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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


<記憶消去屋>

 草間の元へ、一組のカップルが訪れていた。
 神経質そうな背の高い青年は、この暑いのにグレーのスーツをきっちりと着こんでいる。
 上着を脱ぐどころかワイシャツのボタン一つ緩めず、血走った目で草間の正面に座っていた。
 その隣には、ひどく線の細い女性が座っている。
 抜けるように肌の色が白い。切れ長の瞳は理知的だが、全体的に痩せているので精気がないように見える。
 白いサマードレスを纏い、人形のように静かに座っていた。
――『彼女』を取り戻して欲しい。
 それが、青年の方が持ってきた依頼だった。
「目の前に、ええと、いらっしゃるようですが」
「こっちは三和ヨウコ。僕は西島ジュンです」
「はあ」
 苛立ったような青年の言葉に、草間は肩をすくめる。
 睡眠不足でカルシウムとビタミンCも足りていないように見える。
「ヨウコは、僕に関する一切の記憶がないと言っているんです。僕たち、結婚を前提に3年も付き合ってきました。結婚式はあと一月後なんです。ところが、彼女は一週間前、突然僕を知らない、結婚も知らないと言い出しました!」
 西島と名乗った男は、ドンと草間興信所のテーブルを叩いた。
「まあ、落ち着いて」
 草間は指の間に挟んだ煙草に火を付けることも出来ず、とりあえずそう言った。
「それで」
「彼女は、僕以外の事は全て覚えているんです。一緒に勤めていた会社。これは今でも勤めていますが、そこの仕事や人間関係は何の問題もなくこなしている。だが、僕のことは覚えていないと言う!」
 西島はもう一度テーブルを殴った。
「僕を知らない、僕を拒絶する彼女なんて、彼女じゃありません。僕は彼女を問いつめました。そして、日記を見つけた」
「あの……この人、私本当に知らないんです……なのに、合い鍵を持っていて」
 三和と紹介された女性が、か細い声を出した。
 どうやら、やつれているのはこのヒステリックな男性の問いつめに一週間耐え続けた結果のようだ。
「私が会社に行っている間に、勝手に日記を見て……返してくれないんです」
「そりゃ西島さん、非常識ですよ」
 草間は流石に眉を顰める。西島は草間を睨みつけた。
「何を言うんだッ! 僕らは交換日記もしていた! これから結婚して、何もかも見せ合う仲になる予定なんだ。日記くらい」
「でも私、この人を知らないんです」
「君は黙っていろ」
 西島は三和を睨みつけた。三和は哀しげに眉を顰め、片手で顔を覆って俯いてしまう。
 肩が微かに震えていた。
「これが日記です」
「いえあの、見るわけには」
「ここを」
 草間の言葉を無視し、西島は日記を開いた。
 最後のページの日付は、先週の火曜日。つまり、今から一週間と一日前、ということになる。
――こんな事、忘れてしまおう。記憶消去屋に、こんな記憶……彼の記憶なんて、消してしまって貰おう。
 綺麗な女文字で、そう書かれていた。
「彼女は、僕の記憶を消しに行った! 許せるはずがないじゃありませんか。僕との記憶のない彼女なんて、彼女じゃない」
「西島さん、あの」
「手がかりはこれだけなんですが、彼女はこの記憶消去屋とかいう場所に行って、僕の記憶を消した……いいや、奪われたんだ。彼女が僕とのことを忘れたいなんて思うはずがない。草間さん、彼女の記憶を取り返して下さい」

 西島が三和ヨウコを引きずるようにして連れ帰った後、草間はようやく煙草に火を付けた。煙を肺に吸い込む。
「記憶消去屋って、何ですか?」
 常駐事務員の野田桃子が、草間の肩を叩いた。
「俺も噂しか聞いたことがないんだが。何でも、都下にある店なんだ。そういう名前かどうかは知らないがな。裏の情報じゃ、望んだ分の記憶だけ、綺麗に消す力があるそうだ」
「そうなんですかー。でも私、女の人の方に同情しちゃうな。なんだか神経質で嫌な感じの依頼人」
 桃子がため息をつく。
「ま、仕事はするさ。取り戻せるものなのかどうかは知らないがな」

×

 京王線府中駅を下車すると、綺麗なロータリーが広がっていた。
 ゆるやかに動く銀色のモニュメントは、真夏の日差しを浴びていっそ凶悪なほどに光り輝いている。
 日差しの強さに閉口しながら、御崎月斗はロータリーを抜けた。
 手始めに、依頼人である西島ジュンとその恋人三和ヨウコの関係を調べるところから始めようと思ったのだが、ヨウコはシュライン・エマという興信所の女性と同行していて掴まらない。西島は興信所から出た後出社してしまったようで、これまた掴まらない。
 という草間の返答を聞き、どうしようかと考えあぐねながら記憶消去屋の情報を辿るところから始めたのだが。
 これが、驚くほど簡単だったのだ。
 記憶消去屋と呼ばれる男性は、東京都府中市にある『時間旅行-Time
Travel-』という店を経営しているようだ。裏社会の殆どの組織と関係しておらず、完璧なまでの一匹狼を貫いている。
 店は最近流行りのアロマセラピーの店……と言ってよいものか。ドライハーブやエッセンシャルオイル、ポプリなどを扱う小さな店だ。
 府中市の案内によれば、アロマセラピーのカルチャースクールを開講したり、ポプリの作り方を教えたりもしているようだ。
 月斗はこの情報にぶち当たり、モニタの前でぽかんと口を開けた。
 裏社会に携わる人間が、足抜けした後客商売に入るのは決して珍しいことではない。バーやカフェの経営などをしている者は数多い。しかし。
 何故ハーブ屋。
 記憶消去屋の外見や年齢などの情報は一切判らなかったが、月斗は男性であるというその噂すら疑わしいものだと思った。
 『時間旅行』の情報を調べつつ、式神を使って依頼人の情報を集める。
 大体情報がまとまったところで、こうして府中まで出向いてきたのだ。
 
 西島ジュンと三和ヨウコの間に、これといった確執はなかったようだ。諍いなどもなくごく平穏に交際をしていたようだが……。
 何があると、人は相手の存在丸ごとを自分の中から抹殺してしまおうなどと思うのだろうか。
 月斗は軽く自分の身に照らし合わせて考えてみる。嫌なことは数あれど、記憶自体を消去してしまいたいと思うことなど――。
――大人の男女関係はわからないね。
 月斗はつまらぬ考えを頭の中から追い出す。こういうのは嫌いだった。
 
×

 駅から歩いて五分ほどの場所に、目的のハーブ屋『時間旅行-Time
Travel-』はあった。
 クリーム色のざらついた煉瓦を積み、ドアのすぐ脇に黒いランタンを下げた『時間旅行』は、若い女性が好みそうな雰囲気を醸し出している。府中には学校も多い。夏休み中でもなければ、きっと女子高生などでもにぎわうことだろう。
 月斗はドアを開いた。
 中には甘い野草の香りが満ちている。ハーブやお香などを扱う店の、あの独特の匂いだ。
 綺麗に段差を付けた棚に、小さな青黒い遮光瓶が並んでいる。カウンターの奥には、大きなガラスケースにドライフラワーのようなものが詰められて並んでいる。ポプリのためのドライフラワーやサシェ袋などから、ホホバオイルや蜜蝋などの上級者向けのものまでがきちんと並んで置いてあった。
 蒼いカウンターの向こうで、高校生くらいの少年が座っている。レジに寄りかかるようにして、参考書らしき分厚い本を読んでいた。
「いらっしゃいませ」
 月斗が入ってきたのに気づくと、少年が顔を上げる。
 その後ろに、白い服を着た男性が仏頂面で突っ立っている。
 月斗はレジにいる高校生に近づいた。
 芸能人か何かと思うようなさわやかな美少年である。月斗を見て、「いらっしゃいませー」と再度言った。
「ここはさ」
 月斗は少年に話しかける。
「ハーブとかしか、売ってないの?」
「蜜蝋とか、遮光瓶も置いてますよ。何が必要ですか?」
 少年は慣れた調子で問い返してくる。アルバイトか何かだろうか。
「そうだなあ。記憶を取り戻す方法とか、売ってない?」
 月斗はレジに腕を乗せ、にこりと笑った。
 少年が困ったように眉を下げる。
 憮然とした表情で後ろに控えていた、白ずくめの男性を振り返った。
 切れ長の一重の目に、ほんのりと赤い化粧を施している。背が高く肩幅があり、和風の美丈夫と言っていい。
 妙な気配を纏う男性だった。月斗の目には、別の姿がぶれて見える。それも、二つ。
 白い和装に赤い隈取りの禍々しい男性の影。そして、獣の気配。
――少なくとも人間じゃなさそうだ。
 月斗は男性を見上げる。冷たい眼差しが月斗を見下ろした。
「どうせお前も記憶消去屋に用があるのじゃろう。奥じゃ。ついてこい」
 男性が顎をしゃくる。店の奥を示した。
 
 ドアが乱暴に開かれたのは、その瞬間だった。
 
 息せき切らして、スーツ姿の西島ジュンが入ってくる。
 顔が真っ赤なのは、暑さのせいか怒りのせいか。
「ここが、記憶消去屋か!?」
 掴みかからんばかりの勢いで少年に問いかける。白ずくめの男性が不快そうに眉をひそめ、レジの奥から出てくる。
 ひょいと西島ジュンの襟首を掴んで持ち上げた。
「ここはそういう店ではないぞ。だが、記憶消去屋は奥におる。お前今売り物を蹴飛ばしたのじゃぞ」
 冷ややかな眼差しで西島ジュンを威嚇する。西島は男の手を払い除けた。
「弁償ならしてやるぞ。ヨウコは? ヨウコの記憶は戻ったのか!」
「知らぬ。我は記憶消去屋ではない。中に行って話を聞くがいい」
 妙な喋り方をする男性は不愉快そうに言い放ち、店の奥へと続くドアを開いた。
「付いてこい。何も触るなよ。子供、お前もじゃ」
「この子は何なんだ?」
 西島は月斗を指さす。男は振り返りもせずに「知らぬ」と答えた。

×

 記憶消去屋が待つ部屋に入るなり、西島は椅子に座っていた一人の男性に近寄った。掴みかからんばかりの勢いだ。
 色恋沙汰でそこまで興奮しなくても。
 月斗は半ば呆れながら、部屋の隅でその様子を眺めた。
 室内に居たのは、強い気を放つ男性が一人。死人のように気配を消している銀髪の男が一人。これが恐らく消去屋だろう。得体が知れない。
 そして、草間興信所のシュライン・エマであった。
 白ずくめの男性は、相変わらず冷たい目で一同を見回している。
「俺は記憶消去屋ではないぞ」
 西島に迫られた男性が、憮然とした調子で言い放つ。
 月斗は剣呑な雰囲気を漂わせるその男性から、奥に座る銀髪の男性へと視線を向けた。
 西島が、銀髪の男性に掴みかかる。
 案内をしてきた男が、素早く西島の腕を掴んでねじり上げた。
 西島は銀髪の男性に向かってなにがごちゃごちゃ言っている。月斗は冷めた眼差しで彼らを見つめた。
 ふと、西島の肩に何かが見えることに気づく。
 ごく小さい、何かだ。
 少しずつ大きくなっている。
 月斗の強い気を始め、金髪の男の禍々しい気、そして今室内で待っていた化け物じみた強い気を持った男の「エネルギー」に触発されて、それは急激に育っていた。
 これは……水子だ。
 月斗は眉を顰めた。
 月斗のように強い気を発している人間や、金髪の男のような魔物めいた気を纏う生き物のそばでは、低級霊などが急に力を付けてしまうことがある。
 消える寸前という弱さだった水子が、今は姿が見えるまでに成長してしまったのだ。
 月斗は嫌悪感で胸が悪くなった。
 何故、三和ヨウコが記憶を消したのか。おおよそ見当がついてしまったのだ。
 西島は、ヨウコか、もしくは別の女性に子供を堕ろさせたのだろう。
 気分が悪かった。
「考えたんだけれど、消去屋さん」
 シュラインが口を開く。
「堂々巡りをしてしまいそうよね、このままだと。西島さんは記憶を戻して欲しい、ヨウコさんはそれを望んでない。でも、一月後には結婚が迫ってる。三和さんと西島さんには席を外してもらって、私たちが内容を聞いて、どっちかを説得する形を取るって言うのはどうかしら」
「三和さんさえそう望むのなら」
 消去屋はヨウコに微笑みかける。
 ヨウコを西島が睨みつけた。
「あの……お任せします。私は覚えていないけれど、その理由を……シュラインさんに話して頂けますか? それで、シュラインさんが思い出すべきだと思ったなら、私思い出します」
「見込まれたものだな」
 男性が揶揄するように言う。シュラインは彼を軽く睨んだ。
「費用はどなたが持ちますか」
 消去屋が西島を見やった。
「このお二人とその少年に、話をしましょう。三和さんの記憶を戻したということで。記憶を戻す分の費用は頂きますし、実際に記憶を戻すことになればもう一度頂きます。それでよければお話しますよ」
「……幾らだ」
 西島が吐き捨てる。消去屋は西島の耳に口を近づけた。
 何事か囁く。
 西島の顔から、一瞬にして血の気が引いた。
「な……まさか、ヨウコが……?」
「払って頂けますか」
 西島の動揺など知らなげに、消去屋は淡々と言う。西島は青い顔のままヨウコを見た。
「いや……記憶は……戻さなくていい……」
「ちょっと、西島さん」
 シュラインが口を挟む。
 と、西島の腕を掴んでいた金髪の男も、水子に気が付いたらしい。
「ほほ、これのことか」
 合点がいったらしい。
 西島の腕を掴んだまま、金髪の男性が甲高い声で笑う。
「では、三和さんと別れて下さいますか」
「何を言うんだ……僕は、彼女とこれから新しい記憶を作って行く。それでいい……一からやり直したい」
 西島の腕を男が離す。西島はヨウコに近づき、その手を取った。
「責めて悪かったね、ヨウコ。でももういい……あんなこと忘れて、僕とやり直そう。忘れていた方がお互いの幸せになる事だって、あるよ」
 消去屋がヨウコの背後にゆっくりと回る。
 彼女の眉間に、人差し指をトンと置いた。
「これで、いいですか? 三和さん」
 囁く。
 ヨウコの目に精気が宿った。
 立ち上がる。
 西島の頬を、思い切り張り倒した。

×

「さて、種明かしはどうしましょうか。三和さん」
 頬を押さえてへたりこんでいる西島を見下ろし、消去屋が言う。
 ヨウコは怒りに顔を赤くしながら、椅子に座り直した。
 消去屋が月斗を見る。奥から椅子を出してきて、月斗に勧めてくれた。
「君も草間興信所の人なんだね。話を聞く権利があると思うよ」
 予想の付いていることではあるが、聞いておくのも悪くないだろう。
 月斗は椅子に座った。
 消去屋が、冷たくて甘酸っぱい飲み物を振る舞ってくれる。さっぱりとしていて美味だった。
「お話します。こんなに話が大きくなるなんて思わなくて……。ごめんなさい、皆さん」
 ヨウコはぐいと飲み物を飲み干すと、丁寧に頭を下げた。
 そして、話し始めた。
 
 西島には、ヨウコと全く同じ期間付き合っている女性がいた。そして西島はヨウコとの結婚を決めてからも、ずるずるともう一人の女性と交際を続けていたのだ。
 そして、彼女は妊娠した。
 彼女は西島に妊娠のことを告げ、結婚したいと申し出たという。しかし、西島はこれ幸いとばかりに堕胎を命じ、関係も切ると言い出したのだそうだ。
 彼女は、ならば一人で生むと決め、西島の前から去ったのだが、西島は彼女を見つけ出した。後から認知などで揉めてはたまらないという気持ちがあったのだろうか。それは、ヨウコには判らない。
 彼女は強引に堕胎させられた。
 ヨウコは彼女自身から話を聞き、それを知ってしまった。それが一週間前だ。
 ヨウコは記憶消去屋を名乗る店長――秋生に相談を持ちかけた。そして、思わせぶりな日記を作成、秋生に記憶を消して貰い、西島がどういう態度を取るかを見ることにしたのだ。
 
 ジュンくんは、反省してなかったんですね。
 
 ヨウコは少し哀しそうに、そう締めくくった。

×

「大人って汚い」
 ヨウコと西島が連れだって帰ってゆくのを見送り、月斗は肩をすくめた。
 『時間旅行』の中は、甘い野草の匂いに満ちている。
 店員用だと思える木の椅子に座り、店の中を見回す。
 シュラインは先に帰ってしまったので、店内には消去屋と高校生、帝仁璃劉と名乗った男性がいるきりだ。
「子供は早く帰らないのか」
 エッセンシャルオイルの棚を物珍しそうに眺めていた帝仁が言う。月斗は首を振った。
「こういう店に入るの始めてだから。後学のために眺めていこうと思って」
「欲しいものがあればお伺いしますよ」
 白いデニムのエプロンを付けた消去屋が言う。
「ハーブって何が出来るんだ?」
「記憶を消したりは出来ません」
 消去屋が答える。レジの横で、高校生がプッと吹き出した。
「料理に使ったり、お風呂に入浴剤として入れたり、お茶にしたりします。月斗くんが楽しめるのは、先ほどのコーディアルなんかがいいんじゃないでしょうか。夏はクエン酸が必要ですし、ローズヒップスのコーディアルならビタミンCも豊富です」
「コーディアル?」
「ハーブの酢漬けを砂糖で煮詰めた飲み物ですよ。先ほどのあれです」
 消去屋は陳列してある瓶を手に取り、月斗に渡した。
「お前、楽しそうだな」
 帝仁が消去屋を見つめて呟く。
「うん、めっちゃ真っ当な人って感じがする」
「真っ当ですよ」
「嘘をつけ、お前が真っ当なものか」
 横やりを入れたのは、奥から出てきた人外の金髪だ。あちこちウロウロしているようだった。
「真っ当ですよ、兄さん」
 消去屋は金髪に微笑みかける。
「記憶消去屋はあくまで副業ですしね」
 何でもないことのように言う。
 似ていない兄弟だ、と月斗は思う。大体、兄さんと呼ばれた金髪の方はどう見ても人間ではない。
「お前は、記憶を自在に操れるのか」
 帝仁が問う。消去屋は頷いた。
「記憶の消去、復活、移植、一時的な封印まで何でも致します。ご要望の際は何なりと」
 にこりと笑った。
「失恋の苦い思い出などなら、格安で」
「しないから、失恋」
 月斗は消去屋の口調を真似、なんでもないことのように言い返す。
「家族の枷から一時的に抜ける、というのも可能ですよ」
 消去屋が月斗を見下ろす。
 月斗は一瞬視線をきつくした。
「興味ない」
 立ち上がる。
「おみやげにこれ買っていこうかな」
 ローズヒップスのコーディアルの瓶を振る。
 兄たちが喜んでくれそうだった。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0086 /  シュライン・エマ
 / 女性 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト
 0781 / 帝仁・璃劉 / 男性 / 28 / マフィアのボス
 0778 / 御崎・月斗 / 男性 / 12 / 陰陽師

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■         ライター通信          ■
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「記憶消去屋」をお届けしました。
今回は戦闘ゼロという事で、全編個別で書かせて頂きました。
他の方のシナリオにも目を通して頂くと、各PCの細かな動きが更に判ります。

御崎月斗さん
ご参加ありがとうございます。今回は調査するまでもない一般民間人の話だったので、それこそ赤子の手を捻るような依頼でございました。