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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


<<人身御供>>

● オープニング

 草間零は、震える手でそのスイッチを押した。
 とたんに回転するモーター音と、豆を挽く鈍い音が重なる。

 やってしまった――。

 珈琲メーカーのスイッチをONにした零は、瞬間的に頭の中で呟いた。
 手には空になったコーヒー豆の袋が握られている。
 零は最後の最後、ここ一発という時のためにとっておいた来客用のコーヒー豆を使ってしまったのだ。
 しかし、応接室に腰を下ろす依頼者の身なりを見れば、安物を出すわけにもいかない。
 結局、零は心の中で何度も何度も懺悔(?)しながら、兄に見つからないように隠しておいた珈琲豆の袋を取り出すと、中身を全て機械に投じたのだ。


 その日、夕方近くになって草間興信所にやってきたのは、高そうな白いダブルスーツに身を包んだ初老の黒人男性と、その秘書らしい若い日本人だった。
 黒人男性はソファーに落ち着くなり懐から葉巻を取り出し、あとは一言も喋らず白い煙を室内に量産しつづけた。
 そのため、依頼内容は日本人の秘書が伝えてきた。
「――と言うことです。ミスタ・草間」
 橘 淳(タチバナ・ジュン)と名乗った秘書の言葉を要約するとこんなものだった。
 何でも彼のボス――橘はミスタ・マクマホンと呼んでいたが――は、ヴードゥー教の秘密結社に命を狙われているとのことだった。
 そこで、その秘密結社からマクマホン氏を守って欲しいと言うことらしい。
「ヴードゥー教と言うと、あのゾンビで有名な?」
「ええ、そうです」
「しかし、橘さん? そういうことなら警察にでも行ったほうが良いのでは?」
 一通り話を聞き終わった草間は冷静に切り返す。
「当方にもいろいろ事情がありまして、警察沙汰は困るんです。それに聞けばあなた方はこういった分野を専門に扱っているとか? 謝礼は弾みます。依頼を受けて頂けるなら前金としてこれだけ用意させて頂きます」
 そう言いながら橘は草間の前で指を一本立てて見せる。
(ひゃ、百万!?)
 破格の値段を思い描き、驚いて腰を浮かせそうになる草間。しかし、橘の口からでた次の言葉は、草間の想像を軽く銀河の果てほど超えていた。
「前金として一千万、ご用意させて頂きました。さらに成功報酬としてはこの2倍はお支払いします。
 何、たいした仕事ではありません。連中はいつこちらを狙ってくるか予告をしてきていますし、すでに連中の居場所も調べ上げています。
 皆さんには、連中が狙ってくる土曜いっぱいボスを護衛してもらうか、先にその秘密結社を壊滅して頂ければいいだけです」
 話し終えてニッコリと微笑む橘を横目に、草間は破格の待遇に唸り声を上げながら室内のメンバーを見渡した。



「大丈夫なのかね? 橘君?」
「ご安心をボコール(祭司)。彼等はああ見えて、なかなかの使い手です」
 黒塗りのリムジンの中、二人の男は赤ワインを味わいながら流暢な日本語で言葉を交わしていた。
「そうかね? 草間とかいったか? あいつからは何の力も感じなかったが?」
「ええ、彼自身はただの探偵ですから。ですが、彼の取り巻きは異能の者達ばかりです……」
 時折車内差し込むオレンジ色の街灯の光が、ワイングラスを通して真っ赤な輝きを放つ。
「ふん、まぁいい。どの程度の者達かは知らんが、バロン・サムディの呪いさえ退けられればそれで良い」
 黒人男性の発する低い声を車内に響かせながら、黒塗りのリムジンは日の暮れた首都高を暗闇へと疾走して行った……。


●SCEN.1

『WFW証券(ワールド・ファンド・オブ・ワシントン)』。
 ここ10年余りで米西海岸を中心に、中南米、ヨーロッパと次々に事業拡大をおこなってきた証券会社。
 その創業者がジョージ・マクマホン。
 米国の好景気にうまく乗って、地方の小さな証券会社を世界的企業に押し上げた、まさにアメリカンドリームを体現した人物。
 同社は本国のネットバブル崩壊後も利益を上げ続け、ついにこの秋から日本での事業展開を決定していた。
「つまり、日本の大手証券会社との事業提携の記者会見に、WFW証券会長自らが乗り込んできたと言うわけですか……」
 宮小路・皇騎(ミヤコウジ・コウキ)は、彼の実家である財閥関連の調査部門に調べさせた資料を見て納得したように頷く。
 当初、依頼額の異常性から依頼主についてどんな手を使ってでも調べ上げるつもりだった皇騎であったが、予想以上に簡単に相手のことが判明し少々拍子抜けしていた。
 というのも、WFW証券は彼の実家の財閥系証券会社にも業務提携を打診してきており、調査部にはWFWの資料は元より、その創業者であるマクマホン氏についても十分な資料が揃っていたのだ――そう、ただ一点を除けば……。
「ジョージ・マクマホン(58歳)。男性。20年前にフロリダの移民局に移民申請して米国籍を得る。移民前の出身国はハイチか……」
(ハイチといえば、ヴードゥー教の本場みたいなもんだが……)
 資料を読み上げながら皇騎は先ほどから何度も読み返している部分に目を移す。
「――移民申請以前の資料は“UNKNOWN(不明)”か……」
 実家の経営する複数の企業の調査部門と未だ大学生である彼が役員を務めるコンピューター関連部門でも調査したが、最終的に行き着く先は7文字の英単語だった。
 こうなったら、多少危険でも奥の手を使うか? 皇騎がそう考えた時、紅い髪を揺らしながら妖艶な女性が近づいてきた。
「どうかしら? 何か新しい情報は見つかって?」
「あぁ、ミス・紅。
 いえ、ダメですね。めぼしい所は全て調べたんですがね。結局はいつも同じところで切れてしまうんですよ……」
 皇騎は、お手上げですとでも言うように肩をすくめてみせる。
 目の前の赤毛の女性は、細長い煙管を口にすると、ゆっくりと紫煙を吐き捨てる。
 皇騎とミス・紅こと、紅・蘇蘭(ホン・スーラン)は、つい昨日知り合ったばかり――つまり、草間の要請に応えて今回の依頼に集まった仲間だった。そして、いつものとおり依頼について情報収集を担当した皇騎に、紅・蘇蘭が協力を申し出てくれていたのだった。
「で、紅さんの方はどうでした?」
「まぁ、ある程度はね」
「え!?」
 ダメ元で訊いた皇騎は、予期せぬ紅・蘇蘭の返答に耳を疑った。しかし、紅・蘇蘭が差し出したディスクの内容を見て彼は驚かされた。
「これは……」
「そう、あのマクマホンとか言うやつだけど、移民前は確かにハイチ国籍を持っていたようだけどね、実際の生まれは隣のドミニカ共和国。しかも、父親は日本人ときてる。
 戦後の復興が進む1956年―1959年にかけて、この国が推し進めた『ドミニカ移民』。
“カリブ海の楽園で大規模自営農”を宣伝文句に行われた移民の数は249家族、1319人にのぼったらしいわ。実際には開拓不能な荒地に投げ出された棄民政策だった訳で、数年後、生活に困窮した大多数の移民は日本に帰国したんだけどね。
 現地で結婚して子供を作っちまったマクマホンの両親はドミニカに残ったらしい。つまり、依頼主のマクマホンは日系二世って訳だね。
 詳しくは分からないけど、その後しばらくして、マクマホン一家はハイチに移り住んだらしいよ。
 でだ、当のマクマホンだけどね、どうやら彼自身、ヴードゥー教団の関係者らしい。
 ハイチの首都ポルトープランスではそれなりに知られたヴードゥー教の司祭(オウンガン)だったそうだよ。
 ただ、ちょうど20年前、両親が行方不明になるのと前後して突然姿を消し、あとはあなたが調べたとおりってとこかしら」
 資料を説明しながら読み進める紅・蘇蘭に、皇騎はただ驚くばかりだった。
 情報収集に関してはプロの領域に達している皇騎をもってしても、“通常”のやり方ではまったく分からなかった内容を、どうやってこの女性は知ることができたのだろうか?
 そもそも、彼女は今朝、ここ(草間興信所)に来てから、殆ど何もしていない。唯一やった事といえば、皇騎が最初に紅・蘇蘭と顔を合わせたとき依頼主について、移民以前の資料が不明であることを伝えた直後に電話を一本かけたぐらいだ。あとは、一時間ほど前に、突然調べ物をして来ると言って、興信所を跡にしただけのはずだ。
「なるほど、これで移民以前の依頼主についてはわかりましたが……しかし、紅さんはこの情報をどこで?」
「まぁ、世の中“こいつ”のおかげで便利になったけどね。“生”の情報ってやつは、“こいつ”で調べられないものも意外と多いものなのよ」
 紅・蘇蘭は、机に置かれたパソコンを軽く叩いてみせる。
 皇騎は知らなかったが、実は紅・蘇蘭は情報や特殊な品物を専門に扱うチャイニーズ・マフィア『幣』の幹部であり、昼間、彼女が電話をした相手とは、この『幣』の情報部門のトップだったのだ。
「“生”の情報ですか……。
 しかし、今回は助かりました。特に依頼主がヴードゥー教の司祭(オウンガン)ということが分かったことは大きいですね。
 こうなると、マクマホン氏が狙われているというヴードゥー教の秘密結社ですが、以外に結社内の内輪もめ、あるいは権力争いである可能性が出てきましたね。
 ここは慎重に行動したほうがいいかもしれませんね」
 紅・蘇蘭のもってきた情報を分析しながら、皇騎は内心面倒なことになったと感じていた。
「権力争いねぇ……。まぁ、確かにありそうなことだね。
 どちらにしろ、永遠とここで調べ物をしてるって訳にもいかないしね。私は依頼主のところにいる仲間と合流するけど、あなたはどうするの?」
 紅・蘇蘭は髪と同じ、紅い唇から紫煙を吐きすてる。
「なら、私は秘書の橘さんが仰っていた、秘密結社のアジトに行きましょう。
 何時までも待たせると、先に向かった二人に申し訳ありませんしね」
「じゃぁ、決まりだね」
 そう言うと、紅・蘇蘭は手にした煙管をくるりと逆様にして、机の上に置かれた灰皿の淵に軽く叩きつける。
 その瞬間、小気味よい音が室内に響き、煙草の燃えカスが白い陶製の灰皿に転がり落ちた。

 
●SCEN.2

 黒く染まった空を切り裂くかのように閃光が走り、つづいて雷鳴が轟く。
 とたんに大粒の雨がアスファルトの大地に降り注ぎ、まどろむような黄昏時の情景を一瞬にして押し流す。
 と、再び閃光が走り、雷鳴が耳に入る。
「ちっ! ここもか……」
 雷光に照らされて、一瞬室内の様子が伺える。
 片隅にいくつもの椅子や机が乱雑に積み上げられた部屋に、男が一人が佇んでいた。
 長身の男は、その裸体彫像のようながっしりとした体躯を屈めて床に触れる。指先で床を軽く撫でると、埃と砂が混ざったような塵がまとわりつく。
 鬼伏・凱刀(おにふせ・がいと)は、茶色い髪を掻き上げると厳しい表情で床を観察する。
 厚く体積した塵、乱雑に積み上げられた机に討ち捨てられた椅子、確かに傍目には朽ちかけた廃屋の一室に映った。
 だが、ところどころに薄く残る靴跡や蝋燭の燃えカスは、この部屋に短い間ではあるだろうが、何人かの人間が出入りしていたことを意味していた。
「ここも、これまでの部屋と同じってわけか……」
 凱刀は、苦々しい口調でそう掃き捨て、ゆっくりと立ち上がった。
 この東京都の西の外れにある、廃屋――元は病院だったらしい――に、凱刀達が乗り込んだのは、彼等の依頼主の秘書からもたらされた情報によるものだった。
 つまり、この元病院に依頼主ミスタ・マクマホンの命を狙うヴードゥー教の秘密結社が潜んでいるので、結社が不穏な行動に出る前に叩き潰してくれということだった。
 しかし、実際指定された廃屋に来てみると、そこはもぬけの殻。秘密結社の姿はどこにもなかった。
 あるものといえば、わずかに人が出入りしていたことを示す手がかりが残っているだけという始末。
 この状況に、すでに凱刀は拍子抜けを通り越して怒りさえ覚え始めていた。
「あの、くそ秘書が! 完全なガセネタじゃねぇか!!」
 凱刀は感情の高ぶりに任せて床を蹴り飛ばした。そうして今度は脇に投げ出されている朽ちかけた椅子を蹴り飛ばそうとしたときだった。不意に背後に気配を感じた凱刀は、背に担いだ青龍刀を抜き放つと、円を描くような動作でクルリと反転する。
「だれだ!!」
 眼前に広がる闇にピタリと切っ先を合わせる凱刀。
「だれだとは、言ってくれるな」
 凱刀の問いかけに、凛とした女性の声が返ってきた。凱刀はその声を聞いただけで、相手が誰なのか分かった。
「ロゼか……」
 瞬間、雷光が差し込み、室内を明るく照らす。その一瞬、闇の先に黒い修道服に身を包んだ細身の女性が、くっきりと浮かび上がる。糸のように細い銀糸の髪を風になびかせ佇む姿は、繊細な女性彫像のようだ。
 ロゼ・クロイツは、ゆっくりと凱刀に近づくと、彼が構える愛刀『血火』の脇をすり抜けて室内の状況を確かめる。
「ここも、いっしょだな。下の階も似たようなものだった」
「やっぱり、もぬけの殻ってやつか。確かについ最近、人の出入りがあったようだが、これじゃあガキ共の溜まり場だったのか、ヴードゥーの隠れ家だったのかさえわからねぇ。 橘の奴め、俺達にガセネタ同然のもの掴ませるとは良い度胸だ!」
 凱刀は吠えるように依頼主の秘書の名を叫んだ。
「そうでもないぞ」
 しかし、ロゼは、さらりとした口調で凱刀の言葉を否定した。
「先ほど下の階で面白いものを拾った……」
 ロゼは懐から木彫りの人形がついた首飾りを取り出して見せる。
「こいつは?」
「たぶん、お守りか、儀式で使う何かだろう。
 この人形が何をモチーフにして作られたかは分からないが、ブラック・アフリカンのシャーマン達が好んで身につける装飾品に似ている」
「ということは、ここは確かに連中のアジトだったというわけか?」
「少なくとも、つい最近まではそうだったのだろう」
 凱刀の問いに、ロゼは人形を見つめながら答える。
「なら、話は早い。
 ロゼ、その人形を貸してくれ。
 そいつが本当に呪いで使う道具なら、俺の術で連中の場所をつきとめられる」
 その言葉に、ロゼは頷いてみせると、奇妙な木彫りの人形を凱刀に手渡した。
 外では雨の勢いが増し、湿った風が二人の髪を大きくなびかせ続けた。


●SCEN.3

 新宿駅に程近い場所にある、外資系の高級ホテル。
 その最上階のスィートルームに、今回の依頼主WFW証券会長ジョージ・マクマホンが宿泊していた。
 最上階といっても、このスィートルームは二つの階をまたがるもので、下のフロアにはWFW証券のスタッフやマクマホンの護衛などが詰めており、依頼主本人は上のフロアを使っていた。
 そのスィートルームの一角で、黒木・イブは目の前の男に、その妖艶な眼差しを向けていた。
「こんな高級ホテルのスィートを貸しきるなんて、あんたら相当稼いでるんだね。
 このご時世で、これだけ豪勢にやれるっていうことは、あんたのボスは結構恨みとかを買ってるんじゃないかい?」
「イブさん。我社は証券に関して取引業務を代行しているに過ぎませんし、業務自体も顧客の信頼を失うような行為は一切していません。
 まぁ、確かにライバル業者の中には、我社の急速な発展を敵視しているところもありますが、それで企業の経営者を殺害しようなどと考える人間はいませんよ。すくなくとも同業者にはね。
 証券取引というのは信用第一ですから。
 あこぎな商売をして変な噂が発てば、顧客の信用を失うだけです」
 橘はWFW証券のスタッフに指示を出しながら、イブの問いに答える。
 イブは、この部屋についてから、ずっと依頼主であるマクマホンと秘書の橘・淳を見張っていたが、まったくといって良いほど不信な点はなかった。
 結局痺れを切らしたイブは、秘書の橘を誘惑して情報を引き出そうとしたが、当の橘はまったくイブの誘いに乗ってこなかった。
「……ですから、何度も申し上げたとおり、われわれの仕事は信用第一なんですよ。
 だから、今回の件も警察には通報せず、ミスタ・草間の優秀なスタッフに解決をお願いしたんですから……」
 そして橘は、「皆さんには期待していますよ」と言うと再びスタッフと仕事の話を始めた。
 イブは、当初、草間から依頼の話を持ちかけられたとき、あっさりと断った。そんな、自分にとってたいした楽しみのない仕事をするよりも、彼女が女王様として勤める高級SMクラブで被虐趣味の客を相手にプレイを楽しんだほうがよっぽどマシだったからだ。
 しかし、草間からの電話を切った直後、紅・蘇蘭がイブの許を訪れ、草間の依頼を共に引き受けるよう話をしてきたのだった。ほんの数日前に起こった事件で、紅に借りを作っていたイブは、結局、その借りを返すということでこの依頼を引き受けたのだった。
 そしてイブは、この依頼で一番妖しいのは依頼主であるマクマホンだと見て、常に監視をしていたのだ。
「なに、いずれ尻尾を掴んでやるよ」
 今のところイブの読みは外れていたが、イブは諦めずにマクマホンを張り続けることにした。

 
「この一週間、関東一帯には異常低気圧が発生し、お天気は非常に不安定になっています。明日の出勤、通学に際しては、傘を忘れずにお持ちください……」
 スィートルームのリビングに設置された超大型TVで天気予報を見ながら、レイベル・ラブは高級ホテルの食事を口に運んでいた。
 レイベルの向かい側には、この部屋の主であるマクマホンが、一本数十万円はする赤ワインを水でも飲むように胃の中に流し込んでいた。
(やれやれ、食事にありつけたのは良いけど、これじゃぁねぇ……)
 レイベルはあたりを伺って、溜息をつく。
 リビングに設けられた食卓には、色とりどりの豪勢な食事が並び、味も抜群なのだが……如何せん環境が悪かった。
 マクマホンに誘われて食卓に着いたレイベルを待っていたのは、毒味役という仕事だった。別に実際に毒味をしろなどとは言われなかったが、食卓に料理が運ばれるとマクマホンは決して自分から口をつけようとはせず、レイベルが無事に食べ終わるのを見てから、同じものを食べるという始末だった。
 “サリイサ”との血の契約によって不死身となったレイベルとしては、別に毒入りだろうがなんだろうが大して関係無かったが、こうもあからさまに“毒味”をやらされると、さすがに気分の良いものではなかった。しかも、これが3食目ともなればなおのことである。
(ふぅ、イブにはマクマホンから目を離すなって言われたけど、こういったことは私のガラじゃないんだけどな……)
 レイベルは、再び溜息をつくと、新たに運ばれた料理にフォークを突き刺した。
 
 
●SCEN.4

 宮小路・皇騎が鬼伏・凱刀、ロゼ・クロイツと合流したのは、結局翌朝になってからだった。橘に教えられたとおりの場所に向かった皇騎は、そこで凱刀やロゼを探したものの見つからず、仕方なく一旦引き返す羽目になった。
 この間、二人は、凱刀の【召鬼法】によって呼び出された鬼の導きで、木彫りの人形から発せられている、僅かな想念をたどって都心に戻ってきていたのだった。
 結局、今朝、二人から連絡を受けて、ようやく皇騎は合流できたのであった。
「−−で、敵の隠れ家は見つかったんですか?」
「いや、このあたりなのは間違いないが、この街に入ってからは一般の奴らの念が渦巻いていて、連中の正確な場所までは把握できてねぇ」
「なるほど、確かにこのあたりは気脈が非常に乱れていますからね。たぶん、連中もこの街の気が乱れているのをうまく利用して、追跡者の術を無効にしようと考えていたのでしょう」
 皇騎は感心したように何度も頷くと、これからどうしたものかと考えた。
 すでに今日は土曜日。つまり、ヴードゥー教の秘密結社が依頼主の命をもらうと予告してきた日だ。あまり悠長に構えていられる状況ではなかい。
「くそう! 連中が分かりやすく結界なり、呪術なりで身を固めてりゃ、すぐにでも念をたどって場所を探し出してやるってのに!!」
 凱刀は、気脈の乱れという予想だにしなかった妨害にあって、自分の術が無力化されていることに苛立ちを覚え、すぐ側に立つ電柱を殴りつけた。
「凱刀。おまえの口ぶりでは、相手が何か呪術を使えば、すぐにでも場所が割り出せるといっているように聞こえるが……」
 それまで黙っていたロゼが、凱刀の台詞に反応して銀色の瞳を相手にむける。
「ああ、そうだ。呪術てのは、それを行う者達の想念が強く出るからな。その術が難しいものになればなるほど、より大きな念が生まれるってことだ。もし、連中が呪術を使えば、いくら気脈が荒れてても、オレの鬼なら、その想念を確実に掴める」
「でも、相手も馬鹿ではありませんからね。せっかくの天然の防御効果を無にするようなことはしないしないと思いますけど」
 凱刀の説明に、皇騎が付け加えるように口を開く。
「確かにな。
 だが、ヴードゥー教は、本来、儀式を通し神【ロア】の力を得ることによって、対象の病や傷を治したり、相手を呪い殺したりするものだ。
 だとしたら、連中もマクマホンの命を、何らかの呪術で狙うのではないか?」
 ロゼは、かつての師が保有していた膨大な量の書物の中から、ヴードゥー教について記述された資料を事前に調べてきていたのだ。
「なるほど、確かにヴードゥーの司祭達は、あまり直接的な破壊行動を起こすことはないようですからね。
 この街に潜む結社も、最終的に儀式を通してマクマホン氏を狙ってくる可能性は高いですね。
 となると、結社が儀式を行うのは夜。ヴードゥー教は昼間に儀式を行うことはまずないですから」
 皇騎は、そう予測すると懐から携帯電話を取り出した。
「おい、なら俺達は、連中が儀式をおこなう夜まで、ただ黙って待ってるってことか?」
 凱刀は、冗談じゃないとでも言うような口ぶりで、皇騎やロゼに食って掛かる。
「安心してください、夜までにやる仕事はいくつかあります。
 とりあえず、連中の隠れ家になりそうなところを調べ上げるとしましょう」
 そう言うと、皇騎は携帯電話を使って複数の場所に電話をかけた。
「今、この街の登記簿や物件について、廃屋、住人不在の住宅、さらに貸し出し中の物件などを調べてくれるように連絡しましたから、一時間もすれば有力な情報を得られるでしょう」
 そして皇騎は懐から皮製の四角い箱を取り出すと、なかからタバコを一本抜き出して口に咥えた。

 その後、程なくしてもたらされた情報によって、要注意物件が32箇所あることを知った三人は、その一つ一つをしらみつぶしに調べることにした。しかし、調査事態は簡単に済むのだが、移動に予想以上に時間がかかり、何の手がかりもないまま、気が付けば完全に日が落ちてしまっていた。そして昨日と同じく突然の雷鳴と共に大粒の雨が降り注いできた。
 そんな中、時刻も深夜に指しかかったとき、凱刀の使役する鬼が強い念を探り当てたことを伝えてきた。それは、ちょうど25個目の物件を調べ終わったと直後だった。
「どうやら、連中が動き始めたらしい」
 その言葉を合図に、3人は雨の降りしきる闇の中を疾走していった。


●SCEN.5
 
 最初にその奇妙な人物を見つけたのは、WFW証券スタッフの男だった。
 日本企業との提携記者会見とその後のレセプションの準備のため深夜まで書類と格闘していた彼は、眠気覚ましの珈琲を飲もうとポットの置かれた部屋に向かおうとしていた。
 そして部屋を出てすぐに、その人物に気が付いた。
 視界の先、いくつもの扉が覗く細い廊下の中ほど、ちょうどもう一本の廊下と交わる十字路のような場所にその男は立っていたのだ。
 クラシカルな黒い礼服に、シルクハットとステッキ、右目には片眼鏡という19世紀の紳士を思わせるような服装をした中年の男が、手にした杖で床を何度も何度も突っついていた。
 不信に思ったスタッフが、その紳士に声をかけようとした瞬間だった、突然床が眩いまでの光を発すると、目の前の紳士が床面に溶け込むようにゆっくりと沈降していたったのだ。
「ひぃっ!」
 スタッフの男は短い悲鳴を上げると、派手な音を発ててコーヒーカップを床に落とした。
 陶器が割れる甲高い音が響き、それを聞きつけたマクマホンの護衛が駆けつける。上のフロアから降りてきた護衛は、ことの異常さに驚き一瞬動きを止めたが、意を決すると懐から自動拳銃を抜き放ち、膝まで床に沈みこんだ紳士を捕らえようと行動を開始した。
 しかし、護衛が紳士の側まで近づくことはできなかった。なぜなら、彼等もまた床面を数歩進んだ地点で、目の前の紳士同様ゆっくりと床の中に沈みこんでいったからだ。
「さぁ、諸君。バ・ムーン(生贄)の儀式の始まりだ。
 共に、次元の狭間で思う存分楽しんでくれたまえ」
 ニヤリと口元を歪めながら、紳士は完全に床の中に消え去った。
 後に残ったのは、床の中に落ち行く自身の身に恐怖して青ざめる人間達だけだった。


 床面を硬い杖で打ちつける音で、マクマホンは目が覚めた。
 時計を見ると、すでに深夜の11時を回っていた。
 こんな時間にどこの馬鹿者か!? と不機嫌になり、寝台から起き上がる。
 相変わらず杖を突くような音は、規則的にコツ・コツ、となり続けている。
 マクマホンは、寝台の脇に投げ捨てられていたローブを羽織ると、扉を開きリビングへと足を踏み入れた。
 と、とたんに、先ほどまで鳴り響いていた音がピタリと止み、あたりは一気に静寂に包まれた。
 これはどうしたことか? この時間なら、まだ残務処理を担当するスタッフが起きているはずだったが、物音一つしない。
 それ以前に、本来なら寝室の扉の前で、自分の警護をしている護衛がいるはずなのに、今はリビングには誰もいない。
 これはおかしい、何かが違う……、そう思い至ったときだった。
「キリンガリ・エンクマル。ダンバラー(善の主神)のオウンガン(司祭)にして、我がボコール(闇司祭)よ。
 汝との契約により、その魂を受け取りに来た」
 静まり返った室内に、朗々とした宣言が響き渡る。とたんに室内の温度が数度下がったかのような感じを受ける。
 真冬の北風を思わせる、刺すような冷たさを持った声に、ジョージ・マクマホンことキリンガリ・エンクマルは一瞬にして恐怖した。
 硬直する体を動かそうとするが、うまく身体が言うことを聞かない。ようやく首だけをぎこちなく回すと、リビングの先、廊下と二つの部屋が交わる場所の床から、礼服姿の紳士がゆっくりと浮かび上がってくるのが見えた。
「バ、バロン・サムディ(闇の主神)……」 
「我が使徒、キリンガリ・エンクマルよ、すでに約束の期日は過ぎている。
 さぁ、新しい血か己が血か、どちらを差し出すか決めよ」
「お許しを、MY GOD(我が神)。すでに私めには、あなた様に差し出す魂はございません……」
「ならば、己が血をもって、契約を果たせ」
「ひっいぃぃぃ! それだけは、それだけはお許しを!!」
 マクマホンは、床に額をこすりつけると、何度も何度も許しの言葉を吐いた。
「何を言っている。
 お前は10年前、我に約束したではないか? 毎年一人づつ、お前の肉親を家族を、最愛なる人間を、かけがえのない友を、私に生贄として捧げると。
 そして、もし差し出すべき生贄がなくなったら、己自身の血を我が祭壇に捧げるとも誓ったはず。故に我は、お前に我が力を分け与えたのだ。
 よもや、忘れたわけではあるまい?」
「あぁ、主(あるじ)よ。どうかお許しを。せめて、あと一年、いや半年お待ちください、それまでにはかならず……」
「すでに契約は成った。今更、変更は許されない。さぁ、我が祭壇に、己が血を捧げよ」
 バロン・サムディは、手にしたステッキを大きく一回転させると、その先を自らの使徒に向けた。
「さらばだ、我が使徒よ。汝の血は我と我が眷属を大いに喜ばせるであろう」
 唇の端を吊り上げて奇妙な笑みを作ると、闇の主神の握るステッキが淡い光を放つ。そして杖がグニャリと波打ったかと思うと、スプリングのような螺旋を描きながら、一直線にマクマホンの頭部へと突き進む。
 しかし、次の瞬間、マクマホンとステッキの間に白い人影が割って入り、金属同士がぶつかる音を発てて、バロン・サムディの杖が弾き返した。
「そう簡単に死なれると困るんだよ」
 そこには、白衣を身に着けたレイベルが、鉄の棒を構えて立っていた。
「しかし、最近は神様やらその継子やら、色々なのにあうよ
 こうなると、世の中神様だらけって感じだ」
 レイベルは、悪態をつきながらも目の前のバロン・サムディから視線をはずさない。
「これは驚いた、私の杖を簡単に弾き返すとは、どうやらまともな人間じゃないようだな」
「そういうこと。悪いけどこの人にはもう少し長生きしてもらわないと困るんだ。あなたには悪いけど、ここは大人しく帰ってもらえないかな?」
「はっはははは。そういう訳にはいかないのだよ、フロイライン(お嬢さん)」
「なら、お互いやることは決まっているね。
 さぁ、こうなったら何でもあれだ。私が全部まとめて治療してやるよ」
 言うが早いか、レイベルは一気に跳躍するとバロン・サムディに向かって突進する。
 それを受けて、相手もステッキを横一文に薙ぐように空を切る。とたんに激しい衝撃がレイベルの体を襲う。
「やるわね。でもこの程度じゃあ、私は止められない」
 言葉どおりにレイベルの動きは鈍ることなく、バロンに肉薄する。
 今度はレイベルが力一杯手にした得物で相手を叩きつける。土曜日の神はバックステップして距離をとると、変幻自在の杖でレイベルの一撃を受け流す。その動きは、無駄のない洗練されたものだった。
 しかし、レイベルは、そんなことお構いなしに続けてバロン・サムディを殴り続ける。
「フロイライン(お嬢さん)、ただガムシャラに向かってくるだけでは、我を消し去ることはできないぞ」
 バロンは、嘲る様に笑うとレイベルの攻撃をいとも簡単に払いのける。
「いいんだよ、“私”はこれでね」
「そう、あんたはそれで“正解”だよ」
 レイベルの激しい打ち込みに、バロンが後退した瞬間、床からゲル状の触手が弦のように伸びその動きを封じた。
「なに!?」
「おっと、動くんじゃないよ。下手に動いたらあんたの霊力を全てくらいつくさせてもらうからね」
 バロンにまとわり着いた液体が、少しずつ実体化し黒木・イブという“妖(アヤカシ)”の姿を形作る。
 下着一つ纏わぬ妖艶な美女上半身に、ぬめるような液体の下半身という半妖態の姿で、イブはバロン・サムディの体を押さえ込んでいた。
「今だよ! 紅・蘇蘭!!」
「わかってるわよ、イブ」
 下のフロアへと続く廊下の一番奥から、導師の礼服に身を包んだ紅・蘇蘭が現れ、彼女が呪文を唱えると、それまで薄闇に包まれていた室内が突然光を取り戻した。
「12指針の結界を張ったわ。あなたの身の内に注がれる全て呪力を断ち切った。これであなたはこの部屋にいる限り、あなたは無力よ。
 さて、どうする? 大人しくあなたの世界に帰るか、それともこの場で私たちに調伏されるか決めなさい」
 紅・蘇蘭は不適な笑みを作ると、神と呼ばれる相手を睨み返す。
 闇の神は、驚きの表情でこの三人の女性?トリオを見つめた。まさか自分がここまで追い詰められると思っていなかったのだ。しかし、驚きはすぐに歓喜へと変わり、バロンの心を躍らせた。
「くっくくくく。まさかこの私をここまで追い詰める者達が、未だ存在していようとは……。実にすばらしい! 私もどうやら真の力を見せねばならぬようだ」
 バロンは奇声にも似た叫び声を上げると、突然押し黙ってしまった。
 三人の眼差しがバロン・サムディの黒い礼服に注がれる。と、だんだんとバロンの体から熱気のような靄が立ち上り始めた。
「おい、てめぇ、何してやがる。
 下手になことすると、喰らい殺すといっただろうが!!」
 しかし、相手はイブの制止の言葉を無視して、次第に小刻みに震えだした。
「こいつめ! そんなに死にたいのなら殺してやる!!」
 イブはバロン・サムディの肩口に牙を突き立てると、闇の神に宿る霊力を喰らい尽くそうとした。
 しかし、次の瞬間、逆にイブの方が弾かれるように、バロンの体から引き剥がされた。
「イブ!大丈夫!!」
 イブの体が床に叩きつけられる瞬間、レイベルが体を割り込ませてイブを助ける。
「ぐぁ! なんて力(霊力)だ……」
 イブはバロン・サムディの霊力を喰らい尽くそうとしたが、逆に大量の力を流し込まれ、その負荷に耐えられなくなってしまったのだ。
 イブを引き剥がし、体の自由を回復したバロン・サムディであったが、その場から動く気配はなく、どんどん霊力を周囲に放出し始めた。
 闇の神を中心に膨大に膨れ上がった力が、荒れ狂う嵐のようになって渦巻いている。
 その光景は、ほんの数日まえ三人が、一人の少女を相手におこなった儀式の数倍はあろうかという巫力を有していた。
 そして、ある一線を越えたとき、耳鳴りが聞こえ再びフロア全体が真っ暗な闇に包まれた。
「どうしたんだ、紅」
「驚いた、こんな無茶苦茶な方法で結界を破壊するなんてね」
「むちゃくちゃな方法?」
「ええ、膨大に膨れ上がらせた霊力で、内側から結界の限度値以上の負荷をかけて、結界を膨張破壊したのよ」
 言葉とは裏腹に、紅・蘇蘭は落ち着いた口ぶりで話す。それは、まるで他人事のようにも聞こえた。
「さぁ、儀式の始まりだ。お前達が匿う相手を必ず我が祭壇への供物にしてくれる」
 今やバロン・サムディは死神としての本性を完全にさらけ出し、目の前で対峙する三人に襲いかからんとしていた。
 暗闇の中で、赤く浮かび上がる死神の双眸は、レイベル、イブ、紅の三人の向こうに、腰を抜かして倒れこんでいる、マクマホンを見据えていた。
「ひぃぃぃ!!」
 悲鳴を上げて奥の部屋逃げ込もうとするマクマホンに、死神が襲い掛かる。
 三人はすばやく身構えると、バロン・サムディの前に立ちはだかろうとした。しかし、闇の神は三人の体など存在していないかのようにすり抜けると、そのままマクマホンの体に取り付いた。
「今度こそ終わりだ、我が使徒よ!!」
 肉が押しつぶされる鈍い音が響き、リビングの白い大理石の床が真っ赤に染まった。
 おぞましい光景が三人の目の前で起こり、あっという間にかつてマクマホンと言われた男は粉々に押しつぶされた肉片と化した。
「さぁ、つぎは貴様等の番だ!!」
 そして、死神の双眸が三人を捕らえた。


 宮小路・皇騎、鬼伏・凱刀、ロゼ・クロイツの3人が、その建物に押し入ったとき、儀式はクライマックスを迎えていた。
 建設中のビルの、まだ部屋同士の間切りがされていない広い空間では、祭壇に横たえられた羊の首筋にナイフが突き立てられようとしていた。
 当初、ヴードゥー教団に接触したら、まずは話し合いで解決する手段を考えていた皇騎であったが、その目論見は見事に崩れ去っていた。
 というのも、進入してきた三人を、ブードゥー教団は問答無用で排除しようとしてきたのだった。
 こうなっては、さすがに話し合いどころではなく、皇騎も自らの身を守るため、得意の符術を駆使することになった。
「全地よ! 主に向かって喜びの叫びをあげよ。喜び祝いて、主に仕え、喜び歌って御前に進み出よ! 知れ!! 主こそ神であると!!」
 祈りの言葉を口にしながら、ロゼはその華奢な体に仕込まれた超硬度ワイヤーを投げつけると、反動を利用して素早く引き戻し、立ち塞がる邪教徒共を切り刻む。
 しかし、いくら切り刻まれ、腕を失い、片足をもぎ取られても、彼等はロゼの元に殺到してきた。
「いったい、彼等は何者?
 ここまで痛めつけられれば、普通の人間なら立ち上がることはできないはず。
 なのに、どうして彼等はたちむかってくる?」
 ロゼは、あまりのことに疑問を口にした。
「それは、彼等がゾンビだからですよ」
「皇騎。ゾンビって、あの腐った死体、アンデットってやつだろう?
 どう見ても、こいつら腐ってるようには見えないぜ!?」
 凱刀も、片手で青龍刀を振るい次々と敵を切り裂くが、これだけ惨たらしく切り刻まれていても連中は取り付かれたように自分におそいかかってくる。
「それは、映画の世界での話です。現実のヴードゥー教のゾンビというのは、あくまで人間を仮死状態にし、自我を奪い去って術者に逆らえないようにした状態に過ぎません。
 確かに、精神を完全に制御された状態のため、常人の何倍もの痛みや苦痛に耐えられるようですが、あくまで普通の人間なんですよ」
 凱刀の問いに、皇騎はネットで調べ上げたヴードゥー教の秘術についてすばやく答える。
「なら、その術者をやっちまえば、こいつらゾンビってのは元の普通の人間にもどるのか?」
「それはどうだか……? 過去にゾンビ状態になった人間を治療しようと試みた医師が何にもいたそうですが、結局のところ直らなかったって言いますし、若いころゾンビにされて100歳過ぎて亡くなるまで、症状が回復しなかった老人の記録も残っていますから……」
「つまり、彼等を元に戻すなんて考えは、無駄だということだな。
 ならば、他者に支配される苦しみから解放してやるのが、せめてもの情けということか……」
「そういうことです」
 皇騎の答えに、ロゼは整った眉を少し寄せて、ほんの一瞬だけ瞼を閉じる。
「そうか。なら、何時までも、ちまちまやってたんじゃどうしようもないな。ここは、雑魚を一気に蹴散らして、さっさと敵の大将を討ち取ったほうが得策だな」
 凱刀は、目の前にいる片手を失ったゾンビの首を、根元から断ち切ると、思いっきり敵陣に蹴り飛ばした。
 突然けりこまれた仲間の死体に、前列に並んでいた数人のゾンビが巻き込まれるように倒れ、一瞬、敵陣の動きが止まった。
 凱刀はその一瞬の間に、全身の意識を集中して、自身の体に封印した小鬼の群れを呼び起こした。
「さぁ、餓鬼ども、食事の時間だ。あいつ等を好きなだけ貪り尽くせ!!」
 封印のとかれた小鬼達は、奇怪な叫び声を上げながら久々の食事を喜ぶように、次々とゾンビの群れに群がっていった。
 その横では、ロゼが両手に数十本ものワイヤーを握り、敵陣の奥深くに投げ入れ数人のゾンビ達に絡みつかせた。
「神と子と聖霊の御名において、AMEN!!」
 短い祈りの言葉と共に引き戻されたワイヤーは、瞬時にゾンビの体を二度と立ち上がれないほど切り刻んだ。
 そして気が付けば、ほんの数分で視界の中から哀れなゾンビ共を駆逐した。
「さて、これで残りはボスのお前だけだ」
 凱刀は、ゾンビが身につけていたボロ布で愛刀についた血のりを拭き取ると、その切っ先を黒いローブに身を包んだ仮面姿の人物に向けた。
 仮面の人物の右に皇騎、左にロゼが回りこみ、このヴードゥーの祭事者を取り囲む。
「さぁ、かんねんしな」
「もう、逃げ道はないですよ」
「主イェスよ、願わくば幾千幾万の魂を救った、その慈悲で、この者の罪を赦したまえ」
 三方を塞がれ、もはや逃げ場を失った仮面の司祭は、祭壇に置かれたナイフを手に取ると、目の前で青龍刀を構える青年に突進してきた。
「門の神、レグバ・アティボンよ! 我が血と肉を受け、我等が神に逆らう愚か者共に等しく死を与えよ!!」
 儀式用のナイフを振り上げ凱刀に肉薄する相手の声は、恐怖でかすれていたが、間違いなく女のものだった。
「あばよ! 今度、生まれ変わるときは、もうちっとマシな人生を歩めるようにしな!!」
 凱刀が愛刀を肩から足元へと振り下ろすと、闇司祭の体は紙切れのように真二つに別れて左右に倒れた。
「これで終わったのか?」
 ロゼは、累々と積み重ねられた死体の山を見上げ、そう口にした。
「ええ、たぶん。問題は呪いの儀式がどこまで進んでいたかですが……。これは紅さん達と合流しないと分かりませんね」
「とりあえず、俺達はやることやったぜ!! あとは護衛役の連中がどこまでがんばったかだな」
 皇騎も凱刀も疲れたように溜息を漏らしながら、その場を後にしようとしたときだった。
「!?」
「あ、足が動かない!?」
 二人は自分達の腰から下がまったく言うことを利かなくなっていることに気が付いた。
「どうした? 二人とも?」
 ロゼは、驚愕の眼差しで見詰め合う皇騎と凱刀の身に何が起こったのか理解できなかった。
 しかし、次の瞬間には、自分の体も言うことを利かなくなっていることに気が付き、驚きの声を上げた。
 そして、三人がそれぞれの場所でもがき苦しんでいると、今度は室内に設けられた祭壇がガタガタと震えだし、ついには部屋全体が揺れだした。
「じ、地震? くそ、こんな時に……」
 揺れは段々と激しくなり、壁や柱に醜い亀裂が走り始めた。
「まずい! このままだと建物が倒壊します!!」
「くっ!! どうしてからだが……!!」
 その時、天井のコンクリートが剥げ落ち、床の一部が崩れ落ちた。もう助からない……。三人がそう思った時だった。
「カガミdeス!! 祭壇ノ鏡ヲ破壊スルンdeス!!」
 荒れ狂う室内にその声が響き、続いて銃声が二回発せられた。
 その直後、祭壇に飾られていた三枚の鏡の内、二枚が砕け散った。
「聖霊よ、我を導きたまえ」
 最後の一枚を咄嗟に反応したロゼが、懐から取り出した銀のナイフで破壊した。
 三枚目の鏡が破壊されるのと同時に、三人の体は解放され自由に動くようになた。
「イソイデクダサイ! モウスグ、コノ建物はコワレマス!!」
 我に返った三人は、全速力で建物の外へ転がるように飛び出す。背後からは建物が崩れ落ちる派手な音が聞こえた。
「彼方達、危ナカッタdeス。モウ少シデ生埋メニナッテマシタ」
 そこには、栗色の髪をした20代後半の男が立っていた。
「OH、ソンナ目でニラマナイデクダサイ。ワタシハ、怪シイモノデハアリマセン。
 ワタシ、コウイウモノデス」
 金髪の男は、片言の日本語で語ると、内ポケットから手帳を出してきた。
「ICPO(国際刑事警察機構)?」
「ソウデス。ICPOノ“ジョン”ト言イイマス。
 貴方達ガ、殲滅シタヴードゥーノ秘密結社ヲオッテ、アメリカカラキマシタ」
「アメリカから?」
 ジョンと名乗った刑事の話では、彼は最近EUや米西海岸で起こっている連続猟奇事件に関連してあのヴードゥー教団を調査しており、教団がなにやら日本に大挙して密入国していることを知って、来日したというのだった。
 しかし、実際に教団の潜伏先を突き止めて、乗り込んでみれば、そこは血の海だったというわけだ。
 この時、三人はヤバイのに見つかったと思った。いくら勝手な逮捕権を保持していないとはいえ、明らかな殺人現場を警察側に見られてしまったのだ。ただで済むとは思えない。
 しかし、ジョンが発した次の言葉は意外なものだった。
「サァ、皆サン、逃ゲテクダサイ。早クシナイト、ニッポンノ警察官ガイッパイヤッテキマスヨ」
「おい、お前、警官なのに俺達を見逃すつもりなのか?」
「OK。ダイジョウブ。元々ワタシノ仕事ハ教団ノ調査ト殲滅です。
 ムシロ、教団ヲ殲滅シテクレタ皆サンニハ感謝シテイルグライデス」
「では、私達はお咎め無しということで良いんですね?」
 念を押すように確認する皇騎に対して、ジョンはOK、OK、とニコヤカに語るだけだった。


 宮小路・皇騎、鬼伏・凱刀、ロゼ・クロイツの3人が、その場を去ったあと。
 ヴードゥー教団の隠れ家跡には、金髪の青年とそれに付き従うようにして、一人の神父が残っていた。
「今回の一件、手抜き工事の業者によるビル倒壊事件ということで処理しろ。
 邪教徒どもの躯には、火をかけて倒壊に巻き込まれたように偽装しておけ」
「はっ!」
 金髪の青年の言葉に、神父が恭しく答える。
「しかし、あれが、貴様の前任者が飼っていたという木偶人形か?」
「その通りです」
「汚らわしい邪教徒が造ったにしては、以外に使えるようだが……」
 金髪の青年は、そこまで口にすると、考え込むように押し黙った。
「司教様。ご命令とあれば私が直接出向いて、破壊いたしますが……」
 金髪の青年の心のうちを察してか、神父が恐る恐るといった感じで申し出た。
「いや、その必要はない。
 邪教徒とその連中によって造られた人形が、互いに殺しあうのを止める必要はない。
 それに、今は我々教皇庁直属の機密機関がやらなければならない事は他に在る。
 今は、放っておけ。そう、今はまだな………」
 
 
「この化物が!!」
 イブは、鋼鉄の刃に変質させた右腕で、死神の鉄鎌を力一杯弾き返す。
 大振りの鉄鎌自在に操る死神は、まったく衰えを知らず、イブ達を襲い続けた。
「くそう!!」
 バロン・サムディが、イブに攻撃を仕掛けている間にレイベルが、手にした鉄の棒で殴りつける。
 しかし、闇の神はまったく動じた様子もなく、平然と大鎌を振るっている。
 すでに、こうした戦いが1時間に渡って続けられていた。
 お互い、まだまだ余力があるものの、明らかにイブ達の方が形成が不利だった。
 何しろ相手は、どんな攻撃を加えてもまったく手ごたえがないのだ。
 先ほどは、紅・蘇蘭が招雷の術を駆使して、この死神を倒そうとしたが、結局対した効力もなく終わってしまった。
 いったい何時までこんな戦いが続くのか?
 三人は今すぐにでも、こんな所からおさらばしたかったが、そうもいかない理由があった。
 そんな時、突然、バロン・サムディの身に異変が起こった。
 一瞬、目の光が赤から青に変わったかと思うと、三人の目の前で、みるみるうちに元の礼服姿に戻っていったのだ。
「ふむ。残念だが、お別れの時が来たようだ。
 どうやら、諸君等の仲間が、我が使徒の術を破ったようだな。
 もう少し、遊んでやりたかったが、術の効力が切れては仕方ない。
 今日の所は、本来の目的を果たしたことで良しとしよう」
 初老の紳士は、そういうとリビングの床に転がる、肉片を眺めてニヤリと笑みをこぼした。
「では、諸君。非常に心残りだが、今宵は失礼させてもらう。
 もし、何処かで出会うことがあったら、その時は、また私を楽しませてくれ」
 そして、そのまま闇の中に溶け込むように消えていった。
 闇の神が消えて10分が過ぎたころようやく、三人は安堵の溜息をついた。
「ふぅ、どうやらうまくいったみたいだね」
 レイベルは、すぐに紅・蘇蘭に声をかけた。
「まぁね。所詮は神といっても三流の存在だからね。それにしても、イブ。あなた大丈夫?
途中から、殆どあなた一人が狙われていたからね」
「ふん! 霊力と血を吸われたのが、相当頭にきてたんだろうね。これだから自信過剰な男を相手にすると疲れるんだよ」
 イブは、やれやれといった感じで手の平を振って見せた。
「さてと、それじゃあ。後始末をしようか?」
 紅・蘇蘭はゆっくりと、マクマホンの躯に近づくと、二言三言呪文を唱えた。
 すると、それまであたり一面に広がっていた血やら肉片やらが一瞬のうちに消え、そこには粉々粉砕された紙辺がまばらに散らばるだけになった。
「マクマホンさん。そろそろ出てきても良いですよ」
 紅・蘇蘭の呼びかけに、リビングの奥にあったクローゼットの中から、ジョージ・マクマホンと秘書の橘・淳が現れた。
 紅・蘇蘭はここには居ない、鬼伏・凱刀の力を借りて、霊的にも肉体的にもマクマホンそっくりな形神(カタガミ)を作り上げたのだった。
 妖怪天仙である、紅・蘇蘭の卓越した呪術力と、凱刀の使役する【大鬼】の変化能力によって実現した離れ業だった。
 しかし、これによって紅・蘇蘭、レイベル・ラブ、黒木・イブ、宮小路・皇騎、鬼伏・凱刀、ロゼ・クロイツ……六人の任務は無事に成功したのだった。


●SCEN.7
 
 夜も夜半を過ぎようとしていた頃、WFW証券のマクマホン会長は、秘書の橘・淳に注がせたワインを味わいながら、昨日の記者会見を思い出していた。
 本来なら、日本企業とWFW証券との提携発表になるはずだった席で、なんと二社は提携解消を発表することになったのだ。
 というのも、日本側企業が記者会見前日になって、突然経営悪化を理由に会社再生法の適用を金融監督庁に申し出たのだった。
「くそう!!」
 マクマホンは、突然の提携解消に憤慨していた。そして一気にワインを飲み干すと、グラスを秘書に差し出す。
 橘は、何も言わず恭しくワインをグラスに注いだ。
「橘君。私は非常に不機嫌だよ! こんなに気分を害したのは20年ぶりだ。
 私は明日にでも本社へ引き返すから、すぐに旅券の手配をしてくれ」
 新たにグラスに注がれたワインを飲み干すと、マクマホンは橘にそう告げた。
 しかし、マクマホンの命令に答えた橘の言葉は、あまりにも意外なものだった。
「申し訳ございませんが、会長にはこの地にお残り頂かなくてはなりません」
「なに?」
 聞き間違いか? とでも言うようにマクマホンは部下の顔を睨みつける。
「何度も言わせないで下さい。大叔父上には、この日本で骨を埋めてもらうといってるんですよ」
「な、何だと!!」
 マクマホンは甥の言葉を聞いて、驚いて立ち上がろうとした。しかし、ワインの飲みすぎのためか、腰を浮かしただけで椅子から転げ落ちた。
「ぐはっ!」
「この黒豚が!! まだ解らないのか? バ・ムーンの力を失った貴様など、もはや用済みだと言ったんだ!! これからは、力を失ったあんたじゃなく、この私が会社を支配する!!」
「な、何を言っているんだ、淳。そんなことをすればコミュニティが黙ってはいないぞ!!」
「安心してください大叔父上、すでにコミュニティとは話がついていますから」
「ば、馬鹿な。何の力もない貴様などをコミュニティが認めるわけがない!!」
 マクマホンは、必死になって立ち上がろうとするが、完全に足が言うことを聞かなかった。
「何、簡単なことですよ。力なら大叔父上と同じやり方で直ぐに手に入りますからね」
 そういって、橘は儀式で使う銀のナイフを取り出した。
「さぁ、はじめましょうか? ボコール(闇司祭)? あなたの大好きなバ・ムーン(人身御供)の儀式を!!
 我等が神、バロン・サムディも、きっと私を祝福してくれますよ」
 そして橘は床に転がる大叔父の体に、何度も何度も銀のナイフを突き立てた。


●エピローグ
 
 草間は、受話器の向こう側で対応するWFW証券の担当者を散々怒鳴り散らすと、投げつけるように電話切った。
「くそう!! 連中、何があっても報酬を支払わないつもりだな!!」
 事務所の外まで聞こえるような大声を上げ、草間は机を思いっきり叩いた。
 その机の上には、『全米第3位のWFW証券会長、突然の死去。死因は心不全?』と書かれた見出しの新聞が置かれていた。
 今朝、この新聞を見た草間は、未払いの報酬2千万の行方が気になってWFW証券に電話したのだが、案の定、会社側は、先の護衛依頼は、あくまで前会長マクマホン氏個人の依頼であって、会社とは一切関係ないとの一点張りだった。
「草間ちゃん。まぁ、そう怒りなさんなって。もともと法外な値での依頼だったんだから、前金の一千万でも千万でもじゅうぶんおつりが来るでしょう?」
 紅・蘇蘭は、苛立つ草間をなだめるようにそう言った。
「紅さん。ところが、そうでもないんですよ。これを見てください」
 珈琲を運んできた草間・零が差し出したのは、あのホテルからの請求書だった。
「782万円!!」
「そうなんですよ。あのホテルのスィート、紅さん達派手に壊したでしょう。ホテル側から修繕費の請求が来てるんですよ」
 妹の言葉を聞いて、草間の眉間にしわがよる。
「分かっただろう? これじゃあ、1千万の内残るのは200万程度にしかならないんだよ」
「あれ、違いますよ。200万の内、滞納している家賃や光熱費、方々の借金やら、未払いの協力者の皆さんへの報酬の支払いとか入れたら、2300円しか残りませんよ」
 この、草間・零の衝撃の告白に、今度は室内にいた全員が絶句した。
「な、な、何だって……。零。それホントに支払ったのか?」
「ええ、ちゃんと全部支払っときましたよ」
 その決定的な言葉を聞いて、草間はデスクの上に崩れ落ちた。
 そしてタップリ10分が経過したあと、目の前に置かれた珈琲を一気に飲み干すと、深い深い溜息をついた。
「はぁぁぁぁ〜。零、頼むから今度からそういった大きなことは、一応、俺に話しをしてくれよ。
 それから、その残りの2300円ってのを渡してくれないか? 金欠になる前にタバコの買いだめをしておくから……」
 力なく手を差し出す兄に、妹は、この日二度目の爆弾発言をした。
「あぁ、残りの2300円なら、今皆さんの前にある珈琲豆の袋を買いだめしたから、もう何も残ってませんよ」
 この日からしばらく、草間は禁煙生活を余儀なくされたのは言うまでもない。


〜終わり〜 
 

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0461/宮小路・皇騎/男/20/財閥御曹司・陰陽師】
【0898/黒木・イブ/女/30/高級SM倶楽部の女王様】
【0569/鬼伏・凱刀/男/29/殺し屋】
【0606/レイベル・ラブ/女/395/ストリート・ドクター】
【0423/ロゼ・クロイツ/女/2/悪魔祓い師の助手】
【0908/紅・蘇蘭/女/999/骨董店主・闇ブローカー】

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■         ライター通信          ■
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 皆様、大変ご迷惑をおかけしました。
 ライターの 綾瀬 孝 です。

 この度は、自分のミスでPLの皆様に多大なるご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
 以後、このようにお客様であるPLの皆様をお待たせすることがないようにいたしますので、どうかお許しください。


●宮小路・皇騎さん、鬼伏・凱刀さん、ロゼ・クロイツさんへ
 
 はじめまして、ライターの綾瀬です。
 この度は本当にご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。
 また、私の依頼を受けていただき、大変ありがとうございました。
 皆様大変個性的なPCで、拙い私の文章能力で、どこまで皆様のPCを表現できたかが不安です。
 もし、皆さんの中で、ここが違うとか、自分のPCはもっとこういう感じなんだなどの、修正点がございましたら、ぜひテラコンなどでお知らせください。


●紅・蘇蘭さん、黒木・イブさん、レイベル・ラブさんへ

 今回は本当にご迷惑をおかけしました。
 ライターの綾瀬です。
 皆さんには、いろいろご心配をおかけして申し訳ございませんでした。
 また、皆様から頂いたファンレターには、本当に感謝の言葉もございません。
 いずれ、必ずお返事いたしますので、どうぞ今後ともよろしくお願いします。

あと、ファンレターで御質問の、次回の窓口については事前にHPなどで告知をさせて頂きますので、御安心下さい。