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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ヴァンパイア・パレード

都内某所にて、吸血鬼が出没するらしい。
それによると思われる若い女性の神隠し事件(警察はあくまで、連続女性誘拐事件として捜査しているらしいが)が、現実として起こっている。すでに5人以上の女性が消えているらしいが、被害状況も確認できていないのが現状である。
詳しいことは特定できない。あまりにも情報が少なすぎる。それに、それが真実かどうかも判らない。
しかし放っておけば被害は広がるばかりである。

 草間興信所でその話を聞いた月見里千里とミラルカ・エイン。
 ミラルカはこの仕事を受けるかどうかじっくり考えようと思っていたが。
「これって囮捜査だよね?若い女の子だったらあたしにぴったりだし、やらせていただきま〜す☆」
「な!」
「だ〜いじょうぶ大丈夫!ようはその辺で歩いて吸血鬼をとっ捕まえりゃいいんでしょ☆簡単簡単、楽勝楽勝☆」
 彼女の自信は、一体どこから来るのだろうか…。
 そんなこんな言って、彼女は事務所を出た。
「ま、待たぬかこのお調子者!」
 まあ、叫んだところで聞くわけもないか…。そう思いミラルカは、千里を追った。

「また女がターゲットかよ!」
 七森恭一は頭を抱えた。
 彼がこの手の、吸血鬼事件に出くわしたのは最初ではない。これで3回目だ。
 しかも今回は最初の事件と同様の、若い女性を標的にした事件だ。
 つまり、彼の溺愛する妹・沙耶がターゲットにされる可能性もある、ということである。
 とりあえず、休日でお休み中の征城大悟を携帯電話で呼び出して、事情を説明する。
「オンナが失踪…ッスか。何とも言えないッスね。貴重な世界の人口の半分を減らすなよ…っつうか俺に回せって感じで…」
「んなこと言ってる場合じゃねえだろ!」
 でも、大悟の言っていることはある意味真理かもしれない。
 元々、出生率は、僅かにだが男性のほうが多い。つまり、多少の男性はあぶれてしまうわけである。
 それなのにこれ以上女性が減ったら、あぶれる男性は増えるだろう。
 もっとも、妹のことで頭が一杯一杯の兄馬鹿一代男・恭一にそんなこと言っても通じそうにないが。

 矢塚朱姫は、渋谷の街を歩いていた。
 吸血鬼事件の現場が何処か判らないため、適当に都内をぶらついているのだ。
 そう、彼女も独自にこの調査を始めていたのである。
 そして、それをこっそり追う人物もいたりした。
 神坐生守矢である。
 彼は、朱姫を守るため、こっそり彼女をつけていた。とりあえず、現時点では気付かれていない。
 まあこの休日の渋谷の人込みで、気付けたら気付けたですごいのだが。

「また吸血鬼か。病気が如く死を蔓延させることしか出来ぬ邪業の徒…駆逐してくれよう」
 ロゼ・クロイツも、原宿の街を歩きながら、思案していた。
 このところ、東京において吸血鬼の出現が明らかに増えている。
 その黒幕について僅かながら手がかりは掴んでいるが、確かなものではない。
 僅かな時間、黒幕と、パソコンのディスプレイ越しに対峙しただけだ。
 今回の事件も奴絡みなのかどうかは判らないが、確認しなくてはならない。
 神の名の元に、奴を滅するため。

 大塚忍は、裏情報で掴んだ現場の付近にいた。
「さてと、どうしようかしら」
 忍は自分を『若い女性』としては認識していない。
 そのため、自分が吸血鬼に襲われるなどとは考えていない。だから、思案に明け暮れた。
 そこに、若い女性が通りかかる。千里である。
 彼女を囮にして、どうにか引き付けられないか、と忍は考えた。
「ちょっと、そこのあなた。ちょっといいかしら」
「はい?」
「吸血鬼の噂は、知ってるかしら」
「知ってますよ?だから囮捜査してとっ捕まえるんです」
 何で正直に言えるんだろうか。
 これも彼女の過剰自信の表れか。
「私、こういう者なんだけど」
 そう言って忍は千里に名刺を渡した。
「雑誌の、ルポライターさん?」
「そう。それで、今回の事件が、いいネタになると思ってね。少し危険になるかもしれないけど、吸血鬼を引き付けてくれないかしら。もちろんタダでとは言わないわ。ある程度のバイト代は出すわよ」
「本当ですか!?」
 目を輝かせる千里。
「このお調子者!金につられて自分の身を危険に晒すとはどういうつもりだ!」
 何処かに隠れていたミラルカが、いい加減我慢しかけたのか、飛び出した!
「え〜大丈夫大丈夫。もしもの時は逃げればいいわけだし。お金余分にもらえるし」
 だからその妙な自信はどこから来る物なのだろうか。

 その頃、朱姫も、その現場に近付きつつあった(場所がわかってないので全く気付いていないが)。
 そして、漫才コンビ…もとい恭一と大悟も。
 ちなみに二人は、暴走族時代の仲間や、その頃多少(多少?)お世話になった交通課の警察官などからの情報からこの辺で事件が起きているということを掴んでいた。
「また、あの吸血鬼が絡んでいるに違いないんだ」
 裏情報をかき集めた結果、吸血鬼の親玉は『リリス』ということが判っている。
 詳細はやはり不明だが、この『原初の吸血鬼』が一連の事件を引き起こしている、ということらしい。
 ふと、二人の目に朱姫が飛び込んできた。
「おい…あの子どう思う?」
「え?かわいいッスね」
 …ばきぃっ!
「っつ〜何するんッスか!痛いじゃないッスか!」
「そういう問題じゃねえだろ!…この状況で歩いているとなると、囮捜査でもしてるのか?」
「でも、何も知らないかも知れないッスよね」
 結局、二人はとりあえず朱姫に話し掛けた。
「ちょっと君、いいかな?」
「はい?」
 次の瞬間、恭一は頭に激痛を感じた。
 守矢の(かなり本気の)蹴りがクリーンヒットしたからである。
「いてえ…」
 流石の元暴走族総長も、後ろから頭に飛び蹴りをくらってはタダじゃすまない。
「あ、吸血鬼じゃなかったんですか。すみませんでした」
「すみませんで済むかコラァ!」
「ひいいいっ、恭一さん落ち着くッスよ!」
 あ、ボケとツッコミが逆転してる(そこか問題は)。
「もしかして、ずっと追いかけてきたのか…」
 そりゃあもう、ストーカーもびっくりなぐらいの追跡ぶりでしたよ。
 そんなこんなで微笑ましい状況を引き裂くかのごとく、悲鳴が。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
 女性が何処かへと走り去ろうとしていた。
「どうしたのだろう」
「まさか、吸血鬼が出たんじゃ…」
 それを何人もの男が追いかける。
「げ」
「アレ全部、吸血鬼…?」
 それを追いかける女性が一人。ロゼである。
「おいロゼ!どうなってんだよ、これ!」
「どうしたもこうしたも、あの女を襲い、食おうとした。状況はそれだけだ。…追うぞ!」

 女性の悲鳴は、千里、ミラルカ、忍にも聞こえていた。
「お出まし、って訳ね」
「よおし!やっつけなきゃ、だね!」
 女性は三人のいるほうに向かってきた。彼女を逃がすと、吸血鬼集団を追ってきたロゼ、恭一、大悟、朱姫、守矢が逃げ道を塞いでいるため、吸血鬼たちも万事休す…かと思われた。
 しかし、吸血鬼の一人が、翼を広げ、宙に飛ぶ。
 どうやら彼には、理性があるらしい。
「貴様、何者だ」
「ほほほ、私ですか?私はベリル。リリス様の第一の僕です。…あなたたちのような存在のことはリリス様から聞いております。人間のくせに異常な力を持つ者。リリス様の僕を何匹か倒した者もいるらしいですが、私はそう簡単には倒せませんよ?」
 さらに飛ぶと、ベリルと名乗ったその吸血鬼は、空中から強烈な衝撃波を放った。
「…そこそこにはできるようだな」
 そう言ってロゼは聖水をかけようとした。
 同時に、大悟がパチンコ弾をいくつも放ち、恭一の雷撃がベリルを襲う!
 さらには、ミラルカと守矢が高く跳躍し、吸血鬼に斬りかかった!
「まったく…」
 しかし、謎の見えない壁により、攻撃は全て阻まれてしまった。
「只の吸血鬼とは、格が違いますよ。人間に私は倒せません」
 そう言ってベリルは、ほほほ、と、またしても気味の悪い声で笑った。
 しかし、次の瞬間、その首が、胴と離れた。
「な!?」
 離れたはずの首の眼が、見開かれる。
「ピリポ…!?」
 死神の鎌を思わせる大鎌を持った美しい容貌の青年を、ベリルの瞳は見据えていた。
「…リリスはどこですか?」
「し、知らない」
「ならば用はありません。死になさい」
 ピリポと呼ばれた青年は、ベリルの頭を…踏みつけ、潰した。
 そして頭も肉体も、他の吸血鬼も、砂塵となった。
「お手数かけましたね」
 フッ、と笑うと、ピリポはどこかへと去ろうとした。
「…あんた、何者だ」
 恭一のその問いにピリポは微笑を浮かべ、答えた。
「吸血鬼狩人(ヴァンパイア・ハンター)集団『十二使徒』の一人です」
 そして、一瞬にして姿を消した。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0165/月見里千里/女/16/女子高校生
0423/ロゼ・クロイツ/女/2/元・悪魔払い師の助手
0463/七森恭一/男/23/会社員
0550/矢塚朱姫/女/17/高校生
0564/神坐生守矢/男/23/花屋
0662/征城大悟/男/23/長距離トラック運転手
0736/ミラルカ・エイン/女/17/クルガ族の侍
0795/大塚忍/女/25/怪奇雑誌のルポライター
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■         ライター通信          ■
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いやー、ここまで多い人数を一話でやるのはきついかな?と思いましたけど、どうにか収まってくれました。
どうも、蒼華珠璃です。毎度ありがとうございます。
しかし、またしても謎が謎を呼ぶ展開に。
『十二使徒』…我ながらネーミングセンスが皆無であると認めざるを得ませんなっ。
しかも全員覚えてなかったりします。あれ?確かこれでも倫理は成績オール5だったはず(笑)。
倫理の他には政治経済とか日本史とか世界史とか現代文とか漢文とか得意です。
全部文系な辺りが泣けてきますな。
理系はほぼ全滅。数学なんて、40点以上の点数、小学校以来一度もないし(わー)。
では、今回はこの辺で。
ファンレターとかくだされば、必ずお返事いたします。