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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


壊れた季節の中で【調査編】

▼前回までのあらすじ
 学生時代の友人、相沢縁(あいざわ・ゆかり)の自宅の新築パーティにやってきた草間たち。
 パーティを楽しんでいると、庭の一角で他殺体が見つかった。
 いったい、何が起きたというのだろう?
 警察が到着するまでの間、招待客は全員、相沢邸に拘束されることとなった――。

−重要ポイントの整理−

【相沢邸】
 日本一の貿易会社を経営する、相沢忠道(あいざわ・ただみち)の自宅。
 名を『四季の館』といい、全体の設計をしたのは娘の縁(ゆかり)。
 広い正方形の土地の中心に母屋が立っている。
 土地は、ちょうど東西南北に四隅が位置するように整地され、高い白壁が囲っている。
 それぞれの隅から屋敷に向かって道が作られており、主な出入り口として使われるのは南側の門。
 最大の特徴として、庭が季節ごとに4つに区域分けされている。
 南東のエリアが春、南西のエリアが夏、北西のエリアが秋、北東のエリアが冬。
 それぞれの季節にいちばん美しく咲く植物を、各庭に植えてある。

【パーティ】
 相沢邸の新築祝いで開かれた。各界の大物がたくさん招待されている。
 『春』と『夏』の庭を使った、立食式のパーティである。

【主要人物】
・相沢縁(あいざわ・ゆかり)
  草間の友人。相沢家の一人娘。

・相沢忠道(あいざわ・ただみち)
  相沢貿易の社長。縁の父。

・相沢春恵(あいざわ・はるえ)
  縁の母。元は相沢貿易の社長秘書のような仕事をしていた。

・井関悠(いせき・ゆう)
  元スキー五輪代表。
  現在はスポーツアナウンサーとして活躍している。

・遠藤慎二(えんどう・しんじ)
  演技が上手く、ルックスも良い人気俳優。

・荒城禎人(あらき・さだと)
  政治家。おだてられると調子に乗るタイプ。

・大谷育也(おおたに・いくや)
  『好青年』としてお茶の間受けの良いアナウンサー。
  ただし、女性絡みのスキャンダルが絶えない。

・橋本千尋(はしもと・ちひろ)
  相沢家の使用人の女性。事件の第1発見者。

・三菱アリカ(みつびし・ありか)
  アイドル歌手。
  以前、遠藤慎二(えんどう・しんじ)と噂になったことがある。

・山平宗近(やまだいら・むねちか)
  パーティ会場で給仕をしていた男性。

・草間武彦(くさま・たけひこ)
  縁の学生時代の友人。探偵。

【被害者】
・遠藤慎二(えんどう・しんじ)
  『秋』の庭で『殺されて』いるのを発見された。
  発見者は相沢家の使用人の女性。
  ただし、どのようにして殺されたかなどの情報は、現時点では一切不明。


▼大会議室へ
 遠藤の死体が発見されたことが忠道の口から伝えられ、パーティ会場は騒然となった。
 それは当然だろう。
 誰もが、殺人など『遠い世界』での出来事だと思っているのだから。
 気分を害したと言って帰りたがる者もいたが、忠道の迅速な対応により、警察が来るまでは全員が拘束されることになった。
 庭から屋敷内の大会議室に場所を移し、招待客たちは緊張の面もちで警察を待つ。
 草間興信所の一行もまた、大会議室の一角に集まっていた。
「まいったな、こりゃ…」
 だらしなくネクタイをゆるめて、草間が頭を掻いた。
「だから嫌だったんだ、来るの…」
 最近、自分の行く先々でトラブルが起きているような気がする。
 いや、おそらく、気のせいではない。
「草間さん。とりあえず、ここでへこんでても仕方ないしさ…探偵らしく調査でもしようぜ?」
「あのな、大上…」
 瞳に嬉々とした輝きを宿す隆之介を、草間はたしなめた。
「遊びじゃないんだぞ?人が死んでるんだ」
「けどさ、草間さん絡みってことは、怪奇事件かもしれないだろ」
「そうね、ありえるかも」
 シュラインに後を続けられ、草間は情けない顔をする。
「どうせ拘束されているんですし、この会場中心でしたら、よろしいのではありません?」
 理都が提案し、一同はうなずきあう。
「せっかくのデートもぶちこわしだぜ。なにがなんでも犯人見つけてやる」
 鼻息荒く宣言するのは、翠。
 恋人の真奈美は、気分が悪くなったため、客室のベッドで休んでいる。
 そのことが彼を怒らせていた。
「そうだな。とりあえず俺は、理都やみんなに火の粉がかからないうちに、解決したいよ」
「和馬さん…」
 柔和な笑みを浮かべる和馬を、理都が頼もしげに見上げる。
「しゅらいんー、せーや、お着替えするのー」
「あら、ドレスはもう終わりなの?」
 悲しげな表情の星弥の頭を、シュラインがなでた。
「うん。だって、知らないおじちゃんが死んじゃったから、パーティもおしまいでしょ?」
「そうね。残念だけど、おしまいかしら」
 シュラインの横で、慧蓮が答えた。
 星弥の気持ちを汲み取ってか、慰めるような優しい口調で。
「ならば各自、聞き込みといくか。捜査の基本だろう?」
 英彦の言葉に、全員がうなずいた。
 事件の早期解決。
 動機は違えど、目的は全員共通していた。


▼橋本千尋の証言
 英彦と翠が橋本千尋を訪ねると、彼女は使用人部屋のベッドに横になっていた。
 そして、その傍らには、派手な赤毛の男が座っている。
「キミは――」
 英彦はその男と何度か面識があった。
 黒月焔。
 体全体に龍の刺青を施した、どこかのバーのマスター。
 この屋敷の使用人たちの、揃いの制服と同じ物を着ているが、間違いない。
「よう。夢崎とか言ったっけか」
「知り合いか?」
 横で翠が不思議そうな顔をしているのに気付き、英彦は軽く焔を紹介した。
 そしてまた、なぜ自分たちがここにいるかも簡単に説明しておく。
「へえ、草間がね。ついてないヤツだぜ」
 苦笑する焔。
 翠は眠っている千尋を見下ろして、複雑な思いをいだいた。
 恋人の真奈美も、別の部屋で眠っている。
 翠は、自分がこのパーティに誘ったばっかりに、彼女を怖い目に遭わせてしまったことを悔やんでいた。
 その真奈美と千尋が、かさなる。
 故に、改めて犯人への怒りがフツフツと浮かんできた。
 その時、部屋の扉が開いて、別の人物が入ってくる。
「こんにちは。草間興信所の人たち…だよね?」
「あんたは――?」
 翠が問うと、少年は御堂譲と名乗った。
 招待客のひとりで、草間と知り合いだったため、事件に関わることになった。
「その人が、第1発見者の…?」
「ああ、橋本千尋だ」
 英彦がうなずくと同時に、千尋が小さく声を漏らす。
 どうやら気がついたようだ。
「大丈夫か?」
 臨時で使用人のバイトをしているため、いわば同僚である焔が、千尋に声をかけた。
 千尋は、知らない男たちの存在に戸惑いながらも、コクリとうなずく。
「悪いけどな、『冬』の庭で遠藤を発見したときの様子を教えてほしいんだわ」
「え…っ」
 翠の言葉に、その時の光景を思い出したのか、千尋はうつむいた。
 口元を覆った手が、小刻みに震えている。
「駄目ですよ、もう少し気遣わないと。女性なんだし」
 譲は翠に耳打ちすると、そのあと千尋にも何事か囁いた。
 それにより千尋は落ち着きを取り戻し、ポツポツと語り始める。
「わたしが発見したとき、遠藤さんは――頭から血を流して倒れていて」
「撲殺というわけか」
 あいの手を入れる英彦に、千尋はうなずく。
「顔色も悪かったし、息もしていないみたいだったから、亡くなってると思って」
「なるほどな…その時、近くで誰か見たとかないか?」
 翠が問うと、千尋は首をひねった。
 必死に思い出そうとしているが、死体を間近で見てしまったなら、記憶が混乱しても仕方ない。
 4人は顔を見合わせると、
「ありがとうございました。ゆっくり休んで下さい」
 と、代表して譲が挨拶し、それぞれに部屋を出た。
 最後に残った焔は、おもむろに振り返ると、
「…なあ。遠藤が殺される動機…なんか心当たりあるか?」
「…いえ」
 目を伏せて首を振る千尋に、焔は軽く片手をあげると、部屋を後にした。


▼相沢春恵の話
 捜査の基本は、現場検証と聞き込みである。
 英彦が事件現場を見に行こうと外に出ると、ちょうど現場の方から、相沢春恵とガードマンが歩いてくるところだった。
「あの、こんにちは!」
 とっさに、以前テレビで見た『見た目は子供・頭脳は大人』な名探偵を真似、子供らしく振る舞ってみる。
「駄目じゃないか、ボク…こっちは立入禁止だよ」
 ガードマンが怒った口調でいうが、泣きはらし、青ざめた顔色をした春恵がそれを止めた。
「いいのよ…私か責任を持って、上まで連れていくから」
「…わかりました、奥様。では自分は、現場の保存に戻ります」
「ええ、お願いね」
 ガードマンが去ると、春恵はしゃがみ込み、英彦と目線を合わせた。
「どうしたの?上のお部屋にいるように、言われなかった?」
「あのね、僕、草間のお兄さんに頼まれたの」
「草間さんに?」
 我ながら、子供の振りにはだいぶ違和感がある。
 まさかこれを興信所関係者に見せるわけにもいかず、英彦は1人である幸運を感謝した。   
「でも、だめだわ。おばさんと一緒に戻りましょう」
「…うん」
 春恵に手を引かれ、英彦は諦めて上に戻ることにする。
 ここで粘るのは、得策ではない。
(現場は検証したいが…まあいい。この女から情報を引き出すか)
 英彦は、無邪気な笑みを浮かべて、春恵を見上げた。
「ねぇ、春恵さん。どうして遠藤さんってお兄さんは、このパーティに来てたの?」
 その問いに、一瞬、春恵の表情が固まる。
 しばらくの間をおいて、春恵は力無く笑った。
「私が招待したの。私が呼ばなければ…こんなことにはならなかったかもしれないわねぇ」

 
▼情報の整理
 再び草間の元に集まった英彦、譲、慧蓮、シュライン、星弥は、それぞれが収集した情報を交換することにした。
「不本意だが、所長であるお前がまとめるのが最善だろう?」
 英彦も、負け惜しみを言いつつも協力的だった。

・『冬』の庭にはガードマンが立っていて、立ち入れない。
・遠藤慎二の遺体には白い布がかかっている。
・橋本千尋によると、遠藤は頭から血を流していたらしい(撲殺?)。
・相沢縁は混乱しているのか、不自然なくらい落ち着いている。
・相沢春恵は泣きはらした目をしていた。
・遠藤を招待したのは、春恵らしい。
・相沢忠道は、社長として、一家の主としての責任を感じているようだ。
・荒城禎人はパーティの最中、『冬』の庭のほうに行ったのを目撃されている。
・井関悠と三菱アリカもふたりそろって席を外した。

「ま、こんなところか…」
 草間が煙草に火を付ける。
「誰が犯人か、とりあえずそれがわかればいいってことでしょう?」
 譲の言葉に、全員がうなずいた。
 動機なんて、人の心なんてわかりっこないのだから。
「私たちに出来るのは、犯人を法で裁くことだけだわ」
 シュラインが、傍らの星弥を抱きしめる。
「ねぇ、草間さん。あなたはもう、犯人の見当がついているのではなくて?」
 慧蓮が尋ねると、草間は不敵な笑みを浮かべた。 

 浮かべたが、ただそれだけだった――。
 

壊れた季節の中で【完結編】 につづく

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■      登場人物(この物語に登場した人物の一覧)    ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【0365/大上隆之介(おおかみ・りゅうのすけ)/男/300歳/大学生】
【0366/高橋理都(たかはし・りと)/女/24歳/スチュワーデス】
【0375/小日向星弥(こひなた・せいや)/女/100歳/確信犯的迷子】
【0487/慧蓮・エーリエル(えれん・―)/女/500歳/旅行者(兼宝飾デザイナー)】
【0505/工藤和馬(くどう・かずま)/男/27歳/パイロット】
【0523/花房翠(はなぶさ・すい)/男/20歳/フリージャーナリスト】
【0555/夢崎英彦(むざき・ひでひこ)/男/16歳/探求者】
【0588/御堂譲(みどう・ゆずる)/男/17歳/高校生】
【0599/黒月焔(くろつき・ほむら)/男/27歳/バーのマスター】

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■              ライター通信               ■
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 担当ライターの多摩仙太です。
 皆様、ご参加下さいまして、どうもありがとうございました。
 たいへん長らくお待たせしてしまい、申しわけありません。
 次からはこのようなことのないように努力いたしますので、これに懲りずによろしくお願いいたします。

 さて、いよいよ調査も終了、犯人は誰かという事件の核心に迫っていくわけですが…皆様、見当はおつきでしょうか?
 物語の中にたくさんのヒントや、あやしい言動がちりばめられていますので、よく読んでみて下さいね。
 ちなみに、どなたからもプレイングをかけていただけなかった部分の謎については、全て残されたままになっています。
 草間に話を聞く、と言う選択肢もあったのですが、盲点でしたでしょうか?
 完結編での皆様の推理を楽しみにしております。

 今回10名の方に参加していただいて、中には核心をついたプレイングをかけていただいた方もいらっしゃいます。
 個別メッセージを書いてしまうと、さらにヒントを提示してしまいそうなので、今回は申し訳ないのですが、個別メッセージは割愛させていただきたいと思います。
 本当に申しわけありません。
 ただ、参加して下さった皆様に持つ、同じくらい大きな感謝の気持ちは変わりませんので、このライター通信を持ちまして、感謝の言葉に代えさせていただきます。
 どうもありがとうございました。

 次回【完結編】への参加は、もちろん強制ではありません。
 よろしければ、ラスト1回、お付き合いいただけると嬉しいです。
 それでは、また。