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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


骨貝の夢
◆夢に囚われしモノ
『骨貝の貝殻で髪を梳いて眠ると、見たい夢を見ることができる。』
そんなおまじないめいた事が広く噂に囁かれていた。

「最初は半信半疑だったんです。」
草間興信所の事務所を訪ねてきた依頼人・三島 結衣はそう切り出した。
「たかがおまじないだし、これで紗江子の気持ちが晴れるならいいかなって思ったんです。」
結衣の友人・高嶋 紗江子は失恋して酷く落ち込んでいた。
眠ることもままならぬほど思い悩み、振られた男性のことで落ち込んでいたのだという。
「だから、寝るときくらいイイ夢でも見なよって、このおまじないを教えたんです。」
結衣の話を聞いた紗江子は、帰りに小物屋で骨貝の貝殻を買い、喜んで家に帰った。
そして、そのまま眠りから覚めることなく一月が過ぎてしまった。
家族は紗江子を病院に入院させたが回復の気配はなく、医者もなす術がなく途方にくれる有様だった。
「きっと、おまじないのせいで紗江子は眠りつづけているんです・・・」
おまじないを勧めた本人として、また友人として紗江子のことが気になるのだろう、結衣は深く項垂れたまま言った。
「どうか、紗江子を眠りから覚ましてください。お願いします。」
草間は一瞬それは管轄外かもしれないと思ったが、思い返せばこのところそんな管轄外な依頼ばかりである事に気がついた。
「特殊なお話なので、何処までお力になれるかわかりませんが・・・全力を尽くしましょう。」
草間はそう言って舞い込んできた依頼を引き受けた。

◆夢の中へ
「ふぅん、こんなので髪の毛梳かすだけで見たい夢が見れる・・・ねぇ・・・」
草間 武彦から話を聞かされた水野 想司は骨貝の貝殻を眺めながら言った。
「本当かどうかは判らないがな・・・」
草間はそう言ってくわえたタバコに火をつける。
「そんなの確認するの簡単だよっ♪この貝で髪の毛を梳かしてみれば良いんだよっ♪」
そう言うと想司はおもむろに机に乗っかり、草間の髪を貝で梳かそうと掴みかかった。
「うわっ!何するんだっ!やめろって!!!」
いきなりの行動に目を丸くするが、草間はなんとか想司の腕を掴み梳かされるのは回避した。
「人間何事も経験だと思うけどなぁ・・・つまんないの。」
「勘弁してくれ・・・。とりあえず、三島 紗江子の意識を取り戻させること。それが今回の依頼だ。」
草間は気を取り直して何とかそれだけは告げた。

「コレを使って夢の中に入ったら二重遭難になる恐れがあるよねぇ・・・」
想司は事務所のソファに腰掛けて、目の前に置かれた貝を眺めながら思案する。
「とりあえず、その紗江子ちゃんとシンクロして、貝以外の方法で夢の中へ入るしかないよね〜。」
「そんなことが可能なのか?」
自分の机から遠巻きに想司を見ていた草間がたずねる。
「簡単だよっ☆僕には秘密兵器があるからね☆」
そう言うと想司はポケットから「秘密兵器」を取り出した。
「これを使えばあっという間さ♪」
「・・・そうなのか?」
草間は取り出された秘密兵器、またの名を「糸付き五円玉」を見て目が点になる。
「そうさ☆・・・じゃ、とりあえず、ちゃっちゃっと片付けちゃうんで後よろしくね♪」
そう言うと、想司はソファに深く体を沈め、自分の目の前で五円玉をゆっくりと揺らし始めた。
「僕は眠くな〜る・・・眠くな〜る・・・眠く・・・」
そして、がっくりと力が抜け、やがて小さく寝息をかきはじめた。
「・・・本当なのか・・・」
目の前で完全な熟睡状態になっている想司を草間は呆然と見つめていた。

◆夢の中には
「なんだか、紗江子ちゃんって変な夢を見てるんだなぁ・・・」
夢の中へ入り込んだ想司はあたりを見回してそう呟いた。
そこには応接用のソファセットと事務机が並び・・・まるで草間興信所事務所のようなところだった。
「あれ、どうしたんだ?想司。もう起きたのか?」
しかも、草間がいつも座っているデスクの向うには草間 武彦の姿まである。
「リアルだなぁ・・・」
そう言って想司は草間のほっぺたをぎゅうっとつねってみた。
「いたたたっ!何するんだっ!想司!」
「うわっ!本気でリアル☆」
「いや、想司、夢ではないんだが・・・」
「流石が僕だなぁ☆こんなリアルな世界に入れちゃうなんて♪」
草間の言葉など欠片も聞かず、痛がる様子だけを見て満足すると、想司は再びソファに座った。
とりあえず夢の中に入れたようなので、これからどうしようか・・・?
そんなことを考えていると、ふいに背後から怪しげな気配を感じた。
「むっ!何奴!?」
想司は振り向きざまに怪しい気配に向かって短剣を投げ放った。
カカカカッ!
短剣は小気味の良い音を立てて、光る棒のようなものに払い落とされた。
「ふっふっふっふっ・・・夢の中とはいい良くぞ我が正体を見破ったな!我が永遠の宿敵!水野 想司よっ!」
「あ、また変なのが・・・」
草間は机の影から現れた怪しいゴツイおっさんを見て顔をしかめる。
海塚はガバッとマントを脱ぎ捨て、セーラー服に三つ編みおさげ髪という一昔前の女子学生ないでたちで想司たちの前に現れた。
想司は海塚を見るなり禁句を口走る。
「変態魔王っ!」
「変態っていうなぁぁぁあああっ!」
変態の一言に海塚のリミッターがいきなり解除された!
「な、な、なん、なんなんだっ!!」
「ぬおぉぉぉぉぉぉおおおおおっ!!!!」
目鼻口から透過光を吐き出してぐるぐると回り始める海塚を見て、草間はその場に立ちすくんでしまった。
そして部屋中をぐるぐる移動する海塚にガッシと捕まえられてしまう!
「うわわわわっ!わ、放せっ!放せっ!」
「私は変態ではなぁぁぁぁいいっ!!!!」
「うわーーーーっ!なんなんだーーーっ!!!!」
まるで三下のように翻弄される草間と相変わらずの海塚を、想司は慣れた様子でその様を見ていた。
「もう、コレだからオヤジはいやんなっちゃうよね☆」
想司はそう言うとポケットから一枚の写真を取り出す。
そして、ひょいっと机の上に飛び乗ると、海塚に向かって写真を突き出し、スケさんカクさんのポーズで言い放った。
「えぇいっ!控え居ろう!ここにおわすを何方と心得るっ!恐れ多くも萌えの女神!電子の妖精アリス様なるぞっ!」
その言葉に海塚は反射的に動きを止め、写真を見入る。
「そこの者!頭が高い!控え!控え居ろうっ!!」
「ははーーーっ!」
海塚はガバッと床に平伏する。
そして、何故か海塚にとっ捕まった草間も押さえつけられ平伏している。
「うむっ♪コレにて一件落着ぅっ☆」
想司は満足そうに笑った。

◆夢の中では
「面白そうなことしてますねぇ。」
にっこり笑った想司の背後で再び声がした。
想司が振り返ると、背後の壁にぽっかりと黒い穴があき、その中から一人の青年がニコニコ笑って3人を見ている。
「あ!お前はっアリアリの下僕っ!」
「下僕は失礼だなぁ。」
スリープウォーカーはそう言うとひょいっと穴から出てきた。
「僕も混ぜてもらってもいいですかねぇ?アリスは出かけちゃってるし暇なんですよ。」
「え〜っ!アリアリは来ないの!」
想司は露骨に嫌な顔をする。
「僕、男には興味ないんだよねっ☆」
「まぁ、そういわず。僕がいると結構便利ですよ。こんな事とかできるし。」
スリープウォーカーは不機嫌な想司に笑ってそう言うと、二枚の符を取り出し小さく何事か呟き、それを床に這いつくばっている海塚と草間の頭にペタペタッと貼り付けた。
それからもう一度口の中で何か唱えると、ボムッという爆発音とともに海塚と草間の体が煙に包まれる。
そして・・・
「うわぁぁぁぁぁああああっ!!!!!!!!!」
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉおおおおっ!!!!!!!!」
二人の絶叫と共に煙は消え去った。

「な、なんでこんな事にっ!」
草間は己の姿に驚愕した。
鏡を見なくても判るこの違和感!
突如、自分の胸に現れた豊かなふくらみに慌てふためく。
下は恐ろしくて確かめる気にもなれない。
「むむぅ、完璧である・・・」
女性化しても怪しいゴツイおばさんに変化した海塚は、何を思ったのかガラス窓に己の姿を映し、うっとりと眺めた。
「陰と陽の気を入れ替えました。頭のてっぺんから足の爪先まで完璧に入れ替わってます♪」
そう言うとスリープウォーカーは満足そうに微笑んだ。
「わわわっ♪これは面白いかも♪衣装とかも着替えさせられる?」
想司も面白がって注文を付け出す。
「そーだなぁ、僕たちのユニットのライバルユニットらしく可愛くアイドルなのが良いかなっ☆」
「アイドル風ですか・・・」
想司の言葉にスリープウォーカーはしばし思案する。
「では、こんな感じで。」
パチンっと指を鳴らすと、今度は二人の着ていた服がひらひらふわふわミニスカートに変わる。
「わーーーっ!遊ぶなっ!想司!」
「素晴らしい・・・(うっとり)」
二人の反応は正反対だったが、術の影響かそれを脱ぎ捨てることは出来ない。
「頭にはウサみみで尻尾もね!」
「はいはい。」
想司の言葉にスリープウォーカーは指を鳴らす。
「わーっ!頭から直接はえてるっ!」
「尻尾がピコピコ動くではないかっ!!」
「じゃあ、次はアイテムだよね♪魔法のステッキかなっ☆シャボン玉の出るやつ!」
パチンッ!
「ああああーーーっ!何だこれ手にくっついて取れないーーーっ!」
「おおおおーーっ!シャボン玉ではないか!メルへーンっ!」
可愛いウサみみとウサしっぽをピコピコさせながら、ひらひらふわふわミニスカートでステッキを手に何故かぐるぐる回る海塚と草間を、想司はケラケラ笑いながら見ている。
「次は妖精さんシリーズ!」
「はいはい。」
パチンッ!
「うわわわわわーーーーっ!羽根がー!蝶の羽と触覚がーーっ!!!」
「おおおぉぉぉおおおっ!スケスケふわふわミニスカートがラブリーーーーッ!!!」
「定番の猫みみメイドーーーっ☆」
「はいはい。」
パチンッ!
「尻尾がはえるーーーーーーっ!」
「猫みみがファンタジーーーーーっ!!!!」

こうして狂乱の宴は夜が深くふけるまで続いた。

◆夢の中から
想司が再び目を覚ますと、すっかり夜も更け、事務所の中は真っ暗になっていた。
「あー、面白かった☆依頼とはちょっとずれちゃったけど面白い夢だったなっ♪」
そして、ソファーから起き上がり大きく伸びをする。
「あれ?どうしたの?」
暗がりの中、よく見ると草間が机に突っ伏してぐったりしている。
「・・・どうもしない。」
ガラガラに枯れた声で草間はボソリと言う。
なんだかひどく疲れ果てているようだ。
「そーなの?ま、いいや。じゃぁ、僕は帰るね!ばいばーい♪」
想司は足取りも軽く事務所を出て行った。

草間は誰もいない事務所でそっと涙をぬぐうのであった。

The End ?
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0424 / 水野・想司 / 男 / 14 / 吸血鬼ハンター
0759 / 海塚・要 / 男 / 999 / 魔王

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■         ライター通信          ■
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今日は。今回も私に依頼をお引き受けくださり、ありがとうございました。
アリスは他のメンバーのところへ出かけておりましたので、今回はスリープウォーカーがお相手させていただきましたが、如何でしたでしょうか?
なんだか、萌えの道はどんどん深まってゆくようで、恐ろしいやら楽しみだわで、毎回色々な意味でドキドキさせて頂いてます。これからもより一層の発展?を期待しております。頑張ってください。
それでは、またどこかでお会いしましょう。
お疲れ様でした。