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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


【 呪いのサイト 】
◆BBS
最近、ちょっとアンダーグラウンドなサイトで流れている噂があった。

『呪いをかけてくれるサイトがあるらしい。』
『サイトにアクセスすると呪われるサイトがあるらしい。』

内容はそんなよくある噂だった。
それ自体は珍しいものではない。
いつでもある噂の一つだ。
ところがこの噂にはオマケがあった。
今、ネット上では個人の人気サイトと呼ばれる、一日に何百もヒットするサイトのサイトオーナーが次々と謎の変死を遂げている事件が起きている。
その事件はみな「呪いのサイト」と関係あるというのだ。

オーナーたちの死は現実世界では特に事件性のあるものではなかった。
病死・事故死・自殺・・・
どれも警察が介入したりマスコミで騒ぎになるような事ではない。しかし、ネット上ではそれら全てが「呪いサイト」の噂でつながっている。

今、ネット上ではこの「呪いサイト事件」の噂で持ちきりなのだ。

しずくは自分のサイトのBBSに書き込みされた内容を見て眉をひそめていた。

「Happy Lucky Horoscope.」
最高にアタっちゃう占い★はっぴーらっきーほろすこーぷ
名前と生年月日だけで貴方の寿命までピタッと当たっちゃう★
お友達も誘ってぜひぜひ遊びに来てね!
携帯からでもアクセスOKだよ★

最初はよくある宣伝書き込みだと思った。
個人の掲示板に業者がよく無差別に書き込んでいくアレだ。
「失礼しちゃうなぁ、もう。」
そう思って削除してしまおうと思った。
その時ふと違和感を感じた。
「占いってフツー恋愛とかじゃないの?」
その宣伝文句から見ても女の子向けの可愛いサイトを連想するのに占い内容が寿命?
何となく、呪いのサイトの噂が頭に浮かんだ。
得体の知れない気味悪さが似ている。
念のため匿名プロキシを設定して、BBSに書かれているアドレスにアクセスしてみる。
アクセスしただけでは何も起こらない・・・
画面には可愛い女の子の絵と「データを入力してね☆」というメッセージが表示されている。
占いを申し込んでみようか・・・
たかが占い。されど・・・占い?

「誰か・・・確かめてくれないかなぁ?」

しずくは書き込みを削除することもできず、占いを申し込むこともできなかった・・・

◆変り種
室田充は「変り種」だった。
自分がゲイであることを自覚し、親しい友人にはそれをカミングアウトしている。
そして、有名な「ドラァグクィーン」でもあった。
昼間の凡庸とした営業部員の顔しか知らない者からは想像を絶するような生活に生きている男だった。
だから「変り種」であると言うわけではない。
人の生活は人の数だけ形があるものだ。
室田の「変わっている」処はそんなことではなかった。

◆占いサイト
仕事を終えてくたびれて家に帰り着いた室田は、上着を脱ぎながらマシンを立ち上げた。
そして部屋着に着替えると、そそくさとマシンの前に座る。
部屋着は品の良いシルクのパジャマ。つやつやとした光沢としなやかなドレープが何となく気持ちを浮き立たせてくれる。
そして、アンジェラのサイトの更新を済ますと、小さなメモを取り出した。
そこには短いアドレスがメモされている。
今日は昼間立ち寄った「ゴーストネットOFF」で雫が気にしていた占いサイトだった。
「こんなの信じてるなんて、雫ちゃんもか〜わいいんだからっ♪」
タカタカッと軽くアドレスを打ち込む。
当然準備に抜かりはない。匿名性の高いプロキシも用意したし、接続も無料プロバイダに偽名で登録してある「隠れ蓑装備」だ。
「たかが占い。そんなのはチェーンメールと一緒。信じるものは掬われちゃうってね。」
アドレスを入力し終わって、画面に現れたのはなんとも可愛い少女趣味なトップページだった。
『Happy Lucky Horoscopeへ、ようこそ♪』
ピンクを主体としたそのサイトは如何にも女の子向けの・・・呪いなんてオドロオドロしいモノとは無関係のようだった。
室田はサイトのソースを表示する。
ざっと見たところ怪しい処はない。
「あれ?占いもただのCGI?オリジナルみたいだけど・・・これって生年月日とか入力するとテキトーに文章を打ち出すだけのものじゃないか。」
サイト自体は手が込んだものではない。
ただ、入力された情報が何処かへ飛ばされるようになっているようだ。
「じゃあ、この先を探れば大元にたどり着くって寸法♪」
そのぐらいの事は室田には簡単にできた。
伊達にアングラサイトをうろついているわけではない。
室田は情報を追跡するべく、囮としてデタラメな名前と生年月日を入力した。
「呪詛に必要なのは「本名」と「本当の生年月日」らしいから、これなら何もできないでしょ。」
そう言って、タンッと軽くEnterキーを押した。

◆Little Hacker Alice.
『甘いわよ、お兄さん。』
マシンと接続されているスピーカーが少女の声を吐き出したのは、室田がEnterキーを叩いたのとほぼ同時だった。
「な、なんだ!?」
『匿名プロキシねぇ。まぁ、ちょっと考えたみたいだけど、まだまだ素人だわ。』
少女の声は響きつづける。
どうなったのかと焦る室田は必死にキーを打ちつづけるが、マシンは何の反応もしない。
「乗っ取られた?・・・まさか!?」
事前に予想されていた以上の事態に室田は顔色を失う。
『こんなの乗っ取ったウチにも入らないわ。もう少し楽しませてちょうだい。』
「で、電源!」
こうなったら電源コードごと引き抜こうと、立ち上がった瞬間。
『電源抜いたら、お兄さんのマシンをぶっ壊してやるわよ。』
「あら〜・・・」
なんだか成す術もなく室田はそのまま立ち尽くす。
画面はチャカチャカせわしなく文字や写真を映し出しつづける。
そしてそのうち色々なモザイクが合わさるようにしてノイズが走ったかと思うと、一人の少女の姿を作り上げた。
『こんばんは。私はアリス。電脳の国の住人よ。』
クスクスと笑いながらアリスが言う。
それにあわせて画像の少女もクスクス笑う。
「そして僕がスリープウォーカー。よろしくね。」
「うわぁっ!」
水に耳元で囁かれ、室田はその場から飛びのいた。
振り返ると室田が立っていた場所の後ろに、いつの間にか青年が立っている。
自分より若いだろう青年はニコニコと笑って室田を見ている。
「どうして此処が?いや、どうして、どうやって部屋に!?」
室田はパニックになりそうになりながらもスリープウォーかに問い掛ける。
『簡単よ。私が彼にネットを使ってたどり着いた貴方の居場所を教えたの。』
アリスと名乗った少女がそんなことも分からないのかといった皮肉な響きをこめて言う。
「そして僕はこの世界の何処へでも行くことができるから、ここへ来ただけ。」
スリープウォーカーは笑みを崩さずに言う。
笑顔は崩さないが、それがかえって不気味だった。
感情を読み取らせない為の仮面のように見える。
「ぼ、僕を殺しに来たのか!?」
さっきから室田の頭の中に警報が響き渡っている。
呪いのサイト
次々と死を遂げるサイトオーナー達
呪いのサイトと関係があるらしい怪しい二人・・・
自分のBBSに書き込まれた占いサイトを見に行った人たちが、こうやって犠牲者になっているのだろう。
ハッカーだと言うアリスが情報を集め、スリープウォーカーと言う青年が呪詛をかけて・・・
「占いはなんて出ている?」
スリープウォーカーがアリスに尋ねる。
『なんだったかしら?分からないわ。どうせデタラメなんだものなんだっていいじゃない。』
「そうかぁ・・・」
スリープウォーカーはそれを聞いてしばし思案する。
「じゃぁ、僕が特別に占いをしてあげよう。僕の占いは「本物」だからね。」

◆たかが占い、されど占い
そして、スリープウォーカーはゆったりと優雅な手つきで印を切り、口の中で呪の言葉を小さく呟いた。

ビキビキビキビキッ!

物凄い力で何かが引き裂かれる音がして、大きなコンクリートの塊が室田の目の前に落下した!
「ひゃあぁっ!」
直撃していたら室田の命は確実になかった。
少し間の抜けた悲鳴をあげながら室田はその場で固まった。
今度は殺される・・・!
そう覚悟したとき
「あらら。貴方は一生に一度のラッキーデーです。命拾いをしました。」
残念そうにスリープウォーカーが言った。
「なんだかねぇ、キミは殺しづらいねぇ。僕と同じ異端の匂いがするよ。」
「い、異端・・・?」
「うん、他の人間とはどこか違う匂いだ。でも、僕とは正反対。キミのは「癒」僕のは「滅」・・・と、言うわけで今日は何もしないで帰ってあげるよ。」
スリープウォーカーはゆっくりと両手を広げ、そこに大きな鏡を作り出す。
「でも、2度目はないからね。」
そして、すぅっとその鏡の中に入り込んだ。
スリープウォーカーの足の先が鏡の中に飲み込まれるのと同時に、まるでスイッチが切れたTV画面のように鏡は掻き消えてしまった。
『今回だけはスリープウォーカーの占いに免じて許してあげるわ!貴方の「のほほん光線」がモニター越しにまで影響するのをラッキーだと思いなさいよ!』
モニターの中の少女もそう言うとプツンッと消えてしまった。
室田は慌てて駆け寄り、マシンをいじってみるが普段の通り何一つ変わらず正常に動いている・・・
「なんだったんだ・・・」
室田はがっくりとその場に座り込んでしまった。

◆癒しの効果
アリスが言っていた「のほほん光線」こそが室田が変り種である所以だった。
室田は側にいることだけで癒し効果を発揮できる本当の「癒し系人間」なのだった。
彼には特別な超能力も呪術やオカルティックな技術もなかったが、これだけは天性の才として、周りの人間を癒すのみならず彼を守りつづけてきたのだ。
何かを攻撃する能力を身につけた人間は多いが、守る能力と言うのは室田のように生まれついて持つ以外にはなかなか持てるものではない。
そんな自分の能力に室田は気がついてはいたが、こんな風にはっきりと現れたことはなかった。
「これも親に感謝するべきなのかな・・・」
誰かへの感謝が先に立つ。
こんなところも彼がこういう能力を持つ資質なのかもしれない。

「しかし・・・」
明日、雫にどうやって事の次第を説明しようかと思いつつ、穴のあいた天井を見上げた。
「管理人にコレの言い訳も考えなくちゃいけないな。」
ラッキーデーとは言われたものの、こうなると実感の薄い室田なのであった。

The End ?
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0076 / 室田・充 / 男 / 29 / サラリーマン

0758 / 蒼野・夢美 / 女 / 170 / 魔法使い
0487 / 慧蓮・エーリエル / 女 / 500 / 旅行者(兼宝飾デザイナー)

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■         ライター通信          ■
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こんにちは、初めまして。
今回は私の依頼をお受けいただき、ありがとうございました。
自分と同じ名前のPCはなかなか書いていて楽しかったです。
その所為?と言うわけでもないのですが、今回の室田君はかなりラッキーな展開でした。
今回の話は全員が別の場所で話を展開しているので、他の方のお話も読んでいただけると違った角度から見れるかと思います。
室田君のラッキーぶりもちょっと増すかも知れません。

それではまた何処かでお会いしましょう。
お疲れ様でした。