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ヴァンパイア幻想
「僕を殺してください。お願いします」
このような内容のメールが、何人かの「異能者」のメールアドレスに届いた。
メールの送り主・桜庭奇跡という少年は、吸血鬼らしい。
彼は一人の人間の女性と愛し合っている。
しかし、彼女は、不老不死の吸血鬼にはなれない。
霊的な素質が低かったため、それを行おうとすると理性を失ってしまうのだ。
二人は「それだったら、共に死にたい」と言っている。
さあ、どのような救いが、彼らにもたらされるのだろうか。
「初めましてこんにちは。僕が、依頼した桜庭です」
桜庭奇跡は、唐縞黒駒と大塚忍に指定した店に現れた。
まだ若い…10代後半の、少年とも青年とも取れる外見だ。
横には、美しい女性がいた。
「あの、受け取って思ったんですが、死ぬのなんてやめたほうがいいです。生きてこその人生ですし…」
黒駒が奇跡に言う。
「死にたい訳ではありません。ただ、吸血鬼としての力…不老不死の力を持ち続け、引き裂かれるのが嫌なだけです」
「そうなの。もし、彼が人間に戻れれば、こんなことも依頼する必要ないわ」
奇跡の言葉に続けて女性が言う。
「…そうですか。それなら可能ですよ」
「本当ですか!?」
「ええ。吸血鬼としての全ての能力と代償に、人間にすることが出来ます。ボクの持っている力で」
(そう簡単に行くかしら)
大塚忍は黙って聞きながら、この間からの一連の吸血鬼事件に現れた、『十二使徒』のことを思い出していた。
吸血鬼でありながら、吸血鬼を狩ろうとする者。
彼らが、奇跡のことを聞きつければ、殺そうとするだろう。彼らにとってはおそらく、仲間以外の全ての吸血鬼は悪なのだ。
…ガシャン。
ガラスが割れる音がした。
同時に、彼らのいる空間だけが、現実から隔離される。結界の類だろう。
「えへへ、見つけた〜」
中学生が、ガラスが割れた窓から入ってきた。
しかし、明らかに普通の子供とは違う。
「まったく、手間がかかったよ」
「…十二使徒!?」
奇跡が目を見開く。
女性は何が何だか判らずに、おろおろしている。
「何で…何で十二使徒が!?」
「全く…死にたいのなら、人間になんて頼まずに、ボクらに任してくれればよかったのに…」
どうやら奇跡には、十二使徒と戦えるだけの力はないらしい。
「何者なんですか、あなた」
何も知らない黒駒が問う。
「ボク?ボクは、マタイ。ヴァンパイアハンター集団『十二使徒』の一人だよ」
「…何故、彼を狩ろうとするんですか。彼は悪い吸血鬼ではありません」
「?…馬鹿だなあ。吸血鬼狩りは楽しい遊びだもん、相手がいい吸血鬼か悪い吸血鬼かは関係ないよ」
そう言うと、マタイは銀の剣…ロングソードの類と思われる…を取り出し、奇跡に斬りかかった。
(どうやら、私が会った十二使徒の仲でも一番タチが悪いらしいわね)
前回のリリムさん騒動の時に会った使徒の一人・パウロも忍にとって気に入らない存在だったが、今回のマタイという使徒は、気に入らないとかそういう問題ではない。
彼は、吸血鬼を殺すことを、遊び、と言った。
あまりにも、残酷すぎる。
これも、幼さが成せる業なのか。
彼の残酷さは、純粋ゆえの残酷さなのか。
「あはは、下手に抵抗するより、さっさと死んだほうが痛くなくていいよお」
奇跡は必死に抵抗している。
忍はもちろん、黒駒にも成す術がない。
彼らは、戦闘を得意としてはいないのだ。
だから、このような状況になっても手が出せない。
「やめて、やめてえええええええええっ!奇跡を、奇跡を傷つけないで!」
女性が泣き叫ぶ。
しかし、その声はマタイには届きそうもない。
「マタイ。いい加減になさい」
そこに声がかかった。
「ヨハネ…」
声の主は、以前忍の前に現れた使徒の一人・ヨハネであった。
「…死にたくない者を無理に殺害する必要はありません。それに、彼には、愛してくれる人もいますから」
そう言ってヨハネは、女性を見た。
「ご迷惑をおかけしました」
マタイを連れて、ヨハネはその場から去っていった。
同時に、四人を包む空間が、現実へと戻る。
奇跡は、黒駒の力で人間になることが出来た。
…しかし、彼と、彼の愛する女性が、幸せになれるのかは、まだ判らない。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0418/唐縞黒駒/男/24/派遣会社社員
0795/大塚忍/女/25/怪奇雑誌のルポライター
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■ ライター通信 ■
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すいません、マタイが何か変なキャラに…。
「今度の使徒は美少年ショタ路線で行こう!」とか思ったら、こんなことになりました☆
某ゲームの羽フェチ美少年の影響か…(爆)。
どうも、初めまして今日和、蒼華珠璃です。
…美少年大好きです(待て)。もちろん美青年も大好きですヨ。
個人的な趣味でやってるTRPGも、私のキャラは美少年ばっかです。
極貧超高所恐怖症高校生スパイとか、ジダンやベッカムすら余裕で超えるサッカー少年な調査分析タイプロボとか、元不良の高校生陰陽師とか、心霊探偵のバイトをしている謎の格闘高校生とか。
わはははは、趣味丸出し(笑)。
では、どうでもいいことで終わってしまいましたが今回はこの辺で。
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