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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


妹を探して
■オープニング

「ここのバイトで高校生の奴、居るか?
もしくは童顔で高校生に見える奴あーんど保護者に見える奴でも構わん」

ある日の事。
草間がいきなり、こんな事を興信所内にいる面々に語りかけた。
草間自身もいきなりすぎたかと反省したのか、頭をポリポリと掻いた。

「ここの高校にな…一人の女の子が居る筈なんだが…調査をかなり深くやってみたんだが
中々上手く特定できないんだ…目印は二の腕あたりにある花びらみたいなアザ…それだけだ。
なんで、高校生連中にお任せしたいと思ってな。
人に聞いて回るわけだから愛想のいい奴、人と上手く話せる自信のある奴は
あとで俺のところまで来てくれ」

草間は溜息をつくとファイルを閉じて立ち上がった。
人物探し…だが、果たして上手い具合に見つけられるだろうか?

■顔合わせ

「ふむ…今回は色々なのが集まったようで♪
えっと、御堂は一度家でバイトしたことあったな。今回も宜しく。
神無月・征司郎さんと今野・篤旗君、加賀・美由姫さん……顔は覚えたか?
それと今日は都合によって来れない様だが守崎・啓斗と湖影・梦月さんも
同行するから、ある程度は柔軟にな?
…って言っても人探しがメインだからそうそう危ないことは無いと思うが……。
不審な人物を見つけても攻撃はしないように!以上ッ」
「…ちょ、ちょっと待ってください草間さん!」
「何だ?」
草間がきょとん、とした顔をするのを解っていた様に御堂・譲はゆっくりと口を開いた。
口元には女性なら「うっ」となりそうな薄い笑みを浮かべながら。
「それだけじゃあないでしょう?僕らは名前を知らない女生徒を探すわけですか?」
「…あー…何ていうかな。俺らでもコレが限界だったんだよ。
名前は依頼主も解ってないらしい。ただ、その子の二の腕には生まれたとき、アザが
あった筈だからそれを目安に探せってな…一応はあそこの高校に居ることだけは
見た人物も居たことから解ってる。だが、それだけだ」
「……あそこ一学年人数がどれくらいいるか知ってます?」
「女子高だっけか?一クラス40人で確かクラスがLまであったから…480人は居るな。
三学年で1440人…頑張れよっ、何6人も居るんだ、大丈夫大丈夫っ」
はっはっは!と笑う草間に対して、ここに居る4人は「おいおいっ」とツッコミを入れたくなった。
1500人近い人数から、ただそれだけのデータで探せと言う依頼主も大した物だが
大丈夫、大丈夫、と言い切れる草間も大した物である。
4人は妙な気持ちになりつつも、資料を受け取りその問題の高校へとそれぞれ向かった。


■神無月・征司郎の場合

皆が皆、この学校の探索に一所に固まるのは効率が良くないという
意見から、征司郎は初め校門前にて女子高生たちから話を聞くという動きをすることにした。
他の面々は、裏門で待ったり生徒として潜入したりと色々だが……。

「…さて」
息をついて、征司郎は手首の内側に花びらの様なアザをつけた。
高校へ行ったときに、こう言うアザの子なのだけれど、と提示するためである。
無論役どころは、その行方不明人物の兄、と言う役どころだ。
台詞は「生まれてすぐに生き別れになった妹を探しています」と言う物であれば
怪しまれる可能性は…少しは減るだろうしいつもにこにこと、人が和んでしまうような微笑を浮かべる
征司郎は人の懐に入る術を十二分に心得ているので、この作戦は最も
最適かと思われた。

だが。

「…アザのある子?二の腕にあるの?…んー私のクラスでは見たことが無いかも」
「いいえ?家のクラスにも居ませんけれど?」
「…そんなに人の腕とか気にしてみてないから…ごめんなさいッ」
…と言う「なんてこったいっ!!」な答えが返ってくるばかりで一つとして
有力な回答は初日に得られることは無かった。

「…アザを見られないように隠している…のかな」

だとしても、今の時期は皆夏服で、半袖の筈で。
そうそう見られないように出来うる筈もないと思うのだが……。

(うーん……。あ、そうだ!)

ちょっとばかり校舎に潜入して、保健の先生に聞いてみよう。
…役どころの名目は先ほどと同じ、兄の役柄。
これならば流石に学校とは言え文句は言えないだろうし……。
少しでも有力な情報を集めるべく征司郎は校門の前から高校の校庭へと足を踏み入れた。


■御堂・譲の場合

譲は、高校付近に着く前に携帯電話である女性に連絡を取った。
この高校に通う友人を介して聞き込みをするためだ。
その為、怪しまれないようにと譲は自分の高校の制服を着てきていた。

が、その制服は都内でも1,2を争うエリート校の制服なので
かなり、いや、随分と譲の姿は目立つ。

「ああ、元気?いや、なにデートの誘いって訳じゃないんだけどさ。
ちょっと今から君がいる学校の生徒の聞き込みに付き合って欲しいんだけど」
携帯からの声は、少々弾んでいるようでもあったけれどデートと言うわけでも
ない為かふくれている様でもあった。
が、そこで悩んでもらっていても困るので「今度、何かあったら付き合うからさ」と
言い、了承の返事を貰うと譲は、携帯を切った。

やや、しばらくして頼んだ少女が出てくる。
まずは、この少女の友人近辺からの聞き込みを開始かな、と譲は少女に連れられるまま
校舎内の中庭へと入っていった。

女の子の賑やかさには夜、遊びに行くクラブ系の店で慣れているつもりだったが……
女子高の賑やかさとは別だったと、この後譲は思うことになる。
「わ、その制服あそこの学校のでしょ?何、アンタの友達?」と言う譲を
歓迎する声が多い中、一人だけ顔を顰めた少女が居る。
どうやら、こう言う誇示するような制服は苦手なタイプのようだ。
が、逆にそれが面白いと譲はまず、その少女に聞くことにした…満面の笑顔を忘れることなく。

「な、アザのある子って見たことないかな?」
「ないわ、それに目立つ部分とも思えないし気になんて出来ないんじゃない?」
「……なるほど」

確かに、今は夏だから目立つのかもと言う考えは否めない。
…これは、探し方をどうやら変えたほうが良さそうだ。
そう、必ずと言って良いほど腕を見せたがらない少女に。


■加賀・美由姫&今野・篤旗の場合

「で、やり方やけど…どないするん?」
草間興信所を出て学校の場所から5分もしない喫茶店に入ると今野・篤旗は
加賀・美由姫に問い掛けた。
水が入ったグラスがカランっと乾いた音を立てる。
今野・篤旗の問いに美由紀は、にまっと篤旗が不安になるような笑みを浮かべた。
「んー?まあ、まずは聞き込みがメインよねッ。色々な人に聞いて回るのよ!
勿論、保健の先生とか先生方にも聞いて回ってさ」
「で、調べる理由を聞かれたら?」
「そうだねえ…自分にもアザがあるから同じようなアザがある人に会ってみたいという事にするよ!
だからちょっと腕にはアザっぽく何か細工しとかなきゃね♪」
「…それで納得する人どのくらいおるんやろ…」
「はいはい、あっちゃんは黙って、まずは私の作戦を聞くっ」
「…あんな、あっちゃんって美由姫ちゃん呼ぶけどな?
僕一応、先輩なんやで?」
そう、童顔の篤旗だが一応彼は大学生であり美由姫の部活の時の先輩に当たるのである。
可愛いと言うか、人に受けのいい顔と言うのも手伝ってるのか彼の外見は実年齢より
更に若く見られることが多いのだ。
くるくるとストローで紅茶をかき混ぜながら美由姫はきょとん、とした顔で呟く。
「その童顔で先輩言われてもなあ……」
「ぐっ…ああ、そう真面目に切り返されるとココロが寒いわ〜」
「…って言う冗談はともかくとしてさ、特定できたらいきなり言って見せてくれたら
それでいいけど、ダメな時はその子が通りかかるのを見計らってあっちゃんと痴話喧嘩を
装って彼女には悪いけどあっちゃんに水をかける振りして彼女にかけちゃうの!どうっ?」
「……それはツッコンだ方がええって言う合図かいな美由姫ちゃん」
「駄目?」
「駄目って言うか…ちょいとなあ…」
「あ、安心してっ、その子が着替えるときにはあっちゃんには外にいてもらうし!
さ、じゃあ行くとしようか♪」
「当然やろっ!! ああ、優姫ちゃんに誤解されたらいややなあ……ま、うまく
立ち回れるように努力だけはするわ…努力だけ、はな」
はぁ…と気力の抜けた溜息をつきながら篤旗は目の前にあった飲み物を飲み干すと
伝票を持ち店を出た。

店を出てから、暫く経った後。
二人はどうにもならずに遠い目をしていた。
と言うより、遠い目にならないほうがどうかしている、と言うべきか。
…見つからないのである。
学校も場所も何もかもあっていて、人に聞けども聞けども砂の中から
宝石を見つけ出す確率より低いのだから聞くのも最終的には「知りませんか?」
ではなく「知りません…よね?」になる始末で。

「あっちゃん…私たち場所、間違えてないよね?」
「間違えてへんで、さっきも来たしちらほら見たような顔も見かけるし……。
こりゃ、相手の人はエライ強敵かもしれへんな」
「…質問の内容、変えるべきかな?」
「そうした方がええやろ…例えば……夏でも長袖の子や」
「あ、そっか…見つかりたくないなら当然、腕は隠すものね…よし、これで
聞いてみて皆と連絡とって相談ねっ」
「ああ」
今一度情報収集を開始すべく、美由姫と篤旗は再び学校内にまだ居るだろう人たちへと聞いて回った。


■守崎・啓斗の場合

「…御堂が来てるから、姿をみせずにサポートしてやろうと思ったのに……」
と、校舎付近にある大きな樹の上で呟くのは守崎・啓斗。
忍者ゆえの身軽さで上から、今現在の譲の状況を彼は見ていた。
…いつも思うのだが御堂は女性全般からモテる。
今回の女性と探しにしろそうだ。
どちらかと言えば女生徒探しより、周りから色々と叫ばれてしまい
譲るがニコニコと笑顔のままそれをかわしている、のだから。
「…ま、俺は俺で出来ることをやるとするかな。」
啓斗は樹から素早く地面へと足をつくと不本意ながら用意してきた
女装グッズ―――草間が最初に言っていた時点では女子高と気付かなかったので
後に用意した制服一式―――を溜息つきつつ誰にも見られることもなく職員用の
トイレへと向かった。

(…こんなもんか……?)

怪しまれないようにと指定の制服に着替え個室をでると、まずは鏡でウィッグ等のずれがないか確認した。
…大丈夫だ、ずれてないしこれなら地毛でも通るだろう。
次は制服だが……よし、これも大丈夫…何と言うか妙に不安定だけれどちょっとの辛抱だ。

「おし、じゃあ行くとすっか…あ、ゴメン」

一瞬、女装していたことを忘れ啓斗は職員用トイレに入った教員にそう言い職員トイレを後にした。
…だから、彼には解らなかったのだ……。
後ほど教員が、妙に情けない悲鳴をあげた、その訳を。

そうして、その後啓斗は転校生と言う役と、この学校に居る筈の姉を探していると言う
名目で、校舎内に残っている教員方に聞いて回った。
が。
やはり他の面々がぶち当たったのと同じように啓斗も最終的には首を傾げる以外に
ないような結果が出てしまったのだ。
居ないのだ、その様な女生徒は一人も。
保健室にいる校医にも聞くべきかと思ったがどうやら先客が居るようなので
話に割り込む訳にも行かず……うーん、ともう一度啓斗は唸った。

「……質問内容を変えるべきかな」

どうやら問題の少女は余程見つかりたくないようだが……。
さて、目はどう出るのだろうか。


■湖影・梦月の場合

「えええええっ?」
最初の顔合わせの時間にどうしても行くことが出来ず、のちほど草間興信所へと
向かった湖影・梦月は草間から話を聞くなりいきなり叫んだ。
本当に本気だろうか?と問うような梦月の顔に草間も苦笑を隠せないのか
明後日のほうを見つつ、煙草に火をつけている。
「そんな…依頼主の名は明かせないのはともかくとして、探す方の
お名前がわからないなんて、その様なことあっていいはずありませんわっ」
「…けど実際そう言う様な依頼なんだから仕方がないだろ?」
「う……」
「まあ、無理を言っているとは思う、が、残念ながら名前は解らん。
アザが目安にしかならないんだ…まあ無理そうなら誰かと一緒に行動してみてもいいだろう」
「そうですわね……とりあえず、探すのを頑張りますわ〜」
「おう、頑張れっ」
「あ、後一つお聞きしてもいいですか?」
「ん?」
「別に探している子に危害を加える…訳じゃあないんですよね?」
「勿論だ、そいつだけは保証しておく」
「はいっ」

最後の草間の言葉に安心したかのように梦月は草間興信所を後にした。
目指すはそこに居ると思われる「アザ」持つ少女の高校。

梦月は、にこにこと校門から出てきた人に、聞いて聞いて聞きまくった。
女子高生から、先生と思われる人物、果ては用務員のおじさんにまで。
ところが、どういう訳なのか「腕にアザを持つ」と言う人物は居ないのである。

(あ、あれぇ……?)

だが、貰った資料と見比べても高校名も制服も、ここの学校のようだし…
どういう事なのだろう?
梦月は質問の意図を変えてみることにした。
腕にアザで、見つからないのなら逆で行こうと発想の転換をしたのだ。
では、と梦月は付き合いのよい目の前の女生徒に再び問い掛ける。

「えっと、では腕を見せない女性はこちらの学校で見たことがあると言う事は……」
「ああ、それなら知ってるわ。同じクラスの国上伊咲さんって言う人だけど…
残念だけど彼女は今日は用事があって午前で帰ってしまっているの…探してる人は彼女なの?」
「はい。あ、では明日放課後引き止めて置いてくださいますか?」
「良いけれど…期待しない方が良いかもしれないわよ?」
少々困ったような微笑を浮かべると、その人物は「じゃあね」と言い去って行った。


■全ての、情報を収集すると?

一応、情報らしい情報は一つしか得られぬまま面々は草間興信所へと初日の報告に帰った。
「よ、お帰り。情報は取れたか?」
「一個だけですね」と、譲と征司郎。
「私も一個だけですわ」と梦月が「僕らもそんなもんですわ」と篤旗が美由姫の代わりに言葉を発し
啓斗もそれに強く頷いた。

草間はそれぞれが纏めた書類を読みつつ溜息をつくと煙草を取り出し火をつけた。
紫煙が、ゆっくりと天井へのぼってゆく

「…ふむ、で、その子には逢えたのか?」
「いえ…どうやら用事があったらしく駄目でしたね…保健室の先生によると
酷い頭痛のためが早退理由だそうですが」
征司郎が草間の問いに答える。
「俺も職員室で午前中に早退したって聞いたな、確かに」
「誰か明日彼女を足止めするように頼んであるか?」
「私、頼みましたわ…クラスメイトだとおっしゃる方に…期待しないでくれと言われましたけれど……」
不安そうな顔をしている梦月に征司郎は、やんわりと微笑む。
「ああ、大丈夫ですよ湖影さん。私は保健室の先生に一応頼んでおきましたから。
…生き別れた娘に逢うべく母が逢いたいと言っている…と言ったら酷く賛成してくださいましてね」
「僕の方も今日話した女の子たちは全員協力してくれるって言ってたし」
「御堂…そういう事は上手いよな…」
「…そういう事以外でも上手いと言って欲しいな」
譲ると啓斗の会話に、緊張が走っていたような場に、漸くゆったりとした空気が流れ出した。
草間も煙草の火を揉消しながら、顔を上げ決定を伝えるために口を開く。
「よし…じゃあ明日、依頼人を連れて行く。皆は、その国上伊咲さんを学校から
出さないよう四方八方で見張っててくれ。
…どうやら勘の強いお嬢さんらしいからな」
「はい」
6人の声が草間興信所に力強く響いた。


■探し人見つかる?

「…今日、無事に逢わせられると良いんだがな。…守崎さん、何か良い考えはないか?」
「そんなこといったってな…四方八方を固めて、それ以外で
出られちまったら、もうお手上げじゃないか」
違うか?と言うように啓斗は譲を見る。
「とは言っても仕事だろう?ベストの状態で終わりたいじゃないか」
「逢う=ベストかどうかは、その人にしかわからへんな…おっと、すんません。
お二人の話に割り込んでしもて…けど逢わずに居てもいい事あるんじゃないかって僕は思いますねん」
譲の言葉に割り込むようにして篤旗はそう締めくくった。
基本的に見つからないようにしている少女を見つけて差し出していいのだろうか…と
思うこともあったからなのだが…その篤旗の言葉を聞いて美由姫は微笑う。
「?美由姫ちゃん、何がおかしいん?」
「え?ううん、あっちゃんは相変わらず優しいなって。
けど、やっぱ見つけて欲しいって願う人もいるんだもん、その人の為に私達は頑張らなきゃ」
「…美由姫ちゃんの明るさに僕はいつも救われますわ……」
「それ、誉め言葉?」
「勿論や」
「ふふ…加賀様と今野様は本当に仲がよろしいんですね」
「本当ですねえ、そういう風に仲がいいのを見ると羨ましくなりますが。
…おっと、そろそろ時間ですね。それでは…行きましょうか?」
征司郎の言葉で、皆の表情が一瞬で変わる。
足止めを頼んだ人たちが上手く動いてくれるか、そして自分たちが上手く立ち回れるかで
結果が変わるのだ。
それぞれが打ち合わせたとおりの位置へ動き、草間が来るのを待つ。
…きっとその間は一分がとてつもなく長い物に感じられるに違いない。

暫く経った後、やっと…と言うような時間の長さで草間と依頼人が高校へ到着した。
…探し人は逃げる気配はない。
友人が用があると出て行ってしまったのを疑うことなどないように頬杖をついて
窓から陽がくれるグラウンドをただ、見ていた。

そして。
草間と依頼人は教室の扉を開ける。

声にならないような悲鳴に似た声と嬉しそうな声が混じり…メンバーの中で
最初に探し人である国上の後ろに回ったのは美由姫と梦月だった。
「落ち着いて」と何度も語りかけ背中をさすり、何度も何度も落ち着かせようとする。
それが功を奏したのか国上は少しずつ、落ち着いてきた。
だが決して瞳は依頼人を見ようとはしない。

「…お探しの人物は彼女で宜しいでしょうか?」
「はい…母に良く似ていますし…腕を隠していても解ります……どうして、逃げたの?」
「逃げたわけじゃない…だって…今までは放っていたじゃない。
私も、お母さんも…なのにいきなり帰れ、なんて納得できるわけがないでしょう!?」
「しょうがないじゃないの、貴方の…そんな力が放っておけるわけがないでしょう!」
「…大丈夫よ、今までだってちゃんとしてきたもの!」
「あ、あのう、つかぬ事お伺いしますけれど…この方を探していたのは
能力の所為なんでしょうか?」
征司郎が、姉妹喧嘩に発展しそうなこの場に一つの疑問を投げかける。
能力の所為、と彼女らは言うがその様に生活に弊害の出る能力なんてあるのだろうか?
「え?ええ…そうです、この子の能力が…ある者共にはエサになるかもしれないので
コントロールさせなくてはなりませんから……」
「…違う…っ」
国上は、ただ苦しそうに言葉をつく。
ぶわっ、と空気がうねりを上げるように国上のまわりを取り巻いた
これに対して頭を撫でたのは篤旗だった…決してぶつかろうともしない視線はただ下を見るのみだが。
「…けど、心配してお姉さんが出てきてくれたんですから…帰った方が良いと思いまっせ? 
…違う、言うんなら、それを証明してからお姉さんの家でてくのも悪くないんと違います?」
「………」
「仕事だから言う気は無かったけれど…確かに今野さんの言うとおりだ。
違うと言うのなら逃げてばかりじゃ始まらない」
「俺も御堂の意見に賛成だな…まずは証明しなければ何も始まっては居ないんだ」
譲と啓斗はお互いを視線に入れるとゆっくりと頷いた。
嫌だ、と言うだけでは何も始まらないと知っているからこそ言える言葉。
「…お願い、帰って来て……」
願うように祈るように依頼人の声が地面に落ちる。

沈黙。
短いようで長い沈黙は、国上の首を一度縦に落とした事で破られた。
嬉しさの声と色々な何かで場が瞬時として賑やかになる。
依頼人は国上を抱きしめ、そしてゆっくりと手に触れると草間と6人に会釈して学校を出て行った。

…こうして、途中気まずくなってしまったような依頼は幕を閉じた。

「…終わったな、まあ…良くやった。さて、帰るとするか。
…帰り道何か食べたい奴いるか?奢ってやる」

草間の、この言葉に6人は思い思いに頷いた。
夏場特有の赤い夕焼けが、校舎全体をただ赤い色に染め上げ…やがて、落ちた。


-了-


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0684 / 湖影・梦月 / 女 / 14 / 中学生】
【0588 / 御堂・譲 / 男 / 17 / 高校生】
【0554 / 守崎・啓斗 / 男 / 17 / 高校生】
【0527 / 今野・篤旗 / 男 / 18 / 大学生】
【0515 / 加賀・美由姫 / 女 / 17 / 高校生】
【0489 / 神無月・征司郎 / 男 / 26 / 自営業】
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■         ライター通信          ■
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こんにちは、初めまして。駆け出し新米ライター秋月奏です。
いや、もう新米と言うのは無理ですか?と思いつつ
OMCに登録されてから早いものでもうじき3ヶ月が経とうとしています。
その間に書けたのも色々と含めると50近くなってますが…
こうして書いていられるのも本当に発注してくださる皆様のお陰です。
有難うございますっ。

神無月さん、御堂さん、今回も参加してくださり有難うございました!!
ちょいと、今回は神無月さんの味であるだろう、ぽややんとした
イメージが出せずに申し訳ありませんっ。
でもでも凄く楽しかったです♪
御堂さんは相変わらずカッコいいですし(^^)
守崎さんは、今回お兄さんの参加ですね!
以前は弟さんを書かせていただきましたがこちらも書かせて頂けて嬉しかったです。
湖影さん、加賀さん、今野さんは初めての参加有難うございます!
湖影さんの癒し的オーラが何とも言えず和みました、妙なプレイングと言う事も
なかったですし…有難うございました♪
加賀さん、今野さんはコンビで書かせていただきましたがすっごく楽しかったです!
何と言うか信頼と言う絆で結ばれてるように感じてしまいました。
こちらも楽しいプレイングで本当に有難うございますっ。

ではでは、長くなりましたがこの辺で。
拙いながらも少しでも楽しんでもらえたなら幸いです。
また、何処かの依頼でお会いできることを願いつつ。