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調査コードネーム: ポケットクロック・ラプソディー
執筆ライター : 東みやこ
調査組織名 : 草間興信所
募集予定人数 : 1人
------<オープニング>--------------------------------------
草間興信所は明治期に建てられた古い赤レンガの洋館。
所長は草間武彦で、今は骨董物の古革のソファで依頼者の話を聞いている。
依頼者の名は樹健太、大学生だという。とても人の良さそうな人物だった。
「見ていただきたいのは、この不思議な懐中時計です」
それはスターリングシルバーの懐中時計だった。
美しいアンティークで、純銀の蓋には繊細な草花の彫刻。
草間が懐中時計のふたを開けて白蝶貝の文字盤を見た。
黒エナメルの長針と短針。草間はすぐに異常に気づき、目を細める。
「時計の針が逆に回転をしているな」
「そうです。そしてさらに不思議な事は、その時計は手巻き式なのですが、もう半世紀も巻いていません。動くはずがない。」
時を刻むはずのない時計。
「それは祖父の妹の形見で、彼女は紗樹という名なのですが、少女の頃に結核で亡くなっています。」
草間はたずねた。
「ほかに何か困ったことは起きていないですか?」
樹はそこで頭を抱えた。 恐怖はこの懐中時計ではなく、他にあったらしい。
「家の蔵で封印をされていた呪いの市松人形が消えました。 その後、祖父は急死。
時計が逆回転をはじめたのはそれからです。 どうか助けてください」
樹はそう訴えた。
ポケットクロック・ラプソディー
*大姫人形*
カゴメカゴメ
カゴノナカノトリハ
イツイツデヤル…
真冬の夕暮れだった。
西空がスミレ色の残照に染まっている。
地に風はない。
静かな逢魔ケの時である。
その古い瀟洒な洋館も夕暮れにあった。
暮日が金枠のベネチィアンウインドーへさしこむ。
がらんとした室内の床には真紅の毛織物。
藤色のベルベッドの椅子がただ一脚。
部屋の主はいない。
すでに生の者ではない。
大正の頃、胸を病んで死んだ。
名は紗樹という。
その時。
空気がはらりとゆれた。
無の宙からはたり、はたりと折鶴が落ちてくる。
白の折鶴、黄の折鶴、緑の折鶴、青の折鶴…。
幾色、幾十の折鶴が宙から生まれる。
その折鶴は空を滑って飛び回る。
生まれる折鶴は赤くなり茶にかわり、そして黒くなった。
黒い折鶴は飛ばずに床を染めていく。
それは呪い。
孤独な力で折られた呪いの鶴。
黒い折鶴が毛織物すべてを墨黒に占めた頃、それは居た。
藤色のベルベットの椅子に。
ヨアケノバンニ
ツルトカメガツベッタ
大姫人形だった。
身の丈が一尺もある豪壮な人形である。
濡烏羽色の髪が市松に鬢かけされた白粉の頭。
顔は黒水晶が眼入れされ、唇は血のような朱赤だ。
身は金襴の西陣織が着せこまれている。
黒い目は見開かれ、黒い涙で泣いていた。
金襴の絹に、ぽたりと黒いしずく。
人形のほおを墨のような涙がつたい絹におちていく。
(後ろの正面、だあれ…)
大姫人形が宙にとけて消えた。
宙の折鶴が飛翔を止めはたはたと床に落ちる。
それきりこそとも音をたてなかった。
大姫に遊びあきられた玩具の折鶴が、幾千もほうりだされている。
そして部屋に悲しみばかりが満ちている。
*レイディ・アレフ*
樹健太の自宅は東京都千代田区丸の内にある。
樹家は大正の頃には英国と取引をする貿易商会を開いていた。
純銀の装飾器やミルクガラス、リーバーレースやシルクシフォン、香水に宝石などの小間物を扱い、
ずいぶん華やいでいたらしい。
わざわざと英国から建築師を呼び、煉瓦建の洋館まで建てたほどだ。
(でも、それはじいさんの若い頃の思い出話で、)
樹健太は思う。
(今はふつうのサラリーマン家庭なんだよな)
健太の父も区役所勤めの公務員である。
洋館はすでに祖父の代で相続税を支払うこともできず、都に寄贈。
都立博物館になっていた。
健太の家族は敷地のすみに家を建て、その平凡な二階屋に住んでいる。
だから過去に自分の先祖が住んでいた屋敷であっても、実感はない。
「ただ古いだけの館なのですが、今の時代ではかえって困ります」
健太が紳士に話しかけた。
健太は紳士を洋館へ案内をするため、敷地の芝生を歩いていた。
「美しい館ではないか」
ごくクールな答えが返る。
「でも呪われている館なんて気味が悪いだけです」
「呪われているのは館ではない、たぶん、おまえの方だ。
祖父の写真を見せてもらってわかった、健太は祖父の生き写しだ」
確かにそうである。
「祖父を呪い殺した者は、若い健太を見て、祖父が生き返ったと思っている」
「本当ですか?で、奴の目的はなにですか」
すっかり暗い気分になった樹を見て、紳士は軽く肩をすくめた。
「それはわかりきっている、呪い殺した者が生き返っているとわかったら、
また殺しにくる、当然だ」
あっさりとそう宣告された。
それは健太にとって死刑宣告に等しいが、紳士は素気ない。
黙って太陽に透ける銀のストレートヘアをかきあげた。
その指の肌はきめ細かく白い。
袖からのぞいたカフスボタンは、カボションカットのサファイアだ。
瞳の色は銀の髪とそろえたような金。
身に着けているものも上品で洗練されている。
比翼仕立ての黒いロングコートとピアリーレッドのマフラーは、上等のカシミヤ。
グレイッシュのスーツをゆったりと着こなす長い足は、子牛の皮のシューズへとつづいている。
全身から美しい人物だった。
(実は紳士でなくて淑女なのだけど)
相手の名は綺羅・アレフという。
男装の麗人だった。
唯一、女性らしい装飾は、ミカドシルクのシャツと、その胸元にある銀のクロスのペンダントだろうか。
(どういう人なのだろう)
草間興信所で紹介をされた人物だった。
アレフにとってこれは依頼を受けた仕事ではなく、話に興味をひかれたからここに出向いてみたという。
健太としてはワラにもすがりたい。
ぜひと頼み、訪れを待ったアレフだった。
「例の時計を見せてくれ」
言われて、ジーンズのポケットから懐中時計を取り出し、手渡した。
「じいさんによれば、紗樹が誰かから贈られた品だそうでした」
スターリングシルバーの表面には草花の彫刻があり、竜頭は真珠が使用されている。
ずいぶん手のこんだ品だと、健太でさえわかった。
しかしアレフは草花の文様を見て、ふと目を細める。
「どうかしたんですか?」
「いいや、」
そして片手で上蓋を開けた。
白蝶貝の文字盤を逆回転していく、時計の針。
アレフはその現象には興味をしめさず、ふたを閉じてしまう。
懐中時計を裏返すと、今度はバックケースを開けた。
そこには時計のムーブメントがしまわれている。
金属の繊細なヒゲゼンマイとバランスホイールが見えた。
アレフはその裏蓋に目をとめた。
「これを見ろ」
見ると裏蓋にアルファベットが彫られている。
「人の名だ。 一人はサキ・イツキ。
二人目は英国系の名だ、ロイ・ユーム。」
「ロイ、男ですか?でもどうしてその名が、時計の裏蓋に」
「まだわからないか」
「すみません…」
涼しい目をむけられ、健太は恐縮した。
アレフは指先で銀の髪にふれてから、考えをまとめるように言った。
「まずこの時計に彫刻されている植物だが、これは忘れな草の花だ。
青い泉に落ちて死んだ恋人の忘れないでほしいという願いがこもって
地上に誕生をした花だと言われている」
「それなら紗樹がその時計を贈られたのは、誰かが紗樹に忘れないでほしいと願って」
アレフはかまわずにつづける。
「時計のバックケースに名を彫ることは、時計を製作した時計職人自身にしかできない。
そして忘れな草の彫刻は、忘れな草の由来をこめたものだろう。」
ここまで説明をされれば健太にもわかった。
「紗樹とロイは恋人どうしだった、という事ですか。
でもそんな過去があったことは、じいさんは一度も言っていなかったのに」
そうつぶやいてから、ふと思いあたることがあった。
晩年の祖父はこの時計を見つめて、まるで懺悔をするようにつぶやいていた。
「じいさんが、紗樹があんなに早く死んでしまうならば、いっしょにしてやればよかったって、」
それは紗樹とロイを一緒にという意味だとしたら。
アレフが静かに言った。
「そんなところだろう。
おそらくロイは、当時、樹貿易商会が雇っていた英国人の時計職人だった。
そして紗樹とロイは恋をした。
けれど樹家にとって娘と雇われ人との恋を許すことはできなかったはずだ」
「それじゃ、もしかしたらじいさんは…」
終わりまで言う必要はなかった。
祖父は恋人どうしを引き離した。
紗樹は失意のうちに病で死んだ。
その恨みが、呪いとなり、祖父にかえり、滅ぼされる。
「ひとつ尋ねたい。 例の人形の由来だが」
「その人形は紗樹の七つのお祝いに作られた品だそうです。
髪も着物も紗樹の物を使って。」
「それならば、その人形は紗樹の分身だ。
紗樹の肉体は失われても、くさらないものでつくられた紗樹の形は永久にのこされる」
アレフはつぶやくように言い加えた。
「この地上には、始めから果てない体で誕生をする者もあるが」
「え?」
問い返すと、それには答えずにつづけた。
「きっと紗樹の死後、人形に呪いがこもって人に危害を加えるようになったのだろう。
そして封印で閉じ込められた。
しかしなぜ急に封印がとけたのか」
健太は黙ったが、ついに言った。
「例の人形は家の裏にある物置代わりの蔵に、螺鈿の箱が荒縄でしばられて
しまわれていました」
「その縄を、誰が解いた?」
「俺はどうしてなのか、よくわからないのですが。
祖父が自分で解きました」
紗樹の思いも、死も、呪いも、すべて知っていた者が封印をといた。
その理由は。
「紗樹への贖罪だろう」
アレフはそう言った。
ようやく洋館の入り口まで来る。
イギリス詰をされた煉瓦のアーチをくぐり、玄関扉を押し開けた。
*螺旋階段*
その洋館の一階ホールには、館に住んでいた樹家の先祖の写真がある。
壁にある写真の一つの前で、アレフが立ち止まった。
「見ろ、紗樹だ」
桜材の木枠にある少女の写真。
すでにセピアに退色をしていたが、若い頃の祖父と少女の紗樹は微笑んでいた。
長い黒髪をマーガレットに結い、桜文様の大振袖姿だ
きっと幸福で健康な頃だったのだろう。
すべにくもりがない、幸福な少女がいた。
まだ仲のよい兄妹だった頃の思い出だ。
「紗樹はとてもつらい思いをしたのですね。
紗樹の恋人への思いがあまりにも深く、それが呪いになってしまった。
祖父もそれを感じていた。
だから人形の封印を解いたのだと思います」
そして祖父は呪いで死んだ。
いやもしかしたら、祖父自身の過去の罪がはねかえってきただけなのかもしれない。
「紗樹は、まだ許していないでしょう。
祖父の若い頃と同じ姿の俺は、きっとずっと憎いはずだ」
アレフが軽く肩をすくめた。
それは癖らしかった。
懐中時計を取り出し、健太へかえした。
「大姫人形が紗樹の呪いならば、その時計は紗樹の優しい心の部分だ。
過去を懐かしみ、まだ何も壊れていなかった時間へ帰りたいという願いだ。
だから時計が無限に逆に進み続けている」
思わず健太が時計を握り締めた。
「人の心は呪いばかりではない。
人形が目覚め祖父を殺したと同時に、優しい心も甦っている」
「それなら、まだ望みはあるということですか?」
「とにかく、前に進むぞ」
ホールから階上へつづく螺旋階段を見上げた。
「二階に紗樹の存在を感じる。きっと彼女はそこにいる。」
確かに二階には、紗樹が使用をしていた自室があった。
螺旋階段はおおげさな曲線を描き、二階へ誘っている。
紗樹の部屋の扉は赤い桜材でできていた。
古い扉だが手入れはよく、きしまずに開く。
先にアレフが入室し健太がつづいた。
ただし扉は閉じずに、廊下へあけはなした。
(閉じ込められそうで不安だ)
床は真紅の毛織物がしかれ、足首までうまるほど毛足が長かった。
がらんとした部屋に、藤色のベルベットの椅子。
「何も異常はないようですが…」
言ったら、それが合図のように部屋が一変をした。
部屋をかこむベネチィアンウインドーに黒い液体が流れる。
窓は黒い壁になった。
部屋が夜の黒に包まれる。
健太が思わず扉をふりかえった。
しかし扉はすでに閉じられていた。
床の毛織物ばかりが血の赤さで輝く。
その赤の中心にベルベットの椅子があった。
ごとり、と椅子が揺れ、健太に近づいてくる。
アレフは右の掌を天へむけた。
その掌に光が降りた。
白い清浄な光。
そして気がつくと、そこには美しい銀の剣が握られている。
その剣を椅子へさしむける。
「私の名は綺羅・アレフ、魔術を使う者。
これ以上、この部屋の主が姿を隠すのならば、以後、攻撃をする。
よろしいか」
静かな威厳をもって。
剣が白く眩しい。
アレフの肩の上で銀髪が舞いゆれていた。
その剣に対峙をしていた椅子が、がたりと床に倒れた。
見えない者が立ち上がったように。
「人形だ!」
健太が天井を指差した。
大姫人形である。
黒髪をたなびかせて浮いていた。
金襴の着物が黒い染みで汚れている。
瞳をしかと見開いて、健太を呪っていた。
(カゴメカゴメ、カゴノナカノトリハ…)
天井から、はたりはたりと黒い折鶴がふってきた。
それは健太に落ちて、とけていく。
黒く、ただ冷たい。
(孤独の痛みだ)
「恐れるな」
アレフは言い、無言で剣を下ろした。
「人形はおまえを呪っている、しかし紗樹は呪いだけではない」
その言葉を証明するように、剣を床にひとつきした。
同時だった。
健太の手にあった懐中時計がふっと浮かぶ。
かっと白光の塊になった。
網膜を焼く強さだ。
すべての色と音が消え、白い世界にいた。
(……紗樹?)
そこには大姫人形も黒い折鶴もなかった。
ただ頼りなげな少女が桜文様の大振袖に身をつつんで、泣いていた。
袖で顔を隠すが、誰かわかった。
紗樹だ。
アレフは紗樹を見つめた。
敵を見つめる目ではなかった。
ただ静かだった、慈愛深い目。
「紗樹。なぜ泣いている」
空間がかすかにふるえて、声をたてた。
(兄さまもロイも大好きだったのに、兄さまがロイを許してくれなかった。
ロイと一生、会えなくなってしまった。
そして私は肺の病気で死んでしまったの、)
少女の泣き声。
(ただ悲しくて悲しくて、病気のベッドで人形を抱いて泣いていたわ)
健太が話しかけた。
自然に声が出た。
「だから大姫人形に君の呪いがこもったんだね」
空気がふるえた。
困惑を伝える。
(兄さま?)
「俺は君のおじいさんの孫だよ。 そっくりだと思うけど、俺は別人だよ。」
(そうね、私の呪いが兄さまを殺してしまったもの。
私、呪いたくはなかった、兄様も殺したくなかった、でも呪いで自由にならない。
こんなに苦しいのに。)
紗樹の頬が泣きぬれる。
(ごめんなさい、あなたのお祖父さん、私が殺してしまった、きっと恨まれているわね)
「じいさんが死んだ事は確かに悲しい。
でも、じいさんはずっとずっと君達、恋人をひきはなしたことを後悔していたよ。
それの罪の気持ちが、じいさんに封印されていた人形を解放させたのだと思う。」
それは自殺と同じだ。
だから、と健太は思うのだ。
「だから、もうやめなよ。 もう楽になろう。
そうすれば全員が幸福になれる。」
空間が止まった。
紗樹が呼吸をとめて考えているような、そういう様子。
(でも、私、死んでしまって、ずっとここにいて、これからどうしていいかわからない。
私、呪うのをやめたら、一人かしら…?
ずっとずっともう誰にも会えず、闇にいるのかしら?)
その問いに答えられない健太。
(ロイにも兄さまにももう会えないの?)
しかしアレフはふと微笑をした。
紗樹に語りかける。
「怖がることはない。 私が教えてやろう、おまえは待てばよいのだ。」
紗樹がじっと見つめる。
「遠く…転生を待ち続け…そう、人はいつか生れ変わる。
だから逢いたいのならしばし待てば良い。
そう、信じ待ち探し続ければ必ず逢える…。」
本当かと紗樹の祈るような視線。
アレフはうなずいた。
紗樹がようやく微笑んだ。
(お願いがあります。その剣で、私の呪いを、大姫人形を浄化していただけますか)
「引き受けた、約束しよう」
紗樹はその答えを聞き届けると、感謝をするようにうなずいた。
そして健太につづける。
(ごめんなさい、怖い思いをさせて。 でも、今度、生まれかえったならば)
「そうだね、今度こそ、知り合って友達になろう。
籠の鳥だった君がようやく外に開放されるんだ」
話が終わった。
ふっと白い空間が消える。
先ほどの黒い壁と赤い床の部屋がもどってきた。
宙に呪いの化身である大姫人形。
「下がっていろ」
アレフが健太に命じた。
輝く剣を両手で構え、宙で一閃。
黒い禍々しい塊を感じたが、それも一瞬だった。
白い強い炎で浄化される。
その時、健太は確かに聞いた。
紗樹の声を。
ありがとうと…。
*祈り*
気がつくと、健太は床にすわりこんでいた。
あわてて部屋を見回す。
「あれ?」
何の変わりもない、いつもの博物館の一室だった。
真紅の毛織物も、藤色のベルベットの椅子も、何も動いていない。
ベネチィアンウインドーからは冬の晴天が見えた。
「いつまで座り込んでいるつもりだ」
アレフが肩をすくめていた。
すでに剣もなく、戦いの跡さえ見つけられない。
髪の一筋も乱れていなかった。
(夢?)
ふと気がついて、手の中の懐中時計を見つめる。
蓋をあけて時計の針を見た。
時計の逆回転は終わっていた。
そして今は正常に未来へと時を刻んでいる。
「よかった。 呪いが解けたんですね。 紗樹も、籠から開放をされたのかな」
「さあな、それは神にしかわからないことだ、運命にまかせるさ」
アレフは胸元の銀のクロスに指先をふれた。
そしてもう扉へと退室をしかけている。
あわてて健太は立ち上がる。
「アレフさん、ありがとうございました。あの、お礼を」
アレフは立ち止まり、コートのポケットに手に入れた。
そして言う。
「礼ならば、すでに紗樹からもらっている」
アレフの手には、白い折鶴があった。
*エンディング*
後日、草間興信所。
応接ソファには所長の草間と樹健太がいる。
健太が事件の解決の礼を兼ねて訪れたのである。
「そうですか、その後、奇怪なことはなにも起こらない、と。
それはよかったですね。」
「本当に助かりました。
それからアレフさんにも、もう一度、お礼を言いたいのですが、連絡先はわかりますか」
草間は首を横にふった。
「さて、あの方にこちらからは連絡がとれないのですよ。
稀に立ち寄られ、東京で起きた不思議な事を話されるくらいで。
私はメールアドレスさえ知りません。」
明らかに健太は落胆したようだった。
「そうですか。
でも俺、思いました。
もしかしたらアレフさんも、どこかに会いたくても会えない思い人がいるのではないかなと。
紗樹への言葉を考えると、そう思えます」
「そうですか、でもそれは神だけが知ることでしょうね」
その時、草間の仕事机で電話が鳴った。
きっとまた仕事の依頼だろう。
草間は立ち上がりかけたが、最後に健太へ言った。
「この草間興信所は東京で起きた不思議な事件のご相談を承ります。
今後もどうぞご活用ください。
それでは今回の依頼については以上です…。」
END
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0815 / 綺羅・アレフ / 女 / 20 / 長生者
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■ ライター通信 ■
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この作品は私が初めて受注した物語です。
アレフがとても美しいキャラクターで、書いていて嬉しかったです。
ご注文をありがとうございました。
*
当方は依頼されたオーダーに応じた物語を承ります。
キャラクターの小物、服、世界設定まで、どうぞお気軽にご注文ください。
こちらは特に和風は小物、振袖、洋装はゴシックからモダンまでのドレスが得意です。
注文をお待ちしています。
東みやこ
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