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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


悪夢を見る薬

〜序章〜

「本当なのかしらねえ・・・」
ひらひらと、薄いブルーの紙を指先で弄びながら、碇麗華は小さくため息をついた。
「ど、どうしたんですか、編集長?」
「・・・原稿は?」
ちらり、と冷たい視線を三下に向け、麗華は片手を差し出した。
「これは終わりました!」
「じゃあ、次はこれ」
「も、もう次ですか・・・」
「文句あるの?」
「い、いえ、そうじゃないんですけど、少しくらい・・・」
「なあに?聞こえないわよ?」
「何でもありません・・・」
半分泣きそうになりながら、三下はしゅんとして、麗華の手からそのブルーの紙を受け取った。
「投書、ですか」
「そう。結構、興味深いことが書いてあるわ・・・事実だったらね」
「えーっと」
三下は、めがねの位置を直しながら、文面に目を通した。
「悪夢を見る薬?そんなものが売ってるんですかー、へえー」
「見たい人間がいるのも、驚きではあるわね。まあ、いろいろと余っているお金持ちの、道楽に使われるんでしょうけど」
麗華は、あきれたように、椅子に寄りかかった。
便箋から顔を上げ、三下は麗華を見る。
「ということは・・・」
「そう。次のネタはそれ。悪夢を見る薬が売っている場所を調べて、試してみてちょうだい。もちろん、いつものように、誰かに協力してもらってもいいわ――――実験台としてでもいいし」
「そ、それは・・・」
さすがの三下も、うーん、と呻いた。
「この投書の主は、試したようですけど、どうだったのかは書いてないんですね」
「そうなのよ。でも、それでひとつだけ確実に分かったことがあるわ」
麗華は、不敵に笑った。
「――――試しても、死にはしないってことがね・・・じゃあ、頼んだわよ」

〜最初の手がかり〜

とぼとぼと、三下は白王社を出て、駅に向かって歩き出した。
まずは、どうやって手がかりをつかむかを考えなくてはいけない。
「うーーーーーん・・・」
「三下さん、どうしたんですかっ?」
「うわっ!!」
いきなり横からひょこっと顔を出されて、三下は本気で、三歩くらい飛びすさった。
そこには、満面の笑みで立つ、湖影龍之助の姿があった。
高校生にしてはかなり高めの身長だが、愛くるしい雰囲気が印象的である。
「さっき、難しい顔をして、白王社から出て来たから、また編集長に無理難題をふっかけられたのかなって思って」
人なつこい笑顔のまま、龍之助は三下の手の中にある手紙を覗き込んだ。
「今回の調査は、それですかー?」
「ああああああ、これはー」
どれどれ、と龍之助は中身を見る。
「・・・悪夢を見る薬?そんなものがあるんだー」
「あるかどうかは分からないんですよ・・・」
「え?じゃあ、探すところから?」
「そうなんです・・・もうどうやって探したらいいのか・・・」
とても、月刊アトラスの編集部にいる人間とは思えない台詞を、三下は吐く。
龍之助は、嬉しそうに三下に笑いかけた。
「あ、これ、住所が書いてありますよ」
「え・・・」
封筒の裏に、丁寧に住所が書いてある。そして、名前も。
「まずこの人に会いに行きましょうか?俺、一緒に行ってもいいっスよね?!」
とてもではないが、龍之助の「お願い」は断れそうにない。
好意以上の何かを、彼に感じることが普通の人には可能なのに、全然気付かない三下ではあったが、思わず「はい」と頷いていた。
「やったああ!!俺、ガンバろっと!!」
「何を?」と訊きたくなるところを、またして気付かない三下は、龍之助と仲良く、駅に向かってまた歩き出した。

「この辺・・・かなあ」
手紙の住所の辺りにたどり着き、龍之助は周りを見回した。
該当する住所には、確かに一軒の家がある。
しかし、表札もなく、人がいる気配もない。
「あれ?おかしいなあ」
龍之助が、インターホンを押しても、誰も出て来る様子がない。
その時だった。
「その家には誰も住んでないよ」
後ろから、男性の声がかけられた。
振り返る二人の目に、犬の散歩の途中といった感じの、中年の男性が映る。
「その家の人たちはな、一週間くらい前に引っ越したよ」
「どうしてですか?!」
「何でも、下の女の子の親友が、変な薬を飲んで死んだとかいう噂でな、その子がその薬をその親友にあげたとかで問題になったようなことを、ちらっと近所の人から聞いたよ」
「変な薬・・・?」
「俺もよく分かんないがね。それじゃ」
男性は、さっさと話を切り上げて去って行った。
「ねえ、三下さん、変な薬って・・・」
「そうかも知れません・・・」
二人は改めて、その薄いブルーの便箋に目を落とした。
『悪夢を見る薬というものが、最近流行っています。ものすごい効果があります。試してみて下さい』
たったそれだけの、ある意味、無責任な文章である。
確かに、子供が書いたものだということが窺える。
「でも編集長は『死なない』って言ってたのに・・・」
泣きそうな顔をする三下に、龍之助は一生懸命、励ましの言葉をかけた。
「大丈夫っスよ!!試す時は、俺が試しますから!!」
「龍之助くん・・・でもそれは・・・」
「いいっス!三下さんのためなら、命なんて惜しくないっス!!」
・・・やっぱり何か不穏な空気を、龍之助から感じてしまう三下であった。
「じゃあ、次は、情報集めっスね」
「そうですねえ」
そう三下は答えたが、何かに気になるらしく、何度かため息をついていた。
それから、徐に後ろを振り返ると、どこにともなく、話しかけ始めた。
「・・・いや、だから、朱姫さん、一緒に来たいなら来たいって・・・」
「バレてしまってはしょうがないな」
「えええええ?!」
小道から出て来た少女を見て、龍之助はびっくりした。
「三下、いつから気付いていた?」
「・・・白王社の前からですよ」
「なら、何故もっと早く声をかけなかったんだ?」
「それは」
「三下さん、三下さんも、俺と二人っきりの時間を作りたかったんっスね!!」
「え、あ、あの」
「すっげー嬉しい!!そうか、そうだったのか!!」
「だから、龍之助くん」
「じゃ、この調査が終わったら、一緒に遊びに行きましょうねっ!!」
勝手に解釈して、勝手に話を進める龍之助に、またしても「ハイ」と答えてしまう三下であった。
「それにしても、変なモノが世の中にはあるものだな」
朱姫が、三下の手から便箋をさり気なく奪い取って、中身を見る。
「悪夢を見る薬か・・・面白そうだな、最後まで付き合うぞ、三下」
珍しくうきうきと答える朱姫に、三下ははああああ、と盛大なため息をもらした。
またしても、同行者獲得、である。
「書き手は、学生なんだろう?だったら、渋谷とかで手に入れた可能性が高いな」
「うんうん、そうだよなっ。学生の場合、結構遊び場とか、決まってくるし」
「じゃあ、渋谷に行きますか」
朱姫と龍之助の意見を元に、三人は渋谷に足を向けた。

場所は渋谷。
相変わらず、人、人、人のこの街に、一番うんざりしたのは、他ならぬ三下であった。
「ひ、人がいっぱい・・・」
「当たり前だろう?ここは渋谷なんだから」
「三下さんっ、俺が支えますよっ」
くらくらしている三下を、すかさず龍之助が支える。
朱姫は早速、ハチ公前の交差点をとことこと歩き出した。
センター街に足を踏み入れ、彼らはひとまず様子を見ることにした。
三下に一生懸命話しかけている龍之助をその場に残し、朱姫は、センター街を行き来する人の流れに乗って、歩き出した。
往復していれば、声をかけてくる者がいるかも知れない、そう思ったからである。
制服姿であれば尚のこと、ナンパ目当ての男たちから、がんがんお誘いの声がかかった。
しかし、朱姫はさっぱり興味がないらしく、ばっさばっさと切って捨てている。
その中で、ひとりだけ、奇妙な誘いをかけてきた者がいた。
「お嬢さん、自分の闇と向き合ってみませんか?」
「・・・なんだ、おまえは」
眉をしかめ、彼女は目の前に立った男を見上げた。
背は高い。
だが、その目は、サングラスの向こうに隠れて、全く見えず、底が知れなかった。
「こちらへお行きなさい。必ず、一回り大きな、自己の成長が見られるでしょう」
男は、有無を言わさず、朱姫の手に、カードを一枚押し付けて去って行った。
「・・・クラブか?『ラヴィ』?」
住所は六本木になっていた。
その裏に、「世の中すべてが悪夢で出来ている」という、不気味なキャッチフレーズが記されていた。
まさか、と朱姫は思った。
「どうかしたんですか、朱姫さん」
いつの間にか、三下が龍之助と共に、近くに来ていた。
「これ、もらったんだ」
「カードですか」
「裏に、気になることが書いてあるぞ?」
三人は、顔をつき合わせて、カードを覗き込んだ。
「行ってみよう、何かあるかも知れないしさ」
今度は龍之助が、三下を引っ張って、先に立つ。
次の目的地は、六本木である。

〜『ラヴィ』〜

『ラヴィ』は、大通りを右に外れた、小さな路地のつき当たりに入り口があった。
安っぽい装飾と、ネオンサインに、何だか禍々しいものを感じる。
十蔵が、その扉に手を掛けた時、突然、後ろから自分を呼ぶ声がした。
「おお、三下じゃねェか」
「陣内さん、どうしてここに?」
「おまえと同じ目的だ。『悪夢を見る薬』を試してみようってな」
「じゃ、じゃあ、編集部に行ったんですか?!」
「ああ、麗華に、ちゃんと報酬の交渉もして来た」
三下はショックのあまり、口をぱくぱくさせている。
「ぼ、僕の給料は下がる一方なのに〜〜〜〜」
「まあ、実績の差だな」
軽く流して、十蔵は、朱姫と龍之助に気付き、挨拶をした。
ふたりも、十蔵に、自己紹介を兼ねた挨拶をする。
「アシスタント付きか、三下。いい身分じゃねェか」
「アシスタントじゃないんですよ」
「俺は三下さんのためなら、何でもするっスよ!」
龍之助が違う意味での否定を始めようとしたので、慌てて三下は十蔵に話を振った。
「陣内さんも、ここに辿り着いたんですか?」
「ああ、いろいろ聞き込んでな。おまえたちはどういう経緯でここへ?」
朱姫がカードを十蔵に見せ、軽く説明をする。
「『悪夢を見る薬』が、実際にあるかどうかは、まだ分からないんだ。でも、変なヤツが、私にこれをくれたから、他に手がかりもないし、ここへ来てみようってことになったんだ」
「存在はするようだがな」
「えっ?」
三下、朱姫、龍之助の三人は、驚いて十蔵を見つめた。
「『悪夢を見る薬』を試したヤツがいたんだ。しかも、そいつは死んでる。タチの悪い薬だってことも判明した」
「実はこっちも・・・」
龍之助が、投書の主の話を十蔵にした。
「これを出した人じゃないんですけどね。こっちも死んでるんすよ」
「・・・少なくとも」
十蔵は、趣味の悪いドアを振り返った。
「この中に、真相は隠れてるかも知れねェってこったな」
みな、一様に頷く。
そして、四人は、その扉を開けた。

中は、普通のクラブのようだった。
だが、ひとつ違うのは、甘い甘い、不思議な香りが、濃厚に彼らを包み込んだということである。
「なんだ、これ・・・」
朱姫が敏感にその香気の怪しさを指摘した。
「あまり吸うんじゃねェぞ。これは、幻覚剤だからな」
既に三下は足がふらふらである。
懸命に、龍之助が三下を支えながら、十蔵の後をついてくる。
「お客様、当店は初めてでいらっしゃいますか?」
仮面で顔を隠した、黒服の男が、フロアの入り口で四人に声をかけた。
「ここは、五感を刺激するものは、どんなものでも揃います。本日は、どんなものがご入用でしょうか?」
「これ、もらったんだが」
朱姫は、さっき受け取ったカードを男に渡した。
すると、男はにやりと笑うと、別の方向を指し示した。
「では、あちらへどうぞ」
彼らは、抗う間もなく、個室へと通された。
そこには、二種類の、エジプト香水瓶のような華麗な瓶が並んでいた。
「世の中には、『悪夢』というものは、ふたつ存在するのです。さあ、どなたが試されますか?」
「おいおい、ちょっと待ってくれよ」
十蔵は、男にあきれたような声で訊いた。
「試すって、誰が言ったんだ?」
「お客様、当店では、お好きなものをご用意しております。他のものがよろしければ、他のお部屋にご案内させていただくまででございます。如何なさいますか?」
「要は、拒否権はねェってことか・・・」
十蔵は、肩をすくめた。
それから、青い瓶を取り上げると、ポン、と瓶の蓋を開けた。
「じ、陣内さんっ」
三下は我に返って、止めようとした。
「三下、ちゃんとレポートしろよ」
十蔵は、一気に中身をあおった。
全員が、固唾を飲んで、十蔵を見守る。
「・・・あれ?」
たっぷり10分経った後、龍之助は、ひらひらと十蔵の目の前で、手を振ってみた。
「・・・何ともねェ」
十蔵は、拍子抜けしたように、ソファに寄りかかった。
ほっとして、龍之助が赤い瓶を取った。
「じゃ、こっちは俺が!」
「あああああ、龍之助くんー」
三下の叫び声をよそに、龍之助も思い切り良く、ぐぐっと中身を飲み干した。
その瞬間。
パリーン!
龍之助の手から、瓶が落ちた。
ソファの背にぐったりともたれかかり、その目がどんよりとし始める。
「りゅ、龍之助くん!!」
「おい、大丈夫か?!」
ガタン、と三下と十蔵が、龍之助を揺さぶった。
しかし全く反応がない。
「おい、貴様!!」
十蔵がさっきの仮面の男を振り返った時、その個室の扉に、外から錠が下りる音がした。
「くっそ、閉じ込められた!」
十蔵がドアを調べ始める。
その間に、龍之助の意識は、薬の魔力に捕らえられていった。

〜悪夢〜

「・・・あれ?ここはどこだろう?」
龍之助は、暗い部屋の中にいた。
どうやらひとりのようである。
さっきまでいた、他の人たちは、どうしたのだろうか。
「三下さーん!!」
とりあえず、三下を呼んでみる。
すると、目の前に、ボーっとほの暗く、三下の姿が現れた。
「あ、三下さん、良かった!!俺、ひとりで置いていかれたかと・・・」
笑顔で駆け寄った龍之助を、三下は冷たく見返した。
「もう近寄らないで下さい」
「え・・・?」
「迷惑なんですよ、あなたの存在が」
吐き捨てるように、三下は言った。
「この世から消えてなくなって下さい!僕の視界に入らないで!」
「三、下さん・・・?」
龍之助が伸ばした手を、三下は荒々しく振り払った。
「二度と、僕の目に映らないようにしてしまいましょうね」
悪魔のような笑みを浮かべ、三下は龍之助の首に両手をかけた。
「さあ、あなたは、僕の手で、甘美な死を迎えるんですよ・・・」
「俺・・・」
龍之助は、ゆっくりと目を閉じた。
「俺、三下さんに殺されるなら、いいや・・・」
徐々に、首が絞まっていく。
呼吸が次第に細くなり、そして――――

「龍之助くん!!しっかりして下さい!!」
「おい、湖影!!」
朱姫と三下が必死で龍之助に呼びかける。
何もしていないのに、龍之助の口から漏れる息は、ひゅーひゅーと切ない音を出していた。
まるで、呼吸困難に陥っているかのように。
「おい、龍之助!!」
十蔵が、事の急変を悟り、扉を調べるのをやめて、龍之助の肩を揺さぶった。
「諦めるな!!おまえ自身の恐怖に、取り込まれるんじゃねェ!!」
がくがくと、首が折れそうになるくらい、十蔵は龍之助を揺する。
「まだおまえには、いくらでも未来がある!!ここで自分に打ち勝てねェで、この先何十年とどうするんだ?!しっかりしろ!!おまえには、いつでも助けてくれるヤツらがいるんだろ?!おい、龍之助!!」
「龍之助くん!!」
「湖影!!」
三人は声の限り、龍之助を呼んだ。
しかし、龍之助の息は細くなる一方である。
「三・・・下さ・・・ん・・・」
ふっと、ほとんど吐息の声で、龍之助は三下を呼んだ。
「俺・・・死んでも・・・いいっスよ・・・三下さんに・・・殺されるなら・・・」
「な・・・?!」
三下は愕然とした。
「龍之助くんはまさか・・・」
「三下に殺される夢を見ているようだな」
朱姫は、あっさりと三下に告げた。
「・・・それなら、三下が現実に、殺すフリをしたらいいんじゃないのか?」
いきなり、朱姫は言った。
「三下に殺されることが、湖影にとっての『悪夢』なら、それを『現実』にしてやれば、『悪夢』からは解放されるんじゃないか?」
「それも一理あるな」
十蔵も頷いた。
「三下、やってみろ」
「ええええ?!」
「四の五の言ってる場合じゃねェだろ?!」
「は、はい・・・」
十蔵に一喝され、渋々、三下は龍之助の首に手をかける。
「ご、ごめんなさいっ、龍之助くん!!」
三下にしては、ギリギリの力加減で、龍之助の首に圧力をかけたその瞬間。
「ごほっ、げほげほっごほごほごほっ!!」
「りゅ、龍之助くんっ!!」
「三、三下さんっ・・・・」
龍之助の目に、ぶわっと涙が浮かんだ。
「俺のこと、そんなふうに思ってたんだ・・・そうならそうと早く言ってくれればいいのに!!」
どかばきごす!!
凄まじい音がして、閉ざされていた扉が破壊され、龍之助は走り出て行った。
「あ、開いた・・・」
三下は呆然としながら、龍之助の背中を見送った。
首を捻りながら、朱姫はうーん、とうなった。
「何がどうなったら、三下に殺されることが、人生最大の悪夢になるんだろな・・・」
「『蓼食う虫も好きずき』って言うじゃねェか」
十蔵が、やれやれといった感じで、壊れたドアをまたぎ越える。
他に客はいないようだ。
それどころか、店員すらいない。
「逃げられちまったか」
ゴン、と壁を殴りつけ、十蔵はぎり、と店内を睨み回した。
「この薬が、世に出回るなんてのは、最悪だ。国家権力で、潰してもらうか」
「それが一番だと思います」
三下は、ため息をついて言った。
「今回はたまたま、陣内さんが解決策を見つけてくれたから、何とかなりましたけど、自分自身の心の恐怖から、完全に逃げ切れる人間なんて、ほんの一握りでしょうからね」
「ああ。じゃあ、俺は、通報してから事務所に戻る。おまえらも、遅くならねェ内に、戻れよ」
「ありがとうございました!」
十蔵は、背中越しに、片手を上げ、去って行った。
「さて、帰るか?」
朱姫は三下を見上げ、言った。
「それにしても、湖影の件は、何とかしないとマズイと思うぞ。大丈夫か、三下?」
「そ、そうですね・・・」
はあああ、と盛大なため息をついて、三下はうつむいた。
「遊園地で、我慢してくれますかね、龍之助くん・・・」
「まあ、頑張るんだな」
ぽんぽん、と軽く肩を叩き、朱姫はその部屋を出た。
三下も、続いてそこを出ようとし、何かにつまづいて、床を見た。
「そう言えば・・・」
床に屈んで、つまづいた原因を拾う。
それは、先程、十蔵が飲んだ薬の、青い空瓶であった。
「こっちはハズレだったのかな・・・」
まあ、証拠にはなるだろうと、三下はポケットにしまった。
それから、時計を見、また真っ青になる。
「ああああ、締め切りがああああ!」
「三下、行くぞ!!」
朱姫の声がし、三下は慌てて外へ出た。
原稿の締め切りまで、あと1時間、であった――――

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0218/湖影・龍之助 (こかげ・りゅうのすけ)/男/17/ 高校生 】
【0044/陣内・十蔵(じんない・じゅうぞう)/男/42/私立探偵 】
【0550/矢塚・朱姫(やつか・あきひ)/女/17/高校生】

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■         ライター通信          ■
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初めまして!ライターの藤沢麗(ふじさわ れい)と申します。
今回は、「悪夢を見る薬」へのご参加、ありがとうございました!
いかがでしたでしょうか?
頂いたプレイングを見て、かなり楽しみながら、執筆させて頂きました。
微妙に、個別に内容を変えております。
今回、矢塚朱姫さんが紅一点で、華を添えて頂けました。
ありがとうございました。

朱姫さんが、とっても賢い、純粋な女の子、という感じがしていて、少しでも、その感じが出せたらいいなあ、と思いましたが、いかがでしたか??
まだ、残念ながら、この事件、全く解決はしていないのですが、三下さんが締め切りに間に合っているといいですね(笑)。


今後、ますます精進していきますので、ぜひ、次回もご参加をお待ちしております。
この度は、ありがとうございました。