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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


息抜きの果てに訪れたモノ
■オープニング

「はいっ?」
「…ですからね? 先日の騒動の時の事を爺やと相談したのだけれど…
鈴夏さん、お見合いしていただこうと思って」
「…どーしていきなりそうなるんですか、母様。
見合いなんてしなくてもあれで十分落ち着きましたし…」
「いいえっ、鈴夏さんには落ち着きが必要です! とにかく相手の方は
物凄くいい方だし…話、だけでもね?」

にっこりと微笑う母の姿に鈴夏は溜息をついた。
見合いなんて冗談じゃない。
まだ、高校生で仕事ばかりしているのも嫌なのにこれで無理矢理くっつけさせられた
暁には……自由が無さ過ぎる。
…人生は、まだまだ先が長いのに!!

そういうわけで。
鈴夏は見合いをぶっ壊してくれる人を探すために久々にゴーストネットに書き込んだ。

…これで、来ない場合は仕方が無いから自分で頑張ろうと決めながら。


*ちょこちょこと、お久しぶりですの秋月です。
今回のは形式的に「息抜きしませんか?」の続編と言う形になりますが…
参加希望の方は、プレイングにお見合いを基本的にぶっ壊したい、
弓弦・鈴夏との今までの付き合いで彼女の母親に嘘をついてみたいとか(笑)、
連れ去ってみたい等、色々書いてくださると幸いです。
無論、彼女に興味がある方等もどうぞ♪
男性・女性問わず大歓迎です(^^)


■見合い当日―弓弦邸―

「…嫌だって言ってるでしょ〜!!」
「その様なことを言われましても…もう当日でございますしなあ。
ささ、お嬢様こちらのお召し物になさいますか?それともこちらで?」
にこやかに笑いながら「黙れ」的オーラを発している爺やに弓弦は大きく溜息をついた。
勿論、聞こえるようにするのが目的の溜息だ。
ぴくり、と爺やの眉が動いた。
「…お嬢様、そのようになさっても爺やは考えを改めませぬぞ。
とりあえず、逢うだけお会いしなされ…奥様もお待ちなのですから」
「…だからっ、ああ、もう!!」
弓弦がキレかけ符を投げそうになったその時。
それよりも素早く、老人とは本当に思えぬ速さで弓弦の手から符をもぎ取った。
「おっと、お嬢様本日は符の方回収させて頂きますぞ。
見合いの席で暴れられては困りますのでな…今日は大人しくお人形の様にお願いしますぞ?」
「……冗談じゃないってのよ」
「左様。冗談ではありませぬ…ふむ、こちらのお召し物の方が宜しいようですな。
すぐに着付けの方呼んで参りますゆえ…ええと…」
「爺や?」
「まだ残ってるかもしれない符も回収させて頂きます」
「…徹底的ねえ」
「油断してはならぬと前回思い知りましたのでな?では…」
符の全てを回収され、弓弦は再び大きな溜息をついた。
傍にある携帯電話が軽く音を鳴らす。
メール着信の音だ。
「…来てくれる方たちの事を信じるしかないか……」
場所と時間は既にもう教えてある。
後は、その通り上手くぶっ壊してくれるか、どうかを望むだけだ。
息を吐く。
小さな式神が揺れる。
「…式神くらいなら作れるのよねえ…符がなくても。
一応壊せない時があったらその時は宜しくね?」
式神は小さく頷くと、再び大気へと融けた。


■見合い前―壊す?壊さない?―

「…へえ、弓弦さんが見合い…ねえ」
ゴーストネットの書き込みを見て御堂・譲は口ごもった。
さらさらとした茶色い髪に触れながら、天井を見る。
まあ確かに暴れすぎたかもだけれど……。
まるきり、知らない相手でもないし前回「息抜き」と称した妙などたばた騒ぎに
参加したこともある。
あの時の彼女を見て「なんか凄く大変そうな…」と思ったのも事実である。

「よし、決めた!」

譲は品の良い微笑を浮かべると参加するんで場所とか後ほど教えて欲しいとの
旨を書きこんだ。
動きとしては弓弦の母親に嘘をつくか婚約者のふりでもするか。
譲本人も地元に帰れば由緒正しい家柄だったりするので弓弦の母親もこれには
ぐうの音も出ないだろうし、譲の父親自身も地元の名士だったりするのだ。

(あ、でも……)

これで身動き取れなくなっても辛いかな?
苦笑交じりの笑いながらも、想像していた所に突然の着信音。
しかも…電話をかけてきた主は…無視しようか、いっそのこと。
いや、どうせまたかかってくるに違いないのだから面倒は一遍で済ますべきか?
譲は少しばかり唸り、声だけは愛想良く電話に出た。

「もしもし?」
「譲かい?ボクだけど♪」
楽しげな声が受話器を通して伝わってきた。
美声、といえるほどの美声の声は神坐生・守矢。
譲の従兄弟でありフラワーショップKanzakiの店主でもある。
譲は、表情が見えないであろう受話器の向こうで顔を顰めながら、一句一句
ハッキリと区切りながら叫んだ…何処かで無駄とは知りつつも。
「…その声は…駄目ですからね!!今度は僕だけで行きますからっ」
が、敵も然る者引っ掻く者で。
再びくすくすと笑った。
「そんなつれないことを行っちゃあいけないな、譲…実はボクもさっき
そこの掲示板に参加希望しちゃったし♪」
「げっ……」
「げとはなんだ、げとは。優しいお兄様に向かってその仕打ちかい?」
「………はあ」
「どうせ墓穴掘るんだから、ボクが居たほうがいいだろう?」
「墓穴掘るってのはどういう意味ですか、どう言う」
「いやあ、例えば弓弦さんの母親に気に入られたりとか?そういう事もあるわけだろうし?」
「……お見通しですか」
「譲のことだからね」
「…はぁ。解りましたよ、ご一緒いたしましょう守矢さん……」
「流石に物分りが良くて助かるな♪じゃっ」

かかってきた時と同様にいきなり切れる電話に少しばかり渋い顔をしながらも
譲はお見合いの場の事を再び、考え出した。
表情が心なしか楽しげな物へと変化していくのを抑えられずに。

一方、フラワーショップの方では守矢も今回の件は、弓弦の母親からの攻撃は
自分が引き受けた方が良さそうだと考え始めていた。
…どう、弓弦がぶっ壊すのかそれが見物かもしれないと少々小悪魔めいた考えになりながら
守矢は唇の端をゆっくりと、誰も気付かない範囲で上げると入ってきた客へ
極上の笑顔を向けた。


場所は変わって。
喫茶店「Moon-Garden」
神無月・征司郎と言う青年が父親から譲り受けた店であり、紅茶や珈琲が
美味しいと評判の店でもある。
が、中でも評判がいいのは征司郎本人だったりするのだが、彼自身は
どこかにこやかな笑みを浮かべつつ、その評判をやんわりと否定したりもしていたけれど。

彼は本日少々遅れた休憩時間を取りつつネットを彷徨っていた。
何か新しい種類の紅茶や珈琲など入ってないかと確認しつつ、最後に
ゴーストネットの掲示板を見ると、妙に懐かしい名前の書き込みがあるのに
驚き、その書き込みを見ると書き込んだ本人がどういう訳なのか見合いをさせられるという。

「…やっぱ、あの時は動きすぎましたか…見合い…ねえ?」

あの時の事を思い出しながら、ぽりぽりと人差し指で頬を掻く。
このような手段に彼女の親が出るとは思わなかったが、まあ、すぐに結婚がイコールで
結びつくわけではないのだから見合いの一つや二つ、人生経験でしてらっしゃい!と
言いたい気分では、ある。
が、あの時息抜きに一緒にいた事もあるし少しぐらいは協力した方が良いかもしれない。

弓弦には見合いを遠慮なくぶち壊してもらって。
その後のフォローに年長者としてまわるというのも楽しそうだし……。

「参加しましょう♪だから、心ゆくまでぶち壊してくださいね、弓弦さん(笑)」

征司郎は参加の意を示すべく掲示板へと楽しげに書きこんだ。
にこにこと笑う笑顔が、いつもより一層楽しげになっている事に気付きつつ休憩時間の
ネットを終了させた。


■見合い前―とある喫茶店にて―

「初めまして、鈴夏ちゃん。あたしは愛。宜しくね♪」

にっ、と形のいい唇を艶やかな微笑に変えながら藤咲・愛は弓弦へと
簡単に名前を告げた。
唇と同じように艶のある髪といい表情といい、その華やかな存在感といい、弓弦は思わず声につまる。
本当にこのような美女が、こんな依頼に参加してくれるとは思いも寄らなかったのである。

「んで、早速なんだけれどゴーストネットの書き込みの事…なんだけど……
ねぇ、鈴夏ちゃん。今好きな男性とかはいないの?いくらお見合いだからって、
逢ってすぐに『ハイ、結婚!』なんて決めるものでもないし、
一つの出会いとして受け止めてみたらどうかしら?」

ひくっと弓弦の顔が微妙に歪んだ。
顔にはアリアリと「そんな出会い、真っ平ゴメンよっ」の文字が浮かんでいる。
愛は、それを見てますます笑みを深くする。
面白くなりそうだ。
ここまで、何故嫌がるのか解らないがそういう事は、今問題ではない。

「ふふ、お見合いするのイヤなのね?ホーーッホッホッホッ!
あたし、喜んでお見合いの席ぶち壊してアゲル☆
今の前口上はあなたの気持ちを確かめたかっただけ♪
あたしの本心としては、こんな面白い依頼、ぜひとも遂行したいと思ってるの」
「本当ですかっ?」
「勿論よう♪作戦については…まあ、今は内緒ね?鈴夏ちゃんにも解らない方が
楽しみだと思うし…ふふふ、あたしの演技力にご期待あれ☆」
「は、はい♪あ、じゃあ当日楽しみにお待ちしていますね?
ええと場所は…ここです」
「おっけー♪じゃあ、また当日ねっ」

こうして女性二人は喫茶店を後にして、別れた。
どう言う演技をしてくれるのだろう、弓弦はそれを再び思いながら空を見上げた。
もう夕方だと言うのに、空はまだ青い色を残している。


■見合い当日―嵐の前の静けさ―

「…鈴夏さん、もう少し愛想よくなさい」
「無理です、こんなキツイ着物着せられて愛想よく出来るわけないじゃないですかっ」

場所はとあるホテルの一角。
お茶を飲みながら、ゆっくり…と言うことで催されているそれに
弓弦は仏頂面で応対していた。
…何故なら、まだ来ると言ってくれた面々が来ないのである。
…まさか何処かで爺や達の妨害にあっているとか?
…あまり、考えたくない事ではあるが有りえないことではない。

(…こうなったら実力行使しかないか…やっぱ…)

式神は色々なところに配置させてある。
逃げようと思えばすぐに出来るし、目の前の男性も殴ろうと思えば出来る。

やっちゃう?と思った瞬間。

その面々はやってきた。
嫌でも人目を引く豪勢な集団が。
譲、守矢、征司郎共に、スーツに身を包んでいるが、少しばかりそれが
埃っぽい様な気がするのは気のせいだろうか?
遅れてゆっくりと歩み寄る愛も、少しだけ疲れたような、笑みを弓弦へと向けた。

「鈴夏さん、僕がいるのにお見合いするなんてちょっと酷いんじゃない?」
最初に口を開いたのは譲。
その言葉に弓弦の母親の顔も強ばった。
さらさらとした髪に青い瞳の造作の整った、この人物が一体誰だと言うのだろう?
「…失礼ですが、どなたです? このような席に立ち入るのも無礼ではないですか」
「ああ、失礼しました。御堂と言います…こちらの鈴夏さんとお付き合いさせて頂いてまして…
ね、鈴夏さん?」
「はい、だからお見合いは嫌だって……」
言ったでしょう?と言い終わらないうちに口を突っ込んできた者がいた。
前回、息抜きのときに散々邪魔された爺やである。
やはり、侵入を阻もうとしていたらしく、お付きの者共と同じように肩で息をしている。
ぜーぜーと言う息がこちらまで苦しくなりそうなほどに痛々しい。
「奥様っ、騙されてはなりませんぞ! その方とお嬢様はお付き合いなどしておりませぬ!」
「…嫌だなあ、爺やさん。もうちょっと、へばっててくれればいいのに」
譲はぼそっと呟いた。
守矢もおかしそうに、うんうんと頷いている。
征司郎は…と言えば、フォローにまわっている…と言うか肩で息をしていた面々に
ボーイから奪い取ったお冷やとおしぼりを差し出していた。
大変でしょうけれど、頑張って下さいね♪と言う一言も忘れずに。
…奇妙な沈黙がその場に訪れた。
まるで水を打ったかのように。

見合い男性の、横にいた女性が困ったように口を開きかけた――その時。

愛が、機敏に相手の男へと動いた。
必死でその人物に取りすがる。
「ヒドイッ!あたしというものがありながら、こんな小娘とお見合いだなんてっ!
あたしに飽きたのっ?…いいわ、言い訳でもなんでもして。
でも…でも、このお腹の子はあなたの子なのよぉぉっ!!」
愛の迫真の演技にぎょっ、としたのは男性ばかりではない。
周りにいた、弓弦のお付きの人物や母親、爺やに至るまで非難の目を男性へと向けてしまっていた。
男性が慌てて首を振る。
「ぼ、僕は貴方の事など知りませんが…」と、言いながらこの場を逃げるように後退していく。
…身に覚えがあるのだろうか?
いや、無いにしてもあるにしても、このような美女を前に泣かれては逃げるしかないような物だが。

…小刻みに弓弦の母が震えていた。
最初に話し掛けた青年といい、その青年の横にいる青年やフォローに回っているだろう青年、
そして、まだ泣いている、と見られる女性に少しばかり、何かが彼女の中で切れた。
…人、これを理性の糸、という……。

「…鈴夏さん?」
「はい?」
「今日と言う今日は、母も堪忍袋の緒が切れましたッ!!
この母があれほど真剣に探していたと言うのに貴方という子はッ!!」
「だ、だって……」
「だっても、案山子もありませんっ!」
「ま、まあまあ弓弦さんのお母さん…」
「…貴方は誰なのです先ほどからフォローに回っているようでしたが」
「はあ、喫茶店を営んでます神無月・征司郎と申します。
弓弦さんには、いつもお世話になってまして…ああ、これ以上怒っちゃいけません。
彼女だって、まだ高校生なんですし……」
「いいえっ、この子には落ち着きが必要です!!」
征司郎の最後の言葉に再び、ぷつりと理性の糸が切れたのかまた母親は大きな声を張り上げた。
やれやれ、と守矢も征司郎と一緒にフォローに回る。
譲と愛はと言うと、こちらは弓弦の方へと回っていた。
「落ち着き、落ち着きと言いますけれどボクから見れば弓弦さんは充分に
頑張っていますし…まあご心配なのも解りますが、これ以上言うと弓弦さんも切れますよ?」
「……こっちが一生懸命に頑張っているのに子供って……」

溜息。
肩を落とす母親に征司郎は再びボーイから飲み物を取ると、そっと差し出した。
表情には、いつもの様に落ち着かせる何かを持った笑みを浮かべながら。

「…取り乱してすいませんね、お二方」

最後に弓弦の母親はそう呟いて漸く表情を柔らかくさせた。


■後日談―結局の所―

「…で、ぶっ壊したと言うか…上手く行った訳なんだけれど…鈴夏ちゃん、満足?」
「うんっ」
「そ?ならあたしも嬉しいわ♪」
にこにこと晴れやかな顔をしている女性陣2人に対して、男性陣はと言うと。
「「「…弓弦さん」」」
地から響くような声を喉から出していた。
「全くもう…あんな、いいお母さんを怒らせて心が痛まないんですかっ?」とは征司郎。
もう既に、娘に説教するようなお父さんの心境でもってとくとくと弓弦に
何かを言っている。
「と、言うより、ぶっ壊すのなら弓弦さん本人ではなく男性に言えば
面白い結果になったんだよな……藤咲さんの事、教えてくれてたら
僕、もう少し引っ掻き回せてあげてたのに」は、譲である。
彼にしたら、もうちょい引っ掻き回して遊びたかった感があるのだ。
守矢のフォローが背後にあるのなら、家のことを出してもそう困らないだろうと言う
考えもあったのだけれど。
「まあ確かにそれも面白いかもしれないけど…その前に弓弦さん、ボクも神無月さんと
同意見ですよ?弓弦さんが切れるかも…と言うので退いてくれましたけれど
あのように、お母さんを悲しませちゃダメです」
「…つまり、神無月さんと神坐生さんが言いたいのは……」
「「見合いくらい、大人しく受けてらっしゃい今後は」」
綺麗に両者はハモると、にっと笑った。
それにつられるかのように、愛が艶やかな笑みを浮かべて「あっはっは、参ったねえ♪」と
弓弦に微笑みかける。
譲も「ま、次回は手助けしないかもしれないけど頑張れ」と
弓弦へ、かなりきつい釘を打ったのだった。



―End−

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0489 / 神無月・征司郎 / 男 / 26 / 自営業】
【0564 / 神坐生・守矢 / 男 / 23 / 花屋】
【0588 / 御堂・譲 / 男 / 17 / 高校生】
【0830 / 藤咲・愛 / 女 / 26 / 歌舞伎町の女王】
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■         ライター通信          ■
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こんにちは、秋月です。
最近、梅雨もあけて随分と暑い日々が続いていますが皆様
お元気でしょうか?
私は、なんと言うか暑さに負けております(汗)

さてさて、今回の依頼参加有難うございました!!
神坐生さん、御堂さん、神無月さんには以前と同じく
参加して頂いて本当に嬉しかったです♪
特にお三方のプレイングは本当に絶品で……ええ(^^)
このような美形三人衆に構ってもらえて家のNPCは本当に
幸せ者ですっ。

そして藤咲さん、初めての参加有難うございました!
ちょいとキャラを見させていただいて「おお!」と
叫んでしまいました…嬉しくて♪

ではでは、今回はこの辺で。
また、何処かでお会いできることを祈りつつ。