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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


『京都出張所』


●出張依頼
瀬名 雫が一枚の印刷した紙を手にしてなにやら深刻そうに紙を見つめている。
「あっ、おはよう。」雫はこちらに気づくといつものような明るい笑顔に戻り
紙の方からこちらに目をやった。
「京都の方から掲示板に依頼が来ていて被害者からの投稿だから見逃せないと
思ってコピーをとっておいたよ!」
雫からわたされた用紙を見て見るとそこに書かれていた内容は――――

『題名:京都より出張お願い』

「内容:神社の娘、長女の水月・貴子(みなづき・たかこ)と申します。
私の家柄は代々長男が首領を勤めてまいりました。
しかしここ数百年男性方の短命、変死、事故死、病死が目立つようになり
我が家ではそれを隠し通そうと上からの重圧にはすごいものがあります。
私が告知する理由・・それは・・血がつながっていないのです・・
私は今は亡き(義理)父が事故で両親を亡くしたまだ幼かった私をひきとってくれ、
私を育ててくれた父のためにもこの家の血を絶つ分けにはまいりません。
今では現首領も謎の病気で24歳という若い歳で衰弱しております。
もしかすると先代の霊になにか関係があるかもしれません・・
その為に一刻の有余もなりません。」

こんな内容だった。
「貴子さんからあの後連絡を取り地図ともう一通手紙をもらったの」
雫からもらった地図と、手紙をまとめて見ると
@貴子さんは血のつながりが無いため父(義理)と現首領以外の水月家に嫌われている。
(現首領はとてもお優しい方で日々貴子と話してくれる唯一の存在。)

A現首領の婚約者の桃子さんの貴子に対する嫌がらせは中でもひどいものである。

B異変が起きはじめたのは1800年の前首領(水月・洋推(ようすい))から始まった。
 またその前の前首領の名は(水月・流夜(りゅうや))。
 彼は事故死だと言われているがどうも一族が何かを隠している。
 
 「皆、水月家の方で歓迎してくれる人は少ないと思いますが貴子さんのためにも気を
  悪くしないでがんばってね」
 
 ●派遣
「わぁー見て見て!!あれが清水寺だよね!」
興奮しているのは綾辻・焔(あやつじ・ほむら)の手伝いをする為にきた
吟・有紀(ぎん・ゆうき)である。
「吟・・悪いけど観光している時間はないぞ」その一言にしょんぼりしながら有紀は
焔の後を追いかけるようにして歩いて数十分・・・
「ここの神社だな。」ぴたりと止まって見上げた神社は以外にも立派で一見一般の市民
から見て見ると何処にでもある神社と同じで至って変わった様子は見られない。
「わぁー嫌な感じの神社だね・・すごい憎悪で嫌悪感がするよ・・」
有紀は占いの能力を持ち合わせており幼いせいか知らず知らずに能力を発してしまい
周りの心が見えてしまうのだ。
「・・お前の能力で過去を見たほうがはやくないか?」少々疑問に思い焔は有紀に問いかけて見ると有紀は相変わらずの明るさで回答してきた。
「う〜ん、そうしたいのはやまやまなんだけどボクにも能力の限界があって一年前後
くらいしか見えないし・・おまけに重要になりそうな部分を探っても何かに阻まれるんだ」
有紀が言うなにかとは恐らく主犯であろう。
段を上りきるとそこに色白で男にしてはきゃしゃな肩、腕、骨、また地毛の栗色の髪が
風になびいてなんとも絵になる男が何処かもの寂しそうに何処かを見据えていた。
「あの人寂しそうだな」焔がそう言うとコクンと有紀はなにかをさっちしたように
寂しそうに頷き、ぎゅっと焔の袖を掴んだ。
そして男はこちらに気づき近づいてくると先ほどの寂しそうな眼差しとは一変して優しい顔を見せていた。
「首領の水月・功弦(みなづき・こうげん)です。お見かけしない顔ですし・・
早朝からお参りとは嬉しく思います」なんとも美しい言語を使う功弦に二人は少々
見入ってしまった。「あなたが・・」焔は首領という言葉を確認するかのように一言
はなった。
この人こそがおそらく貴子の言っていた衰弱している心優しい首領であろう。
「功弦さん?あっ!ここにいらっしゃいましたか・・」
そこに来たのは依頼者の水月・貴子(みなづき・たかこ)である。
「あ・・あなた方は例の・・」貴子はすぐにこちらに気づくと笑顔をこぼし、そして一つお辞儀をしてきた。

「貴子この方々は?」首領は落ちかかっていた貴子のストールをかけ直してあげてから
尋ねた。
「この方々は本家を・・功弦さんを救う為にきてくださったの・・」
貴子は唯一信頼のおける首領に事情を説明すると以外にも首領は反対に意を示して
こなかった。
その時「功弦さ〜ん!!」向こうの方から声がしてそちらを振り返るとごく普通のどこでもいるような顔立ちをした女性がやって来た。
「桃子さん・・」貴子の一言に焔は耳を傾け、その名はもちろん聞き覚えのある名である。
「あら、嫌だ・・貴子さんあまり功弦さんに色目使うのはやめてくださらない?
私の夫となる人なのよ・・もしかして私への嫌がらせかしら?」
桃子は首領の腕を無理やりくみ言った。
「そんな・・私・・そんなつもり・・ありません」貴子は桃子が苦手なのか声を
つまらせて言うと見据えたように桃子はくすっと笑った。
「なー有紀、どう見ても貴子さんと首領の方がつりあってみえないか?」
小声で尋ねると「うん、ボクもそう思う!!」有紀は納得しながら答えた。
そして首領は一つ間を置いてから「桃子、いい加減にしないか!
貴子は水月家の一員だ。部外者である君より貴子の方が上であるんだぞ」
少し取り乱したように首領は桃子に言った。
「あら、でも血はつながっていなくってよ」桃子の一言に首領も貴子もきちんと反論できなかった。
そう、血がつながっていないのは紛れもない事実で変えられないわけだ。
「でもそれって桃子さんにも言えることでしょ?」
有紀は以外にもこんな言葉を発してきて「な・・なんなのこの子。あ・・あなたには
関係のないことでしょ?」桃子は動揺したようで声を詰まらせながら言った。
「有紀!」焔は次の言葉を発しようとした有紀を止めにはいった。
ここでごたごたになれば依頼をこなすどころか何もしないうちに終わってしまう。
それではココに来たことが無意味な結果になってしまうのではと焔は冷静に考えた
うえで止めにはいったのだ。


●倉庫に隠された秘密
貴子は懐中電灯を持って薄暗い倉庫に招いてくれた。
そこはめったに人が入らないのか誇りがひどく手入れもされていないようだ。
床はよく見えないがおそらく誇りだらけだろうし一歩、歩くごとにぎしぎしと床が音を立てるわ散々な倉庫である。
「わぁーなんか薄暗くねぇーか?(汚いし・・)」
焔がそれを言うと貴子はこちらに振り向いて「ええ、人が入ることがめったにありませんから・・」貴子は遠慮気味に言ってきた。
「ここにこれば何か手がかりがつかめると思います。いろいろな先代の遺品、経路、写真などが保管されています・・」貴子は薄暗い中をおぼつかない足取りで歩いていく。
その時焔の後ろから大きな音とともに声がした。
「「わぁーー」」声とともにドサッと大きな音が混じって聞こえその声は多分有紀である。
「大丈夫か?お前、何してんだよ・・」
あきれた顔で有紀に手をかそうとした時先ほどまでなかった通路が存在していた。
「痛ったた・・なにかにつまずいたと思ったら勝手に壁が動いて・・」
有紀は少し困惑気味の様子で、これは一種のカラクリ屋敷みたいなものと考えるのが
筋だろう。
奥は更に薄暗く焔はゴクンッと息を呑んで通路の先へと向かった。
中は何100年も掃除していないせいか汚く時々、鳥肌が立つほどひどいものであり
早くここから抜け出したいとさえ感じるほどだ。
しばらくすると下降気味になっており地下に続いている様で永遠と続く薄暗い中を
無言で降りていくと大きな広間らしき場所にたどり着きそこは美しくよく手入れの
されている部屋のようだ。
不思議にもここにたどり着くまでの間、焔は誇りがどんどん減って綺麗にされている
ような感じがしたが気のせいだろうか。

「こんな所があったなんて・・知りませんでした・・」
貴子は一言はなった。

●隠された真実
貴子は驚きを隠せない様子で辺りをきょろきょろとまるで子供が物珍しそうにする
仕草と同じである。
そして真ん中に仏壇らしきものがありゆっくりとそちらに近づいて写真を覗いて見ると
2つの並べられた写真を見て貴子は驚きを隠せない顔をしていてそれを見ていた有紀は「貴子さん??」不思議そうに貴子の顔を見た。
「貴子さん、この写真に見覚えがあるのか?」焔も貴子の表情を窺いながらそっと
貴子を見上げた。
「この方は・・佐々岡・・」聞き覚えのない名前をあげてきた為、誰なのかも検討が
つかなかった。
「どなたですか?」焔は眉を寄せながら尋ねると貴子はうつむいていた顔をこちらに
上げて「私の・・本当の両親。佐々岡・慎太郎(ささおか・しんたろう)と佐々岡・果歩(ささおか・かほ)」言いにくそうに貴子は答えると「貴子さんの両親・・」焔は言葉を繰り返すように言った。
「焔さん、誰か来る・・」
有紀が能力をつかったかどうかは分からないが入り口の方に耳を傾けると足音がこちらに近づいてくるのが分かる。
「・・・貴方方は・・」そこに現れたのは紛れもなく水月・功弦、であり相変わらず
落ち着いた顔つきでこちらに近づいてきた。
「ここにお気づきになられましたか・・さすが派遣されて来た方々なだけあります。
本当なら気づかずに何事もなく終われば助かったのですが・・」
首領は少しうつむきながら言葉を発した。
「貴子の両親は水月家の先代の・・私のお父上の大親友にあられました。我が家を
呪いから救おうと生まれつき持った霊能力と浄化能力をつかって救おうとしてくれました。
しかしその霊にうち勝つ事ができませんでした・・まだ幼かった貴子に先代は言えずに
交通事故と伝えました・・。周りのもので知っている者は今では私だけ・・
先代はお亡くなりになりましたから・・貴方ならば霊に負けたならば運命は知って
おられますよね。」首領の質問に一度、貴子の方をちらっと見てから
「・・殺されてしまう・・もしくは体を確保されてしまう」焔は言いにくそうに答えたが貴子が泣き崩れる事はなくただ一言「本当のことを知ってよかった・・」と言った。


●追憶
「功弦さん、主犯は誰だか知りませんか?」有紀はこれだけの事を知っているのだから
と思い尋ねた。
「慎太郎が浄化を試される際・・小さいながらも私もそこに居合わせたのですが幼すぎてあまり記憶が・・」考え込む首領の答えをじぃ〜と待っていると何かを思い出したのか
こちらを見据えてきた。
「曖昧なのですが、慎太郎様はたしか・・『流夜』と『洋推』とはなっていた記憶が
あります」やはりこの二人は何らかの関わりを持っているようだ。
「そういえば・・流夜ってやつについては事故しだと世間ではなっているがなにかある
らしいが実際のところどうなんだ?」
焔は依頼書の中にあった手がかりのことを思い出した。
「流夜様・・?」気まずそうに聞き返してきた首領に首を少しかしげ何故聞き返してきたのかが不思議だった。
「流夜様は私もよくは知らないのです。」その言葉を聞いて納得はしたが本当に知らないのだろうかと焔は疑問に感じた。
「貴子、ここはあまり空気がよくない。一旦、外に・・例の場所へ案内願えないか?」
首領が貴子にそう告げると貴子は頷き外を目指しロウソクを灯して外へと向かい
そして案内された場所はお墓であった。
「ここは誰のお墓?」有紀が首領を見上げて尋ねると首領は「先代首領、流夜様のお墓です。」とそう答えてきた。
首領は本当のところは貴子の両親のようにまた殺される事を恐れているのか焔たちにこの依頼を未解決に終わらせたかったのだ。
その気持ちは今にしてみれば先代と同じ立場なら当然のことなのかも知れない。
悲劇の追憶はけして消える事もないけれどもだからこそこの依頼を解決したいと思える
気持ちもある。


●手がかり
2人は境内にあるベンチに座り考えることにした。
「焔さんどうやって解決する?霊はそう簡単に尻尾を見せてくれなさそうだし・・」
有紀は困った様子で言うと「んー、霊視はしたんだけど引っ掛からなくって・・話に
ならねぇー状態・・。」霊視で疲れたのか焔はため息をついた。
それを心配そうに見てくる有紀に再びため息を一つ吐いて空を見上げた。
別に有紀が嫌いだとかうっとうしいとかそういうため息ではなくただしゃべることが
得意ではない焔にはどう反応していいのか分からなかった。
そして焔はおもむろに立ち考えているせいか意味のない往復を繰り返していると前から
ゆっくりと首領が歩いて来た。
「どうかな?いい手がかりはお見つかりになりましたか?」首領は相変わらず落ち着いた
雰囲気を保ちながらこちらに質問をしてきた。
「いえ・・あれから一つも手がかりが見つからずさっぱりです・・」なにも見つけられずに苦労している焔は再びため息をついた。
「なぁー功弦さん、あんた・・俺らになんか隠してないか?」
焔はそう言うと顔をあげてじっと首領の反応を窺った。
「・・・」首領は黙り込んでいるが相変わらずなにを考えているのか見えてこない人間である。「霊が見えなきゃ・・お払いもできない・・一族の恥だから」有紀の一言に焔は振り向いた。
「なぜ・・君がそれを知っているのか分からないが確かに流夜様は霊感が薄かった・・
しかしそんな先代はたくさん居られるのだから問題はない・・」
一瞬だけ顔が驚いていたように見えたがすぐに冷静さを取り戻し言葉を口にした。
ではなぜ・・焔がそう口にしようとした瞬間、ぞくっと霊の独特の気配を感じ取り焔は辺りを見渡し霊視を開始すると自分を見つけろと言わんばかりにこちらを見つめている
24か5歳くらいのきれいな男性が立っていた。
「お前・・誰だ?」焔が息を呑んで聞くと敵対心がないのか、それでころか丁寧にお辞儀をしてきた。
『私は前首領、水月洋推です・・私は少し眠りすぎたようです・・やっと目が覚めた』
いまいち洋推の言っている言葉が3人とも理解できなかった。
恐らく有紀の言うなにかにはばまれて未来も過去も読取りにくいと言うのと同じように
洋推もなにかにはばまれて姿を現せられなかったのだろう。
『私はもう浄化してしまう・・一言だけお伝えします。この呪いはけして流夜様だけのせいではありません。もちろん主犯は流夜様・・いつなんどきも呪いは首領とともに在る事を・・』
重要なカギを・・すべてを知っている洋推をこんな形で失ってしまった。
「くっそ!!」思わず焔は感情を口に出してしまった。
しかしこの意味を説けばきっと重要な手がかりとはなるがそうとはいえなにかに腹が
立ってしまったのだ。
「ねえー焔さん・・・それってつまりは呪いの主は流夜さんってことかな?」
焔もそう言えばそう解釈もできると思ったが首領を見たところ霊が取り付いている感じがしないがどういう事だろうか。
「功弦さん・・一番あんたが呪いで痛みを感じる時間帯は?」
焔の質問に首をかしげながら「大体・・真夜中でしょうか・・」首領はそう言った。

「真夜中か・・そっか、ありがとう!!」
焔は一言そう返した。


●清水寺
「うー結構・・坂道きついね」有紀は焔と一緒に坂道を歩いている。
焔は有紀をちらっと見ながらも黙々と上へと歩いて行くと、しばらくして目的地に
たどり着いた。
「わぁーー眺めいい!!」ここは清水寺である。
まだ夜中まで時間があるためせっかくの出張を兼ねて観光をする事にした。
――パンフレット―――
『戸時代初期、国宝。優美な起り反り曲線を見せる寄棟造り、桧皮葺きの屋根や軒下の
蔀戸など、平安時代の宮殿、貴族の邸宅の面影を伝え、四囲の音羽山の翠緑と見事に
調和する。』
「へぇー、ここは本堂の舞台だから眺めがいいだろう」
そこからの景色はなんとも絶景なもので名所と言う名を持つだけの事はある。
【清水の舞台から飛び降りる】・・有名なことわざであるが清水の舞台から飛び降りて、心願成就すれば生きたまま成仏し、もし死んでもそのまま浄土に往生できると言い伝えていたらしいがしゃれにならないなと思い焔は思わず苦笑いをしてしまった。
今はあたり一面、気は緑色でそまっているが秋が来れば紅葉で葉は赤を帯、冬になれば
雪景色がすばらしい所である。
「ねぇー焔さん!!有名なお水飲も?」有紀が言っているのは『音羽の滝』の事である。
非常に縁起のいいお水で流れる出る清水は古来「黄金水」「延命水」とよばれ、
実は「行動・言葉・心の3業の清浄」の清めの水としているが観光客には
「健康・学業・縁結び」として有名でありこちらの方が受けがよく、知られている。
「ねぇー焔さん、どれ飲む?ボクはね・・全部にしよ〜♪」
有紀はけして欲があるという分けでは意味はともかくただ全部飲みたかっただけだろう。
焔も取りあえず一緒に列に並んで、混んでいたためどの意味を持つ水を飲んだかは
定かではなかったが楽しさは感じていた。
そして最後に参道を歩いていると有紀がこけそうになり焔は有紀を支えた。
「こらこら・・三年坂で転ぶと三年以内に転ぶと言う噂は知ってるだろ?」
飽きれながらも焔は有紀を気にしながら再び歩き始めた。
途中、アイスクリームを買い食いしたがなんとも変わった名前のソフトクリームがあり
有紀はその中のさくらソフトクリーム、焔は抹茶ソフトクリームを食べた。
美味しそうに食べる有紀を見て少しだけ笑みがこぼれた。
「もう、夕方だな・・日も暮れそうだし戻るか!」


●寂しい思い・・
「お帰りなさい・・」貴子が出迎えてくれ、着いた頃にはもう日はどっぷりと暮れていた。
そして夜中の0時を回るまでゆっくりと体を休め時間を待つことにし、首領の部屋の
障子の前の廊下に座り焔と有紀と貴子は時間を待った。
「くっ・・」首領の部屋から突然声がしたため急いで中にはいるとそこに居たのは
やはり流夜であった。

『憎い・・・私を殺した水月家の血を引く首領たちよ・・私を地獄へと引きずり下した
者度ものが!』

障子の音をきき流夜は敵対心旺盛で、こちらを睨んできた。
「お前がやっぱり・・何故首領たちを苦しめるんだ!」焔はあらかじめ近くの神社の狛犬の力を借りて結界を張っていたためこちらの方が今の所、有利である。

『私は殺されたのにも関わらず水月家の者の態度は変わらない・・むしろ冷たい目で
俺の死を喜ぶものたちであふれていた』

「な・・人の死を喜ぶものなんて居ないはずだ」焔は批判しながら答えた。
「あ・・あんな噂がなければ・・」首領は意識があるらしくもうろうとしながら言った。
貴子は少しおどおどしながら「噂?」と聞いてきた。
どうやら貴子は流夜の事をよくは知らないらしいとここで確信がもてた。
「かつて水月家の中に首領の座を狙うものがいた・・もちろんどの代もそうで
ありました・・けれどもそれは望むだけで長男が次ぐのは当たり前、だから見守るしか
なかった・・しかし流夜様の代で恐れていることが起きた・・長男である流夜様が継ぎ、しかし次男は首領の座ですべてを手にしたかった・・だから噂・・をながしました。」
首領は咳き込んでそれ以上は離せなくなってしまった。

『そう、噂。生贄を差し出さなければこの水月家は滅びよう・・水月家の中で一番
気高きものを差し出せと・・』

気高きもの、それはすなわち首領を指すわけだ。
「けれども、あんたがやってる事は次男と同じ事だろ?現に首領たちを苦しめてる!」
焔の言葉に流夜はどうやら耳を傾けてくれているらしい。

『私は罰を与えているだけ・・私の苦しみを味あわせるための水無月家への復讐。』

それをきいた貴子は一つ疑問に思った。
「でも何故?洋推さんはあなたの弟ではないわ?もし苦しめるなら弟では?」
それを告げると流夜は声を上げて笑い

『分かってないな、佐々岡家の血を引くものよ。慎太郎でさえ同じ事を申したよ』

貴子はそれを聞き一瞬動揺を見せたがすぐに平常心を取り戻そうと黙り込んでしまった。
「お前はそれではいつになっても楽にはなれない!」
あきれ果てた焔は説得ではなく攻撃へと移し式神の犬神、伏姫に攻撃をさせた。

『くうぅ・・罪を償わせて何が悪い!』

先ほどまで敵意むきだしとはいえ攻撃を仕掛けなかった流夜も怒りが増し攻撃をしてきた。
有紀は小さな体で貴子を押して自分の体で攻撃を受け止めた。
「有紀!」焔が急いでかけよると「痛っっ・・ボクは大丈夫・・」有紀は幸いにもかすり傷だけで済んだようでひとまずほっとした顔を焔はした。
それはつかの間ですぐに焔は次の行動へと移した。
「伏姫!」合図とともに流夜の体に噛み付き流夜は油断したため完全に弱ったようだ。

『痛っっ・・なるほど・・霊を噛み砕く犬か・・』

そして流夜はその場に倒れこんでしまい浄化をしてやらねばと思い
「・・不動明王真言」と焔が叫んだがなにも起きなく辺りは一瞬し〜んとした。
「えっ?!え?!!お兄さん??は・・はったり?」
有紀がそう聞くと軽くこくんと頷いた。
「わ・・私がしよう・・」首領は気を取り戻したらしくふらふらとおぼつかない足で
流夜の元へ行き座り込んだ。
「すまなかった・・しかしもう弟はいない・・首領どころかなる前に亡くなってしまいました。貴方はきっと首領になった弟を殺して浄化したかったはずだ・・けれでも居ない。
それを晴らすために首領を殺したが成仏ができない・・違いますか?」
うつろになって話す首領の目は焦点が合っていないようだ。
そう言うと流夜は一言こう次げた。

『ああ・・そうだな。もう弟探しは疲れた』

そう言って永遠の眠りへと着いた。
「今度は闇ではなく明るい場所」
焔はそう言って立ち上がると背伸びをして満月を見上げた。
結局、水月家のことは水月家の中で解決できたがその手助けをしたのは紛れもない
焔と有紀だ。
「あの・・ありがとうございました。」
貴子がそう言うと焔は笑って「いいえ」と返すとつられたのか貴子は今までで一番いい
笑顔を見せてきた。
「今晩はもう遅いです。お泊りになられてください」首領はまだ疲れが残っているせいか
何処かおぼつかないがすっきりしたように見える。
「ええ、ありがとうございます」焔はそう放った。
「有紀、明日ついでだから観光して帰るか?」
「うん!」
そう言って何事もなかったかのように時間はすぎていくのであった。

 
                              Fin


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【 0856/ 綾辻・焔(あやつじ・ほむら)/男/17 /学生 】
サポート
【 0345/ 吟・有紀(ぎん・ゆうき)/男/9 /神社のお手伝い】



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■         ライター通信          ■
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はじめまして。今回担当させていただきました葵桜といいます。
京都系のもの物語は初めてだったため少々資料集めに時間がかかってしまい
すみません。
やはり有名な場所、清水寺を観光地に選ばせてもらいました。
精一杯描かせてもらい気に入ってもらえると幸いです。
今回のサポート役は実際に(東京怪談)に在住する退魔師です。
まだまだ未熟者ですがこれからもよろしくお願いします。