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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


呪歌
◆歌の噂
いつの世にも噂が多い「歌の呪い」
この歌のバックコーラスには歌手を恨んで死んだ女の声が入っている。
昔から時々リメイクされるその歌を歌うと死ぬ・・・
歌にまつわる呪いの噂は多い。

そして最近、囁かれ始めた噂もそんな歌の呪いだった。

『お菓子のCMで流れている曲を聞くと事故にあい死ぬ。』

実際に死んだものがいるのかどうかはわからない。
しかし、企業イメージを悪くすると言うことで、お菓子会社はそのCMソングをすぐに取りやめた。
そのことが噂に拍車をかけたのかもしれない。
そのCMソングは噂と共にネット中を駆け巡り、ついに犠牲者を出したと言う書き込みがなされるようになった。

投稿者:MINORI
友達が歌の呪いで死んでしまいました。
あの噂は本当です。
友達は噂を信じずに、あの歌を歌った翌日に突然死んでしまいました。
皆さん歌わないようにしてください。気をつけてください。

「・・・ほんとなのかしら?」
雫は書き込みをながめながら言う。
歌は元々呪術的なものだ。それによって呪われると言うことはありえるかもしれない。
突然死んでしまったというのも、なんだか呪いの気配を感じさせる。
これは調べてみる価値があるかもしれない。
「カラオケで気持ちよく歌って、いきなり呪われちゃうとか嫌だもんね。」
そううなずくと雫は調査隊の有志を募ることに決めたのだった。

◆ある日突然の危機
「大変な事態になってしまった・・・」
水野 想司は受話器を握り締めて、深刻な面持で言葉を続ける。
「これは世界の存亡に関わる重大な事態だよ・・・」
電話の相手は無言で想司の言葉を聞いている。
想司もいつもの明るい様子とはうって変わり、重く低く相手に話しつづけている。
「・・・僕が行くしかないと思うんだ・・・」
『想司!』
初めて電話の向うの人物が声をあげた。
それは想司をひきとめようとするような・・・悲痛な響きの声だった。
『本気なのか・・・?』
「うん、もうこれは僕以外ではどうにもならないと思うんだ・・・」
想司は伏せ目でかすかに微笑む。
「僕自身のためにも・・・もちろん彼女のためにも・・・僕が行かなくちゃならないんだ・・・」
『・・・死ぬかもしれないんだぞ・・・』
「わかってるよ。だからこそ、僕が頑張るんだ・・・」
想司の唇にどこか皮肉な笑みが浮かぶ。
「未来の為に・・・僕は戦うよ。」
その言葉に電話向こうの相手も気持ちも決めたようだ。
『・・・わかった、組織には話はつけておく。』
「ありがとう、マスター。」
『死ぬなよ・・・』
相手の最後の言葉には答えず、皮肉な笑みを唇に浮かべたまま想司は電話を切った。
「僕がやるしかないんだよ・・・」
想司は受話器を置いた後にそれだけ呟くと、黙って自室を出て行った。

◆戦いへの手引き
水野 想司は用心深く辺りを見回しながら行き馴染みの喫茶店へと足を踏み込む。
「いらっしゃい。」
店に入るとマスターが意味深げな視線で想司を見つめる。
そして目線ですっと奥のテーブル席の方を指す。
想司がそちらへ視線を移すと、この糞暑いのにトレンチコートの衿を立て、帽子を目深にかぶりマスクで顔を隠したサングラスの男が座っていた。
・・・スパイスタイルだが・・・あまりにも季節はずれで異様だ。
想司の視線に気がついたのか、男はサングラスをかけたまま想司のほうへ顔を向ける。
その顔に表情は読み取れない。
想司は黙ってその男のもとへと近づいた。
「組織のエージェント?」
小声でそう言うと男は無言でうなづいた。
うなずきを確認した想司はジャケットのポケットから一枚の紙を取り出した。
広げるとそこには例のBBSの書き込みがプリントアウトされていた。
「重大事件だ。」
エージェントは赤黒い手袋をした手で紙を受け取る。
「このままじゃ、シークレットプロジェクト、コードネーム「ラブリー☆ばーにんぐ」の実行が危うくなってしまうんだ。」
ダダンッと想司は椅子に足をかけ、天を仰いで祈るように言った。
「僕たち「ラブリー☆ばーにんぐ」がデビューする時に歌が厳禁じゃ萌えが半減だよっ!僕とアリアリのマルチメディアアイドルユニットは歌と踊りと可愛らしさがポイントなんだからねっ!僕は・・・僕は・・・このプロジェクトに全てをかけてるんだっ!」
そして上着に手をかけると、ガバッとそれを脱ぎ捨てる!
「タイアップ企画もばっちりなんだよっ!今日はタイアップ企画第一弾「魔法少女バニライム」さっ!」
いきなり生えたうさぎ耳にふりんっと可愛いうさぎ尻尾のバニーさんスタイルで、何処から取り出したのか西洋風の剣を構えて想司はポーズをとった。
「魔法少女バニライムは日曜日の朝大人気放映中だよっ☆」
何故かいきなりCM状態の想司をエージェントもマスターもぽかんと見つめている。
・・・他にお客がいなくてよかったのか悪かったのか。
「と、とにかく想司クンは・・・呪いのCMを振りまいた製菓会社へ侵入したいのだろう?」
マスターが慌ててフォローして、エージェントに言う。
「そこでキミに彼を製菓会社へ手引きして欲しいんだ。」
「それは無理だよ。」
「え?」
手引きするために・・・とマスターが想司に依頼され、全国に広がる新興宗教「ふさふさの民」改め「つる光の民」の教祖がそのハゲネットワークを使って手配してくれたエージェントのはずだったが・・・
「だって、僕はエージェントじゃないんだからね。」
エージェントは立ち上がると、明智小五郎よろしく顔の端に手をかけるとマスクとサングラスをかけたままバリッと変装を引き剥がした。
「あ!お前はっ!」
想司は見覚えのある顔に目を丸くする。
「こんにちは。久し振りだね。」
そこに居たのはスリープウォーカーだった。

◆甘い誘惑
「お菓子の話で僕を仲間外れにするのは無しだよ。」
いつも通りのニコニコ笑顔でスリープウォーカーは言った。
「あの・・・エージェントは・・・?」
マスターが恐る恐るたずねる。
「エージェント?・・・あぁ、どうなったか知りたい?」
スリープウォーカーはニコニコ笑顔のままマスターに言った。その変わらぬニコニコ顔が何となくホラーだ。
マスターはその様子に聞かない方がいいこともあるのだと判断し口をつぐんだ。
しかし、そんなマスターとは違い想司は怯むことなくスリープウォーカーに食いついた。
「えーーっ!それじゃ困っちゃうよ!僕はアリアリとのユニットの為に製菓会社の陰謀と戦わなくちゃいけないんだからねっ☆」
ビシッと剣を構えてスリープウォーカーに言う。
「僕とアリアリの行く手を阻むものは、バニライムが許さないんだよっ☆」
少女のような外見の想司がやると何とも洒落にならないというか、ある意味萌え度数が高そうなキャラクターだった。
「それは困りましたねぇ・・・エージェントは殺してしまったし、僕はあの噂の製菓会社の御菓子は不味くて嫌いなので関わりたくないんですよね・・・」
スリープウォーカーはちっとも困ったように見えないニコニコ顔でしばし考え込んだ。
「じゃぁ、アリスのところへでも行きますか?アリスも今ごろキミを待っていると思いますよ。」
「え?アリアリが僕をっ!」
アリスの・・・という言葉に想司は目の色を変えた。
最近、夢の中に出てきたきり会っていないアリスにやっと会える!
「アリアリの分もコスチュームを用意してきてよかった♪備えあれば憂い無しだねっ☆」
そう言って浮かれる想司をニコニコと見つめているスリープウォーカーの唇の端に、いつもと違う笑みが浮かんでいるのを想司はその時見落としてしまったのであった。

◆宿命
水野 想司がスリープウォーカーに連れられてやってきたのは、いつぞやの夜姫ヶ池のある公園だった。
「こんなデートコースで待ち合わせなんて☆アリアリったら積極的っ♪」
「うん、やる気満々みたいだねぇ。ほら、向うから走ってきたよ。」
スリープウォーカーはニコニコしながらそう言うと、公園の奥のほうを指差した。
想司がそちらの方へ目をやると、確かに地響きも凄まじく砂埃と共に走り来る影がある。
「わぁお。アリアリってばそんなに焦らなくっても僕はいつも君のことを考えているのにっ♪」
そう言って、想司も走り来る影に向かって全速力で走り出したのだった。

「うぉぉぉぉおおーーっ!!!」
「アリアリィィィーーッ!!!」
ガシッ!と二つの影は物凄い勢いでぶつかり合った。
二人が舞い上げた砂埃で互いに姿を確かめ合うことも出来ない。
「うわっ!アリアリ、ちょっと会わないうちに大きくなったねっ☆育ち盛りだからいいことだねっ♪」
「うぉぉぉぉおおっ!何もみえんっ!なんだ、何か小さなものがくっついているぞっ!」
海塚は自分にしがみつく影を手探りで確かめる。
ぽわぽわの丸い尻尾とうさぎ耳らしきモノが手に触る。
「なんと!これは愛らしきかなバニーさん!素材の手触りから察するに「魔法少女バニライム」ではないかっ!!」
「わっ!わっ!大胆だねぇ♪アリアリってば☆でもこんなに大きくなったらコスチュームのサイズを直さなくっちゃね♪」
「バニーちゃーーーーんっ!!」
「アリアリーーーっ!!」

そして砂埃は消え去り、真実は互いの前にさらけ出される。

「げ!お前はっ!」
「バニーちゃーーーんっ!!」
「えーいっ!離せーーっ!!」
ゲシッと想司は目を閉じてしがみつく海塚をはたき倒した。
「ちょっと!しがみついてないで戦いなさいよっ!あなた魔王なんでしょっ!!」
様子を見ていたアリスが海塚の背後から檄を飛ばす!
「アリアリっ☆そこにいたんだねっ!」
それを素早く見つけた想司はアリスのもとへ駆け寄ろうしたが、それをスリープウォーカーが素早く腕を掴んで阻止した。
「想司クン、アリスはあの魔王の彼に捕まっているのです。彼を倒してアリスを救ってあげてください。」
「!」
想司の顔色がぱっと変わる。
「なんだってっ!むーっ、海塚ってばアリアリに何てことをっ・・・」
想司は海塚の前に立ちはだかると、ビシッと剣を突きつけて叫んだ。
「アリアリに危害を加えるものは、このバニライムが許さないぞっ!!」
もうすでに想司の中の想像のバニライムになっていたが、なりきり想司はウサギ尻尾をピコピコさせながらポーズを決めた。
「むぉぉぉおおおおおおおっ!!!!何たる愛らしさよ!!!!!」
そのバニーさん姿が妙にツボに入ったらしく、海塚は雄叫びを上げる。
そして、その瞬間をアリスは見逃さなかった。
「今よっ!精神エネルギー制御装置発動!萌えのエネルギーを攻撃エネルギーに変換して攻撃するのよっ!!!」
ヘッドセットのマイクにそう命令すると、海塚の装着した首輪がエネルギーを受けて眩い光を放ち始めた。
「おおおお!萌えの女神のパワーがここに!!」
海塚は体中にみなぎるエネルギーにさらに雄叫びをあげた!
「女神様!萌えーーーーーーーーーっ!!!!!!」

萌えのエネルギーの輝きは閃光となって、辺りを全て焼き尽くさん勢いで解き放たれた!!

◆戦い終えて日は暮れて。
「エネルギー変換は上手くいってたと思うのよね。問題は制御装置のほうだわ・・・」
アリスは自分の作った装置の更なる改造に思いをめぐらしていた。
「なかなか、生きもののエネルギーというのは侮れませんからね。」
スリープウォーカーは楽しそうな顔でニコニコしながら、考え込むアリスを抱えあげた。
「想司クン、海塚さん、今日は楽しかったですね。これは僕からのお礼です。」
そう言うと地面にひっくり返った二人の額にペタペタとお札のようなものを張り付けた。
「では、僕らは帰ります。また遊びましょうね。」
スリープウォーカーとアリスは水鏡の中へと姿を消していった。

そして残された二人・・・

「まったく海塚ってば駄目だめなんだからぁっ!」
大の字で地面に転がる想司が隣に転がる海塚に言った。
「そんなんじゃ、まだまだ萌えマスターの道は遠いねっ!」
「うむぅ・・・やはりメイド服では萌えは足りぬのか・・・」
何故か反省モードの海塚が呟く。
「アリアリも帰っちゃったし!お前の所為だぞっ!海塚っ!」
「む!何を!?お前こそバニライムのコスプレとは卑怯なり!」
「これはユニットのタイアップだもんねっ☆僕とアリアリのスペシャルユニットのお仕事だもんねっ☆」
「むむむーーーっ!なんだか悔しいぞーーっ!」
「へへへーんだっ!」

二人の声は日が沈むまで夜姫ヶ池公園に響き渡っていた。
そして、夜姫ヶ池の怪しい噂は広まり、デートスポットからミステリースポットへと変わってゆくのであった。

The End ?
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0759 / 海塚・要 / 男 / 999 / 魔王
0424 / 水野・想司 / 男 / 14 / 吸血鬼ハンター

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■         ライター通信          ■
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こんにちは。今回も私の依頼をお引き受けくださり、ありがとうございました。
今回は、スリープウォーカーに騙されて想司クンは弄ばれてしまいましたが・・・如何でしたでしょうか?「魔法少女バニライム」は高原恵さんの設定をお借りしております。途中から完全にMITSURUバージョンで怪しくなってますが、今回だけ拝借させていただきました。あと、スリープウォーカーが想司クンに貼ってたのは「スリープウォーカーのお札」です。効果は使ってみないとわかりません。そして使うとなくなってしまいます。私の依頼でいつでも使えますので、何かに使ってみてくださいませ。
それでは、またどこかでお会いいたしましょう。
お疲れ様でした。