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サバイバル(?)料理大会
「米ならあるんです」
お徳用10キロパック米袋を重ねた山をたたきながら、キャンプ場で寝泊りしている男が言った。
「せっかく大自然のなかで一緒に寝泊りするんですから、いっちょ男らしくサバイバル料理大会といきませんか?」
ただし、問題が三つあったりする。
一つ、調理素材調達のこと。
一つ、調味料調達のこと。
一つ、調理用具調達のこと…っておい!(逆ギレ)それって、米以外、忘れてきたんじゃ…。
「細かいことはいいっこなし!あ、男の料理と言っても、女性の方も大歓迎。この島には、森も海も浜辺も、旅館やホテルまであるんですから、材料調達には事欠きませんよね!」
…いや、旅館やホテルから調達するのはサバイバルではないのでは…無人島とかで食料探して歩き回ったり、追放されないために他の人追放したり(あの、火曜日の夜7時くらいにやってるアレ)、たった一人の生き残りをかけてクラスメートと殺し合い(明らかに何か間違ってるよそれは。むしろ、サバイバルより「サバイバルゲーム(生き残りゲーム)」だろうが)したりするのが、サバイバルなのであって、旅館やホテルから持ってきたんじゃ意味ないじゃーん、みたいな。
「じゃ、かまどと薪は用意しておきますから、手分けしてもしなくても、後はよろしく!」
そんないいかげんな…まぁそれはともかく、親睦もかねたレクリエーションの始まりである。
「キャンプっつったら魚の塩焼きだよなー」
ファレル・アーディンは海釣りをしていた。
何が釣れるかな。
鮎かな(鮎は淡水魚です)。
メダカかな(淡水魚だし、釣っても恐らくお腹は膨れません)。
ピラニアかな(淡水魚だし、多分普通のエサじゃ釣れませんよ。肉でも用意してりゃあ話は別ですが)。
マグロかな(釣り竿じゃ釣れねえって)。
シャチかな(釣り竿じゃ無理だし、哺乳類だし…)。
マッコウクジラかな(もっと無茶!)。
「お、かかった!」
何が釣れるかな何が釣れるかな何が釣れるかな…。
で、釣れたのは、なんとサメ!つーかサメ泳いでるんかい!
「おおっ!大物!でも、これって食えんのか?」
とりあえず、噛みつかれそうになったので、屠殺(ひでえ)して、考え込むファレル。
他には南国風のカラフルな魚たちが釣れましたが、扱いに困ります。
「とりあえず串に刺して焼いちゃえ」
でも、コレだけじゃどことなく寂しい。
いや、とっても寂しい。
「貝でも取ろう」
何が取れるかな。
アサリかな(南国で取れんのか?)。
ホタテかな(南国じゃ取れねえって)。
真珠かな(食えねえー!?)。
そんなこんなで海中に潜ったりしてみる。
…あれ?サメいたのに危険じゃないのかって?
確かにそうなんだけど、ファレルは危ないっていうことはわかってないらしい。
そして、適当な貝を取る。とりあえず、中身がありそうな大きな貝を大量ゲット。
ここまではよかった。
しかし、彼の悲劇はここからだった。
「ごぽっ?(何?)」
何だか泳げない。
見ると、もはやお約束過ぎて笑えないが、海草が脚に絡まっているではないか!
ってゆーか、バラエティのコントじゃないんだから…。
「ごぽぽぽぽ!?(嘘!マジで!?)」
しかも、これまたお約束的展開だが、もがけばもがくほど海草は脚に絡まる!
つーか、海草生きてるんじゃないか!?
人喰い海草なんじゃないのか!?(嫌な海草だ…そんな海草あったら注意書きありそうなのに、なんでなかったんだろう)
気が付けばファレルは、全身を海草に巻きつかれた。
「ごぽ…ごぽぽ…」
ああ、自分の人生ここまでか。
思えば短い人生だったな。
天国のお父さんお母さん。
俺もすぐにそっち行きます。待っててください。
そんなことが頭を過ぎったのを最後に、彼は意識を手放した。
ざっぱーん。
「おーい、大丈夫か?」
同じようにこのサバイバル料理大会に参加していた双子の姉弟が、浜辺に打ち上げられたファレルに話し掛けた。
だが気絶しているため返事はない。
「気絶しているけど、命に別状はないと思う」
弟が言う。
「別にここで、外科手術してもいいけど。ちょっと肺の辺りを改造して…」
「やめんか!」
とりあえず双子はファレルに心臓マッサージと人工呼吸をしてやった。
これで、意識はないものの、ファレルは息を吹き返した。
「じゃ、とりあえず運んでおくか」
姉はそう言うと、ファレルを背負って会場に向かった。
なお、ファレルが目を覚ました時には、彼が釣ったサメ&魚、取った貝、全身に巻きついた海草は全て食われていたそうな。
本日の教訓。
二兎を追うもの一兎も得ず。
変な欲は起こさないように気をつけよう。
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