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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


『はじめてのおつかい2』

●オープニング
「花梨、財布ちゃんと持った?」
風邪をひいた母は花梨におつかいを頼んだ。
「うん!!」花梨は笑顔でうなずいた。
花梨は先ほどからいろいろと心配してくる母に、
なぜそこまで心配するんだろうと少々疑問に感じていた。
「じゃーお母さん、行ってくるね」
花梨は元気よく出かけていった。
花梨の母親が心配しているのは花梨の取り付かれやすい体質
というところだ。
昔、悪霊を倒していた母にとって、自分がそばにいる際は
安心だか花梨が一人になると無防備状態になり
最悪の場合、命にだってかかわってくる。
それが心配で花梨には大人になるまでは絶対に話さないと心に
誓っている。
そこで、ゴーストネットの掲示板にサポートを依頼する事にした。
そこに記された点をまとめてみよう。

・花梨は取り付かれやすい。
・大人になるまで花梨には絶対秘密なので見つからないように退治。
・花梨に一人でおつかいをさせたいので接触は避けてください。

この3点が重要なポイントである。


●時間勝負?!!

暑い中、待ち伏せを開始してから10分ほどたった。
七森・慎(ななもり・しん)が何かに気づいた。
あらかじめもらっておいた写真と見比べている。
空木・栖(うつぎ・せい)も慎が持っている写真を見た。
写真はとてもかわいらしい女の子で地毛の茶色い髪は肩にかかっているかどうかくらいだ。
「あの子じゃないか?」栖が指を指した。写真通りの子供だ。
本能寺・花梨(ほんのうじ・かりん)という名だ。
「幼い少女を狙うような輩に、遅れをとる訳には行かないだろうな」
栖は自分自身に気合を入れるかのように言った。
「おれは、俺も同感!」慎も納得した。
「接触については、俺の妹も・・沙耶も取り憑かれやすい体質だ。
母親の気持ちはよく分かる」慎はそんな事を口にした。
「妹?妹いるんだ、慎さん」栖が興味を示すように言ってきた。
会話をしているそのうちに花梨がアパートの階段から降りてきた。
「行くか、栖。」栖に慎が声をかけて出発した。
慎はノンフレームの伊達めがねとダークグレーのスーツ、に携帯電話を持った。
そして念のため子猫の形をした式神を放った。
「おおー、慎さんかっこいいなー」栖が少し感心するように言った。
そして栖は美しい鳥に変身し慎の肩に止まった。
「栖は鳥かーきれいだなー。」栖にはこんな特技がある事を慎は知った。
そして慎は花梨を追い始めた。栖はとまる時は慎の肩にとまり低飛行で始めは
追いかける事にした。
「・・はやいな」栖が周りを気にしはじめた。
「まー霊感が強い人や乗っ取りやすい人ほど霊は近づいてくるからな」慎ももちろん
霊の気配には気づいていた。そして栖は元に戻り構え戦闘体勢の準備に入った。
慎も自分の刀を手にした。
「よっし、がんばるかー」栖は少し楽しそうに言った。
霊がふよふよとこちらに2体近づいてきた。

『・・お前ら・・私が見えてるようだな・・』
『見る限り邪魔をするようだな・・倒す・・』

その2体はどちらとも男性だ。栖が右で慎が左の退治をする事にした。
もちろん、あまり動く範囲がないので困難な技術が要求されるが移動して花梨との距離をあけるわけには行かない。慎が携帯の時計をチラッと見た。
「栖、3分・・いや2分で片付けような」慎の言葉に栖はうなずいた。
先手をきったのは栖のほうだ。
霊が栖に邪気を放ってきたが武道を得意とする栖は上手によけていく。
慎は占術により未来を洞察し、天命を読んでいるためくる前によける事ができている。
「慎さん、もしかしたらもっと高記録かもしれないな」
栖が笑いながら言った。
栖も慎も悪霊との距離を確実に狭めていく。
「とりゃっ!!」慎は悪霊に切りかかった。うまく急所をつき退治をした。
「ここだ!」栖は悪霊の急所を逃さずにぶつけた。
2人は無事に倒す事ができた。
「よっしゃ!慎さん、2分以内だよな?」栖が確かめるように聞いてきた。
慎は携帯を取り出し時間を見た。
「ああ、2分以内だな」慎はうなずきながら言った。


●初めての感覚
2人は改めて花梨を追いかけ、まだ小さい花梨に追いつくのは比較的楽だ。
その為すぐに発見できた。
「ふぅーおいついたな・・栖、大丈夫か?」慎は後ろを振り返って聞いた。
「大丈夫、大丈夫!なんせ俺は運動には慣れてるからな」栖は笑いながら答えた。
そして再び追跡を開始した。花梨は八百屋についた。
「おじさん、えっとね・・」花梨は預かっていたメモをおじさんに見せた。
おじさんはにこにこしながら必要なものを取ってくれた。
「おじょーちゃん、一人かい?えらいねー」
花梨は嬉しそうにしながら受け取った。
ピーマン、にんじん、たまねぎ、椎茸・・・。ここでちょうど折り返し地点だ。
しかし、また嫌な霊気が漂ってくるのは確かだ。
先ほどの2体だけでは終わりそうにないようだ。
「つくづく霊の気配って嫌なもんだよな」栖が少しだるそうに言った。
「納得。霊って嫌悪感っていうかなんていうかな・・」慎も苦笑いで言った。
この言葉の意味は弱音という訳ではない。霊気を感じるものにはよく分かるだろう。
「まーがんばろうな!」栖が慎の肩をぽんっと叩いた。
2人はお互いにここからの正念場に向けてがんばる決意をした。
悪霊がふよふよと3体・・いや、4体近づいてきた。
「1人2体だな」栖が数を数えた後言った。早くしなければ花梨を見失ってしまう。
「そうだな・・」慎は指を5本立てた。つまり5分・・一体につき約2分30秒。
しかし、一体倒すと体力が消耗するため一体目はもっと早く倒す必要があると言うわけだ。
先ほどより重たい霊力が感じられる。怨念が大きいのだろう。
今までで時間に急かされる事のなかった栖にはわくわくするような出来事だ。
アイディアをだしてきた慎自信もめったにない時間との戦いに少し楽しみを感じていた。栖は言霊を唱え始めた。
「えいっ!!」炎が霊の周りを取り巻いた。
『な・・なんだ?!!』霊は戸惑うように炎につつまれた中で辺りを見渡している。
この霊はどうやら弱いらしい・・。
栖は次の一撃で決めてやると考え炎を見つめたあと目を閉じた。
霊はやっとの想いで炎から抜け出してきた。
栖はその瞬間を感のような物を感じ霊に蹴りを入れた。

その感はすばらしくまさに神技で霊を一撃で倒す事ができた。
「ふぅー・・あれ?もう一体がいない!!」
栖は辺りを見渡したがどうしても見つからない。
「まさか・・!!」栖は花梨のいる方向を見て見ると大きな霊の気配が
そちらからしてくる。
霊が花梨の元へ向かっていることに気がついた。
そして栖は霊が花梨の方へ行っているのに気がついた。
「慎さん!俺ってば霊を一体逃がしたみたいだ。追いかけるな!」
慎は栖を見て軽く頷いた。
栖はそれを確認するとここは慎に任せ向かった。
「栖!」慎は栖に声をかけた。栖はこちらを振り返り慎のほうを見た。
「気をつけて!」慎がそういうと栖はこくんっと頷き
「慎さんこそ気をつけて・・」
そういうと栖は花梨のいる方向へと向かった。



●不可能。しかし可能にしたいから・・
2対1では普通に考えれば不利な話だが慎はこの依頼を引き受けたからには
もちろん挑む事にした。
「沙耶・・力かしてくれよ」慎は目を閉じながら言って一つ呼吸を整えてから符術を
左手に持ち刀を右手に持った。
まずは右の一体に突撃した。霊はそれをよけようとして逃げたが刀は霊をかすった。
その間に左の霊が慎の体制が後ろになったのを見て猛スピードで慎に攻撃を仕掛けてきた。しかし慎は日ごろの戦闘のおかげでおおよそ予測はついていた。
慎は左手に持っていた札を前に出し結界を作った。
霊はもうスピードだったため止まれずに跳ね返された。
「あきらめたほうがいい・・」慎の警告にも応じない霊たちは2体が一斉にお互いに慎を挟むように突進してきた。
「聞く気がないようだな。なら容赦なしで行くまでだ!」
慎は式神を呼び出した。霊はそれでもかまわずに突っ込んできた。
慎は刀で前にいる霊の急所を切ったため一撃で倒す事ができた。
式神は霊を包み込むように倒した。式神の方が霊よりもはるかに優っていたようだ。
つまり慎の方がこの2体の霊よりも上だということだ。
慎は不可能な戦いを可能として征した。
「よっし・・急ごう!」慎は急いで向かった。


●阿吽の呼吸
「栖!!!」栖が振り返ってみると慎がいた。どうやら霊を倒してきたようだ。
それに急いで走ってきたため息切れをしていた。
「はぁーはぁ・・・どう?」栖に尋ねた。
栖は霊の方と花梨のほうを見た。しぶといのか霊は弱っているがまだ消滅していない。
「花梨ちゃんには催眠術をかけたから・・もう少し・・慎さん倒そう!」
栖がそういうとお互いに息を合わすかのように
阿吽の呼吸で霊に突撃した。攻撃を仕掛けたのは栖だ。
霊は栖の足蹴りをなんとか交わした。その瞬間、栖はにこっと笑った。
「残念だな!」栖がそういうと霊ははっとしたように後ろを振り返ったがもう遅いようだ。
慎は刀を振りかざした。
霊は苦しそうにしている。

『まだ・・だ』

霊はこの状況で邪気を放ってきた。
慎は呪符で結界を張り栖と自分自身を守った。
花梨の方は子猫の式神が守るように包み込んだため傷一つない。

『私は・・そんな簡単にくたばらない・・・』

そしてその間に霊は2人から逃れ遠くから再び邪気を放った。
そして再び慎は結界を張る。
「こんなんじゃきりがなくなる・・」慎がそういうと栖が
「俺が・・俺が次に結界を張って解けたときに一撃で倒す!!」
そういうと慎は少しためらったがその後すぐに頷いた。
「大丈夫だ!一撃で倒せるから!!」栖は心配する慎に言った。
慎はその真剣な栖を見て「分かった!!」と、先ほどのためらった反応とは違い
栖によい反応を見せた。
そして霊が再び邪気を放っち慎は再び先ほどのように結界を張り巡らせそして
結界が解けるのを栖が待つ。
「解けるぞ・・3・・2・・1!!」慎の0ともに栖は霊に突っ込んでいった。
油断していた霊は栖を避けきれずにまともに栖のパンチをくらってしまった。
「はぁ・・はぁ・・やったな!!慎さん」
やっと栖も慎も安心できる時間ができたように感じだ。
「・・大丈夫か?」慎が尋ねると栖は頷いた。
そして花梨がどうやら栖がかけた催眠が解けかかっているようだ。
2人は急いで隠れた。
「・・ん・・あれ?なんで寝ていたのかな・・。」
花梨は不思議そうに立ち上がり何事もなかったかように帰り道の方向へと足を向けた。
とりあえず2人は花梨にばれずにほっとした。
「あれ?慎さん怪我してる・・」栖がそういうと気づくように慎は膝を気にした。
「大丈夫、大丈夫!痛くないしな」慎は笑って見せた。
栖は念のため慎にハンカチを巻きつけた。
「ありがとう・・栖。」慎は心配してくれる栖に少し照れながらお礼を言った。


●そして・・到着。
辺りはだんだん夕暮れ時を迎えている。
子供の足は大人と比べて遅いためこんなにも時間がかかっている。
花梨は見る限り荷物と距離のせいで疲労がでているように見えるがそれでも
花梨は止まらずに歩く。
「・・もう少し・・がんばらなきゃ・・」花梨は大きく深呼吸をして空を見上げて言った。
「綺麗なお空。もーすぐ空が赤くそまるかな・・」
花梨は空を見上げながら家路へと小さな足を精一杯に動かして向かう。

それから数分後に花梨のアパートに到着した。
やっとの思いでたどり着いたといった感じだろう。
そして花梨が家の中に入るまで慎と栖は見守った。
辺りは綺麗なくらいの夕日でまるで平和な何事もなかった一日を迎えているかのようだ。

「お疲れ様。」慎が一言はなった。
「疲れたな!!けど、大成功だよな。花梨ちゃんにもばれなかったし霊もしっかり
倒す事ができたよな!」栖が依頼の成功ぶりに自分でも満足をしていた。
もちろんの事ながら慎もそうだ。
「そうだな、依頼がここまでうまくいくとは思わなかったがよかった。
前にもこんな依頼があったんだがその時はばれたんだよな!
今回は同じ失敗がなくってよかった」
前回のお遣いに参加していた慎は前回みたいにはばれなかったためすごく
達成感を感じていた。


●喫茶店
慎と栖は近くの喫茶店で一息ついていた。
「ここの、コーヒー結構美味しいな・・」
慎がガラス越しの夕暮れにそまる真っ赤な空を見ながら言った。
「本当だ・・」栖は美味しいという言葉に納得した。

――それから数分後


カランカラン。そこに1人の髪の長い女性が店に入ってきた。
そして2人の方へ向かってゆっくりと歩いて来る。
「あの・・」2人は不安そうに声をかけてきた女性を不思議そうに見上げた。
それはすぐには分からなかったが花梨の母親である。
「あっ!どうも・・」栖は軽くお辞儀をした。
女性はそう言われると安心したかのように微笑みかけてきた。
「今日は本当にありがとうございました。花梨は無事に傷一つなく帰って気ました。
花梨にはばれなかったようで安心しました。
しかし今は早すぎますがいずれにしても時が立てば花梨にはちゃんとお話しします。
心配はたくさんありますが・・」

女性はありがたそうに笑顔を見せる反面少し悲しそうな顔をしているようにも見える。
慎はそんな花梨の母親にアドバイスになるかは分からないがおもむろに口を開いた。

「実は俺の妹も花梨ちゃんと同じ体質ですよ・・けど妹はちゃんとまっすぐに
生きてますよ。だからそんなに心配する必要なないと思います。」
慎は女性に笑顔でそう言った。
「俺もそこまで心配する事ないと思うな。花梨ちゃんはあなたの娘さんでしょ?
あなたが信じてあげなくてはこれから先、花梨ちゃんに話した時に花梨ちゃんよりあなたが悩んでしまう。それが花梨ちゃんにも影響を見せると思いますよ。」
栖も女性にアドバイスをおくるように行った。
女性は先ほどまで下を見ていたがまっすぐと2人の方を見た。
「そうですよね!!ごめんなさい・・私どうしてこんなにも迷っていたのかしらね。
私が花梨の事をこれからも見守っていく上でそんな不安だらけの−思考の感情を
持っていては将来花梨に伝える時どうどうと伝えられず曖昧になって花梨を傷つけて
しまいますよね!・・本当にありがとうございます。
私はあなた方に依頼をして正解みたいでね」
それから女性は満足した表情で立ち上がり深々とお辞儀をして喫茶店を後にした。



「慎さんって俺は立派な人だと思うな。妹さんの事ちゃんとまっすぐ見てる証拠だろ?」
栖は感動するような感じで慎に言った。
「そうかな・・?ありがとうな。でもああやって言ったけど不安になる瞬間くらいは
あるな。」慎はカップを手に取り一口飲んで言った。
栖はそんな状況を見て慎が少し動揺しているのではないかと感じだ。

「それが人間だと思うよ?信じてるけど時には不安がある・・でもそうだからこそ
守りたいものも守れるし信じれる・・って思うな。」
慎がそれを聞き一瞬動きが止まったように見えたがカップを置いてから答えた。
「お前の方がずっと立派だな。確かにそうだ・・だからこそ・・か。」
慎は栖から何かを得て学んだようだ。

それから2人は雑談をした。
お互いに今までの依頼の話や学んだ事や楽しい話題をして楽しんだ。
こうして依頼の方は歴代に残ってもよいほどの大成功を治めた。


●一通の手紙にこめられた思い・・

その後花梨の母親から一通のお礼の手紙が来た。
宛名を見て花梨の母親からだと気がついた。
そして慎は自分の部屋に行き封をきって中身を読むと
中身は当然お礼の言葉である。
しかしその手紙の中の最後に興味深い一文が綴られていた。

慎は自分の部屋に行き封をきった。
中身はもちろんお礼の言葉である。
その手紙の中の最後にこんな言葉が綴られていた。

『種を心配しすぎで水をあげすぎては駄目になる・・しかし優しさで包む心は
種を花へと導きます・・』
ここの文章からはいろんな意味にも取れますが前向きな姿勢だと言う事が分かる。
慎がここから何を学んだから慎の心が一番よく知っているだろう。

                               《FIN》
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0723/空木・栖(うつぎ・せい)/999/男/小説家
0565/七森・慎(ななもり・しん)/27/男/陰陽師
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■         ライター通信          ■
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今回、依頼を受けてくださった方々ありがとうございました。
最近の暑さでばてている葵桜です。
『初めてのおつかい2』を受けてくださってありがとう
ございます。
慎さんには前回もお世話になり、今回は前回と比べると大成功
をとげましたね。
栖さんははじめてのおつかいシリーズは初めてですよね。
どうでしたか?

それではまたいつかどこか依頼で会えたらお会いできる事を
楽しみにしています。
                  葵桜