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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


扉の向こうに。

<オープニング>
「どこにでも通じる扉があったらいいなぁ…なんて思ったこと、何度も無い?」
瀬名雫は本気の表情で言った。「雫は沢山あるよ。学校に遅刻しそうになったときとか。…でもそんな都合のいい事ってあんまりないでしょ?」
 だが言葉とは裏腹に彼女はにっこりと微笑むとパソコンに向き直り、軽くキーボードを叩いた。
「だけど。…見て。」
 身体を少しだけずらして、彼女は画面を指し示して見せた。
 そこには、古びた一枚の扉の写真が映っていた。何の変哲も無く、ただ金色にメッキされたドアノブだけが、幾人もの手で触られた結果なのか、鈍色に光っている。
「この扉を探すことが出来たら。一生にたった一度だけ…望む場所にいけるんだって。時も、季節も、空間も越えて。」
 そして悪戯気に笑う。一生に一度じゃ悩んじゃうよね。遅刻しそうだからって使えないよと。
「ねえ、あなたならどこへ行きたい? 雫に教えて? たった一度だけのチャンス、どう使うのかを。」


「時間も…空間も…。」
 ぽつりと呟いたその若い紳士は顎先に指を軽く当て、長い足を組んで椅子の背に身体を預けた。その穏やかな緑の瞳はパソコンの画面に注がれており、とても明るい蛍光灯のついた部屋の中には他に誰も居ない。彼の勤める英会話スクールの、他の教師達は丁度授業に出ていた。
 ちりちりと背後に聞こえるのは微かに焼ける電灯の音。そして外を走る車や音声信号の軽やかなメロディ、人の話し声がじっと何かを考え込んでいる彼の周りを包み込む。
 どれくらいの時間が経っただろうか、やがて彼は切なげな瞳をしたまま立ち上がり、オータムコートを手に取って勤務表にサインをすると教室を出た。街のネオンは明るく輝いていたが、俯いた頬を撫でる風は酷く暑かったこの夏が嘘だったかのように、秋の気配を感じさせた。

 それから数日後。
 彼…ウォレス・グランブラッドは一件の古本屋の前に立っていた。都会の片隅で誰にも気付かれないような、鄙びたその店の前にはいつからあるのか知れないようなダンボールが山積みにされ、入り口にたどり着く事さえ困難な様子であった。
 ウォレスはダンボールの迷路を潜り抜け、その店の入り口にたどり着いた。そしてその古ぼけた扉を見て、一瞬躊躇した。ノブは何の変哲もない金メッキ、ネットで見たあの扉に間違いない。とすればこの扉こそが彼の求める時間に、場所に、彼を導いてくれる『一生に一度のみ開けることの出来る扉。』
 我知らず喉を鳴らし、だが彼はゆっくりと扉を引いた。
 だがそこは思いに反してただの静かな店だった。薄い太陽の明かりが書棚に挟まれた細い通路を照らし出し、何年も引き抜かれずにいる書籍が天井から床までぎっしりと詰まっている。
「どなたかいらっしゃいますか。」
 開けた扉の先が、こんな普通の本屋だった事に僅か肩を落としながらウォレスは店の奥に声を掛けた。覗き込んだ先には古びたレジスターが置かれており、その後ろの柱には壁時計が規則正しいリズムを刻んでいた。
 本を乗り越え奥に進みながら、ウォレスはもう一度、今度はもう少し声を大きくして尋ねた。
「エクスキューズミー? …困りましたね。」
 と、その時レジスターのすぐ傍で、暗がりが動いた。はっとしてそちらを凝視するとそこには程よく皺の寄った老婆が一人、座っていた。くたびれた花柄のシャツとその上に薄手のちゃんちゃんこを着込み、椅子の上に正座している。
 ウォレスは流石に驚いて相手を見詰めた。そしてうっすらと来る場所を間違えてしまったかと思ったが、しかしそれ以後微動だにしない老婆に興味を惹かれて、そちらへ歩み寄った。
 ところが。ウォレスが近づくと、老婆は突然妙にはっきりとした口調で言った。
「ウチは金を取るからね。こちとらタダで商売してるわけじゃないんだ。」
ウォレスが呆気に取られている間に老婆は口をもぐもぐと動かしながら、どこからか一つの懐中式金時計を取り出した。「全く…誰が好き好んで扉の番人なぞやるかね…。」
 だが机の上に置かれたそれは音を止めていた。
 見事な彫りの入ったその時計は不思議と人を惹き付ける。ウォレスは無意識にその時計に手を伸ばそうとして、驚くべき速さでぴしゃりと手の甲を打ち据えられた。
「金を出しな。一巻き…そうだねぇ…。」
老婆はきょとんとしているウォレスの姿を、上から下までじっくりと眺め回した。「1万。」
 ウォレスは昔の癖かコートもシャツも一講師にしては英国風の上質なものを着ていたから、もしかしたらボラれたかもしれない。だが
「ちょっと待ってください。全く話が見えないのですが。」
 額に指先を当て、言った言葉は聞き入れてもらえなかった。彼は結局訳も分からぬままその日の所持金3万と5千円を取られてしまう。
 そして老婆は酷く大事そうに懐中時計を取り上げた。そして最新の注意を払ってその螺子を3回転と半、捻った。
 微かな歯車の動きはやがて秒針に伝わり、規則正しい音が店の中にもう一つ増えた。
「針は進んだり戻ったりするよ。お前の行きたい場所へお行き。」
 ウォレスの手に渡されたその時計は、なぜか酷く掌に馴染んだ。困惑しながらも外蓋の細工をもっと良く見ようとするウォレスの耳に、遠く声が聞こえた。
「大事にしておくれよ。爺さんの形見なんだからね…。」


「あなたの旦那さんの形見でしたか。」
ウォレスが老婆の言葉に驚き聞き返そうと顔を上げたとき、そこはもう古本屋の埃の中ではなかった。「…ここは…。」
 暖炉に火が燃えている。はぜる木の音はどこか懐かしい冬の音だ。立ちすくむウォレスはそこが『彼女』の生まれた館だと気付いた。真夜中にひっそりと訪れたことの有るその家。しかし暖炉の壁には確か、あれがあったはずだ…大きな十字架の紋章…ウォレス達吸血鬼を退ける一族の紋章が。
 外から覗いた事はあったが、そのせいでこの部屋に入った事は無かった。全く拒絶する訳ではないがやはり相容れないもの故気分が優れなくなってしまったから。だが、今は苦しくない。
 十字の紋章はまだそこにあった。そしてその前に立てかけられた一枚の写真…。
 ウォレスはその写真に目を奪われた。映るのは 金色の髪、白磁の肌。そして俯くように伏せられた長い睫の瞳をもった女性の姿。
 その時だった。
「…まだあいつは見つからんのか。」
 廊下に続く扉が開いて、声が聞こえた。ウォレスはとっさにカーテンの裏へ隠れた。入ってきたのは一人ではなかった。チャコールグレーのストライプが入ったスーツを着た男を囲んで、数人。そしてウォレスはそのどの顔にも見覚えがあった。特に一人目の金髪・初老の男性には。
 男性は暖炉に向かって進むと、立てかけた写真をそっと手に取った。
「ウォレス…ウォレス・グランブラッド。私の娘を忌まわしき吸血鬼と成した男…。」
 ぎりりと唇を噛んだ彼はそう、『彼女』の父であり吸血鬼ハンターである彼等一族の長。
── ここは…つまり、過去の時間。
 影に潜んだウォレスは、その事実に息を呑んだ。
「戦いに出た者は全て返り討ちに遭っています。それ所かあいつはお嬢様を殺した我々を…。」
「恨んでいるのは私のほうだ!」
初老の男性は大声で叫び、その後激昂した自分に羞恥を覚えたのか、声を落とした。「私はあいつのせいで…誰よりも愛しい娘を…この手で…。」
 震える手、震える唇、その声にも言いようの無い怒りと切なさとが篭もっていた。
 カーテンの陰でウォレスはその時のことを思い出していた。
── あれはこの館の庭で。…真夜中のことだった…。


「…っはぁ…はぁ…、はあっ…。」
 荒く息を弾ませる彼女の華奢な身体を、片腕に抱いて走る…月夜の暗い生垣の迷路。
 ここを抜けて門を出れば、その先は何処へでもいけるはずだった。
 しかし追手は直ぐ後ろまで来ていた。
「見つかったか!?」「あっちだ!」
 カンテラの灯りが周りに迫ってくる。しかし盲目の彼女をそれ以上せかす事は出来ず、自分だけが変化して逃げる事も勿論できず、ウォレスと彼女はいつしか追い詰められた。
 相反する教えの長い詠唱を唱えられると、動きが鈍る。その手に持ったガラスの小瓶が月明りに光る。気配を察した彼女の細い指が、怯えて服裾を握ってくる。
「やれ!」
 鋭い声が飛ぶ。小瓶の蓋が開けられ、ウォレスはとっさに彼女を庇い、聖なる水をその身に受ける。焼ける肉の匂いと、彼女の短い悲鳴。
── やめてくれ! このまま私たちを行かせてくれ…!!
 ウォレスは2人を捕まえようとする追手の手をマントで振り払いながら、心の中で叫んでいた。
── やはり我々は相容れぬ種族なのか。吸血鬼であるという事はそれほどまでに忌まわしい事なのか。
 害を及ぼすつもりは無い。生き血を啜らずとも生き抜くことは、出来なくはないのだから。だが彼等の目は全くそれを信じない。今向けられるのは怒りと憎悪とそして恐怖の瞳。
 ウォレスは腕に抱いて庇う、その人を見詰めた。
── 彼女だけが、私を信じてくれた。そして愛すると言ってくれた。
 だがウォレスは肩口を思い切り引かれ、彼女は腕を絡め捕られ、2人は引き剥がされる。
 常人には無い力で抗おうとすると、聖水が振り掛けられる。…彼女にも。
 越えるはずだった塀に身体を押し付けられる。
 月明りに銀の刃が光る。
「やめろ! やめてくれ!」
 悲鳴のような声が、喉から上がった。
 だが。
 ウォレスの目の前で、刃は彼女の柔らかな胸に埋まっていった…。
「娘よ…これでお前は安らかに逝けるのだ…。」
 そんな呟きが追手の一人、金髪の男から上がり、ウォレスは唇から血を流す彼女とその男をうつろに見比べた。
── 安らかに…。バカな事を…。
 勝手な考えだ。何を言っている。……これだから『人間』というものは…。
 自らの娘を殺しておいて。
 そんな目をして何を言うか。
 ウォレスの緑の瞳に光が灯った。頭の中は真っ白になり、身体を押さえつけていた数人をなぎ倒し、その首筋を食いちぎった。あたりは一気に騒然となり、恐怖で逃げていく背中が見えた。
 そしてウォレスは呆然としたまま、彼女の元に歩み寄る。
 だが抱き上げた白磁の身体は既にもう、端々から灰になりかけていた。
「…ウォレス…あなた…。」
 見えない筈の瞳が、涙を湛えてウォレスの姿を探す。
「ここに、居ます。」
 しっかりと腕を取り、身体を抱きしめて、耳元に囁く。
「………あ…。」 
 消えていく、か細い鼓動。繋ぎとめたくて、取り戻したくてもっと強く抱きしめる。けれど胸に刺さった銀の刃を引き抜くことさえ、ウォレスには出来なかった…。
 最後に残ったのは、彼女が大切にしていた銀のロザリオのみ。


「探せ! そして息の根を止めるんだ。…私が死のうと…一族が滅びようと…たとえ最後の一人になっても…私は、私だけはあいつを許すまい。」
 その声にはっと意識を取り戻すと、ウォレスのすぐ傍にその男は近づいて来ていた。既に酔っているのか、ウイスキーの入ったグラスを傾けている。
 この男の執着で、ウォレスは幾人もの人間を殺した。追ってくるものも、自ら恨みを持って殺したものも…復讐は復讐を生み、今発せられた男の言葉の通り、彼が死してもそれは終わらず…。
 だが初めの怒りが納まり、やがて殺す事に惑い始めたウォレスを止めたのは、彼女が残したロザリオと彼女の言葉だった。彼はそれを胸に抱き、長い長い眠りにつく事となる。
 ウォレスはカーテンの陰から、怒りに燃える男の瞳をじっと見詰めた。この男がこんな復讐の塊になったことも、他の人々をあやめる事になったのも……結局は自らの過ちのせい。
 それを思うと複雑な気分になる。あの時もそれは分っていたし、異なる種族ゆえに、思考の違いがあっても当然だという事も分る、今なら認められる。
── けれど私は…。…それでも私は、貴女を愛する事を止める事など、出来なかったのです。
 ウォレスは俯いた。
 その気配に、男が気付いた。
「誰だ!?」
 叫んで打ち払ったカーテンの陰には、しかし誰も居なかった。


 次に気付いた時、ウォレスが立っていたのは館の庭園だった。微かな話し声がウォレスの耳に届いて、彼はそちらに歩み寄っていった。
 庭園の中に造られた、天蓋付きの小さなテラス。座って話をしている華奢な背中をした金髪の女性。ウォレスはその姿に息を呑んだ。凛とした背筋、闇に浮かぶ白い肌。そしてその前に立っているのは…あれはウォレス本人。
── これは…。
 夢幻なのか。今私は、自らの記憶の中を彷徨っているのか。それとも…本当に過去に…過去のあの瞬間に戻ってきたのだろうか。
 だがそこに居るその姿は、幻にしてはあまりにもリアルすぎた。
「ウォレス…。」
 呆然としながらも生垣の後ろに潜んだウォレスの耳に、澄んだ声が聞こえてきた。聞き覚えの有る彼女の声。
── これがもし、戻りたかった私の過去のあの場面であるならば、私はこの後の彼女の言葉を一言一句間違えずに思い出すことが出来る。
 ウォレスに気を使ってか、元々彼の前で首筋を晒すような服を着ずにいた彼女は、その日もハイネックの白いドレスを着ていた。だがもう既にその首筋には彼の噛み痕が残されており、だが生き血を取る術もその気も無い彼女の身体は、闇に輝くほどに白く細くなっていた。
 そんな彼女の姿を見るたびに、ウォレスは後悔の念に襲われた。吸血鬼はなぜ日の光やロザリオに弱いのだろう。本当に…何がそうさせるのだろう。では吸血鬼は悪なのだろうか。この世に在ってはならない存在なのだろうか。私が彼女をそうしてしまったのだろうか…。
 けれどロザリオに、強い太陽に、身を焼かれながらも信仰を失わず、ウォレスを責める事も無く、しなやかに強い彼女を見ながら、ウォレスは彼女を噛んだ自分を後悔していた。彼女は露ほども迷って居なかったのに。だからその見えぬ目をまっすぐウォレスに向けて言ったのに。
「私は貴方を愛し、父も、兄も、皆、愛しています」
 …と。だが、ウォレスは己に惑い、彼女に答える事が出来なかった。
 その言葉を伝えられなかった自分は、百数十年経った今も、まだこんなにも後悔している。
 その頃の自分が、テラスから背を向けて去っていく姿が垣間見えた。
── 行こう。
 ウォレスは心に決めて茂みを掻き分け一歩を踏み出した。
 これが運命だったのかもしれない。私があの扉を知り、今ここに居る事はこの瞬間から決められていた事だったのかもしれない。なぜならば私は、今ならこの魂を賭けて言えるから…。
「…誰…?」
 気配に気付いたのか、不審そうな声を上げて振り返るかの人。
「…私です。」
 答えたウォレスの心臓が高鳴った。
 彼女は今、目の前で生きている。動いている。そして自分と言葉を交わしている。
── 信じられない。…もう二度と…会うことは出来ないと思っていた…。
 その白い頬に、死ぬ間際の鮮血がダブるが、軽く頭を振ってそれを振り払おうとする。
「ウォレス…。でも貴方さっきあっちへ…。」
 指差したその白い手を、掠め取る。柔らかな感触が掌に伝わってくる。ウォレスは感極まって彼女の身体を掻き抱いた。
「…ウォレス…ウォレス…どうしたの…。」
 困惑したような恥ずかしがるような小さな声が聞こえてくる。自分の名前を呼ぶその声も、腕の中で小さく身を捩り、それから呆れたように微笑んで預けてくるその身体…せり上がってくる思いは、今ここに彼女が居るのだというその事ばかり。
 ウォレスは一しきり相手を抱きしめると、それからそっと身体を離して、じっとその顔を見詰めた。まろやかな頬や、金の髪。2人の間に、腕の長さだけの空間が出来る。
「貴女は…私の生涯に一人の人です。」
 ウォレスは静かに、伝えた。百年以上も持ち続けていた、そしてこれからもずっと変わらぬであろう想いを。
「ウォレス…?」
「愛しています。」
 漸く、漸く言うことが出来た、このたった一つの台詞。
── いつかは貴女の元へ、私も逝く時が来るでしょう。
 ウォレスは先程見た、彼女の一族達の様子を脳裏に思い浮かべた。
 彼等に討たれるならば、私は良いと思っています。
「だから待っていてください。」
 見えぬ目で困惑した様子を見せた彼女の身体を、ウォレスはもう一度ゆっくりと抱きしめた。胸元に入れた懐中時計の規則正しい針の音が、2人の間に微かに響く。
 巻いた時間は3巻きと半…あとどれくらいの時間をこの場所で過ごせるのか、ウォレスには分らなかったが。
「もう少しだけ…このままで…。」


 夜明けが近づき、ウォレスは部屋に戻るという彼女の背中を見送った。
 そのままテラスに残ったウォレスは目を閉じたまま懐中時計の止まる音を聞き、そして再び目を開けると、そこは元の古本屋の暗く静かな店内だった。
「…行ってきたかい?」
 老婆の探るような目に、ウォレスは黙って懐から針の止まった懐中時計を差し出した。
 老婆はそれ以上何も言おうとはせずに、静かにそれを受け取り、傷など無いかを確かめるように裏表をじっくり見回し、それから一つ頷いた。
「確かに。」
 ウォレスも頷いて、軽く頭を下げると踵を返した。老婆がよろめきつつも立ち上がり、ウォレスの後を付いて扉の傍まで歩いて来る。
 ウォレスは金のドアノブに手を掛けながら、それが鈍く光るのを見て、ぽつりと呟いた。
 まだこの腕の中に彼女の温もりも、肌の感触も残っている。
「…一度だけ開く事の出来る扉とは…」
腰の後ろで手を組んだままウォレスを見上げる老婆を、ウォレスはじっと見詰めた。「とても切なくそして…残酷なものですね。」
 そしてウォレスは扉を引いた。外を走る車の音が、微かに耳に聞こえた。

「…だから私たちは扉の番人になるんだよ。」
扉を出て行ったウォレスの背中に、老婆は小さく言った。「もう二度と、今度こそ会えないと分っても、たった一度の逢瀬がこの場を離れがたくしてしまうから。」

<終わり>
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【0526/ウォレス・グランブラッド/男/150/自称・英会話学校講師】
※ 個別で書かせていただきました。
※ 他に綺羅アレフさん、来生十四郎さんのものがあります。
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■         ライター通信          ■
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こんにちは、ウォレス・グランブラッドさん。いつも依頼に参加して下さって有難う御座います。ライターの蒼太です。
さて、今回の「扉の向こうに。」はシリアスシナリオで個別という事でした。きっとウォレスさんにも他の皆さんにとっても、とても思い入れの深い一作になるだろう、という事でとても緊張していました。ウォレスさんには幾度も依頼を頂いていますので、本文を書くにあたって、プレイングに書かれていることも勿論、それ以外の想いなども伝わってくるようでした。
過去に関わる話を書いていくのは、PCさんの性格をもっと良く知ることが出来る気がして、書くのはとても好きです。ただ依頼にするのはちょっと難しいものですね。またこんな機会が持てるといいのですが。
では、また次回ご縁がありましたら、また依頼をご一緒させていただければ幸いです。
蒼太より。