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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


カフェ『アールグレイ』へようこそ!

何でか知らないが、月刊アトラスの読者交流ページにバイトの募集があった。
しかも、オカルト儀式の手伝いだの、オカルト研究の助手募集ならまだ理解できるが、今回募集されているのは、なんと、なんとなんと!
「喫茶店のアルバイトを募集します。時給780円から。学生可。経験問わず」
明らかに場違いな、喫茶店のアルバイトの募集である!
しかし、アトラスに載っているなんて…怪しくないか?

「思ったより、来ましたね。初めまして、ここのマスターの、日下尚輝です」
 マスターは、まだ若い男性だった。
「お仕事の前に、一つだけ注意事項があります。この店には、様々なお客さんが来ます。彼らが、全員普通の人間であるとは限りません。ですが、お客さんの事情などは一切気にしないでください。どんなお客さんにも最高のサービス、というのがウチの店のモットーですから」

「何だか、意外とまともな人だったね。それに、ちょっとかっこよくない?」
 瀬田茅依子が、友人の松浦絵里佳に耳打ちする。
「下見に前来たときも変な感じはしなかったし、占いでは、特に怪しいところはなかったわ。少なくとも、マスターは普通の人みたい」
「まー、人は見かけによらないし、占いだって当たり外れはあるしね。変なトラブルに巻き込まれないことを祈りましょうか」

「さあて、面白い悪戯のネタになりそうな人はいないかな☆」
 森永ここ阿は、バイトの仕事をしつつ、店の人たちを観察していた。
 そんな時に、喧嘩するカップルが。
「付き合ってもう10年近いのに、何で誕生日覚えてくれないのよ!京一のアホ!」
「うるせーな、お前の誕生日、何かある日でもなけりゃゾロ目でもねーから、覚えづらいんだよ!」
(むう。これは面白そうだな。観察する価値はある)
 単なる痴話喧嘩コントだが。しかしここ阿は、おもしろい、と判断したらしい。そしてここで、さらにおもしろくするために、茶々を入れてあげる(これはトラブルメーカーの仕事を果たしているだけで、これがどんなに迷惑なことか判ってはいないのだが)。
「でも、彼女の誕生日くらい覚えるのが基本だよな」
「そーよねー、当然よねー」
「なっ。しょうがねーだろ、ウチの家族、全員判りやすい誕生日なんだからさ!」
 だからって、彼女の誕生日くらい覚えてあげなさいよキミ。
「…別れる」
 …え?
「誕生日も覚えてくれない奴となんて、別れる」
「待てよ、唯。冗談だろ…?つーか今更だし…」
「別れるったら別れる!」
 いきなり別れ話にもつれ込むカップル。
「…それにしても急だね…中学の頃から付き合っていたのに」
「うるせえ!尚兄は口挟むな!」
 どうやら、男の方は、マスターの弟さんらしい。
「じゃ、そーゆーワケだから」
「ちょ…マジで待てよ唯!」
 出ていく女性。それを追っ掛けるマスターの弟。
「あ、森永さん。安心していいよ。あの二人、一週間に一度は別れ話出るけど、実際に別れたことないから」
 そりゃまー、喧嘩するほど仲がいい、と言うし。

「何だか、あちらのほうがうるさいみたいですねー」
 のほほんと言う絵里佳。
「まあ、カップルの痴話喧嘩だから、大したことないでしょ」
 そこに、全身黒ずくめの、男だか女だか判らない客が入ってきた。
「いらっしゃいませー、お一人様ですかー?」
 絵里佳が早速応対する。
「…マスター、血を」
「はい、かしこまりました」
 …?
 血?
 血っていうと、血液ですか?なんで、そんなもん扱ってんですか。ここ、喫茶店でしょ?
「はい、いつもの」
 そう言ってマスターは、病院でよく見る、輸血用の血液パックを客に渡した。
 でも、なんでそんなモンがここにあるんだっての。
「いつもすまんな。吸血鬼向けの血を取り扱っているのはこの店だけだからな」
 吸血鬼が客にいるんか、この店。
 ふたりはちょっとだけ、店長が言っていたことについて納得がいった…気がした。

「いらっしゃいませー、ご注文は?」
 次に入ってきた客・高杉奏にさっそく注文を取りに向かうここ阿。
「コーヒーとスパゲッティで」
「かしこまりましたー☆」
「マスター!コーヒーとイカスミゴーヤスパゲッティのご注文でーす!」
 …間。
「え?スパゲッティなら何でもいいんだろ?」
「そうじゃなーい!あ、マスター、カルボナーラねカルボナーラ!間違ってもイカスミゴーヤじゃないからね!」
「あ、すいません!実はカルボナーラの材料切らしてるんです!」
 ふと奏が周りを見渡すと、スパゲッティを食べている人が多い。異様に多い。ほとんど全員食べてるんじゃないかってくらい多い。
「じゃあ、ペペロンチーノで」
「それも切れてます」
「ミートソース…」
「やっぱり切れてます」
「ボンゴレロッソ」
「切れてますね」
「…ってコトはまさか…」
 予感的中?これ予感的中なの?
「スパゲッティで作れるのは、イカスミゴーヤスパゲッティだけです」
 おめでとう、おめでとう、おめでとう。
「…じゃあそれで…」
 漢(おとこ)だ…。
 ちなみに彼は、夜のラジオで、「歌詞作るために気分転換でカフェ入ったら、イカスミゴーヤスパゲッティ食べさせられたよはっはっは」とか言っていたそうな。

「お客さん少なくなったね」
 すでに、歌詞を考えている奏以外の客は帰ってしまっている。
「ところで、マスターって何者なんですか?吸血鬼とか、他にも、普通じゃなさそうなお客さんの相手してましたけど」
 絵里佳の言葉に、尚輝は笑顔で答えた。
「人の笑顔が見たいからですよ。普通の人たちの笑顔を見たいのは勿論ですが、特別な人たちや、苦しい運命を背負って生きている人たちの笑顔も、見たいんです」
「マスター…」
 茅依子は、尚輝を見て言った。
「マスターも、普通の人ではないんですか?」
「どちらかと言えば」
 またしても、笑顔だった。

(みんなの笑顔が見たい…か)
 ちゃっかり盗み聞きしている客が一人。
(古いが、最近カバー曲ブームだし、いいかも)

「じゃあ、明日もよろしくね」
 尚輝はそう言って、バイトの三人を見送った。バイト初日は平和に(?)幕を閉じた。
「ふう…これで少しは負担減るかな」
「おーい、尚兄ー」
 そこへ弟が戻ってきた。
「あ、京一。唯ちゃんとは仲直りできた?」
「あー、まー、それなりには。…しかし、いいのかよ。普通の人間のバイト雇ったりして。卒倒したりしなかったか?」
「大丈夫だよ。…そのために、アトラスで募集かけたんだから。あの雑誌を読んでいる子で、怪奇現象が苦手な子なんていなさそうだし」
「そりゃま、そーかも知れないけど」
「…大丈夫。少なくとも僕らが、『氷の鬼』とバレないようにはするからさ」
「…バレたらシャレにならねーぜ。『熱の鬼』が活動を活発化させているこんな時に、俺たちの存在が相手側に明らかになるのはヤバイどころじゃすまないし」
「何とかするさ」

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0046/松浦絵里佳/女/15/学生
0293/瀬田茅依子/女/15/エクソシスト(普段は高校生)
0367/高杉奏/男/39/ギタリスト兼作詞作曲家
0801/森永ここ阿/女/17/高校生
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■         ライター通信          ■
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どうも初めまして今日和、蒼華珠璃です。
カフェ話気に入っていただけたら幸いです、はい。
地元に喫茶店ないんでよく判らないんですが(爆)。