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炎の料理人!
●オープニング【0】
ある日の夕方、アトラス編集部に立ち寄ると、何故か部屋の片隅に野菜の入った段ボールやクーラーボックス等が置かれていた。
「あら、ちょうどいいところに来たわね。ちょっと手伝ってもらえる?」
編集長の碇麗香が、こちらに気付き声をかけてきた。
「これ? 今夜の取材で必要なのよ」
えっと……ここって料理雑誌の編集部じゃなかったと思うんですけどー。
「知り合いのクッキングスクールなんだけど、近頃幽霊が出るらしくって。それが何でも、料理人らしいのよ」
料理人の幽霊ですか? 確かにクッキングスクールにはお似合いだと思うけど……。
「ジャンルははっきりしてないんだけどね。未確認だけど、複数居たなんて噂もあるし。それで調べてほしいってうちに話が来た訳。知り合いだから無下に断れないし」
なるほど、事情は分かりました。でも、この大量の食材はいったい?
「料理人相手なら料理バトルでしょ。あ、お金のことは大丈夫。向こうに全額出させたから」
麗香はさらりと言い放った。
何とも呆れる話だが、普通に料理をしに行くのも面白いかもしれない。他の人の料理も食べてみたいし、幽霊の料理も食べられるかも――?
●準備開始【1】
調査場所となるクッキングスクールの外では、つい先程から大粒の雨が降り出していた。
「間一髪だわ」
やれやれといった様子でつぶやく麗香。編集部を出るのが少し遅れていたら、ものの見事に雨に濡れていたことだろう。
「で。どこに置けって?」
野菜の入った段ボールを抱えていた綾小路蘭丸が麗香に尋ねた。
「そうねえ。その辺に適当に置いておいて。あ、クーラーボックスも同じ場所に」
室内をきょろきょろ見回しながら言う麗香。さすがクッキングスクール、一度に大勢の人数が調理出来るような造りになっている。
「雑用させられるとは聞いてねぇぞ」
ぶつぶつと文句を言いながらも、蘭丸はどかっと近くのテーブルに段ボールを降ろした。意外と大きな音がしたので、テーブルのそばに居た志神みかねがびくっとした様子で振り返った。
「雑用も仕方あるまい。タダ飯を……ごほん! 否、霊との交渉を円滑に図るためだ」
肩にクーラーボックスを下げていた真名神慶悟が、段ボールの隣にクーラーボックスを降ろした。この2人が荷物持ちをさせられていたのはまあ仕方のないことだった。この場に居る12人の中で、男手は蘭丸と慶悟の2人のみだったのだから。
「三下くんが居たら全部持たせてたとこだけど、あいにくまだ取材から帰ってないのよ」
特に誰に説明するでもなく麗香が言った。いつも不幸な三下だが、たまにはこういう幸運もあるらしい。
「そういえば、出る前にここのことを少し調べてみたんだけど」
シュライン・エマがメモ帳を開いて調べた内容を話し始めた。ざっと概要を調べただけなので深い内容ではないが、ここにクッキングスクールが出来る前は有名料理店があり、遡ってゆくと明治頃からずっとここには何かしら料理店があったとのことだった。
「調べられる限りでは、特に不幸があったようでもないみたい」
シュラインはそう締めくくってメモ帳を閉じた。その説明の間、ベバ・ビューンは椅子の上に乗って段ボールやクーラーボックスの中身をごそごそと調べていた。何故ここに子供が混じってるのかという疑問はあるだろうが、気にしてはいけない。別段取材に支障をきたす訳ではないのだから。
「でも料理人の幽霊が出るなんて、何だか面白そうね!」
「そうです、幽霊さんと料理対決なんて面白そう☆」
そう言って盛り上がる滝沢百合子と七森沙耶。
「えっ? 幽霊が相手なんて聞いてない……」
そんな2人の様子を見て、みかねが不安げな表情でつぶやいた。心なしか、沙耶の方に視線が向いていた。
「幽霊さんであっても、上手な料理を作ってくれ、しかも教えてくれるなら全然おっけーだ。上手だったらその技、盗んでみせるっ」
矢塚朱姫がぐっと握りこぶしをして言った。つくづく、動機は様々である。
「あたしもこれを美味しく調理したいのだけれど……」
首回りに錦蛇を巻き付けている巳主神冴那が、手にしていたビニール袋を覗き込んでいた。無表情ゆえによく分からないが、どうやら思案しているようだ。
ビニール袋の中身も気になる所だが、錦蛇のせいか冴那のそばにはあまり人が近付いてこなかった。
「お着替え終わりました〜♪」
ファルナ・新宮の明るい声が室内に響く。何気なく視線を向けた者たちは、今のファルナの格好に目をぱちくりさせていた。
「たまたまお料理しにくい服装でしたので〜」
ほわほわと言い放つファルナ。その姿はエプロン姿――素肌の上からエプロンをつけただけの姿だ。俗に言う裸エプロンである。傍らではメイドのファルファが、黙々とファルナの衣服を畳んでいた。
「あー……それはちょっとやりすぎじゃないかしら?」
麗香がファルナを窘めようとしたその時、室内に笑い声が響き渡った。
●料理バトルだ!【2】
「ふふ……ふはは……ふはははは! 感じる、感じるぞぉっ! 我に戦いを挑む者どもの波動をぉっ!!」
室内の前方に白い靄が集まり始める。慶悟が懐に手を入れ身構えた。
「面白い! 面白いぞぉっ! 我と料理の腕を競おうではないかぁっ!!」
白い靄はたちまち人の形となり、一同の目の前に和食の板前風な青年が姿を現した。
「で……出たぁっ!」
驚き百合子にしがみつくみかね。閉まっていたクーラーボックスの蓋がいきなり開き、段ボールを覗き込んでいたベバの後頭部を直撃した。
「あぐっ!」
ベバの顔が段ボールの中にずさっと沈み、朱姫が慌ててそれを救い出す。
「ふーん……見るからに腕前のいい料理人って感じね」
シュラインが相手を見定めるように視線を向けていた。視線に気付いたのか青年が不敵に笑みを浮かべた。
「ふふ……流れ流れて幾年月。久々にこの腕を振るう日が来るとは喜びの限り! 流れ板・鉄二、その腕をお見せしよう! いざ尋常に勝負!」
すっと右手を上げる鉄二。すると手の中に柳刃包丁が現れたではないか。今度は左手をさっと上げた。手の中には出刃包丁が。やる気満々のようだ。
「……どうして幽霊なんかになっちゃったの?」
疑問を口にする百合子。鉄二は待ってましたとばかりに説明を始めた。
「それはもちろん、我が料理をより多くの者に食べてもらうためだ! 肉体は滅びても、料理への情熱は決して滅びん!」
「危険はなさそうだな」
警戒を解く慶悟。鉄二は危害を加えるようにも見えず、無理矢理料理を食べさせる訳でもなさそうだった。ただ純粋に腕を競い、料理を振る舞いたいだけなのだろう。
「料理バトルの準備して正解だったわね」
麗香がくすっと微笑んだ。……恐るべし麗香。
「ともあれ霊相手だからな。何かあった時のために俺は待機しておく」
慶悟は椅子に腰掛け煙草をくわえた。そして火をつけようとしたのだが――蘭丸が慶悟をぎろっと睨み付けた。それ以外にも冷ややかな視線を感じたので、慶悟はライターをポケットに仕舞った。
「料理のジャンルは決まってないんですか?」
沙耶が鉄二に尋ねた。
「無論だ! 和洋中、それ以外でも何でも構わんぞ!」
「じゃあ、アレでもOKですよね☆」
楽しそうに言う沙耶。……そこはかとない不安を感じるのは気のせいだろうか?
「ふふふ……鬼平の旦那にも褒めていただいたこの鉄二の腕前、決して侮るなかれ!」
「鬼平?」
シュラインが意外そうにつぶやいた。鬼平といえば、たぶん火付盗賊改方のあの人のことだろう。
「食材は何でも使っていいから。自前で持ってきてる人も居るみたいだし」
麗香が皆をぐるり見回した。冴那がまだビニール袋の中を覗き込んでいた。
「私は試食に専念させてもらうわ」
「あ〜、『うまいぞ〜!』と叫んで、口の中から光を放つんですね〜」
「それ、違うし」
ファルナの言葉に、麗香は冷ややかに突っ込んだ。
「よし! 料理勝負だぁっ!!」
鉄二が高らかに叫んだ。いよいよ料理バトルの開始である。
●腕前は上々【3A】
料理バトルが始まって早30分以上。ブロックによって、歴然と腕前に差があった。
「……っと」
蘭丸がくるんっとフライパンの上のオムレツをひっくり返した。卵の混ぜ方が違うのか、ふわふわっとして柔らかそうなオムレツだった。
「喫茶店を経営してるって聞いたけど……腕前は確かみたいね」
麗香が蘭丸の手元をひょいと覗き込んで言った。
「これだけじゃねぇぜ。デザートもあるからな」
蘭丸はオムレツを皿の上に移すと、水洗いした野菜の水気をざるで切った。サラダも作るようだ。
「熱っ……」
百合子は炊きたてのご飯でおにぎりを作っていた。具は梅干し、かつお、昆布に鮭など様々である。ふとした弾みで手の甲についたご飯粒を、時折ぱくっと食べる仕草が何とも可愛らしく見えた。
「残ったら碇編集長や三下さんのお夜食にでも……」
ご飯はかなりの量を炊いていたので、おにぎりの数もかなりの量になるのは間違いなかった。
「……ん。こんなものかしら」
煮物の味を見ていたシュラインは小さく頷いた。シュラインは野菜の煮物や焼き魚といった、懐かしの日本の食卓といった料理を作っていた。百合子の作っているおにぎりと、何とも合いそうだ。
そこへ鉄二がふらりと現れ、自分にも味見をさせろと言ってきた。小皿に煮汁を取って味見させるシュライン。
「甘味が足らん!」
一言それだけ言うと、鉄二は自分のテーブルへと戻っていった。
(甘味が足らない?)
首を傾げるシュライン。これ以上甘味を入れると、煮物の味がおかしくなると思うのだが……。
ともあれ、このブロックは腕前の上々な者が集まっていたようだ。
●楽しい試食☆【4】
皆の調理が終わり、テーブルの上には多種多様な料理が並んでいた。
「さ……皆で食べて、どの料理が1番か決めましょ。ああ、審査委員長は彼だから」
麗香が納得のいかない様子の慶悟を指差した。皆が調理中に、何かやり取りがあったらしい。
「ふふ……間違いなく我が料理が1番だと思うがな!」
鉄二が自信満々に言い放った。
「まずは俺の料理からだ」
1番手は蘭丸だった。蘭丸の作ったのはふわふわのオムレツにサラダ、それとあまり焼いていないトーストにコンソメスープだ。
「トーストにオムレツを挟んで食べると美味いから、試してみてくれ」
蘭丸に言われるままに、トーストにオムレツを挟み食べる一同。あまり焼いていないトーストの香ばしさと柔らかさ、それがオムレツの柔らかさと相まってすごく美味しい。
「家でも試してみたくなるわね」
もぐもぐと食べている麗香。この料理、お気に入りのようだ。
「デザートはチョコレートパフェ。フレークの代わりに、ほろ苦いチョコスポンジ仕様だ」
チョコスポンジの苦味が、上手くクリームの甘さを抑えていた。
「えへ☆」
嬉しそうにぱくぱくとパフェを食べるベバ。女性陣にはパフェの方が好評のようで、瞬く間にパフェは減っていった。
「あー、美味しかった……」
口元をハンカチで拭う百合子。次は百合子とシュラインの番だった。
「上手く合いそうだったから、合わせ技で一度にどうぞ」
シュラインが皆に小鉢を配ってゆく。中には野菜の煮物が入っていた。シュラインが作ったのは野菜の煮物と焼き魚だ。
「まさしく家庭の味だな」
慶悟がシュラインに空の小鉢を返した。あっという間に食べてしまったようだ。シュラインは苦笑いを浮かべ、お代わりをよそった。
「この焼きおにぎり、香ばしいですねっ」
みかねが百合子の作った焼きおにぎりを手に感想を述べた。嬉しそうに微笑む百合子。百合子は普通のおにぎりを作るだけでなく、醤油や味噌で味をつけた焼きおにぎりも作っていたのだ。
「焼きおにぎりに、出し汁をかけて食べるのもまた美味しいのよ」
麗香が指についたご飯粒を舐め取りながら言った。おにぎりの難点はこういう部分か。
「えっと……次は私のですね」
3番手はみかねだった。みかねが作ったのは魚の煮物……のようだった。
「『志神風魚の煮物風料理?』です」
微妙に語尾が上がっていたのが気になるが、魚の煮物で合っているらしい。ちなみにみかねの衣服は、何故か粉まみれになっていた。
「…………」
無言で食べる冴那。美味しいのかどうか、その表情からははっきりとはしない。
「食えないことはねぇな……」
首を傾げながらも食べる蘭丸。一応不味くはないらしい。みかねがほっと胸を撫で下ろしてつぶやいた。
「これで取り憑かれて呪われなくて済みます……」
いや、それは何か違うと思うんだが。誰もそんなこと一言も言ってないし。
●危険な試食【5】
「どんどん佳境に入ってゆきますねっ☆」
楽しそうな沙耶。その楽しさが、一部の人間を不安にさせていた。
(何作ってたのかしら……嫌な予感がするけど)
シュラインは以前の鍋のことを思い出していた。あの時もかなり大変だった。
「次は私の料理だ。カレーを味わってほしい」
4番手は朱姫だった。ご飯を皿に盛り、カレーをかけてゆく。見た目はまあ普通のカレーだ。具の形と大きさが少しいびつに見えるが。
「どれどれ……」
慶悟は一口ぱくりと食べた。そして無言のまま皿を置くと、ごくごくと水を飲み始めた。その表情は険しい。
「うわっ……だだ甘いっ」
「何、この辛さ……!」
水を飲みに走る者が続出した。そんな中、ファルナだけは笑顔でにこにことカレーを食べ続けていた。
「レシピ通りに作ったんだがなあ。皆も朱羽や北斗と同じことを言うのだな」
原因が分からず思案顔の朱姫。普通はレシピ通りに作ったならこんなことはないはずなのだが……何とも妙な話である。
「試食が終わったら、やはり直にご教授いただくべきか……」
朱姫は後で鉄二に料理を教わるつもりらしい。その鉄二だが、口に合わないのか試食をしては首を横に振り続けていた。
「今度は私ですね〜」
5番手はファルナだった。ファルナの作ったのはフォアグラのトリュフソースがけ、キャビア添えだった。見栄えはよく、高級感が漂っていた。
「盛り付けはファルファです〜。はい、あ〜んしてください」
そう言い、ファルナは皆に食べさせようと、一口大に切ったフォアグラをフォークに刺した。ターゲットは近くに居た蘭丸だった。
フォアグラを食べる蘭丸。しばし口元が動く。
「どうですか〜、美味しいですか〜」
蘭丸に身体を密着させ、無垢な笑顔で反応を待つファルナ。答えの代わりに蘭丸は、その場に崩れ落ちた。白目を剥いている。
「あら〜、気絶する程に美味しかったんですか〜」
蘭丸の介抱にかかるファルナ。一瞬の沈黙の後、麗香がさらっと言い放った。
「……6番手は誰かしら」
その声に、静かに手を上げたのは冴那だった。冴那の作った料理は、何かの肉の煮物のようだった。白菜が被さっているので、形がよく見えないのだが。
「初めての手料理……」
ぎこちない笑みを浮かべる冴那。『初めて』という単語に、皆が警戒した。が、それでも食べる勇者は居る訳で。
「鶏肉……のようだな」
肉片を食いちぎる慶悟。味付けは醤油のみであれなのだが、食材自体の味は悪くない。それを聞いて皆も手を伸ばす。何の肉かという疑問はあったようだが、食材の味は好評のようだった。
「ダメだ、ダメだ! どいつもこいつもなっちゃいない! 我が腕を超える者は居ないようだ!」
鉄二が情けないといった様子で叫んだ。
「まだ分かりませんよ。最後は私たちのお料理です☆」
自信ありげな沙耶。7番手は沙耶とベバの作った料理だった。
●カタストロフィ【6】
「私たちのお料理は『夏バテ防止沙耶風闇鍋』です☆」
料理名を聞いて、シュラインや慶悟、そしてみかねの顔色が一瞬にして変わった。
「ああああ、あれなんですかぁ〜っ!」
頭を抱えるみかね。そばに重ねられていた皿が何故かガチャンとひっくり返った。
料理名だけを聞いて、どんな物が出てくるかは想像がつく。シュラインも慶悟も同様であった。
その3人の様子で、他の者も何となく身の危険を感じ始めていた。その間に沙耶が熱々の鉄鍋を運んできた。無気味な匂いが辺りを漂い始める。
「どうぞ召し上がれ☆」
「えへ☆」
皆に勧める沙耶とベバ。青緑色の液体に、得体の知れない物体がぷかぷかと浮かんでいた。なかなか誰も食べようとしない。
「……審査委員長、よろしく」
麗香が慶悟の肩をぽむっと叩いた。
「これも陰陽の定めか……ならば受け入れるとしよう。四象八卦・陰陽の理よ、我に正しき導きを……! 急々!」
慶悟は鉄鍋に箸を突っ込み食材をつかむと、そのまま口の中へ運んだ。13秒後――脱兎のごとく、慶悟はトイレへと走り去っていた。
「次よ、次。彼のを食べさせてもらおうじゃない」
何事もなかったかのように話を進める麗香。
「ふふ……我が鳥鍋は1度食べれば決して忘れ得ぬ味だ!」
鉄二が鉄鍋を運んできた。美味しそうないい匂いが漂ってくる。鉄鍋には鶏肉とねぎ、それとごぼうが入っていた。何ともシンプルな鍋だ。
「いただきますね〜」
蘭丸の介抱をファルファに任せ、最初にファルナが鳥鍋を食べた。笑顔で食べ続けるファルナ。美味しそうな匂いが示すように、味も大丈夫らしい。
「幽霊さんのお料理……いい匂い」
「さぞかし美味しいんだろうな」
目を輝かせている百合子と朱姫。匂いを嗅いでいるだけでお腹が空腹になってくる。
そして皆も鉄二に取り分けてもらい、鳥鍋を食した。すると、だ。
「うっ……!」
3秒で麗香がテーブルに突っ伏した。
「うぐ……」
5秒でシュラインが床に崩れ落ちた。
「あう〜……」
7秒でみかねが卒倒した。
「…………!」
11秒で朱姫が口元を両手でしっかと押さえ、何処かに走り去った。
17秒後にファルナが、笑顔のまま後ろへとぶっ倒れた。
「ふはは……どうだ気絶する程美味しいだろう! 何しろ鬼平こと鬼川平助殿、お気に入りの味だからな!」
鬼平違いかという突っ込みはさておき、鉄二の鳥鍋の味について説明しておこう。匂いこそ美味しそうだったが、その味付けは朱姫に100倍以上輪をかけた酷さであった。鬼川平助なる男もそうだが、この鉄二もどのような味覚をしているのか問い詰めたくなる酷さだった。
平然と食べているのは、沙耶とベバ、それに冴那の3人だけだった。
「生の方が好きかも……」
鶏肉をもぐもぐと食べながら、冴那がぼそっとつぶやいた。
「どれ、この鍋を食べるとしようか!」
鉄二が沙耶の闇鍋を食した。一口食べ、崩れ落ちる鉄二。瞬殺だった。
「ふふ……白い灰になっちまったぜ……」
どこぞのボクサーのような台詞をつぶやく鉄二。幽霊だから死にはしないが、それでもダメージがかなり激しかったようだ。
どこからともなく10カウントの鐘が聞こえてくる。立ち上がっている者を勝者と定義するのであれば、沙耶とベバ、それと冴那が今回の料理バトルの勝者である。
しかし……料理バトルって、こんな勝者の決め方でよかったのだろうか?
【炎の料理人! 了】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【 整理番号 / PC名(読み)
/ 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0057 / 滝沢・百合子(たきざわ・ゆりこ)
/ 女 / 17 / 女子高校生 】
【 0069 / ベバ・ビューン(べば・びゅーん)
/ 女 / 子供? / 不明 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
/ 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト 】
【 0158 / ファルナ・新宮(ふぁるな・しんぐう)
/ 女 / 16 / ゴーレムテイマー 】
【 0230 / 七森・沙耶(ななもり・さや)
/ 女 / 17 / 高校生 】
【 0249 / 志神・みかね(しがみ・みかね)
/ 女 / 15 / 学生 】
【 0376 / 巳主神・冴那(みすがみ・さえな)
/ 女 / 妙齢? / ペットショップオーナー 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
/ 男 / 20 / 陰陽師 】
【 0550 / 矢塚・朱姫(やつか・あけひ)
/ 女 / 17 / 高校生 】
【 0640 / 綾小路・蘭丸(あやのこうじ・らんまる)
/ 男 / 27 / 喫茶店『時の間』のマスター 】
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■ ライター通信 ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全10場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は、整理番号順で固定しています。
・お待たせしました、書いていて無性にお腹の空いてきたお話をお届けします。食べてみたい料理がいくつかありましたからね。
・それはそれとして、皆さんのプレイングを調整していったら何故かこのような結果に。今回幸運だったのは、この場に居ない三下くんだったのかもしれませんね。いや、後で麗香にいぢめられてるかもしれませんが。
・あ、流れ板幽霊の鉄二ですが、技術はありますがはっきり言いまして味覚があれでした。
・シュライン・エマさん、22度目のご参加ありがとうございます。ええ、とんでもない料理を作った方居ました。ちなみに銭湯の後の草間ですが、引っ掻かれたか殴られたか、もしくは冷ややかな視線にいたたまれなくなったかのどれかだと思います。前者は肉体的に、後者は精神的にきついものでしょう。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。
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