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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


fail-safe

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身長は190近く、髪も瞳も色素が薄く赤茶けてた一見する所、ヤン
キー風貌の青年が一人、公園のベンチで悩んでいた。
鋭い目つきで足元を見つめ只ならぬオーラを発している彼の半径10M
以内に近づく人間はいなかった。誰もかれも遠巻きにして、もちろん
視線もあわせないようにして避けて通っていた。

彼の名前は羽本(うもと)という。

その性格は見た目とは大違いで、真面目で素直で純粋。
今どきでは極めて珍しいタイプの『人間味』有る男である。
しかも、彼はこれまた見かけと違い和楽器全般を教える教室の師範で
もあった。
その彼が現在頭を抱えて悩んでいる事。
それは今から学校へと忘れ物を取りにいかなければ為らない、と言う
事だった。
最近小学校などでは和楽器を取り入れた授業を行ってる。彼も週一回
ではあるが、講師として学校へと足を運んでいる。
関係者なのだから、学校へ忘れ物を取りに行く事に何の問題も無い筈
である。
「アレ無いと明日困るんだよなぁ・・・」
溜息と共に時計を見ると6時30分をちょうど回った頃だった。
このまま素直に学校へ戻れば、7時くらいになるだろう。
「嫌だなぁ・・・」
彼を躊躇させている原因は、今日児童から聞いたお決まりの『学校の
怪談』話だった。音楽室、美術室、裏庭の焼却炉、3階の女子トイレ
等など聞きたくも無いのに聞かされて・・・ようするに、彼は『おば
け』がキライなのである。

「・・・誰か一緒に行ってくれないかな・・・」



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「誰か一緒に・・・って誰が一緒に行ってくれるつーんだよ。」
呟いた内容に思わず自分でツッコミを入れて脱力する。
このまま悩み続けているだけでは益々時間が経ってしまい時間の無駄
である。一人で学校へ行く事を心に決め羽本は、ベンチから立ちあが
ると気合を入れた。
何気なく視線をあげると目の前には見知らぬ人物が立っていた。
小柄で髪の長い可愛い少女が一人こちらを心配そうな顔をして見つめ
ていた。
「どうかしたんですか?具合でも悪いんですか…?」
「え?あ、いや。別に…」
「だって顔色が悪いですよ?」
本当に心配そうに見つめられて、羽本は少し困ってしまった。まさか
二十歳を超えた大人の男が「オバケが恐いから学校へ行けない」など
と言えるはずも無く…
「ちょっと学校に忘れ物をして…」
「まぁ大変ですね。」
「だから今から取りに行くところなんですよ。」
少女は少し思案していた様だったが、暫らく考えたあと顔をあげニッ
コリと笑みを浮かべた。
「私も一緒に行きましょうか?」
「え?そ、そんな悪いですよ!」
羽本は慌てて断ったのだが、実は内心嬉しかった。だって一人では行
きたくないのが本音だから。
「私、志神みかねです。これも何かの縁ですよ。」
「えっと…はい。お願いします。」
羽本は一抹の不安を感じながらも一緒に行ってもらうことにした。
女の子に付き添いしてもらう事への恥ずかしさより、オバケへの恐怖
の方が大きくて思わずお願いしてしまった羽本であった。


**

学校へ到着した彼らは取りあえず用務員室を目指した。
もちろん、鍵を借りて目的の場所へ忘れ物を取りに行く為に。
用務員のおじさんから親切にも懐中電灯まで渡されて、いよいよ薄暗
い校内へと二人は足を踏み入れた。
薄暗い校内を歩きながら羽本は少し後悔していた。
半端じゃなくコワイ。
本当は用務員のオジサンにも着いて来てもらいたい。
でも同行してくれているみかねの事を考えれば、その行為はとても男
としては恥かしいことだと羽本は思った。
「け、結構気味悪いですよね…」
「そ、そうですね。」
二人そろった引きつった笑顔で言葉を交わす。羽本はこの緊張感に堪
えられずに告白した。
「じ、実は…俺、幽霊とか苦手なんっすよ。」
小さな声で話をする羽本を見上げ、みかねは笑いもせずにその言葉を
聞いていた。
「男のクセに情けないでしょ?ははは…」
「そんな事ないですよ!わ、私も苦手ですから!早く忘れ物探して帰
りましょう。」
しかし羽本は不安だった。何故ならば…
《美術室》
《理科室》
《音楽室》
という怪談物お約束の場所テンコ盛り♪が待ち構えているのだ。
「なんか…オレ、帰りたい気分」
「が、頑張りましょう!ね?」
「う…うん…」
涙目の羽本と同様に涙目のみかねの二人は、お互いに励ましあいなが
ら先へと足を進めた。



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渡廊下を渡った先には第一関門である《理科室》が待ち構えていた。
「そ、そう言えば理科室の噂で人体模型が動いちゃったりってよく聞
きますよね」
「…えっ」
「あっ…う、噂ですよ噂!」
「よ…良くある話だよな…」
無意味なくらい大声で話をしながら《理科室》の前を通り過ぎようと
した瞬間、コトリと物音がして二人は反射的に振り向いた。
振り向いた先には、お約束の人体模型と目が合ってしまった(置いて
あっただけ)二人は素早い動きで4階へ上る階段へと走った。
「び、びっくりしましたね…」
「う、うん。」
階段を上りきった右手に第二関門の《美術室》があるのだが、これは
音楽室とは反対方向、つまり校舎の両端に位置しているためここの前
は通らなくて済む。
階段を上りきり左手へ方向へと足を進めた時…
「そ、そう言えば美術室にある肖像が夜な夜な絵の中から出てきて歩
き回ってるって話知りません?」
「…し、知らない…」
「あと…入り口のドアに…」
「み、みかねさん…あ、あの、コワイくないんですか…?」
「…スミマセン…私、余計な事を…」
「い、いえ、話してる方が恐くなくていいっすから…で、でもあの。
できれば噂話とこ、怖い話とかは…ちょっと…」
「そうですよね…」
その後二人は音楽室までの長い廊下を、競走と競歩の中間スピードで
駆け抜けたのだった。もちろん、話をしながら。
その結果、音楽室へ到着する頃には少々息が弾んでいた。
しかし、ココまでくればあとは忘れ物を持って帰るだけだ。疲れてな
ど居られない羽本は忘れ物を捜しに取り掛かった。
「あ、あったぁ!」
暫らくして目的の忘れ物を発見した羽本は安堵の声をあげた。
「何を忘れたんですか?」
みかねは羽本の手元にあるモノを覗き込んだ。
「あ、これです。これないと三味線が弾けないんですよ。」
「なんですか?それ?」
「バチって言って、ギターで言えば…ピックみたいな物かな。」
「へぇ羽本さんって三味線弾くんですか?凄いですね!」
「俺、こんなですけど一応、師範なんですよ。」
「今度機会があれば演奏聴いてみたいなぁ…」
とその時、みかねの視野の中に黒くて茶色の光を放つ小さな物体が…
いた。そしてそれは勢いよく彼女目掛けて一直線に飛んできたのだ。
それは本当に意表をついた出来事だった。
今までの緊張感、そして今こちらに向かって飛んできている物体。
彼女の精神はプツリと切れた。
「みかねさん?」
声が聞こえなくなった事を不審に思った羽本はみかねに声をかけた。
突然ガタガタと音楽室自体が揺れているような感覚がした様な気がし
た次の瞬間、大きな音がしたその方向を見て羽本は硬直した。
何故か宙に舞う机や椅子、自動ドアよろしく勝手に開閉するドア、そ
の光景を目の当たりにした羽本は思考回路が停止した。
「ッッッッッッッッ!!!!」
次の瞬間、羽本の絶叫が校舎内に響き渡った。

その絶叫は用務員室のオジサンにも聞こえたらしい。



**

鍵を返す時用務員のオジサンに大笑いをされ要らぬ恥をかいたものの
なんとか忘れ物も見つけられ、現在は無事に帰途へと着いていた。
「あ、今日はホントにありがとう。」
羽本は照れ臭そうに笑いながら礼を言った。
「いえ。私のほうこそ、お役に立てなくて…逆に一番驚かせてしまっ
たみたいで…すみません。」
「そんな事ないです!俺、助かりました!確かにちょっとはビックリ
したけど、大丈夫っすよ!」
ペコペコとお互いに頭を下げているうちに、何だか可笑しくなってき
て二人は同時に吹きだした。
「私…、スッゴク恐かったり極限状態になってしまうとああいう事に
なっちゃうんです。」
「すっげぇ驚いたけど、でもすっごくカッコイイと思った。うん。」
「カッコイイ…ですか?」
羽本は「あれって超能力だろ?」とか「念力ってやつ?すげーな」と
か本当に感心しているようだった。
まるで子供のように「すごい」を連発する羽本に、みかねはクスリと
笑った。
「羽本さんって子供みたい。」
「へ?俺、これでも22っすよ!」
やがて出会った公園まで二人は戻ってきた。
「あ、そうだ。これ…」
ゴソゴソとポケットからチケットを二枚取り出し、みかねに手渡した。
「明日**流の三味線の発表会なんですよ。」
「え?」
「今日のお礼です。もし良かったら演奏聴きにきてください。」
「貰っちゃっていいんですか?!」
「こんなお礼しかなくてスミマセン…」
「いいえ、嬉しいです。ありがとうございます!」
みかねに深々とお辞儀され、つられて羽本もお辞儀した。

「じゃ、途中まで一緒に帰りましょうか。駅まで送りますよ。」
「ありがとうございます。じゃぁ三味線の話を聞かせて貰えますか?」

そうして二人は『怖い話ナシ』の雑談をしながら帰途に着いたのだった。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 0249 /志神・みかね / 女 / 15 / 学生


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■         ライター通信          ■
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こんにちわ。おかべたかゆき です。
ご参加いただきありがとうございました。
今回は各PCで話をチョコチョコと換えて書きました。
怪談で雑談で変化球を狙ったんですが…外している様な気が
します。(^^;ゞ
こちらのお話は会話形式で書いてみました。ちなみに羽本は
基本的に女性に弱い男なので、他の男性PCさんの会話と語尾
が多少違ってます。よかったら見比べてみてください(^-^)