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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:館〜真実〜
------<オープニング>--------------------------------------
 草間は仕事に手が付かなかった。
 この何週間の間に、あの不気味な館のゲームに疲れてしまった、と言っても良い。
 仲間がサポートしてくれたが、それでもメンタル的な疲労は、近頃芳しくない。
 その時、呼び鈴が鳴った。
 出てみると、見たこともない女性が、玄関先に立っていた。
「草間武彦さんですね? これをお届けに参りました」
「え? 俺に? いや、こりゃどうもわざわざ済みません」
「では、私はこれにて」
 女性はそのまま出て行ってしまった。
 渡されたのは封筒。しかも瀟洒な作りで封蝋までしてある。どうやら高貴な女性のようだった。
 しかし。それを紐解いてみると、中には今までの招待状の一部、つまり達筆な文字の部分と、新たに書かれた招待状の二通が入っていた。
『全ての関門の突破、誠におめでとうございます。つきましては明日の日中、館の方に赴かれることを願っております。そこで、謎も解かれることでしょう。お待ちしております。リナージュ・ブラド』
 達筆だった手紙の内容は、大方浮き出ていた。しかし、何と読むのか、どういう意味なのかは、草間には分からなかった。
「まさか、さっきの女性は主だったのか?!」
 こうして、謎は解かれようとしていた。

◎意外な招待者
「今日、みんなに集まって貰ったのは、言うまでもない。これだ」
 草間はシュライン・エマ、都築亮一(つづき・りょういち)、神崎美桜(かんざき・みお)に、昨日の夜に女性から貰った新たな招待状を見せた。
「リナージュ・ブラドねぇ。私も色々調べてみたんだけど、どうも何人かの妾とその子供がいるみたいよ。その子孫かも知れないわ」
 シュラインは、図書館に行ってそれなりの知識を持ってきたらしい。それにしても、なぜブラドの子孫がこの日本に居て、館で密室のゲームなどをやらせたりしたのか。それが各人分からない点でもあった。
「それにしても、美桜ちゃんその聖歌服似合うわねぇ」
 美桜は一足遅く来た。ミサがあったので、都築から電話を貰い、終わり次第興信所に行くと告げておいたのだ。今日のアムタは聖歌服姿である。
 それからは都築から白いコートをもらって羽織り、大人しく話を聞いているという次第だ。
 都築にも変わりはない。だが沈黙から発する館の主への怒りは、日増しに強くなっていく一方だった。
 シュラインとしては、その館の主が何を考えているのか、分からずじまいに終わりそうだったが、ここに来て新たな招待状が来たと言うからには、黙ってもいられない。
「よし、約束は今日の日中。今が突撃のチャンスです。これを皆さんに渡しておきます」
 都築が筒から出してきたのは、攻・防一体型の護身刀。これを皆に一振りずつ渡す。都築自体も防護コートで強化し、完全に白兵戦にいくような出で立ちとなる。
「よし、あとは結界鞭で準備万端だな」
 そんな時に、シュッシュッとやっているのは、シュラインである。
「きっとね、猫ちゃん出てくると思うのよ。その時はこれでイチコロ。どう?」
 お馴染みのマタタビスプレーである。さて、今回は効くのだろうかと、疑問に思う他の者達。

 四人は興信所を出て、約十五分の道を歩き、そして館へと辿り着いた。
 だが、すこしばかり様子が変だ。玄関が扉が開いているのだ。
「それじゃ、俺は五鈷杵を置いてきます……」
 その時だ。強い霊波が聞こえた。
『もう、そんな小細工はしなくとも大丈夫ですよ。さあ、お待ちしておりました。どうぞお入り下さい』
 玄関から先を見ると仕掛け階段は上げられ、丁度奥に中庭に繋がる窓があった。
『突き当たりのドアを開いて、入ってきて下さい。ここは中庭です』
「みんな、行こう!」
 四人はひたすら歩き続ける。
 そして奥の扉を開いたとき、思わぬ光景に出くわした。
 純白の円いテーブルと椅子に座る、白のブラウスにフレアスカートを着た美女がそこにいた。
 向かったところにも、四人分が余裕で座れるテーブルと椅子が設けられている。
「みなさん、ご機嫌麗しゅう」
 畏まってみせる美女、館の主に呆気に取られるのだった。

◎謎の解読、そして……
「ああ! あんた、昨日の夜の!」
 草間は驚嘆の声を出した。そう、新しい招待状を持ってきた本人だったからだ。
「皆さん、改めて初めまして。リナージュ・ブラドと申します」
「ブラドか……、あんたも串刺し公ブラド・ツェペシュの亡霊か?!」
 都築が責める。
「はっきり言ってしまえば、そうだと言わざるを得ません。ですが、私は妾の子の血を継いでいますから……」
「どうしてあんなゲームを俺達にさせた?」
「あれは、あなた達を試したものです。正式に六道のゲームをするには、それなりの魂の契約が要りますから」
 四人は試されたと聞いて、愕然とした。一体何のために、試されたのだろうか。
「俺達を試した? 六道のゲーム? どういうことなんだ?」
 草間が問う。
「それは、あなた方が私の片腕になってくれるか、という意味です。この日本は腐りきっている。特にこの東京は。だからこそ浄化しなければならないと思ったのです。ですが、私の力はまったく及ばない。だからこそ、勇者と呼べる者を探して、試したのです」
 なるほど、それで前回の隠し階段を上った部屋にあった死体は、そのなれの果てというワケだ。
「興味があるな、六道のゲームというのは、何なんだ?」
「私が研究しているものです。輪廻転生を賭けた、本来あってはならない、禁呪のゲームです」
「そ、そうなのか。それは恐ろしいな……」
 草間は少なからず震えた。
 リナージュは、背中ごしから出てきた猫を見せた。
「どうやら、この猫に皆さん恨みを抱いているのではないかと思いまして」
 都築とシュライン、草間が燃える目でその猫を睨み付けた。
「ではお膳立てを。ムシュラン、インジュラム」
 すると猫はライオン程度の大きさになる。十分戦える大きさだ。
 美桜は、リナージュが言った言葉が気がかりでならない。ムシュラン、インジュラム。これは何を意味するのか。
 美桜を除いた三人は、白虎も狩り出して早速戦闘へともつれ込んだ。
「リナージュさん、さっきの言葉、どういう意味なんですか?」
「ムシュランは、私の愛猫の名前、インジュラムは、大きくなりなさいという意味なの」
「聞いたことがない……。え? それじゃあ、あの解読不能の文字は? 教えて下さい!」
 戦闘が険悪化してきたのを察知したリナージュは、すぐに号令を掛けた。
「おやめ下さい!」
 三人の力は、とてもムシュランでは太刀打ちできなかったようだ。防戦一方で、人間達に虐められているようなものだった。
 そしてだめ押しだったのは、都築がムシュランを叩き斬ろうとしていた事だった。
 ムシュランはサッサと帰ってきては、元の姿に戻る。そして三人も、少し猫相手にやりすぎたことを後悔するのだった。
「すまなかった。あんたの猫を殺してしまうところだった……」
「いえ、あの場で私が言っていなかったなら、皆さん理性を忘れていた事でしょう」
 リナージュには悪いことをした。これは三人とも反省しなければならない。
「さて、穏やかに謎解きをしていきましょう。美桜さんにも促されましたしね」
 草間が封筒から出した、浮き出た文字。何と読むのかさえ分からず、お手上げ状態だった代物だ。
「都築さん。あなたは単語を見出したと言いましたが、いまだに意味はわかっていないようですね?」
「BiSiTですね、分かりません」
「これはバイザイトと呼びます。日本語では悪夢という意味です」
 シュラインは、この長ったらしい文字が、どういう意味なのかを尋ねる。するとリナージュは簡単にそれを呼んだ。
「日本語で、草間武彦様 我が命に従い、あなたを当館に招待し、厚くもてなすことを所望致します リナージュ・ブラド。これが全貌です」
「でも、これって、見ない字だわ。英語とも違うし、どの言語とも違う……」
「ブラド文字は、自ら作られる字ですからね。この世界では、ブラド文字だけは、本人にしか解読出来ないでしょう。そういう特色を持ったものですから」
 これでやっと謎は解明した。晴れて帰られるというものである。
「ふう、私もそろそろ行かねばなりません。今度は少し落ち着いた場所で、余生を暮らします」
 シュラインと美桜が口々に言う。
「その歳で余生かい? まだまだ若いよ、あんた」
「そうですよ、きっとまだいろいろなことがあると思います。諦めちゃダメです!」
「ありがとう、シュラインさん、美桜さん。さあ、あなた達とはお別れしなければなりません。都築さん、そして草間さん。私のワガママに付き合ってくれて、どうもありがとう」
 都築と草間は、静かに頷いた。
「お元気で、リナージュさん」
「達者でなぁ、リナージュさんよぉ」
 その途端、館がぐらぐらと揺れだした。呪結界が滅んだのだ。
 だが、怪我人一人無く、この館から脱出できた。草間達四人は見るも無惨になった瓦礫をみて、改めて謎の存在がこの世にあることを思い知らされた。

「あ、白い星……」
 館の中庭当たりから飛び立った白い星の中に、人の影が見えた。リナージュ・ブラド、不思議で人当たりの良い意外な人物だったことを知る。
「草間さん。先入観とは恐ろしいものですね。俺は相手がてっきり、完全なる悪人だと思いこんでいました。まだまだ修行が足りませんね……」
「いや、そんなことはないさ。ここにいるみんながそう思っていたに相違ないぜ、な、シュライン、美桜さん」
 女性陣二人は素直に頷いた。
「さて、謎は全部解けたワケだ。もうこういうのは勘弁だぜ」
「まったくです。俺も今回ばかりはやられましたよ」
「私も……。ゲーム自体が疲れたからね」
「でも、皆さんに大きな怪我が無くて良かったです。アムタのお陰ね、ね、アムタ」
 美桜はアムタを撫でた。
「さて、今日はシュラインに料理して貰おうかな。四人分できるかぁ?」
「ええ、いいわよ。都築ちゃんに美桜ちゃん、食べて帰るでしょ?」
 二人は控えめに頷いた。
「帰ろうぜ。今日は帰ってゆっくりしたいもんでね」
 こうして四人は、瓦礫の山と化した館を後にするのだった……。

                  FIN

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0086 シュライン・エマ(しゅらいん・えま) 女 26歳
         翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
0413 神崎・美桜(かんざき・みお) 女 17歳 高校生
0622 都築・亮一(つづき・りょういち) 男 24歳 退魔師
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■         ライター通信          ■
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○都築さん、神崎さん、10回目の御登場ありがとうございます。
○シュライン・エマさん、9回目の御登場ありがとうございます。
○謎解きが終了し、このシリーズも終焉を迎えました。
参加して下さった三名様、誠にありがとうございました。
これもひとえに三名様のご協力があったからこそと思っております。
○これはお詫びと訂正ですが、第一室から本作品まで誤字脱字が
ありました。申し訳ありません。
○今後の私の予定ですが、投稿用小説に舞台を移すため、しばらく
お会い出来ないかとおもいます。もしかするとそのまま会えなく
なる可能性も秘めております。誠に申し訳ございません。
○短い期間でしたが、みなさんと遊べてとても楽しかったです。
一生の思い出となることでしょう。
○それでは、またいつかどこかで出会えることを祈りつつ。失礼致します。
                       夢 羅 武 市 より