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リリムさん。
「リリムさんリリムさん出てきてください」
渋谷の女子高生を中心に、「リリムさん」という占いが流行している。
おそらくこれは、「こっくりさん」などの類だろう。
それと同時に、女子高生が原因不明の精神病にかかり発狂するなどの事件も多発しているという。
これはその「リリムさん」と関係があるのではないか。
「雑誌のネタになりそうね」
大塚忍にとって、このような「ネタ」と接する機会は少なくない。
そもそも、誰も気付かないだけで、このようなネタは溢れている。
そう、この東京という街に。
「さて。取材に行きますか」
渋谷で女子高生数人に「リリムさん」の処方を教えてもらった忍は、早速興味のありそうな人にインターネットで呼びかけてみた。(ちなみに女子高生を霊視してみたが、彼女達の周りににリリムらしき気配はしなかった)
インターネット掲示板に書き込みをしたところ、三人集まった。
うち2人は、いかにもそういうのが好きそうな眼鏡の男。
しかし一人は、そういうのとは無縁そうな金髪の好青年だった。本人曰く、ハーフらしい。
教えてもらった通り、魔法陣を紙に描いて床に起き、呪文を唱える。
「リリムさんリリムさん出てきてください」
すると、美しい女性が魔法陣から「抜け出る」。
(なるほど、思った通りだわ)
この手の降霊術は周囲の低級霊を無差別に呼ぶもので、概して人間に大きな被害を与えることは稀であるからだ。無論、いくつかの例外があるが。
「こっくりさん」が「リリムさん」に変わっただけでこれほどの被害の差が出るのはおかしい。
このリリムとやらには、背後にかなり強力な上級霊がいるのであろう、と忍は踏んでいた。
さて、男二人は逃げ出す。
なるほど彼らにとってこの儀式は、あくまで趣味の一環でしかなく、参加したのも興味本位なのだろう。
しかし、彼女にとってこれは仕事だ。逃げ出すわけにはいかない。
ふと、横を見た。
好青年はまだ、残っていた。
「逃げ出さないところを見ると、あなたもただの人ではなさそうね」
「そうですね」
好青年は屈託のない微笑みで返した。
「さて。話も色々あるとは存じますが、まずはコレを片付けないことには、ね」
そう言うと青年は何処からか巨大なバスタードソードを取り出した。
ロールプレイングゲームなどで出てきそうな、あの巨大な剣である。
『貴様、只者ではないな』
リリムが青年に言う。
「ええ。…「十二使徒」…。あなたも一度は聞いたことがあるんじゃないですか?」
(!)
「十二使徒」。忍も一度遭遇した。
謎の吸血鬼狩人(ヴァンパイア・ハンター)集団。
たしかあの時遭遇したのはピリポとかいった名前だった気がする。
美しい容貌を持ち、大鎌で吸血鬼を倒した青年。
「…十二使徒が一人・金剛糸のヨハネ、参ります」
にっこり笑うと、次の瞬間、リリムは見えない糸によって八つ裂きにされた。
「な…!?」
「驚く必要などないでしょう」
リリムの首を見据え、ヨハネは言った。
「まあ、少し可哀想な気もしますが。金剛石(ダイヤモンド)の糸で切り裂かれたのだから」
ヨハネがそう言った頃には、リリムの体は粒子になっていた。
「…何者なの、あなた」
「聞く必要はないでしょう。でもまあ、こうやって吸血鬼をまた一匹退治できるきっかけをくれたから、特別に教えてあげましょう」
ヨハネは糸をしまいながら言った。
「古来吸血鬼は、人々を苦しめてきました。しかし吸血鬼も一部の、『分身』を除けば元は人間。当然かつての同族を守ろうとする吸血鬼も出てきます。それが我々です」
「と、いうことは、あなたもまた、吸血鬼、ってこと?」
「まあ、そうなりますね…。まあ十二使徒を名乗っている以上、普通は明かしませんが。ともかく複雑なんです。吸血鬼の社会も。何せ、『原初の吸血鬼』と、それの直系が戦ってますから」
「原初の吸血鬼?」
「この世で最初に生まれた吸血鬼です。彼女はリリス、と呼ばれています。そして我々十二使徒全員の『親』でもある」
「じゃあ何?あなたたちは人間に戻りたいの?」
「そうですね。だから、少ない可能性を、偽善の大義名分で果たそうとしているのかも知れませんね」
「喋りすぎだ、ヨハネ」
窓の外に、二人の青年が現れた。
片方は以前忍が遭遇したピリポという「使徒」で、もう一人は判らない。マントを被っているので、顔も判別できなかった。性別すら判らないが、キリストの十二使徒は全員男だったから、男だろう。
「ピリポさん、パウロさん」
「行くぞ。…女。このことは絶対口外するなよ」
それは女性の声だった。
「…」
忍は黙り込んだ。
そして、去り行く使徒たちを見守った。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0795/大塚忍/女/25/怪奇雑誌のルポライター
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■ ライター通信 ■
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吸血鬼シリーズこっくりさん編。
もう、何やりたいんだか自分でも判らなくなってきました。
それと、今回、一回作品自体完結したのに私のミスで書くことになったため、忍さんお一人のノベルとなってしまいました。申し訳ございません。
そして、その代わり、第二の「十二使徒」と遭遇。
そして十二使徒について、ちょっとだけ明らかに!(笑)
ヨハネ…英語だとジョン、ですが。でもヨハネという響きのほうが個人的に好きです、はい。
でも何故だろう、糸が武器って。
すみません、多分個人的趣味に走りました。
では、今回はこの辺で。
感想などお待ちしています。
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