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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


調査コードネーム:黄薔薇廃園の序曲 < 復讐の三女神3 >
執筆ライター  :立神勇樹
調査組織名   :ゴーストネットOFF


■オープニング■

畏敬の念を起こさせるものには何であれ
嫉妬がつきまとうのが常である
      ――ある無名作家のギリシア悲劇より

 窓の外は町が白く見えるほど太陽の光がきつく、誰しもが暑さにうんざりした顔をしているというのに、ここゴーストネットOFFの中、はいつもと同じように薄暗く、そしてクーラーのききすぎで肌寒かった。
 こういう処から自然破壊が進んでいくんだろうな、などと似非エコロジスト的にぼんやり考えながら、視線を先ほどから変化のないディスプレイに向ける。

【[666] 懲らしめましょう! 投稿者:荒江めぐ 投稿日:2002/07/1x(Fri) 04:06:06 】

 もう"Fulies"を放っておけません!
 このままでは仲間も私もあの緑の目の魔術師、ティシポネに殺されてしまいます!
 お金は幾らでも出せます!
 どうか私の変わりに、彼を懲らしめてもらえませんか?
 彼は今週末にホテル「La Papessa」で開かれるテトラシステム主催のネットワークイベントに出現します。
 そのチャンスを逃すとまたどこかへ逃げてしまかもしれません!
 色んな力を合わせれば、きっと勝てると思います!
 参加してくれる人はメールください。

「と、言われてもね」
 薄くなったアイスティーでとりあえず喉を癒す。
 Fulies――天才的なハッカーの集団にして、人外のモノに対立し憎しみからなる復讐を行う苛烈な者達。
 とはいえ、事情も話さず依頼をしてくる(しかもメールは匿名のフリーアドレスだ!)に加勢する義理はない。
 確かに「幾らでも出せる金」に心引かれないではないが、どうもうさんくさい。
 グラスの中で溶けかけている氷をストローでつつく。
「あ、このホテル最近出来たところだね」
 夏らしく水色のリボンに衣替えした雫が、イベントの開催されるホテルの名前を指さしながら肩越しにのぞき込んだ。
「最上階に、天井も壁も全部クリスタルガラス張りの空中庭園があるんだって、オープン前から有名なんだよ」
 ページをジャンプして検索エンジンからそのホテル「La Papessa」のページを表示する。
 ギリシャ神殿をモチーフにしたデザインの白い豪奢なホテルが表示される。
 庶民にはあまり縁がなさそうだな。と苦笑していると、ふいにドアが開いて、運送配達員の青年が汗を拭きながら入ってきた。
「瀬名雫さんにお届け物です」
 営業スマイルそのままにいうと、青年は両腕で抱えるのも困難なほど大きな……おそらくは200本以上はある……黄色い薔薇の花束を差し出した。
 薔薇の香りが無機質で冷たいクーラーの風にのって、なにかの予兆のように室内を満たす。
「わあ、ありがとう。何のお祝いだったかな? もらっていいの?」
 物好きがいるんだなぁ。と配達員が出ていくのをみていると、雫が笑顔を浮かべながら自分の顔を見つめて言った。
「え?」
「え? って。……これ、依頼主あなたの名前だよ☆」
 雫がひらめかせたメッセージカードには、確かに自分の名前と……ホテル「La Papessa」の招待券が入っていた。
 薄く女神らしい女性の透かしが入った招待券を眺めながら、ふと思い出す。そういえば、黄色い薔薇の花言葉は「嫉妬」だったな。と。
「あ・ら・い・め・ぐ……ね」
 くしゃりと前髪をかきあげる。
 はてさて。
 罠にかけられようとしているのは自分なのか。
 ――それとも別の「誰か」なのか?


■ゴーストネット SIDE:A■

「悪戯にしては手が込みすぎているな」
 眼鏡の奥の瞳を細めながら、武神一樹はつぶやいた。
 彼にしては珍しく、和服ではなくチノパンにコットンシャツという出で立ちである。もっともその両者ともがそこいらの大量生産されている品ではなく、頑ななまでに伝統を守って作られた仕立ての品であるあたり、本当に良い品は長く残るという事を知る、古物商の彼らしい。
 しかし、タダの古物商。というだけでは彼を説明するのに言葉が足りなさすぎるだろう。
 決して正史には現れない歴史の闇……人と妖の織りなす音も名も無き戦いにおいて、双方の言い分を聞き、なだめ、やり場のない怒りの奔流を沈めてきた、物部氏の残党。その末たる血を引く者。
 調停者。とはいつ頃から誰が言った言葉であろうか。
 ともかく、彼は「人と妖」の間にある亀裂を埋め、力ではなく智をもって戦いをおさめてきた者の末裔であった。
 最も彼本人としては、それを先祖代々の使命だとか、宿命だとか重々しく考えているわけではなく、むしろ生き甲斐として「調停者」の役割を買って出ている節もあるのだが。
 ともかく、人と妖怪の争いを最小限に押さえる為に彼は存在しているのだ。
(この一件、知った以上は捨て置けん)
 引き締まった顔にあるつ黒闇の瞳が、ディスプレイ上の荒井めぐの書き込みを捕らえている。
 ハッカー集団Furies……復讐の女神。
 妖や異能者への復讐を果たす者。
 しかし、そのFuriesへの襲撃者募集がネット上で行われ、書き込みが消されないのはおかしい。
 このような不穏な書き込み、即刻消されてもおかしくはない筈だ。そして突如雫に届いた黄薔薇。
「わからんな」
 過ぎ去った時間、忘れられようとしている古来よりの知恵。その分野に関しては一流である武神も、電脳の世界となると勝手がちがう。人間のネットワークであれば、得意であるのだが、コンピューターといえば、現代人として不自由ない程度にしかたしなみがない。
「「あらいめぐ」と「メグ・ライアン」ってちょっと似てる……」
 武神の横で、幼い……まだ本当の別れや憎しみを知らない……知らないが故の強さと光を感じさせる少年がつぶやいた。
 少年……というのは語弊があるのかもしれない。標準より小柄で、生まれつき色素が薄く、大きめの瞳をもってはいるが、彼……内場邦彦は成人式を越えた、飲酒も喫煙も可能なれっきとした20才だったのだから。
 しかしあらゆる施設で高校生料金が通用してしまうほど幼い外見をしており、本人も外見に関わる些細な感想など気にしていないのだから、青年ではなく、少年で通していいだろう。
 ともかく、内場邦彦は見たままの感想を漏らした後で、怪訝な顔をした武神の視線に気づき、慌てて手をふって「今のナシ」と赤面しながらつぶやいた。
「えっと、「あらいめぐ」で「めぐあらい」で「メガエラ」? かしら?」
 恥ずかしさを消すために、考えついたことをそのまま口に乗せる。
 と、邦彦の言葉にはじかれたように、それまで雫と共に黄薔薇を生け直していた寒河江深雪が顔を上げた。
「武神さん、これ……アナグラムです。A−R−A−I−M−E−G−U」
 パソコンの隣に据え付けてあったメモを破り取り、癖のない流麗な文字でアルファベットをつづっていく。
「……MEGUAIRA」
 艶やかな黒髪が肩から滑り落ちると同時に、無意識的に深雪はつぶやいていた。
 アナウンサーらしい、彼女の書く文字と同じ癖のないすっきりとした声が、目の前に現れた現実を伝える。
「メガエラか。FURIESの三女神の一人と同じ名前だな」
 武神はつぶやいて、指先でディスプレイをはじいた。
「妬みと怒りを司る復讐の女神の一人ですね……メガエラがティシポネ……アキさんを妬んでる? 何故? 《彼女ら》は同志でしょう?」
「アキ??」
 これまでの意見を知らない武神が、聞き返す。と、深雪と邦彦が交互に今までの事件のいきさつを語る。
 もともと調停者として人の話を聞くことに慣れている武神にとっては、二人の話を聞き、事件の要点を纏めるのは容易な事であった。
「憎しみから存在しない存在となった少女に、憎しみを肩代わりする青年か……。三人存在する「女神」の内二人が「憎しみ」というキーワードでつながっているなら、最後の一人もやはり「憎しみ」でつながっているのだろうな」
 冷房の人工的な風にのって、黄薔薇の香りが鼻孔をくすぐる。それは心地よいというより、むしろ挑発的で、謎に翻弄されようとしている彼らを嘲笑っているような、棘のある香りであった。
「復讐の三女神、か。だが、もしこの書き込みがメガエラなら、何故自分の仲間に敵意を抱く相手を集めようとしているのだ?」
 手近な椅子を引き寄せて座ると、武神は腕を組んで頭を振った。
「彼らに敵意を持つ者を集める為の餌、ホテルは餌によってきた獲物を屠る罠の可能性が高い」
 理路整然とした武神の言葉に、深雪と邦彦は沈黙のままうなずいた。
(それに、このホテルの名前)
 La Papessa――タロット第3のアルかな「女教皇」のイタリア語読みである。
 象徴する意味は「対立状態の均衡、内なる知恵洞察力」……キーワードは「優れた洞察力」と「冷静」「研究」「理解」「分析的」である。
 しかし「逆」では「高い自尊心」「冷淡」「打算的」などだ。
 このメッセージに隠された名前……メガエラと会わせて考えると意味深である。
(でもカードそのもので「魔術の秘儀」も意味するわ……確かエジプト女神イシスも暗示してて……女神が得意とする術は蘇生。誰を?)
 いけない、と頭を振る。
 相手がFuriesであるという先入観から深読みしすぎている。アナグラムのシンプルさを考えれば、それ以上の謎があるとは思えない。そう、アキ……ティシポネの挑戦の時のように。
 しかし、武神が指摘したように「餌によってきた獲物を屠る罠」であるならば、イベントそのものが《儀式》であるという事を示すなら、これは罠なのだろうか……。儀式に必要な《贄》を誘っている??
 思考の海に沈み、たゆたっている二人の間で、居心地悪そうにしていた邦彦は、つま先で床を一度軽く蹴って、彼なりに思いついた疑問を口にした。
「緑の目という表記をつかっているから、少なくともティシポネの外見をしっているんだろうなぁ」
 夜の闇の中にあって、燃えるエメラルドのように輝いていたアキの瞳を思い出しながらつぶやく。
「罠って考えることは簡単だけど、問題は誰のための罠か、ですよね」
 会場にはどこかに「めぐ」も潜んでいる筈だ。
「『仲間』って誰なのか『このままでは』ってどういう状態なのか、はっきりさせたいな」
「……そう、ですね。深読みしすぎなのかもしれません。でもイベントに参加すれば何かわかるかもしれませんが、用心は必要だと思います」
「まず荒井めぐに依頼を受ける旨をメールして、それを聞いてみるか。こちらの意図は伏せたまま、当日の手はずと人員を確認しなければな」
 ソフトウェア……向こうの考えがわからないのなら、ハードウェア……形ある外郭から詰めていくしかない。
 数々の戦いの中で身に付いた武神の知恵が、冷静に判断する。
(なんだろう……胸騒ぎがする)
 祖母から貰った形見の肩掛け鞄を握りしめながら、邦彦は黄薔薇をみた。
 まるで形で押したようにどれも同じ位の……完璧な咲き具合。絵画から抜け出したかのように変化も個性もなく不自然なまでに同一で……違和感を感じずには居られない。
 本来あり得ない「何か」を取り出せる鞄。何が出てくるのか解らない鞄……いくつかの冒険を共にし、時には騒ぎを、時には幸せを運んでくれた鞄は、邦彦の不安には答えようとはせず、ただ、古ぼけた布の手触りを伝えるだけであった。


■Nearmiss Is Cariot■

 コリント式。ギリシア神殿のような柱が、行儀良くならび天井を支えている。
 自然の光を邪魔しない程度に、採光を考えて取り付けられているランプ状の明かりは、葡萄の実を模してある。
 きららかに光を遊ばせるホテル La Papessaのホールの片隅で、寒河江深雪は深呼吸をしてバッグから携帯電話を取り出した。
 このイベントが始まる前に、やって置かなければならない事があった。
 それは以前の事件の時に感じた「既視感」の確認……つまり榊千尋への問いかけであった。
 他人というにはあまりにも酷似したアキと榊千尋の顔立ち。そして声。
 無関係であるはずはない。
 同行者である武神一樹や内場邦彦には、すでに了解済みである。
 ボタンを押し、携帯電話を耳に当てる。
 ただそれだけの動作が酷く、重苦しい儀式のように感じられる。
 永遠に続くかと思われた呼び出し音がとぎれる。と、相変わらずゆっくりとした……どちらかと言えばのんきと取れる声が帰ってきた。
『はい、榊です』
 電子のノイズの向こうでは、おそらく相変わらずの微笑みを浮かべているのだろう。
「あの、寒河江です。この間はどうもありがとうございました」
 お仕事、お忙しいですか?
 いい天気ですね?
 次に問いかけるべき言葉が幾つも浮かび、浮かぶ片端から、脳裏にある架空のゴミ箱へ丸めて捨てられる。
 時間はないのだ。それに、どう取り繕っても「彼」には通用しないだろう。
『どうかしましたか?』
「あの、お伺いしたい事があるんです。その……榊さんに親戚は居ないというお話でしたけど」
 心拍数が上がる、聞いてはいけないことを聞いている気がした。
 喉が乾き、言葉を失った瞬間、電話の向こうで「ああ」という言葉が返り、続いてくすくすという笑いが聞こえた。
『……弟に会いましたね』
「え?」
『斎さんからも同じ質問をされました。Furiesに関わってしまったんですね』
 しょうがないと言った口調で言うと、今度は参ったな、と良いながら榊は言葉を続けた。
『えーと。それで?』
「それでって」
『まあ、聞きたいことは大体わかりますけど。アキ、榊千暁は私の不肖の……しかもプチ家出中の双子の弟です』
 身長はあいつの方が高いですけどね、と笑いながら返す。
「冗談にしないでください」
 からかわれた、と思うより早く、言葉を返していた。
『冗談じゃないですよ。あいつは高校生の時に家出……というより日本を飛び出して渡米して……それっきりですね。まあ連絡が取れない訳じゃないからほっといてますが。蒸発しようったって、アキが研究を続ける限り無理でしょう。ああ見えても第一線の研究者ですしね』
「研究者? ああ、大学院生だとはお聞きしてますけど」
『それこそ冗談でしょう。あいつは渡米してとっととこっちの国籍捨てて、大学でスキップして二一才の時にはマスター……博士号取ってますよ。今はテトラシステムの主任研究員してる筈ですけど。表の顔はね。まあ日本国籍の名前じゃないからわかりにくいかもしれませんけど、「Chiaki Thaddaeus Sakaki」かな? いずれにしても現在の彼についてそれ以上の事は私は知りませんし。過去の彼について話すべき事はありません。まあ一つだけわかってる事はありますけど』
 短い沈黙の後、榊はわざとらしいまでに明るい声で言い放った。
『――アキは私の事を憎んでいる』
「憎む?」
 半分予想していた、しかしどこかであり得ない、と思っていた言葉に深雪は聞き返す。
『うーん。微妙ですね。憎む……とも違うかな「許せない」かな? 「許したくない」かな? 「許すことを許されない」のかな? 「許す自分を許せない」なのかな?』
 くすくすと笑いながら、言葉遊びのように言う。
『まあ、いずれにせよ。私は「私の邪魔をしない限り」はアキの考えや行動に「個人」としては興味ありません。一公人……警察官としては彼は「情報犯罪者」……ハッカーですから、なんとか証拠を押さえて検挙すべきだとは、考えてますがね』
 兄弟……それも共に生まれた双子に関する話をしてるとは思えないほど、淡々と落ち着き、真意を読ませない口調で模範的な解答が返ってくる。
『あいつに悪さされたら「電波の届かない」所に逃げるが勝ちですね。携帯……というよりあの魔法陣のシステム支援がなければ、アキは無力に等しいですから』
「何をおっしゃってるのか……よく、わかりません」
 ようやくそれだけを返す。と、今までとは違う、低く沈んだ声で榊は「それで良いとおもいます」と答えた。
 それは婉曲的な拒絶にも思えた。
 これ以上自分に、アキに関わるなという。
(ただの兄弟であるはずがない)
 そして榊千尋……彼も。
 ティシポネであるアキが能力者で、彼が違うというのは本当だろうか。
 とぎれた携帯電話を握りしめながら、深雪は混乱する頭をそのままに目を閉じた。
 イベントまで、あと1時間。


■黄薔薇廃園の女神■

 イベントホールに拍手が鳴り響く。
 ティシポネ、つまり榊千暁の講演は(内容は全くわからなかったが)堂に入ったものであったことは確かだった。
 さざ波のように繰り返される拍手の中、寒河江深雪は最前列でため息をついた。
(このまま何事も起こらずに終わればいい……)
 ちらり、と隣にすわる武神や邦彦、そして雫をみる。
 何か会ったときの為に、最前列に座っていた方が良いという武神の意見に賛同して、ホールの一番前左側に陣取っていたのだ。
 しかし、見えざる敵と戦う事はなかったが、睡魔との戦いは困難だったのか邦彦も雫も途中で何度もあくびをかみ殺していた。
 無理もない。専門的な講演に一時間じっとしていれば、大概の者は眠ってしまう。
 武神と深雪が眠らなかったのは一重に精神力と経験が学生である二人に勝っていたからに過ぎない。
 しかしそれも限界だった。
 講演が終わったという安堵感から小さなあくびが漏れた刹那。
 全てが止まった。
 ホールの中央あたりに、光が灯った。
 懐中電灯とか、ライターの光などではない。
 もっとぼんやりとした……けれど周囲の空気を震わせるほど力に満ちた光だった。
「いかん!」
 武神が気づき全ての術を中和させる、彼の能力を発動させようとする。
「死ね! ティシポネ!」
 しかし武神が意志を集中し終えるより早く、光を操る男が叫び悪意を持った光は一直線に壇上に居るアキへと突き進む!
「アキさん!」
「アキちゃんっ!」
 邦彦と雫が同時に叫ぶ、とそれまで落ち着いた研究者の仮面を被っていたアキが目を見開き、光に目を留め。
 そして――まるで殉教者がするように静かに目を閉じた。
 雷が落ちるような轟音。
 そして静寂。
「馬鹿っ! あなたが死んだら私はどうやって黒狼様を見つければいいのよ!」
 甲高い女性の声が響く。しかし、その姿はない。
 変わりに壇上にあり、緑の瞳の魔術師――復讐の女神の名をもつ青年に覆い被さるようにして傲然と立っているのは、月光のごとき白銀の毛皮を持つ狼――風見璃音の獣化した姿だった。
 璃音はアキの肩を染める血と同じ深紅の瞳を怒りに燃え上がらせながら、うなった。
 命を奪おうとする光の刃を、甘んじて受けようとするこの青年の首筋に飛びつき、強引に押し倒したのだ。
 人狼の反応力でなければ、とうてい間に合わずアキは死にとらわれていただろう。
「お、狼だ!」
 イベントに来ていた客が次々と騒ぎ出し、我先へとホールの出口へと殺到する。
 蜂の巣をつついたような騒ぎを横目に、武神達は強引に壇上に上がり光の方向を向く。
 と、完全に目を血走らせた十名程度の男達が予定外だ、といった顔つきで奇妙な一団をみていた。
「知っているって、罠って知ってるって言ったじゃない!」
 鋭い牙の向こうから漏れる声は、どこか悲痛で、仲間を心配する響きに満ちていた。
「知っていたさ。別に罠だからじゃない。いずれにかこうなるだろう事は予測していた」
 肩を押さえながら呻く。
「俺が請け負った「復讐」はいつの日にか俺自身に返ってくるだろうってな」
 自重するように顔を歪め邦彦に向かって片目を閉じて見せる。
「とにかく傷を何とかしないと」
 深雪は鞄の中からハンカチを取り出すと、脈動毎に血をあふれさせるアキの肩口の傷に手を添える。
 目を閉じて手のひらに神経を集中する。と、周囲の気温が急速に下がり、深雪の手のひらがほの蒼く光る。
 そしてその光が触れるや否や、傷から流れ出す血が止まった。
「傷口を凍結させました。でもあくまで応急処置です。早く手当をしないと逆に凍傷にかかるかもしれません」
 凍った傷口をハンカチできつく縛り付ける。
 そうこうする間にアキを狙っていた男達が、壇上へと近づいてくる。
「させんっ」
 武神が一喝するがはやいか、空気の弾ける音とともにホール中の魔力が中和される。
「くそっ、魔力が!!」
「無駄だ。お前達の力は完全に中和された。一切の術も魔法も発動しない。そもそも全てがFuliesのメガエラの罠なのだ。無駄に争い黒幕を喜ばせる必要はないだろう。この場は自分に任せて、その拳を納めてはくれないか」
 ティシポネと男達の間に立ちはだかりながら武神がいう。しかし、怒りに理性を失った襲撃者達の耳には届いては居ない。
「邪魔するな! そいつは俺の仲間を封じこめやがったんだ!」
 人の姿をする魔力が無くなったのか、メガエラの罠によって集められた復讐に猛る者の一人が鋭い牙と黒いコウモリのような羽をむき出しにして全力で向かってくる。
 流石に武神の「異能なる力を中和する」能力であっても、そもそもの姿……悪魔の力を封じることは出来ない。
(何か、しなきゃ!)
 傷つける力ではなく、争うための力ではなく。もっと別の何かを。
 復讐は止めなければならない。アキの死ではなく、目の前に居る男達の死ではなく、もっと別の何かで。
 そう考えながら邦彦は肩掛け鞄の中を探る。
 ――何が出来る? 何の魔力も才能もない自分自身に。
 唇を噛みしめながら鞄の中身をさぐると、両手に少し余るぐらいの袋が入っているのに気が付いた。
 当然入れた覚えのない品物だ。
 おそらく「鞄」の奇妙な働きによって「何か」が取り出されたにちがいない。
(この際なんでもいい、何かができれば!)
 袋を引っ張り出し、邦彦は口を縛る紐をほどき逆さまにして振る。
 とたんに袋からビー玉やパチンコ玉があふれ出す。
 とてもではないが小さな袋に入っていたとは思えないほど大量の球体が次々に袋からこぼれ落ち、壇上からホールへと、男達の足下へと転がっていく。
「さて、ではこういうのはいかがかな?」
 道化めいた陽気な声がするや否や、ホールが、ホテル周辺すら巻き込んで大地がぐらりと揺れた。
 ステージにいた武神や深雪、邦彦、璃音達も突然の地震に、バランスを取られそうになる。
 当然、床を転がるビー玉の上を走ってきていた男達も地震によってバランスを崩し、バタバタと転び始める。
「なっ」
 驚きのままに声の方向――ステージ脇に目を向けると、金の髪をかき上げながら阿雲紅緒が手を振って笑っていた。
「では次は俺と言った所か」
 紅緒の後ろから悠然とした歩みで黒月焔が現れる。
 白く輝く羽を指の間に差し挟み、その手を高くかざすと、朗々とした声で呪文を詠唱する。
「アトー・ギボル。ルオーラム・アドナイ! かくあれかし信義の王、我が前に戦いの天使を使わせ!」
 羽はひときわ強く輝くと、手のひらに乗るほどの小さな天使の霊体となり、襲撃者たちに向かって突き進む。
 そして閃光となって弾けると、細い魔術の網と変化し襲撃者達をつつみその動きを封印する。
「白魔術など久しぶりだが、こういう事には使えるものだな」
 満足げに微笑みながら、焔はいう。
 龍の刺青がもたらす催眠……龍眼で捕縛することもできるのだが、一つの技にたよっていれば他の技が廃れてしまう。
 完全に捕縛された襲撃者達を前に、次に何をすべきか、何を聞くべきか全員が考えていると、意外な人物が音もなくアキの正面に現れた。
 蜃気楼のようにおぼろげに、人間らしい気配を何一つ感じさせず、透き通る硝子のようなもろい存在感で。
 銀髪と蒼い瞳を持つ少女が――アレクトが立っていた。
「庭園でメガエラが呼んでいるわ」
 形式や礼儀を一切排除した、まるでコンピューターメッセージのように、抑揚のない声でアレクトが告げる。
 アキは舌打ちをすると頭を振り、制止する深雪の手を払いのけて立ち上がった。
「イヤだね。俺はこんな「デモンストレーション」があるとは聞いてなかったが?」
「そんなこと、アレクトは知らない。推測するに、事前にデモンストレーションだと察知していたならば、ティシポネは戦わないのだとメガエラは見抜いていた。だから、計画を秘匿した」
「計画? 単なる内輪争いではないと言うことか」
 アレクトの言葉尻をとらえ、焔が興味深げに聞き返す。
 しかし、アレクトはまるでこの場にティシポネと自分以外いないのだ、と言わんばかりの無関心さで言葉をつづけた。
「これではデータが集められない。この失敗にティシポネにいらだっている」
「はっ、相変わらずの完璧主義な事で」
 非友好的な口調でアキが返す。
 Fuliesとはいえ、仲間意識で集っている訳ではないのだ。と暗に告げているようだった。
 そう、たまたま利害関係が一致している。お互いがお互いの力を利用する危うい均衡の上に関係が成り立っているるだけで、明日、敵になることも委細かまわない。と。
「ティシポネが来なければ、メガエラは客室や他のフロアの防火隔壁をおとして二酸化炭素消火装置を発動させるつもり」
 ――それは火事の際、炎を水ではなく二酸化炭素で消化するシステム。
「人が待避し終えない状況で、隔壁を落としそんな物を発動させれば、窒息死するね」
 どこか他人事のように紅緒が言う。
 戦いも、日々の生活も、そして己の生死すら「実在感」がない紅緒に取って、メガエラの脅迫も通用してはいない。
 しかし、当のティシポネは唇を噛みしめてアレクトをにらんでいた。
「行く必要なんか無いわよ! 手を切っちゃえばいい! こんな事する人の仲間である理由なんてどこにもない!」
 璃音が言う。
「確かにな、脅迫によって相手を動かそうとする人間を「仲間」と認識する必要はないとおもうが」
 否定する事を許さない、底知れない夜の海と同じ深すぎる黒の瞳で武神が静かに制止する。
「最初から仲間だった事なんてなかったが?」
 メガエラを、そして己自身を、世界さえも嘲るような暗い笑いを浮かべ、つぶやくと、ティシポネは怪我をしているとは思えないほどの素早さで走り出した。
「まって!」
 深雪が叫ぶ。と、璃音がその声の残響が消えない間に獣の四肢をしなやかに動かし、銀色の光となってかけだした。
「追うぞ!」
 戦いは未然にふさげたが、脅迫によって相手を……利害関係しか無いとしても……誰かを縛るなどという卑劣な行為は、人より正義感が強い武神に許容できる行為ではなかった。
 第一メガエラの真意は何一つわかっていないではないか。
 床をけり、力強く駆け出す。
 最上階にある、空中庭園へ。
 この茶番をしくんだであろう「嫉妬の女神」を目指して。

 追う者と追われる者、両者を追い立てるように、次々と廊下に防火隔壁で閉ざされる。
 内装で巧みに隠されていたスチールのシャッターが、まるで戯れるようにギリギリの所で、深雪や武神達の背後を閉ざす。
 空調が止められたのか、廊下は不快な熱気に満たされていた。
 完璧な円を描いて上へ上へと続いていく最後の螺旋階段にさしかかる。
 上り詰めた場所が屋上であり、このホテルが誇る空中庭園――メガエラの待つ場所であった。
 ティシポネに追いついていながら、璃音は立ちはだかる事はできなかった。
 人より早い瞬発力と運動力を持つ銀の狼たる今の彼女にとって、ティシポネ――アキの行く手を塞ぐのは造作もない事だった。
 しかし、何故か出来ないまま屋上へと到達しようとしていた。
 天使が戯れる様を模したステンドグラスの扉が押し開かれる。
 気圧の差により、強い風が庭園からホテルの内部に吹き込んでくる。
 そして雪のように舞い散る黄色い薔薇の花びら。
「あら? ずいぶんとたくさんお友達をつれてこられましたのね」
 詩を朗読するかのような、音楽的な声が花びらの嵐の向こうから投げかけられた。
 そこには、一人の女が立っていた。
 緩やかに波打つ黒髪を風に遊ばせ、深く真意を悟らせない闇色の瞳に聖母のような優しげな微笑をたたえ。
 体のラインを忠実になぞる、白いワンピースの裾を揺らしながら。
 このホテルの主にして、メガエラと呼ばれる女性――キアラ・レン・フォーサイトが立っていた。
「このプレゼン、失敗ですわね――まったく、本気で死ぬつもりとは。いつもながら私を楽しませてくれますわねティシポネ」
 年の頃は二十代後半、あるいは武神より年上かもしれない。
 だがちろりと舌をのぞかせ無邪気に言う様は、世間知らずの少女を思わせる。
「何故こんな事をした」
 自分の気分のままにホテルに居る人間を無造作に殺そうとするなど、たとえ脅しであったとしても許せることではない。
 間合いを取りながら武神は問う。女性相手に武を振るう事は避けたいが、そうも言ってはいられない。
「……ティシポネを、アキさんを妬んでいるから?」
 武神の後を追うように、深雪は続ける。長い黒髪が心中の不安を表すように風に乱され、ゆらりとゆれている。
 深雪の言葉に、メガエラは鼻の奥で笑い目を細めた。
「まさか! そうですわね、テトラの最高責任者として、研究者アキのの才能は正しく評価はしています」
 つまり自分に及ぶ所ではない、と暗に指し示しながら、肩に舞い降りた薔薇の花びらをつまんで捨てる。
「人外の者や異能者に対する嫉妬って所?」
 姿勢を低くし、今にも飛びからんばかりの勢いで璃音が聞く。と、メガエラは満足げに頷いた。
「そう。まさしくその通りですわ!」
 目が見開かれ、黒い瞳が恋い焦がれる相手を見つけた時のように潤み、燦然と輝いていた。
「わたくし、恋しておりますの。人外の力に。いいえ、人外の力だけじゃないわ。ピアノを弾く者、スポーツをする者、文章を書く者、もちろん武神さんのように「古」の技術を見抜く者、焔さんのように「アルコールの違い」が解る者、大地をかける獣、空を飛ぶ鳥。全てに焦がれ、愛してますの。わたくしには無い才能ですもの」
 手を叩き、無邪気に喜ぶ。
 しかしその瞳は次の瞬間に恐ろしいまでに冷たく、無機質的な者へと変化する。
「そして同時に憎んでおりますの。――どうしてその才能を命をかけるまでに高められないのか。くやしくてなりませんのよ」
 もっと高みを見たい。もっと強い力を、美しい力を、速い力を見たい。
 究極を目指す欲求と、それをなしえない者達への憎しみ。
 全ての才能に手をさしのべ、育て上げ、しかし、期待した分、裏切られた分強く憎しみを抱く。
 それはどこか歪んだ母性にも似ている。
 ティシポネの願うような声に、紅緒は肩をすくめた。
 確かにわからないでもない。
 どこまでやれば、どこまで行き着けば果てがあるのだろう。と。
 自分で死ぬ事なんてこれっぽっちも考えないのに、心のどこかでいつか誰かが自分に終止符を打ってくれないだろうかと願っている。
 笑って、泣いて、怒って。しかし、その全てに「真実」を見いだせない。感情がこもっているのか、周りが求めるから笑っているのか。それすらも判別できない。
 ギリギリまで、刹那の果てまで言ったら「本当」が見えるのだろうか。この虚無で空っぽで何もない心の奥底に何かが見えるだろうか。
 そう考えて生きていた。
 しかし紅緒はティシポネとは違う。決定的に失えない存在を見いだしているから。空木栖を。
 死ぬのは怖くない。また、生きることに意味はない。
 しかし、生きることをやめた世界に彼はいないだろう。だから自分はここにいる。
 故に理解は出来ても、はいそうですか、と無関心になる訳にもいかなかった。
「じゃあ、ボクの才能を試してみるかい? キミがネットで集めた奴らよりは楽しめると思うよ」
 紅緒はちぎれて飛んできた黄薔薇の花を手に捕らえ握りつぶす。
「それも楽しそうですけれど、時間ですの」
 婉然とわらい両手で髪をかき上げる。
 刹那。
 硝子の割れる耳障りな音、そして機械的な爆音。
 鼓膜を責めさいなむ不快な二重奏。
「ど、どうしたの?」
 怯えたように事態を見つめるだけだった邦彦が、耳を塞ぎながら空をみる。
 そこには。
 空を切り裂く刃を回転させながら、威嚇するようなローダー音で庭園の薔薇を振るわせ、一機のヘリコプターがホバリングしていた。
 ヘリコプターはやがて、庭園の真ん中にある広場に主をまつ獣のように着陸する。
「では、ごきげんようみなさま。このお礼は次の機会にでもさせていただきますわ」
 どこに隠していたのか、小型のケース状の機械を取り出し、そこにあるボタンを押す。
 途端に庭園のそこかしこから、白い煙が吐き出される。
「催涙ガス?!」
 人より優れた嗅覚で事態を察知し璃音が叫び、全員があわてて顔をかばう。
 針で刺されるような小さく鋭い痛みに、目をきつく閉じていると邦彦の耳に一つの声が聞こえた。
「次が最後だ。何故、復讐がいけないのか、どうして復讐を止めたいのか。今度――俺を納得させてみろ」
 低く耳に響く声は、いつかどこかで聞いた声と全く同じで。
 涙をそのままに邦彦は目を開き声の方をみた。
 しかしそこには、ティシポネも――そしてメガエラの姿も何もなく。
 無惨に散らされた黄薔薇の廃園が広がっていた。


■エピローグ■

 中継用のライトが、ホテルを昼間のように照らしている。
 慣れているとはいえ、流石に目が疲れてきた。
 ホテルに居た所を、たまたま局の人間にみつかり、このスクープの証人に仕立て上げられ、急遽中継アナウンサーとして起用されてしまったのだ。
 折角の休日だったのに、散々である。
 休憩しようと人のまばらな方へ行くと、思いがけない人物の声を聞いた。
「派手にやってくれましたね」
「榊……さん」
 相変わらずの微笑みで、相変わらずののんきさで彼は深雪に手を振って見せた。
「どうしてここに、とは聞かないでくださいね。今回の事件はあまりにも謎が多すぎてあらゆる部署が出動して調査していますから」
 当然「全ての境界を越え、純粋に犯罪だけを追いかける」部署の榊が来ない訳がない。
「……弟さんは、怪我をされました」
 乾き、引きつる喉のおくからそれだけを告げる。と、榊は何も言わず空を見上げた。
 つられて天を見る。しかしそこには月も星もない。ただ都会の汚れた漆黒の空がひろがっているだけだ。
「あいつはね、星とか月が欲しいという子供のような奴ですよ」
「え?」
「全てを得ようとして、全てを必要として、全てに裏切られる」
 榊らしくない辛辣な口調で吐き捨てた。
「そして世界を憎む事で、自分の弱さから逃げようとしている。……ただそれだけです」
 アキとは違う焦茶の瞳が深雪の瞳をじっとみていた。
 ――コンタクト越しの、偽りの瞳が。
「これ以上関わるのは、賢明じゃないと言いたい所ですが……おそらく無駄ですね」
 苦笑しながら、榊は深雪に向かって手を伸ばす。
 訳の分からない威圧感を感じ、身をすくめる。と、彼は深雪の襟に付いていた黄色い薔薇の花びらをつまみ、無造作に投げ捨てた。
「気を付けてください。彼らは……いや、メガエラは邪魔をする者を好まないでしょう」
 挨拶でもするように、何気なく良いながら榊は背を向けた。
 しかしその顔は。
 もう笑っては居なかった。
 

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0655/阿雲 紅緒(あぐも・べにお)/男/729/自称謎の人】
【0264/内場 邦彦(うちば・くにひこ)/男/20/大学生】
【0599/黒月 焔(くろつき・ほむら)/男/27/バーのマスター】
【0074/風見 璃音(かざみ・りおん)/女/150/フリーター】
【0173/武神 一樹(たけがみ・かずき)/男/ 30/骨董屋『櫻月堂』店主】
【0174/寒河江 深雪(さがえ・みゆき)/女/22/アナウンサー】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、立神勇樹です。
 さて、今回の事件は「エピローグを除いて7シーン」に分割されております。
 今回は各所にこの「復讐の女神」の話の謎を解く鍵が隠されてます。
 残すところあと数回。良い結末になるか、悪い結末になってしまうのかは今後のプレイングにより変わってきます。
 最後までお付き合いくださると幸いです。
 また「なぜこのキャラが、こういう情報をもってこれたのかな?」と思われた方は、他の方の調査ファイルを見てみると、違う角度から事件が見えてくるかもしれません。
 もしこの調査ファイルを呼んで「この能力はこういう演出がいい」とか「こういう過去があるって設定、今度やってみたいな」と思われた方は、メールで教えてくださると嬉しいです。
 あなたと私で、ここではない、別の世界をじっくり冒険できたらいいな、と思ってます。

 寒河江 深雪様
 こんにちは、今回は完璧に先を読んだプレイングに驚かされました。
 あれだけヒントの少ないオープニングからほぼ全容を引き出されてあり、嬉しいやら怖いやらでした。
 今回のシナリオには「復讐の三女神」とは別に、もう一つの隠されたシナリオへの鍵が隠されています。
 鍵を追う事により、全く違うシナリオが展開する可能性もあります。
 もちろん、追うか追わないかは寒河江さんの自由です。
 では。またいつかお会いできることを願って。