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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:哀しき亡霊
------<オープニング>--------------------------------------
「テレビを見るのが、とても怖いんです」
 依頼人の女性は、すこぶる怯えた表情で声までも震わせながら武彦に告げた。
 テレビを見るのが怖い。これは依頼人が、何らかの病気を抱えているからなのだろうかと、一瞬疑ってしまうほどだった。
「普通のテレビですよね? 何が原因か分かりますか?」
「原因も何も、私には一切関係ありません! なのに、よりによって私の家のテレビに限って……」
 依頼人の女性はパニックになり、いよいよ泣き出してしまった。
 よほど恐ろしい映像なのだろうか。そうとしか考えられない。
「詳しい内容を教えてもらえますか? おおよそで宜しいので」
「……電源を切っても、コンセントからコードを外しても、その画像はテレビに映ったままなんです」
 これには流石の武彦も驚きを隠せない。こんな奇怪な現象は、聞いたこともなかったからだ。
「なるほど、これは実地調査が必要ですね。とにかく、早急にご訪問致しますので」
「何卒、宜しくお願い致します……」
 そして依頼主の女性は、早々に帰っていった。
「どうやら、難儀な調査になりそうだな……。優秀な助手が欲しいところだが……」
 呟く武彦。こういうケースは初めてなので、戸惑うばかりだ。
 そしてしばらくしてから。呼び鈴が鳴らされたのだった。

◎調査の行方
 ドアを開けると、そこには見覚えのある少女が立っていた。
 Tシャツにサスペンダーで吊したズボン姿という変わった格好をさせているアムリタを抱いている。
 紛れもない、神崎美桜(かんざき・みお)だった。
「おお、美桜さんかぁ。久しぶりだねぇ」
「うふふ、お元気ですか、草間さん」
 ニコニコと笑いながら、美桜はアムリタに頬擦りしている。阿弥陀如来の眷属である守護神アムリタは、こうして美桜の手に一匹大事に可愛がられていた。
「あのですねぇ、アムリタっていう名前は長いので、アムタっていう名前にしたんですよ。そうしたらこの子、とっても喜んで!」
「そうだったのか、それはよかった。神の守護がありますように……」
と、武彦は祈るように合掌した。
「ん? それはそうと、今日はどうしたんだい?」
「いつものことですよ。興信所のお手伝いに来たんです。なにか、お手伝いできることはありませんか?」
「ああ、いまから調査をしに行くところなんだ。ちょっと厄介な依頼なんだが、恐らく危険はないと思う。行ってみるかい?」
「はい! 是非連れて行って下さい!」
 それから武彦は、奥の部屋から結界鞭を取り出してきた。新生・結界策を改名して、呼びやすい名にしたのである。
 これも万が一の道具。これを使わないことを祈るばかりだ。
「さて、行くとするか」
「はい!」
 二人は外へ出て、750ccのバイクに二人乗りし、一路、依頼主の女性の家へと急ぐのだった。

 依頼主の女性の家は、6棟ある賃貸マンションの一階の手前の家。そしてすぐに出迎えたのは、その依頼主の女性だった。
「ああ、来てくれたんですね。本当に助かります」
「大丈夫ですよ、私と草間さんで、すぐに解決ですから」
と、張り切って言う。
 それにしても、この美桜の自信はどこからくるのだろうか。アムタを身につける前から、積極的なのは分かっているのだが、やはり天性のものかも知れない。
 それから二人は、依頼人の女性の家に案内されて中へと促された。
「ここのテレビは何ともありませんね」
「いえ、問題なのは奥の部屋のテレビなんです。ああ、もう背筋が凍り付きそうです……」
 二人はその問題のテレビの部屋へと行ってみた。
 するとどうだ。電源のコンセントも主電源も全部切ってあると言うのに、動画が映っている。
 男と女、互いに口論しあい、女が隙を見せたところで男は女を殴り、挙げ句の果てには首を絞めて殺していってしまう、という内容だった。
 この情景には、二人とも流石に背筋が寒くなった。依頼人の女性によれば、このマンションには衛星放送やケーブルテレビは引かれていないという。だとすれば、これはなんだというのだろう。
「私、テレビさんに問いかけてみます」
「ああ。でも無茶はするな」
「ええ」
 そして、美桜の特殊能力が威力を発揮したところで、ある一人の名前が浮き出てきたようだ。
「栗川という人の名前が出てきました。お心当たりはありますか?」
「え? 栗川ですか? ああ、二階に住んでいる方ですが、それが何か」
「怪しさ一杯だな。その栗川という人は二階のどの部屋に?」
 聞いて二人は、栗川の家を訪れた。しかし、ドアノブをまわしてもベルを鳴らしても、本人は出てこない。仕事に出ているのだとしたら、まだ黄昏時には早すぎる。
「まさか居留守か?」
「いえ、在宅はしていませんよ。ドアさんに聞いてみましたから」
「すると、今度あたるところと言えば、大家さんくらいしかないか。詳しい話が聞けるかも知れない」
 依頼人の女性によると、大家の家はすぐ隣ということで、しかも丁度良いところに大家がでてきたので、話を聞くことが出来そうだ。
 美桜が率先して聞き込みをする。ここは美桜に色々とやらせてみたほうがよさそうだ。
「あの、すみませんが。栗川さんのことで少々お聞きしたいのですが」
「栗川さん? ああ、あの人か。二階に住んでおるが」
「その前はどこに住んでいましたか?」
「一階の手前の部屋だったがね。急に二階に住みたいと言って来たもんで、ビックリしたもんだったが」
 その後、大家は用事があったようで出かけてしまった。
 何となくだが、形が見えてきた。
 もし、あの映像に映っている男が栗川だとしたら、恐ろしい事件を引き起こしていると言うことになる。
 だが、まだ確証がない。せめて、何らかの手がかりになるものさえあればいいのだが。
 そんなときだ。
「きゃあ!」
 依頼主の女性の家から、悲鳴が聞こえた。二人はすぐさま駆けつける。

◎真実
 家に入ってから、武彦も美桜も、居間に入ってからそのまま釘付けになってしまった。
 奥のテレビの映像そのままが、この場に場所を移してきたのである。
 男と女が口論し、女が隙を見せた途端に男は女を殴り、そのまま首を絞めて殺してしまう。
 今回ばかりは、テレビで見たループはない。たった一度きりの演出だった。
「これは、思念体? 草間さん」
「そうかも知れないが、俺には何とも言えない。思念体の一種とも考えたいが……」
 思念体とは、意識の残像が実像として映るもので、幽霊とは一線を画す。生霊とも勘違いされるが、正確にはこの世に強い未練がある場合に出てくるものだ。
 依頼人の女性は、もう呆けた状態で開く口もないといった風。よほどショックだったのだろう。
「大丈夫ですか? 俺の方で御札をテレビに貼り付けておきます。これでもう、悪夢からは解放されると思いますので」
「あ、はい、ありがとうございます……」
「それとですが、この家には、あなたが入られる前に栗川さんが入っていたそうですよ。恐らく彼はこの家で取り返しの付かないことをした。だからいたたまれなくなって、二階に引っ越したことも考えられます」
「そ、そうだったんですか……」
 すると美桜のアムタが、ピョンと飛び出して、あちこちの匂いを探っている。どうやら守護神は鼻も利くらしい。
「ええ? 死体の臭いがする?! 草間さん、アムタが死体の臭いがすると」
「だろうな。殺された女性は、この家のどこかにあるはずだ。見つけ出してやらないと、成仏出来ずに今回のようなダイイングメッセージがまた起こることになる」
 武彦の推理では、この奇妙な現象は、殺された女性が発したものと考えるのが妥当だった。
 彼女はまだ成仏していない。だからこそ、この家の住人に、自分が殺されたという真実を訴えたかったのだろう。
 なんという悲劇。あとは警察に届けて、その後の始末を任せるべきだ。
「ありがとうございます。これで、少しは気が楽になると思います……」
「それはよかった。今後は警察に任せて、事の成り行きを見届けて下さい。そして彼女の遺体が出てきたら、成仏するようにと祈ってあげて下さい」
「大丈夫ですよ。あなたにもアムタの守護がありますように……」
 こうして二人は、10万円のお礼を貰って、興信所へと帰って行くのだった。


「それにしても、今回は美桜さんにお株を取られてばかりだったなぁ」
「うふふ。だって、私こういう事には興味あるんですもん。だから興信所にもお手伝いに来てるんですよ」
「だが、危険なこともある。十分注意しないとな。アムタがいるから、心配ないと思うが」
 興信所に帰ってきた二人は、今回のことについて、色々と話し合った。
 聞き込みなどは、率先して行った美桜だった。その推理力も、前から見ると大分鍛えられて居るようにも見える。今回は、武彦顔負けだった。
「あ、そうだ。今日は私の家に来て食事にしませんか? 美味しいレパートリーができたんですよ」
「そうなのか? ははは、じゃあ、世話になろうかな?」
 こうして奇妙な事件は、美桜中心の活躍で解決への道を進み始めたのだった。

                           FIN

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0413 神崎・美桜(かんざき・みお) 女 17歳 高校生
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■         ライター通信          ■
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○神崎さん、3度目の御登場、ありがとうございます。
○現在、当方では少数精鋭のPCにて小説を書いておりますので、
入れなかったPCさんに関しましては、大変ご迷惑をおかけしました。
ここにお詫び申し上げます。
○このお話ですが、実際に会ったことを元にして書いております。
外国でのことですが、それをアレンジして私なりに小説としました。
○では、また色々な方と出会えるのを祈りながら。失礼致します。

                     夢 羅 武 市 より