コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ein halb

**

それは一件のメールから始った。

<メールを受信しました>

彼女は何気なくその受信されたメールを開いた。

『私を助けてくれますか?』

悪戯メールだと思った彼女はそのメールを直ぐに削除した。
その後その悪戯メールは入っては来なかった。
それから数日後、彼女は自分の部屋で死んでいた。
警察は事故・他殺両面からの検視を行ったが、彼女の身体に
は外傷も無く薬物の使用痕跡等の異常な部分は一切発見でき
なかった。
実はここ数週間、同じような変死体が発見されている。
そのいずれも彼女と同じ様に自室で死亡しているのだ。
結局、彼女の死亡原因も特定出来ずまたもや原因不明のまま
病死扱いとなり、そして…
誰も居なくなった部屋には充電切れの携帯電話が転がってい
た。不意に、鳴るはずの無い着信音を響かせ一件のメールの
受信を知らせた。

<メールを受信しました>

『キミも助けてくれなかったね?』

青白く光った画面にメッセージが浮かび上がり静かに消えて
いった。
そして部屋には二度と動くことの無い携帯電話だけが残った。


……この話、本当だと思いますか?

**

掲示板に書き込みされた噂話の一つにそんな話があった。
「ふ〜ん…なんかウソっぽいよねぇ?」
「……」
「どうしたの?」
「そのメールと同じ内容のヤツ…昨日貰った」

**

紅臣・緋生はウンザリしていた。
「あ〜もぅ!いい加減にしろって!」
最近多くなったイタズラメールに彼女は憤慨していた。そして
現在、噂で聞いた『呪いのメール』なるモノまでもをとうとう
受信してしまったのだ。
噂はあくまでも噂であって、真実ではない。
そう彼女は思っているのだが・・・しかし、今回はどうにも気
になって仕方が無いのだ。

『私を助けてくれますか?』

そのメールを見ながら紅臣は深い溜息を吐きながら毒づいた。
「あたしにメール寄越すなんていい度胸じゃない」

**

どうやってメアドを調べているのか、ここ数週間でのイタズラ
メールの多さは異常だった。噂の『呪いのメール』ではないが
自分にメールを送り付けて来た奴らを呪詛したい気分だった。
「ったく、メンドクサイなぁ〜」
そんな物騒な思考に終止符を打ったのは、メールの受信音で
あった。しかし、帰ってきたメールを見て彼女は憮然とする。

『サーバーエラー・アドレスが見つかりません』

「・・・なにそれ・・・」
彼女は何度も例のメールにリターンアドレスで送信をしてみた
が、結果は同じであった。
それを何十回とシツコク繰り返し送信したが、やはりどれも彼
処も返送されて戻ってきてしまう。
そして彼女は結論を出した。
「やっぱり噂はウワサか・・・無駄な時間を・・・」
ウワサに踊らされて馬鹿を見たと彼女は大きく伸びをして首を
鳴らした。
そして手に持っていた携帯を投げ捨てた瞬間にそれは起こった。
いきなり携帯が鳴ったのだ。
それはメール受信を知らせる音楽。
そしてメールを開けたその瞬間、コメカミに一本線が浮かんだ。

『メールありがとう。キミ怒ると皺が増えるよ?』

「・・・殺されたいみたいだね」
もう一度受信音が鳴り、彼女は怒りもあらわにしたまま乱暴に
携帯のボタンを押した。するとそこには地図が送られてきてい
た。
「あたしを呼び出すワケ?ふーん・・・いい度胸じゃない?!」

待ち合わせ場所のS駅前。
そこには人の良さそうな青年が高校生らしき男女と向き合って
立ち尽くしている姿が眼に入ってきた。
多分彼らはメールの関係者なのだろう・・・。
紅臣は足早にその3人に近づいていった。
そしてふと視線をあげると、前方からも同じようにこちらに向
かって歩いて来る男性の姿も見えた。
この中に犯人がいるのだろうか・・・


**


S駅前。
『呪いのメール』という噂に引き合わされた5人の男女は、
深い沈黙と重い空気のなか立ちつくしていた。
それぞれに警戒心を含んで・・・
鈴宮・北斗は、メールの差出人は誰なのか、そしてこの中に
犯人はいるのかどうなのか・・・警戒していた。
月見里・千里は、この中にメールを送信して来た『犯人』が
絶対に居ると思い込んでおり、少々怯えていた。
橘姫・貫太は、一人見知った顔を見つけ少し驚いた顔をした。
紅臣・緋生は、一人一人を吟味するように犯人を探っていた。
浅田・幸弘は、知り合いの顔を見つけ軽く驚いた。そして探
るように他のメンバーの顔を見渡し注意深く観察した。

彼らの沈黙を破ったのは北斗だった。
「あの・・・」
その発した一言で視線が彼に集中する。
それに少々たじろぎながらも彼は言葉を続けた。
「ここってなんか目立ってへん?ベンチに移動せぇへん?」
駅前で無言で立ちつくす男女5人というのは、それだけでも
結構不気味なものである。
駅前と言う事もあり結構な人通りがあるにも関わらず、ふと
気がつくと、彼らの周囲には誰もいなくなっていた。
「まぁ確かに、そうですね。」
「そ、そ、そうね・・はは・・」
苦笑を浮かべながら肯定しゆっくりとベンチへと足を向ける
橘姫の後を怯えすぎて挙動不審になっている千里が続いた。
そして更にその後ろを無言で付いていく紅臣と幸弘の二人は
かなり険しい顔をしていた。
異常な雰囲気を引き摺ったまま彼らは大きな木にあるベンチ
へと向かっていった。

「さて、『メールの差出人』さんは誰ですか?」
橘姫がいきなり核心をつく質問をした。
それに対して誰もが自分ではない、と主張し混迷を極めた。
「つまり俺達は、このメールの差出人にこの場所へと呼付け
られた、と言う事ですね。」
幸弘は冷静に状況を分析して一つ一つ確認する。
北斗と千里は元々S駅前にいてメールをもらったという。
「『キミ達の後ろにいるよ』ってメールが入って・・・」
「で、振り向いたところに俺が居たわけですかぁ」
のんびりと緊張感の無い橘姫がやんわりと納得する。
話を纏めると、高校生の二人以外の3人はメールでこの駅前
へと呼び出されたらしい。
「確かに俺達はメールでこの場所へと呼ばれた。しかしだ。
俺の調べた結果、このメールで死亡した人物はいないことが
解かった。この噂は『デマ』の可能性が高い。」
幸弘の言葉を受け、橘姫は小首をかしげた。
「じゃぁどうして俺達はここへ?」
「ただの悪戯なんやろか・・・」
「ただのイタズラでこんな変なメール来ないよ!」
それを黙って聞いていた紅臣はダンと靴を鳴らして地面を蹴
った。
「下らない真似しやがってっ!」
そう言うと紅臣は不快な感情を隠しもせず持っていた携帯を
投げ捨てた。

『キミ、そんなに怒るとしわが増えるよ?』

その瞬間、聞こえてきた声に紅臣の眉がピクリと動いた。
「・・・あぁ?!んだと!もっぺん言ってみろっ!!」
隣に立っていた北斗の襟首を掴み怒鳴るが、怒鳴られた北斗
は訳が解からないと言った顔をして首を振った。
「俺何もゆうてへんがな!」

『キミ達遊んでいないで、私を助けて。』

一瞬にして彼らに緊張が走った。
「い、い、い、今のなにぃぃ!!」
再び聞こえてきた声に、涙目で怯えまくっている千里を宥め
ながら橘姫は声の主を探して周囲を見渡す。
霊感がまったく無い北斗は一人何が起こっているのか把握で
きず少し混乱をしていた。
「な、なんや?俺にはなんにも聞こえへんけど・・・」
その時ふと足元に小さな重みが掛かった。怪訝に思い足元を
見るが何も無い・・・しかし何かがオカシイ。
「あ。足元・・・」
その異変に気がついたのは千里だった。彼女が指差した北斗
の足元に全員の視線が集中した。
そこには・・・小さな童子が居た。

「おまえがメールを送った本人か?」
幸弘は童子に向かって冷静に声をかけた。
『そう。名前は訳あって教えられないけれどね。』
しかしその姿はどう見ても『氏神』の様であった。
その姿が見えていない北斗は自分の足元を凝視したまま動け
ないでいた。少し混乱気味だ。
溜息を吐きつつも真相を追究すべく、『彼』に答えを求めた。
童子の話によれば、彼はただ自分を助けてくれる助力者を求
めていただけだという。その念波が携帯のメール電波に入り
込んでしまったらしく今回の騒動に発展したようだ。
そしてそのメールをたまたま受信した人間が噂として広め、
挙句の果てには『呪い』という事になってしまったらしい。
噂の真実を知った彼らは一気に脱力した。
「・・・なんだかなぁ・・・」
『呪い?私はただ、助けてくれますか、って聞いただけなの
に?』
そういった言葉に嘘は無い様で、『彼』からは一切の邪気は
感じられない。どちらかというと神聖な感を受ける。
「じゃぁ!じゃぁ!死なないの?!」
千里は怯えていた事も忘れ童子に詰め寄って確認した。
『私は助けて欲しいだけ。私には人を殺す力は無いよ?』
「で?あたし達にどうして欲しいのかさっさと言え!」
イライラした紅臣は『彼』の胸倉を掴んだが、ふと『彼』が
笑いかけてきたので思わずその手を離した。
『私をあそこまで連れて行って欲しい。』
指差された方角を北斗以外の全員が見たが、これと言って目
に付くものは無く、あると言えば大きな交差点が・・・
「・・・もしかして交差点を渡るだけ・・・ですか?」
『そう。』
「それくらい一人で渡りやがれ!」
紅臣がもっともな事を言う。しかし『彼』は首を横に振った。
『自分の結界以外の場所にいると私は動けないのだ。』

交差点を渡り終え、『彼』を見送った後に一同に訪れたもの
は、達成感ではなく・・・虚脱感だった。
「人騒がせな氏神様だな。」
そう呟いた言葉に皆一斉に頷き反論するものはいなかった。
幸弘は彼女を安心させる為、千里は彼氏に安心して会う為、
それぞれ急いで帰っていった。
紅臣も怒りを通り越して呆れた顔で去っていった。
北斗は何が起こったのか知りたくて、一番人の良さそうに見
えた橘姫を捕まえて事情説明をさせていた。
何故『彼』が結界を越えてきたのかは謎のままだったが・・・

5人がそれぞれの帰途についた頃、彼らの携帯に一件のメー
ルが受信された。

『助けてくれてありがとう』



**

そして・・・
これ以降『呪いのメール』噂はピタリと止んだのだった。

**



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 0165 / 月見里・千里 /女/16/ 女子高生
 0262 / 鈴宮・北斗  /男/18/ 高校生
 0566 / 紅臣・緋生  /女/26/ タトゥアーチスト
 0720 / 橘姫・貫太  /男/19/『黒猫の寄り道』ウェイター兼・裏法術師
 0767 / 浅田・幸弘  /男/19/ 大学生
<整理番号順>

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

こんにちは、はじめまして。おかべたかゆき です。
参加していただき有難うございました。
最後はなんだかホラーでもなんでもない『オチ』になって
しまいまして…意表と言うよりも肩透かし食ったカンジに
なっちゃたかもしれません(汗)ホラーで戦闘系を期待さ
れた方いらっしゃいましたら申し訳ないです…(^_^;ゞ