたどういう訳かある故・初代会長(享年83歳)の銅像に激突!
「部長ー!?」
 部長、気絶。
 むしろ、勢い良くぶつかったため、意識不明の重体。
 つーか、三途の川渡ってるところなんじゃ…。
「大変だ大変だ!」
「きゅ、救急車救急車!」
 オフィス騒然。
 このどさくさに紛れて、ヅラの少しずれた部長の写真を撮る充。
 ──ごめん、部長。でも20万ゲットしたら、何か美味しいものオゴるから!
 そんなことを心の中で叫びながら。

 なお、この写真を送り付けたところ、「企画の趣旨は間違っているけど面白い写真」として、充には賞金5万円が送呈されたとか。
 めでたし、めでたし?

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0076/室田充/男/29/サラリーマン
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■         ライター通信          ■
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いつの間にかハゲネタに…どうも初めましてこんにちわ、蒼華珠璃です。
今回の話、かなり阿呆です。まあ、蒼華の作風なのですが。気に入っていただけたら幸いです。
ちなみに、元ネタあります。もしわかったらファンレター機能使って言ってみてくださいな。
では、今回はこの辺で。