コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:館〜第四室〜
------<オープニング>--------------------------------------
 この地にそびえ立つ年季の入った館。
 その玄関先に、女は立っていた。
 年の頃、二十歳過ぎだろうか。
 生気を失ったその顔には、満面の笑い顔が浮かんでいる。
「ふふふ……」
 女は風に髪を振り乱しながら、中へと入っていく。
「四室目……騒霊ね」
 そして女は館の中へと消えていった……。

 今日は良い天気だ。近頃運動不足の草間が柔軟体操をしているところに、カラスが一羽やってくる。
「お、カラス……。ん? なんだこりゃ!」
 カラスがくちばしにくわえていたのは、館からの招待状だった。
 おそらくこのカラスは使い魔として使われたのだろう。
 用を終えたカラスは、その場にぐたりと横たわり、痙攣しながら死んでしまった。
「く、惨いことを……」
 招待状を開けると、
『第三の関門突破、おめでとうございます』
 この文が付け加えられた。
 そして問題の達筆文字だが、これといった変化はない。
 細かく見てみれば、英文字でSと言う文字が一文字、はっきりしたというくらいだ。
 それ以外の文字は、先日と同じ様子だった。
「ふう、また密室のゲームかよ」
 いい加減、草間はキレそうになるのを抑えながら、仲間を待つことにした。

◎下準備
「館では、十二神将を呼び出すことができない、か……」
 草間興信所に向かう都築亮一(つづき・りょういち)と神崎美桜(かんざき・みお)。今日も二人は一緒だった。
「亮一兄さん、何を考えているの?」
 美桜は今日は元気ハツラツだった。この前の落ち込みも解消し、今日こそは他人に迷惑を掛けず、何でも積極的にやってみようという思いで一杯だった。今日のアムタはランボーの服を身につけて、美桜の頭の上で大人しくしている。
 都築に至っては、なにやら考えがあるらしく、その場に立ち止まった。
 周囲に人は居ない。ここなら、呼び出せそうだ。
「よし、美桜、少し離れていてくれ」
「亮一兄さん?」
「十二神将を呼び出す。外なら安全だからな」
 そして亮一は、神気を高め、呪を唱えながら十二神将をずらりと召喚した。
「うわぁ、凄い……」
 その中でも、一番美桜が目を惹いたのは、白虎だった。いままで十二神将というものを知らなかっただけに、その感慨もひとしおのようだ。
「ねえ、亮一兄さん。このふわふわの毛並みの虎さん、私、気に入ったんだけど」
 もうこうなると、都築も弱い。美桜に甘いのは、彼女の目である。物欲しそうな目が、都築の父性本能ともいうべきものを、くすぐるのだ。
「はあ、分かったよ。とりあえず白虎は、お前のマスコットに封印しておこう」
「え? この羊さん? じゃあ、はい」
と渡されて、都築は白虎をマスコットの中に封印した。
 すると美桜の手が伸びてきて、その羊のマスコットを都築からひったくった。
「うふふ。ふわふわの白虎さん! 私だけのものだよ〜」
「ああ、美桜! まったく、仕方ないやつだな……」
 実のところ、都築は今日に至っては重装備だった。神気を弾丸にして打つことの出来る銃「ミカヅキ」と阿弥陀如来心経をびっしりと書いたハリセンを背負っていた。
 前者は都築が使うモノだが、後者はいざというときのために美桜に渡して使って貰うために所持したモノだ。
 一番良いのは、これらを使う事がないことを祈るだけ。
 都築は十二神将の残りを送還し、美桜と共に草間興信所へと向かった。

「ふう、やっぱりシュラインの作るメシは旨いぜ」
 草間はシュライン・エマの作った昼食を全部平らげていた。
「当たり前でしょ。これでもあんたの好みに合わせて作ってあげてるんだから。アルバイト代も上がれば言うことないけどねぇ」
「それは今は出来ない相談だな。こちとら、いまのところ安っぽい事件ばっかりだし。なによりも、また主から招待状が来ていたぜ、そういえば」
 シュラインは、嫌そうな顔を隠しきれない。まさか来ているとは、思わなかったからだ。
「え〜、また行くの?」
「謎を解くには、それしかない。今回は英文字でSと言う字が変形した形で浮き出ていた」
「Sねぇ。それってさ、何かの暗号か合図なんじゃない?」
「さてね。とりあえず、こういうときは例の二人もくるんじゃないかな?」
 呼び鈴が鳴る。噂をすれば何とやら。訪れたのは、都築と美桜だった。
「よう、お二人さん。待ってたぜ」
「ちょっと遅くなりましたかね?」
と、都築が問う。
「いいや、俺もちょうどメシを食い終わったところさ。二人は? メシは食ってきたのか?」
 美桜が割って入った。
「途中で食べてきたんです。外食ですけどね。でもカツ丼美味しかったです!」
「そうなのか。それは良かった」
 都築は招待状のことを話に出す。草間は、カラスが主の使い魔として使われ、それを持ってきたこと、その後に死んだことを話した。
「かなりの呪力を持っているようですね、主は」
「それより、死んだカラスさんが可哀相……。私、絶対主を許さない!」
 血気盛んになる美桜。シュラインが助言する。
「そうよね、カラスは無事に用を足した。それをそのまま殺すなんて、非常識にもほどがあるわ!」
 いきり立つ女性陣。草間と都築は、今後どうすればいいかという作戦行動のはなしをする。
 都築は解読不能の文章に囚われるよりも、このゲームを終わらせて、主を引きずり出すのが先決という方針を固めていた。
 確かにその通り。あとどのくらいのゲームが待っているか分からないが、十分な準備で望むのが懸命だろう。
 招待状には『第三の関門突破、おめでとうございます』の文字があった。あとどれだけ遊ばせてくれるのか、楽しみでもある。
「よし、役者が揃ったところで、館へ直行するぞ」
 草間が結界鞭を持ちながら言う。各人も準備は万端だ。
「じゃあ、みんな、行きましょう。遅れをとらないでね」
 シュラインが全員に号令をかける。
 そしてまた、四人は主の待つ館へと出向くのだった。

◎青の部屋
 ノッカーを叩く草間。それからはいつものように傀儡である執事が出迎えた。
「ようこそおいで下さいました。さあ、お入り下さいませ」
 これで四度目。執事の言葉にも、さほど変化はない。
 廊下を歩いているうちに、今まで攻略した三室が開かずの間として釘打たれている。勝利の証だ。
「今回はこちらの部屋でございます」
 案内されたところは、壁と床が真っ青。だが今までと違うのは、窓と天窓があることだった。
 ちょっとした離れの部屋なのだろう。窓の外は中庭が見える。天窓を見ると、陽の光が降り注いでいた。ちょっとしたリゾート気分である。
「では、ここで一晩お過ごし下さい。食事は出ますので。失礼致します」
 執事が出て行った後も、四人は思いがけない部屋に圧倒されてしまっていた。
 しかし、やけに目立つのは調度品の数々。サイドテーブルに本棚、おまけに裁縫道具や調理道具まである。これは何を意味するのか。
 霊波による会話が始まった。主の声だ。
『ようこそ、皆さん。きょうもお揃いのメンバーのようですね』
 都築が応える。
「なぜこんな部屋を用意したんですか? 何の意味があるんですか、これは」
『おや? 喜んで頂けると思ったのですが、私の勘違いでしたか?』
 シュラインが疑惑を持ちながら問う。
「どうしてこんな部屋なのかってことよ。あんた、私たちにゲームをやらせたいんでしょう? だったらもっと殺伐とした部屋に送るべきじゃないの?」
『ふふふ、面白い方達。とりあえず、くつろいで下さい。あとで紅茶の差し入れを致しますので』
 それからの主とは、話が出来なかった。
 どうやら、何らかの罠があるのは間違いなさそうだ。しかし、これだけの良い部屋でゲームとは、一体何をやらかそうと言うつもりなのか。
 暫くして、執事が紅茶とケーキを持ってきた。人数分、しっかりと。
「主からの差し入れでございます。ごゆるりとご堪能下さいませ」
 それだけを言って、また去っていく執事。
 少しの間だけ、全員固まっていた。これこそ罠に違いないという先入観があったからだ。
 しかし、我慢できなくなって最初に手を付けたのは美桜だった。甘いモノには目がない美桜。
 その次にシュラインが、草間が、都築がというふうに、紅茶とケーキを貪るように食べてしまった。
「ふう、旨かったぜ。へっへ、今日はリゾートだな」
 草間が少し悪びれながら、そんなことを呟いた。
「そうですね……。でも、何だか……眠くなってきましたよ……」
 都築が欠伸をしながら、その場に突っ伏してしまう。
「あ……、私も……」
「私もです……」
 続いてシュライン、美桜が突っ伏した。
「おい、みんな……、うう、眠気が……」
 草間が一番最後に突っ伏した。それから全員、静かな寝息を立ててしまう。
 主が言う。
『ゲームはこれから。さて、どうなるでしょうかねぇ』

 目を開けた時、草間の顔にヒタヒタと水がこぼれ落ちてくるのを発見した。
 一番最初に目を覚ましたのは草間。
 そして部屋の様子が、がらりと変わっていることに気が付いたのだ。
 調度品が浮いている。天窓からは、さっきまであれほど天気が良かったのに、雨が降り注いでいるではないか。
「おい! みんな、起きろ! ゲームは始まっている!」
 都築、美桜、シュラインは、雨の水滴によって目覚めた。そして眼前に展開される様子に、ただならぬ気配を感じたのである。
「これは、ポルターガイストです。それにしても、道具の数が多すぎる!」
 都築の指摘通りだった。そしてナイフやフォーク、鋭利なものがどんどんとこちらに向かって飛んでくる。
 このままでは危険だ。そう察知したとき、都築は例のハリセンを美桜に渡す。そして自分は背中からミカヅキを取り出して、神気を溜めて撃ちまくる。
 草間も結界鞭で向かってくるモノを封印するが、あまりにも数が多い。
 シュラインも美桜と一緒になって、ハリセンを代わる代わる交代しながら向かってくるモノを叩き落とすが、まったく持ってキリがない。
 都築は、最後の手段に出ようとしていた。
「このままじゃ、拉致があかない……。美桜! アムタと白虎を封じ込めたマスコットを貸してくれ」
「何をするの? 亮一兄さん!」
「下がっていてくれ、みんな。主よ、俺は気に入らない物は、徹底的に排除する人間なんですよ」
 アムタが都築の頭に乗り、マスコットの中から白虎が飛び出す。そして特殊な呪を唱えると、陰の四神である、騰蛇、六合、天后、太陰が召喚される。その威力によってポルターガイスト現象は完全にストップし、暴れていた調度品は跡形もなく全てが消え去った。
「へえ、やるじゃないの、都築ちゃん!」
 シュラインが感嘆の声を発した。
 陰の四神は、役目を終えると次々と姿を消した。この様子に草間も美桜も目を見張るばかりで、することがなかった。というより、あまりの威力に度肝を抜かれたというところか。
 終わると、アムタは一匹でお気に入りの美桜の頭へと乗り移った。白虎も一旦マスコットの中に封印される。
「ああ、そうだわ。天窓どうしようか。さっきまであんなに晴れてたのにねぇ」
 シュラインが美桜と一緒に困った顔で上を見上げている。
「……変だな。ガラス、閉じたままなんだぜ。どうして雨が入ってこられるんだ?」
 草間が謎めいた疑問を出す。
「これも呪結界がなせる技、ということですか。また雨が降ってこないうちに、天窓を封印しておきますか」
 都築は大きめの御札を二枚取り出した。
「都築ちゃん、その封印、私にもやらせてよ」
「亮一兄さんばっかり活躍、ずるいです。私たちにもやらせて下さい!」
 シュラインと美桜は都築から一枚ずつ御札を取ると、開閉式ベッドの上に立って、それを貼り付ける。これで、一安心だ。
 やがて食事が来て終わった後、恒例の帰られるかの瀬戸際である儀式を草間が始めようとしていた。
「あっと、ちょっと待って。アイツってさあ、猫じゃない? マタタビに弱いと思うんだけど」
「あ、私も同じ事考えましたよ。投げつけてみましょうか」
 シュラインと美桜は、あらかじめ持ってきたマタタビを用意して、すでに準備万端である。
「じゃ、いくぜ!」
 草間は扉を開けた。
 するとなんと、猫は遠いところにおり、それを察知して凄い勢いでこちらに突進してくる。
「それ、今だ!」
 号令する草間。女性陣はマタタビを投げつけるが、着地した場所が、出入り口のすぐ側。
「ニャ〜、ゴロゴロ」
 もう少し遠くに投げつけていれば良かったのだが、こんなに近くでは、帰る事すらままならない。無理に出ようとしても、猫の図太い顔に阻止されるだけだ。
「だめだな、仕方ない。今夜も一晩寝るとしよう……」
 草間は扉を閉めた。
「あ、亮一兄さん」
「ん? 何だ? 美桜」
「白虎出してもいいでしょう? あのふかふかの毛並みが気に入っちゃったの。せめて一緒に寝たいなと思って……」
「ああ、いいよ。草間さん、シュラインさん、構いませんか?」
 その問いに、ふたりはOKを出した。これで何の気兼ねなく、白虎と寝られる美桜。
「あはは、気持ちいい。じゃ、おやすみなさい、皆さん」
 一番に寝付いたのは、美桜だった。
 残りの三人は、これからの主のゲームについての方針を練るものの、さしたる手だてもなく寝るばかりとなった。

『おはようございます、皆さん』
 四人は既に朝を迎えて起きていた。中庭の見える窓を見ると、空が白んでいて、もう少し眠れる時間帯だったが、彼らはそれほど悠長ではない。
『お帰りでしょうか?』
「ああ、そうさせてもらうぜ。ここで眠るのは、もうこりごりなんでね。ベッドも枕も悪いし」
 草間が悪びれながら言った。
『そうですか。その点に関しては留意しておりませんでしたので。また招待状をお送りしますので、ゲームを楽しんで下さい』
 都築が続けざまに言う。
「あの文字、何という文字なのか、ハッキリさせて貰えませんか? 答えて下さい」
『前に言ったはずですよ。あなた方には絶対に読むことの出来ない字であると。それと、深い考えはよした方がいいですねぇ』
「やはり、あなたを早々に引きずり出した方が早そうですね。では、失礼します」
 四人は館をでた。少し霞がかかっているが、たいしたものではない。
「ふう、あの猫さえ避ければ、こんな時間になるまで滞在することないのに……」
「まったくですね、シュラインさん」
 シュラインも美桜も、文句タラタラだ。それは男性陣も変わりない意見なのだが。
「さて、まだメシが残ってたよな、シュライン。みんなに朝食を振る舞ってくれ。OK」
「ふふ、OKよ。みんな、早く帰りましょ」
 こうして厄介な一つのゲームをクリアした四人は、興信所へと帰っていくのだった。

                       FIN

□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0086 シュライン・エマ(しゅらいん・えま) 女 26歳
         翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
0413 神崎・美桜(かんざき・みお) 女 17歳 高校生
0622 都築・亮一(つづき・りょういち) 男 24歳 退魔師
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
○都築さん、神崎さん、7回目のご登場ありがとうございます。
○シュライン・エマさん、6回目のご登場ありがとうございます。
○今回もとんでもないゲームに巻き込まれた4人でした。
しかし、陰の四神なんてあるんですか? 聞いたことがない……。
○申し訳ありません、シュラインさん! 私、シュラインを姓、
エマを名として使っていました。大変失礼いたしました。お詫び申し上げます。
○次回より不定期を止め、定期的に受注を受付致します。
曜日は月曜と木曜の午後10:00まで。次回は木曜の午後10:00までに
手続きを完了して頂ければと思います。また、遅れましても窓口は開いております。
焦らずプレイングして下さい。
○月曜日の受注ですが、月曜・火曜と窓口が開いております。時刻は同じです。
○いずれにしましても、決まった曜日での発注をお願いしたく存じます(時刻とも)。
○残すところ、あと3回となりました。すこしだけ傾向を申しますと、
1回は普通、あと2回は解決編に向けてと言う感じになると思います。
○それでは、近いうちにまたお会いしましょう。
                       夢 羅 武 市 より